【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

31 / 121
ともだち その13 ~真姫の部屋~

 

 

 

 

「し、失礼します…」

花陽の声は消え入りそうに小さい。

希の家に行った時とは別の緊張感。

それは家の造りが、少し古めの洋館であることも起因しているかも知れない。

エントランスを抜けて2階へ上がる階段は、肖像画こそ掛かっていないものの、ホラーやサスペンスに出てくる『それ』を彷彿とさせた。

 

一足先に帰って、既に着替えを済ませた真姫が、花陽を先導して自分の部屋へと招き入れた。

 

花陽が西木野家を訪れたのは、これで3回目になる。

しかし、真姫の部屋に入ったのは初めてだ。

 

大きさは10畳ほど。

真姫の部屋…にしては、狭いイメージ。

だが一般家庭と比べれば、個人の部屋なら充分広い。

 

パッと見たところ、入って右に机…正面奥にベッド…左の壁一面はクローゼット…ドアの側の壁には本棚…そして部屋の中央にはテーブルが配置されていた。

 

 

 

「あれ、ピアノは?」

真姫といえばピアノ。

花陽は、勝手に部屋に置いてあるものだと思っていた。

「ピアノ?…地下室にあるわ」

「ち、地下室?」

「外に音が漏れると迷惑だからって、パパか完全防音の部屋を設けたの。今はそこに録音機器も持ち込んで、スタジオみたいになってるわ」

「す、すごいね…」

「別に…。今度案内してあげるわ。…取り敢えず、その辺に座って」

真姫は部屋の中央を指差した。

 

丸いショッキングピンクのラグが、フローリングの部屋の真ん中に敷かれており、そこにガラステーブルが置かれていた。

花陽は指示された通りに座った。

 

「アイスティーでいい?」

「う、うん」

真姫は部屋の片隅…自分の机の隣に置いてある小ぶりの冷蔵庫から、ペットボトルを取り出して、ガラステーブルの上に置いた。

「部屋に冷蔵庫もあるんだね…」

「普通じゃない?」

「普通…じゃないよ」

少し苦笑いする花陽。

 

知り合った当初は、真姫の『世間ズレ』な感覚に、かなり戸惑ったこともあったが、今はだいぶ慣れた…つもりでいた。

それでも、ひとつひとつ『現物』を目の当たりにすると、住んでる世界が違うなぁ…と憧れの念を抱いてしまう。

「やっぱり、真姫ちゃんはスゴいね」

「いつも言うでしょ、私は関係ないから」

「そ、そうだったね」

真姫は所持品でも装飾品でも、自らそれをひけらかすようなことはしない。

 

そして、それは自分の努力で手に入れたわけではなく、親のお陰だといつも言う。

 

昔に比べれば、謙虚になったのよ…と以前、花陽は本人から聴いたことがあった。

 

 

 

「あ、アイスティー…頂くね…」

「どうぞ…」

花陽はペットボトルのキャップを開ける。

真姫は、ベッドに腰をおろす。

 

 

 

会話が途切れた。

静寂が訪れる。

 

 

 

「あ、あの…」

「えっと…」

その間に耐えきれず、2人は同じタイミングで声を発した。

「あ、真姫ちゃんからどうぞ…」

「私はいいから、花陽から」

「いえいえ、真姫ちゃんから…」

「花陽から…」

「じゃあ、花陽から…」

そして2人は「プッ」と吹き出した。

「なんか、お笑い芸人のやりとりみたい」

「そうね…」

真姫の笑顔を『あの日』から久々に見た気がする。

 

「じゃあ、まず、花陽から言うね」

真姫は黙って頷いた。

「今日は本当にお疲れ様でした。結果はわからないけど、最高のライブができたと思うよ。これもひとえに、真姫ちゃんが素敵な曲を作ってくれたお陰です」

「みんなのお陰よ…。にこちゃんに合宿で『曲はいつもどんなときも、全員のためにあるのよ』って言われなきゃ、たぶん作れなかったかも」

「にこちゃん、イザという時、本当に頼りになるもんね」

「たまにね」

「でも、真姫ちゃん、ギリギリまで編曲作業して、ダンスも覚えて…ライブしてる最中、涙出そうになっちゃった」

「当たり前でしょ。やるからには私の知性と美貌に見合った、完璧なパフォーマンスをしなきゃいけないんだから」

「そうだね。素敵な曲をありがとう」

「う、うん…」

真姫は少し顔を紅くして、下を向いた。

「衣装…良かったよ」

「本当?うれしいなぁ…って、ほとんど、ことりちゃんが作ったんだけど」

「でもアイデアを出したのは花陽なんでしょ?」

「そこまで大袈裟じゃないけど」

「とにかく、花陽もお疲れさま。やっと一息つけるわね」

「うん、そうだね」

そう言うと花陽は、恥ずかしそうに言葉を続けた。

「今度、余裕が出来たら…ピアノ…教えてもらってもいい?」

「えっ?ピアノ?」

「見よう見まねで『ねこ踏んじゃったくらい』は弾けるんだけど、ちゃんと習ったことないから…」

「べ、別にいいけど…」

 

そんなことしたら、あなたへの想いが止まらなくなるじゃない…

 

真姫は心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

~つづき~

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。