【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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ともだち その15 ~大きな勘違い~

 

 

 

 

 

「花陽は…希ちゃんとショッピングに行っただけだよ」

「わかってるわよ、そんなこと…」

 

真姫は、花陽と希が一緒に『デート』をしているところを見てから、おかしくなったという。

その日の『夜の出来事』を知られてしまったのであれば、真姫がそうなってしまうのも不思議ではない。

だが、その件は希が喋らない限りバレていないと、花陽には確信があった。

 

「希ちゃんには…その…下着買いに行くの付き合ってもらって、ちょっとだけお茶して、その後本屋さんに寄って…」

「知ってるわよ。屋上での話、聴いてたもの」

 

…真姫が言う『屋上での話』とは…メンバー間で新しいユニット分けを模索している最中、花陽のバストサイズの話題になり、その際、希が「新しいブラを一緒に買いにいこう」と誘ったことを指す。

この事自体は、秘密でもなんでもなく、他のメンバーも聴いていた話である。

ただし、それを実行したことは『諸般の事情』から、報告はしていない。

従って、真姫が『夜の出来事』を知らずに『おかしくなった』というのであれば、花陽には、その理由が皆目見当がつかなかった。

 

しかし、それについては、すぐに真姫口から説明された。

「声、掛けてくれれば良かったのに」

花陽が言うと

「で、出来るわけないでしょ!」

と真姫は即答した。

「あんなに仲良くしてるところを見せつけられたら…」

「えっ?仲良く?」

「あれが凛だったら、なんとも思わなかったわ…。でも相手が希とわかった時…」

真姫は花陽に背を向けて、小さく呟いた。

 

「大事な何かを失った気がしたの…」

 

 

真姫はそう言ったあと、口をつぐんでしまった。

後ろ向きの肩が小刻みに震えている。

時おり、鼻を啜(すす)る音だけが聴こえる。

 

花陽は、それがどういう状態なのか、もちろん理解はしている。

しかし何故そうなったのかは、わからない。

花陽もまた、何も話すことが出来なかった。

 

 

 

大事な何かを失った…

真姫ちゃんにとっての大事なもの…

 

希ちゃんと一緒にいるのを見て…

希ちゃん…?

あっ!

ま、まさか…希ちゃん?

 

それで…

 

まったく気付かなかった…。

真姫ちゃんは、にこちゃんと仲良しだと思っていたの、本命は希ちゃんだったなんて…

 

それを知らずに、花陽はあんなことを…

 

 

 

激しい後悔の念が花陽を襲う。

「…知らなかった…。真姫ちゃん、希ちゃんが好きだったんだね…。それを花陽が…」

真姫が驚いた顔をして振り返る。

その目は少し潤んでいた。

「そう言えば、夏の合宿の時も、希ちゃんと一緒にお買い物したもんね」

「待って!」

「ごめんなさい…今まで、まったく気付かなかった…」

「違うの!!」

「大丈夫!みんなには黙ってるから…」

「だから、違うんだってば!」

「頑張ってね…」

そう言って部屋を出て行こうとする花陽を、真姫が腕を掴んで引き留めた。

 

「花陽のバカ!」

クールな真姫らしからぬ言葉が、部屋に響いた。

 

「バカ!バカ!バカ!バカ!!」

「真姫ちゃん?」

「どうせ私の事なんてどうでもいいんでしょ!!」

「な…どうしたの…急に…そんなこと思ってないよ…。でも、本当にごめんね…気付かなかったの。真姫ちゃんが好きな人は…ずっとにこちゃんかと。でも、希ちゃんだとは…」

「もう、だから、なんでそうなるのよ!花陽なんて大嫌い!」

「えっ…」

大嫌いと言われて、花陽は一瞬で、今にも泣き出しそうな顔になった。

それを察した真姫は

「あ、違うの!大嫌いだけど、大好きなの!」

と言った。

 

「えっ?嫌いじゃなくて…好き?…意味がわからないです」

真姫の十八番の台詞を言いつつも、混乱する花陽。

 

 

 

「だから、私はあなたの事が好きなの!!」

 

 

 

「ぴゃあ!!…今、なんと…」

ハッキリ聴こえた。

大きな声だった。

それでも何かの間違えではないかと、花陽は耳を疑った。

 

「好きなのよ、花陽のことが…。何度も言わせないでよ」

今度は静かに、ゆっくりと囁いた…。

真姫は再び、花陽に背を向ける。

「私…なの…?」

「花陽は私の…大事な友達として…その…」

「真姫ちゃん…」

「凛との関係はわかってるつもり。私なんかが割って入れるような隙間なんてないもの…。だけど、私にとっては花陽が1番の友達なの…」

「知らなかった。真姫ちゃんがそんな風に思ってくれてたなんて…」

「笑わないの?」

「どうして?」

花陽は真顔で聴き返した。

「その…1番の友達だなんて…」

「うれしいよ」

「えっ?」

「花陽だって、凛ちゃん以外、友達なんて呼べる人、いないもん」

「何それ?意味わかんない」

「えっ?」

「花陽はμ'sの誰とでも仲いいじゃない。私は、一緒に2人で出掛けるなんてしたことないもの!」

「だから、あれは…」

「希と一緒にいるのを見た時、花陽を奪われた気がしたわ。おかしいでしょ?別に付き合ってるわけでもないのに…」

真姫はそう言って自嘲気味に笑った…。

 

 

 

 

 

 

~つづく~


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