【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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真姫編は一旦、完結です。





ともだち その18 ~おにぎりとピアノ~

 

 

 

「面白かったねぇ」

花陽は嬉々とした声で、真姫に言った。

「たまにはいいでしょ?」

「今のプラネタリウムの技術力って、スゴいんだね。映像も綺麗だったし、3Dの迫力が」

「良かった。花陽ならきっと喜んでくれると思ったから」

「うん、うん」

 

 

 

真姫と花陽の今日の目的はプラネタリウム観賞だった。

 

最近のプラネタリウムは投影される映像が極めて緻密、かつ鮮明で、観る人を圧倒させる施設が多い。

そして2人が訪れてたここは、3Dシアターも併設されていて、学術的なだけでなくエンターテインメントとして、充分楽しめる施設だった。

 

2人はここで、2時間あまりの宇宙旅行を味わったのだった。

 

時刻は間もなく正午。

雨は止んでいる。

 

「真姫ちゃん、お腹空いてない?」

「そろそろ言う頃だと思ったわ」

「もう、お昼だもん」

「そうね。駅前まで戻って何か食べましょう」

「その前に…ここで…おにぎり食べていい?」

「えっ?」

「早起きして作ってきたんだけど…真姫ちゃんも食べる?」

「あ、ありがとう…。でも、ここでは…ちょっと…」

来た時と違って、今はそこそこの人出がある。

真姫としては、周りの目が気になるらしい。

「そっかぁ…じゃあ、花陽も我慢する…」

「あなたは食べなさいよ。電池切れなんでしょ?」

「だ、大丈夫だよ」

「『我慢できない』って顔に書いてあるけど」

「うぅ…でも…花陽だけっていうのは悪いから…」

「別に悪くはないけど…。わかった…私も付き合うわよ」

「ホント?」

「私のワガママでこんなとこまで来てもらったんだから、それくらいしないとバランス悪いでしょ」

「真姫ちゃん!」

「バスが来るまで時間があるわ。それなら、早く食べましょ」

2人は敷地の外に出掛かった足をターンさせ、施設内の休憩スペースに腰を下ろした。

 

「はい、これは真姫ちゃんの分」

「相変わらずの大きさね」

「真姫ちゃんのは、ひとつで色んな味が楽しめるように『鮭』と『おかか』と『明太子』が入ってるんだよ」

「花陽のは?」

「新米の美味しさを際立たせるため、単純に塩むすびだよ」

「ヴェェ~…その大きさをひとりで食べる気?」

花陽のおにぎりは真姫に渡したそれの、3倍以上の大きさ。

近くを通る人が二度見していく。

「いただきま~す」

「いただきます」

花陽が塩むすびにかぶりつく。

「ふむ、ほいひぃ!」

「あなたは本当に美味しそうに食べるわね」

真姫は彼女の食事シーンを見ると、とても幸せな気分になる。

それはきっと、大食いであっても、決して下品ではないからだろう。

「どうかな、味?」

「さすが、花陽ね。天才的な美味しだわ。やっぱり料理上手っていいわね…」

「じゃあ、花陽はピアノを教えてもらう替わりに、おにぎりの作り方を教えましょう」

「そうね。それくらいは出来ないとね…」

「その前にご飯の炊き方を…いやいや、その前にお米の選び方を…」

「それは無理だから」

真姫は苦笑して、花陽の話を遮った。

 

『食事』を終えると、2人はバスに乗り込み、駅へと向かった。

家族連れやカップルなども見受けられ、かなり混んでいる。

駅まではそれほどかからないので、2人は吊革に掴まり通路に立った。

「もう、ミュータントタートルズはいないわよね」

「ミュータントガールズだよ」

「どっちでもいいわよ」

「でも、ビックリしたねぇ…。μ's始めてから、初めての経験」

「花陽は嬉しかったんじゃないの」

「正直、ちょっとだけアイドルの夢が叶ったというか…。真姫ちゃんは?」

「面倒くさい」

「…らしいセリフだね」

「だって、出掛ける度に声掛けられたりしたら、自分の自由がなくなるのよ。…芸能人が変装して外に出るのが、なんとなくわかった気がするわ」

「サングラスにマスク?」

「にこちゃんみたいなのはイヤだけど」

真姫の言葉に花陽はクスッと笑った。

「な、なによ?」

「真姫ちゃんて、にこちゃん好きだよね」

「な、なに言ってるのよ」

「花陽にはわかるよ。真姫ちゃんは、にこちゃんが好き」

「嫌い…ではないわよ…」

「本当は花陽より、にこちゃんが好き?」

「えっ?…それは比べられないわ…。にこちゃんのことは好き。普段は先輩の『せの字』もないけど、自分に信念があって、真っ直ぐに突き進む姿勢は、ある意味尊敬してるし…一緒にいて、気を使わなくて済むし」

「ふむふむ」

「だけど、それはそれ。私は花陽といると優しくなれるの…あなたには、そういう力があるの。特殊能力と言ってもいいわ」

「そうなのかな」

「だから、やっぱり花陽は私にとって特別な存在なのよ」

「なんか、照れるね」

「私だって照れるわよ…こんなこと言うの。…でも、ハッキリ言っておく」

「ん?」

「これからも…ずっと、そばにいて。私から離れないで!!」

真姫は花陽を確(しっか)と、抱き締めた。

「は、はい!こ、こちらこそ…」

その勢いに押されて、身体を預ける花陽。

しかし、直ぐにお互いパッと手を離した。

周囲の視線が真姫と花陽に集中している。

どうやらバスの中で告白しあう(?)女子2人に、周りの乗客は興味津々だったようである。

知らぬまに注目されていた。

「…っていう、あの映画のワンシーンが好き」

「う、うん。そうね。私も」

それで誤魔化せたとは思わないが、そうでも言わないと、この場から逃れられない雰囲気だった。

 

 

 

「はぁ、恥ずかしかった」

真姫がため息をつきながら、バスを降りる。

「真姫ちゃんったら、あんなに大胆なことをするから」

と言いつつ、思い出し笑いをする花陽。

「あのねぇ、そこ、笑う?あれは勢い余って…って言うか、花陽は平気なの?」

「みんなの見てる前で、堂々と告白されちゃったら、それはそれで女の子としては、うれしいシチュエーションなわけで」

「花陽もまだまだ子供ね…夢みる乙女じゃない」

「真姫ちゃんだって、意外とロマンチストでしょ」

「な、なんで私が?意味わかんない」

「だって知らなかったけど、趣味が天体観測でしょ?」

「て、天体観測が趣味だと、どうしてそうなるの?」

「だって、真姫ちゃんがだよ…夜な夜な空を見上げて、ギリシャ神話に想いを馳せたり、うっとり星を眺めたり…って…」

「バカにしてる?」

「してないよ。でも、夢とかロマンがない人は、そんなことしないもん」

「するわよ。花陽は空を見たりしない?」

「それは、たまには見て綺麗とか思うことはあるけど…。天体観測というほどは…。あ!それで真姫ちゃんはトレードマークを☆にしてるんだね」

「それはまた別の意味でしょ。本来なら凛が付けてもおかしくないんだけど。星空凛っていうくらいなんだから」

「あ、それ。合宿の時に希ちゃんに似たようなことを言われたみたい。『名前が星空なんだから、もっと興味を持ったら』…って」

「そうね…。今日はプラネタリウムだったから、凛なら本当に寝てたかもだけど、今度、誘ってみようか。本当の天体観測」

「いいの?」

「花陽にとっての大事な親友でしょ?仲間外れみたいなことはできないわ」

「真姫ちゃん…。うん、そうだね」

「なれるかな?」

「えっ?」

「私たちも、海未たちみたいに」

「う、うん!なれるよ、絶対!」

「私は2人と違って付き合いは短いけど」

「そんなの関係ないよ!」

珍しく大きな声で否定した。

「花陽…」

「それは確かに…私と凛ちゃんは長い付き合いだし、真姫ちゃんには入りづらいとこもあるかもしれないけど…それは少しずつ縮めていけばいいと思うんだ」

「花陽…」

「まだまだ真姫ちゃんの知らないこといっぱいあるし、今日みたいに初めて知ることもあるけど、それも含めて、私も凛ちゃんも受け入れ体制は充分出来てるよ」

「うん。そうね。私がカベを作ってたらダメね」

「真姫ちゃん…」

「これからの高校生活…ううん、そのさきもずっと…友達でいてくれる?」

「もちろんだよ!」

「あと…2人きりの時は…『かよ』って、呼んでもいい?」

「えっ?」

「いいでしょ?凛だって『かよちん』って呼んでるんだから」

「うん。いいよ」

「じゃあ、花陽も2人の時は『まき』って呼ぼうかな」

「えっ!?」

「なぁんて」

「もう!からかわないで!」

「あっ!真姫ちゃん、見て!見て!向こうの空!」

「なぁに?…あっ!…」

「綺麗だね…」

「二重のを生で見るのは初めてだわ…」

「なんか、得した気分だね」

 

2人が見たのは、奥多摩の中腹から空に延びる2本の虹だった。

真姫も花陽も、暫くそれを見続けていた。

「10年後もこうして…虹、見れるかな」

「見ようよ…10年後も20年後も…その先もずっと…」

「10年後ねぇ…『かよ』は何をしてるのかしら?」

「う~ん…何してるんだろう?」

「夢とかないわけ?まさか本気でアイドルに?」

「と、とんでもない!…それはゼロではないけど…現実的なことを言えば、保育士とか幼稚園の先生とか…かな」

「なるほど…ピッタリね。絵が浮かんだわ。…あ、それでピアノ?」

「弾けたらいいかな…って」

「そうね。でも、私のレッスンは厳しいわよ」

「はい、頑張ります!真姫先生!」

「なにそれ、意味わかんない」

「それはわかるでしょ!」

花陽はそう言って笑った。

「これからも、よろしく」

「こちらこそ」

 

2人はどちらともなく手を握り合った。

 

 

 

 

 

「ただいま」

「あら、おかえり。どうだった?小泉さんとの初デート」

「デートって…」

「良かったね。素敵なお友達に出会えて」

「な、なによ、急に。よく知りもしないくせに」

「わかるわよ…あなたのママだもの。あなたが出掛けていく時の顔、今の表情を見れば、小泉さんがどんな娘なのかくらいは、ね」

「…想像に任せるわ…」

「素直じゃないんだから」

「シャワー浴びてくる」

真姫はそう言って、自分の部屋へと行きかけたが、クルッと振り返り、母に一言告げた。

 

 

 

「ママ…今度さ、おにぎりの握り方を教えてくれない?」

 

 

 

 

 

ともだち

~完~






いかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでもらえていれば幸いです。

もっと完結にまとめる予定だったんですけど、ダラダラ長くなっちゃいました。
次はテンポ良くいきたいですね。

ご意見、ご感想お待ちしてます。



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