【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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ともだち その12 ~ライブがはねたら~

 

 

 

 

綺羅ツバサは、そのパフォーマンスを見終わったあと、暫く動かなかった。

いや『動けなかった』が正しい。

拍手をすることさえ忘れていた。

隣にいた優木あんじゅと統堂英玲奈に肩を叩かれるまで、ただ茫然と立ち尽くしていた。

 

それほどまでにインパクトが強いステージだった。

 

 

 

敵地に乗り込み、堂々、新曲『ユメノトビラ』を披露したμ's。

 

 

 

その完成度の高さにツバサは、彼女たちの予選突破は間違いないと確信した。

 

本選での一番のライバルはμ's…

私の目に狂いはなかった…

 

そう言い残し、会場をあとにした。

 

 

 

しかし当の本人…μ'sのメンバーたちに…そんな感触はまるでない。

 

 

 

新曲の製作にあたり、予選突破のプレッシャーからノーアイデアに陥った海未、真姫、ことりの3人。

 

仲間の協力を得て、ようやく今日に至った。

 

その想いが結実したステージ。

とにかくやりきった。

自分たちの持てる力は出しきった。

 

今は結果云々よりも、安堵の意識の方が強い。

 

その充実感の中「今から打ち上げをしよう!!」…と穂乃果が提案したが、各自…特に真姫の疲労を考慮して、日を改めた方が良いということになった。

 

 

 

真姫はギリギリまで編曲を行い、最高の音源を作り上げてきた。

苦手なダンスパートもキッチリ仕上げきた。

そして心配された体調不良も、精神的疲労も、あの日以来、そんな素振(そぶ)りを見せず、集中してここまでやってきた。

 

それだけにパフォーマンス終了後の脱力感は、半端なものではなかった。

 

楽屋に戻ってからは、立ち上がることさえ辛そうに見えた。

 

メンバーが真姫を心配して声を掛けるが、その度に、私は大丈夫だから…と返答する。

 

しかし、花陽の時だけは違った。

 

「今日、このあと、うちにこれない?」

他のメンバーに気付かれないよう、真姫が囁く。

「えっ?」

「大事な話があるの」

「えっ?あっ、い、いいけど…」

「じゃあ、あとで来て。私は先に帰るから…」

「ま、真姫ちゃん…」

花陽もずっと集中力を保ち、あの日のことは極力気にしないようにしていたが、今、この瞬間、それは解禁された。

どうしても訊きたいことは花陽にもあった。

 

「ゴメン、疲れたから先に帰る」

と真姫がメンバーに告げる。

彼女の疲弊ぶりを見れば、誰も止めることは出来なかった。

「しょうがないわねぇ。ゆっくり休みなさいよ!次は本選があるんだから!」

にこなりの気遣い。

にこにとって予選突破は両刃の剣。

だが今は、そんなことを気にする余裕などなかった。

部長として、全力を尽くした後輩を思いやる、打算のない言葉だった。

 

「じゃあ、今日はここで解散ということで」

と穂乃果。

「そうね。みんな本当にお疲れ様」

絵里がひとりひとりと握手を交わす。

「大丈夫。予選突破は間違いなしや。ウチのカードがそう告げてる」

「それでダメだったら、タダじゃおかないからね」

にこが希を睨み付ける。

だが、すぐに

「うそよ…」

とにこは笑みを見せた。

 

「にこちゃん、早くラーメン食べにいくにゃ~」

「わかったわよ。それじゃ、お先するわ」

「バイバイ」

穂乃果が手を振る。

「凛ちゃん、待って!」

「ん?かよちん?」

「私はちょっと、急用が出来ちゃって…一緒に行けないんだ…」

「最近、かよちんは冷たいにゃ~」

「ホントにゴメンね…」

凛は花陽の手を見ている。

花陽が何か誤魔化そうとする時の…指先をスリスリする癖…それはしていない。

急用と言うの嘘ではないようだ。

「わかったにゃ。また今度。約束にゃ」

そう言って凛はにこを連れて、ラーメン屋へと旅立った。

 

「では、私たちも」

「そうだねぇ。穂乃果は何か甘いものが食べたくなっちゃった」

「家に帰ればいいじゃないですか」

「なんで?お饅頭じゃなくて、違うのがいいよぅ!」

「穂乃果は贅沢です!」

「もう、いいもん。海未ちゃんは誘わないから。ことりちゃん、何か食べに行こうよ」

「いいですよ。ことりは秋の新作スイーツがいいな!」

「ことりは穂乃果に甘過ぎです!」

「じぁねぇ!」

先に歩き出した穂乃果とことり。

「お疲れさまでした」

海未は一礼して、2人の後を追う。

 

「この状況でも、相変わらずブレないわね」

絵里は3人のやりとりを見て苦笑した。

 

「では、私もこれで…」

「うん、お疲れさま」

「しっかり休むんよ」

最後に残った花陽も、絵里と希に頭を下げて、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

~つづく~


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