【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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ともだち その11 ~真姫ママ~

 

 

 

 

自宅まで戻ってきた真姫。

その真姫の気配に反応して点いた明かりが、2体の人影を照らしている。

真姫からは逆光となり、顔が判別出来なかった。

 

「じゃ~ん!正解はことりでしたぁ」

「ことり?…どうしてここに?」

「ごめんね、来ちゃった…」

「…あなたが連れてきたの?」

真姫の家の前に立っていたのは、ことりと花陽だった。

 

「いつから?」

「20分くらい前からかな。凛ちゃんに訊いたら、だいぶ前に別れたって…」

小声で話す花陽。

「少し寄り道してたから…。2人とも、ずいぶんとヒマなのね。衣装の製作はもう終わったの?」

「うん!花陽ちゃんが一生懸命手伝ってくれたから、とっても素敵なのが出来たよ。今回はアイデアも出してくれたんだよねぇ」

「ほんの少しだけど…」

何の屈託もない『ことりスマイル』とは反対に、花陽の表情は暗い。

「それで…何の用?」

真姫が、あからさまに面倒臭そうな顔で訊く。

「花陽ちゃんがね、真姫ちゃんのおウチ、すごく大きいから見に行こうって」

「言ってないですぅ」

「本当に大きいおウチだねぇ」

「あなたの家だってそうでしょ?」

「ことりのおウチはマンションだから」

「ふ~ん…。で、本当にそれが目的?」

「あ、真姫ちゃん、なんか様子がおかしかったから…心配で」

と花陽。

「べ、別に平気よ…。だから、たいした用じゃないなら帰ってくれない?私はまだ曲の仕上げをしなくちゃいけないんだから」

「真姫ちゃん、冷たい…」

ことりが目を潤ませて、真姫を見る。

「…穂乃果と海未には通じても、私はその手に乗らないから」

 

その時、真姫の背後から、もうひとつの人影が現れた。

「お友達?」

3人が声のした方向に目をやると、そこには真姫そっくりの女性が立っていた。

違うところと言えば、背の高さと髪の色、そして口元の黒子(ほくろ)くらいだろうか。

「ママ!」

真姫がその姿を見て、そう声を発した。

 

それは真姫の母親だった。

 

「あら、貴方は確か…小泉さん…よね」

「こ、こんばんわ。…あ、あの、私を覚えて頂いてるんですか」

「当然よ。真姫が高校に入ってから、初めてできたお友達ですもの」

「ちょ、ちょっと!余計なこと言わないでよ!」

「いいじゃない、別に…。そして、貴方は南さん…」

「初めまして。南ことりです」

「ウチの娘が、お世話になってます」

「いえ、こちらこそ。…私の事もご存知なんですか」

「よく娘が写真やら動画やらを見せてくれますので」

それを聴いたことりが、悪戯っぽく笑みを浮かべながら真姫を見る。

真姫は無言で下を向いた。

 

「立ち話もなんだから、中へどうぞ。ちょうど、美味しいケーキを頂いてきたところなのよ」

「あ、どうぞ、お構いなく…」

「日も暮れて涼しくなってきたし、わざわざ外で話している理由もないでしょ。さぁ、遠慮なさらずに、中に入りましょう」

真姫は渋い顔をしたが、親には逆らえず、結局、ことりと花陽を家の応接室に通すこととなった。

 

花陽にとっては2度目の…ことりは初の西木野家の応接室。

2人は重厚な造りのソファーに座り、真姫を待った。

 

部屋の広さ、天井の高さ、一目で高級とわかる調度品。

そのシチュエーションは、まるでホテルのロビーである。

合宿で西木野家の所有する『海と山の別荘』を訪れて、多少は『免疫』のあることりでも、口をポカーンと開けて、部屋を見渡している。

恐らく、ここにいるのが穂乃果と凛なら「うわぁ、真姫ちゃん、すごいねぇ」と言いながら、部屋を徘徊し、あれこれと物色しているだろう。

 

暫くして、真姫と真姫の母がケーキとお茶を運んできた。

「あ、このチーズケーキは自由が丘の…」

一目見てことりは、それが有名スイーツ店のものだとわかったようだ。

「あら、よく知ってるわね」

「私、チーズケーキには目がなくて…」

「ちょうど良かったわ。私と真姫だけじゃ多すぎて」

真姫はことりの、真姫の母は花陽の前に座った。

「どうぞ、召し上がって」

「あ、はい、ではお言葉に甘えまして」

「頂きます…」

 

「美味しい!!」

 

ことりと花陽は一口食べると、すぐに顔を見合わせて、ほぼ同時に叫んだ。

 

「このクリームチーズの下にあるレモンのコンフィチュールが、まろやかなチーズにアクセントを利かせていて、とてもマッチしています」

白米、アイドル以外にも、花陽は饒舌になるらしい。

「幸せだね!」

ことりがニコッと微笑む。

「お気に召したかしら」

「はい、とても美味しいです…真姫ちゃんは食べないの?」

ことりも花陽も、そして真姫の母も食べ終わったのに、真姫は口をつけていない。

「具合…悪い?」

花陽が心配して尋ねる。

「私は、さっきラーメン食べてきたばかりだから…花陽がいないから、トマトリゾットまで食べるはめになって、お腹いっぱいなの」

「トマトリゾット?」

ことりと花陽の声がシンクロした。

「と、とにかく、あとで食べるから、放っておいて」

「そっか、真姫ちゃんは凛ちゃんたちとラーメン食べてきたんだもんね」

「凛ちゃんは…猫の娘ね」

母が話に割って入る。

「はい、『にゃ~』の娘です」

とことり。

「ママは食べ終わったら、出て行ってよ!」

「はい、はい…。小泉さん、南さん、これからも真姫のことをよろしくね」

「こ、こちらこそ…です」

「合宿で別荘をお借りしたのに、何のお礼もせず…」

「いいのよ、どんどん使ってくれて。たまに空気の入れ換えをしないと、建物って、悪くなる一方だから」

「ありがとうございます」

「真姫の為なら、どんなことも協力するわよ…親バカかしら?」

「ママ、話が長い!!」

「そんなに怒らなくてもいいじゃない…では、ごゆっくり。帰る時は声かけてね。車出すから」

「そ、そんな…」

恐縮する2人。

「遠慮しないで。うちはこれが普通だから」

「はぁ…」

ことりも花陽もそれしか言葉が出なかった。

 

「そうそう、最後に南さん…」

部屋を出かけた真姫の母が、思い返したように踵(きびす)を返し

「真姫を音ノ木坂に入れて、本当に良かったわ。そう『浅倉』に伝えていてくださる?では、ごゆっくり…」

そう言ってドアを閉めた。

 

「浅倉?」

真姫がことりに質問する。

「お母さんの旧姓…浅倉…」

「ことりの?」

コクッと頷くことり。

 

一瞬、沈黙。

 

「ヴェェ!知り合いなの?聴いてないわよ!」

真姫はソファーごと、後ろに倒れた。

「ことりも初耳だよ」

 

 

 

 

 

「結局、真姫ちゃんに何があったか訊くことが出来なかったね」

「そうですね。チーズケーキをご馳走になっただけになっちゃいましたね」

ことりと花陽は、お互い顔を寄せて、耳元で囁きあっている。

 

黒塗りの高級セダン…の後部座席に、2人はいる。

前には西木野家のお抱え運転手。

ことりと花陽を家に送り届けている最中だった。

 

真姫は宣言通り、曲を仕上げる為に家に残った。

 

とにかく予選突破に向けて集中するから、今は私に構わないで…

 

そう言われると2人に返す言葉がない。

本線出場に懸けてきた思いは、ことりも花陽も同じ。

 

だから…

 

「大丈夫だよ!真姫ちゃんを信じよう!」

「はい!」

 

終始、耳元で囁き合う2人だった…。

 

 

 

 

 

~つづく~

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