【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「でも、良かった。いつもの真姫ちゃんに戻ったみたいで」
花陽は少しホッとした表情を見せた。
「そう?私は特に変わってないけど」
相変わらず、ぶっきらぼうに答える真姫。
「そういえば…真姫ちゃん、私に何か話があったんじゃ…」
「あ…別に…」
「さっきは花陽から話したんだから、次は真姫ちゃんの番だよ」
「…それは、また今度…」
「え~、ズルいよ」
「ズルいのは花陽でしょ」
「えっ?ズルいの?…花陽、やっぱり何かしたのかな…」
「やっぱり?」
「この間から何か避けられていたような…ことりちゃんと来た時もそうだったし…」
「あれは…予選前でナーバスになってただけ」
「でも、目を合わせてくれなかった…」
「誤解よ」
「悪いところがあったら言って欲しいの」
真姫の目を真っ直ぐ見て言った。
「…そうね…ハッキリさせないといけないかもね…」
その一言に、花陽は思わず息を飲んだ。
「まず、花陽に言わなくちゃいけないのは、私をμ'sに巻き込んでくれたお陰で、すごく迷惑してるってこと」
「そ、そうなんだ…。そうだよね…」
花陽はガックリと肩を落とした。
医者になるという明確な目標を持っていた真姫に、直接アプローチを掛けたのは穂乃果を始めとした2年生。
しかし、真姫のμ's入りには、花陽も大きく関わっていた。
それが少なからず、負い目ではあった。
希からは「もうそんな心配をするな」…と言われたが、やはり真姫の中では人生のターニングポイントだったのだろう。
花陽は顔を上げることが出来なかった。
「本当に迷惑なの。みんな自分のことで一生懸命なのに、バカみたいに人の心配までしちゃって…面倒な人ばかりで…」
「真姫ちゃん…そんな言い方は…」
「いつの間にか私も感化されて、ガラにも熱くなったりして…困ったものだわ」
「それって…」
花陽が少しだけ、顔を上げた。
「μ'sに入らなかったら、みんなでひとつに何かを創る喜びなんて、知らずに一生を過ごしたかも」
「真姫ちゃん…」
「感謝してるのよ、花陽には…」
「えっ?」
「何度も言わせないで…感謝してるの!」
そう言うわりには、口調がキツい。
「やっぱり、怒ってる…」
「だから、違うの!そうじゃなくて…」
そう言うと、真姫は深呼吸をした。
「…ありがとう…」
真姫の口から出てきた言葉に、花陽は耳を疑った。
「ありがとう?」
「だって、μ'sに入る最終的な要因は、あなただったんだから」
「良かった!」
花陽の顔がパッと華ぐ。
「結果的に真姫ちゃんを巻き込んだじゃったみたいで、ずっと気になってたから」
「今でも思うわよ。なんで私はダンスしてるの?…ピアノだけ弾いてちゃいけないの?…って」
「真姫ちゃん…」
「穂乃果たちに誘われて、曲作りはしたかもしれないけど、ステージに立つの想定外だったわ」
「でも、真姫ちゃんは歌も上手いし、綺麗だし、才能があったと思うよ」
「そこはね、その通りだけど…」
サラッと否定しないところが、真姫らしい。
花陽はクスッと笑った。
「あの日、花陽が生徒手帳を拾って届けてくれなければ、こうはなっていなかったもの」
「それを言うなら、真姫ちゃんが生徒手帳を落とさなければ…」
「うふふ…色んな偶然が重なったのね」
「希ちゃんが言ってたよ。偶然も重なれば、それは必然だって」
「希が?」
「…え~と…確か希ちゃん…だったような…」
花陽は指をすりすりしながら答えた。
希と交わした会話を披露してしまうと、色々ボロが出そうだ。
ここはあまり突っ込まれたくない。
「希なら、言いそうね…」
花陽の心配をよそに、真姫はあっさり同意した。
しかし、そのあとすぐに花陽の心臓が止まるような一言を放つ。
「花陽、この間、希とデートしてたでしょ?」
「な、な、なんと?デ、デートですとぉ!」
その驚き方に、逆に真姫が仰け反った。
「そ、そんなに驚くこと?」
「なんで真姫ちゃんが、それを…」
「偶然、見たの…新宿の本屋で。2人が同じ紙袋を持って店内を歩いているところを」
「そ、そう…。あの…でもデートと言うのは…」
「表現が適切ではなかったかしら」
「う、うん」
花陽は、真姫がどこまで真相を知っているのか気になったが、余計なことは話せないと思い、そこで言葉を切った。
「それを見てから、おかしくなったの」
「えっ?誰が?」
「私が…」
真姫の言葉を、花陽はすぐに理解出来なかった。
~つづく~