【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
新章始めました。
先輩禁止! ~○○1年分~
「利き米コンテスト?」
「前に言ったでしょ?近々、開催されるって」
「あぁ、そう言えば…」
「ラブライブの予選があったから、すっかり忘れてたけど、この間、それを思い出して」
にこが、部室のパソコンの画面をスクロールさせる。
「あ、これこれ。場所は…ベル○ール秋葉原の屋外イベントスペース、日時は今度の土曜日10時から。優勝賞品は、なんと、お米2俵!」
「に、2俵!?…それはやるしかないねぇ!」
花陽の目がキラリと光った。
話は2週間ほど前に遡(さかのぼ)る。
練習中ににこが、利き米コンテストが開催される案内を見た…と花陽に告げていた。
ただし、日時と場所は失念していた為、詳細については不明だったのだが…。
「どれどれ…」
と割り込んで来たのは穂乃果だった。
「予備予選は8時半から…日本の代表的な3種類のお米(ご飯)を食べて比べて、銘柄を見事正解したら2次予選へ…。これくらいなら穂乃果もできるかも」
「穂乃果ちゃんは、和菓子屋さんの娘だもんねぇ」
「ことりは甘いです!普段お店で使ってる餅米ならまだしも…それを拒否してパンばかり食べている穂乃果にわかるハズがありません!」
「なんでよう!パン食べてても、ご飯の味の違いくらいはわかるよぅ!よし、穂乃果も出る!花陽ちゃん、一緒に優勝目指そう!」
「でも、それは予備予選なんでしょ?2次予選はもっと厳しいんじゃないの?」
珍しく真姫が横から口を挟んだ。
「あぁ、そうだね…2次予選は…さらに5種類の銘柄を当てるんだって!これは流石の穂乃果も厳しいなぁ」
「流石の穂乃果も…って」
飽きれ顔の海未。
「…で、決勝はどんなルールなん?」
「『当日発表』ってなってる…」
「先に発表してしまうと、公正さが保てなくなりますからね。これは当然かと」
海未が冷静に解説する。
「ウチも出てみようかな?」
「希がですか?」
「参加資格も参加料も特に無いようやし、出るだけなら構わないやろ。もっともウチは利き酒(日本酒)の方が得意なんやけど」
…なんか、冗談に聞こえない…
希以外の全員が、心の中で突っ込みを入れた。
「…なるほど、一理あるわね」
少し間を置いて、にこ。
「利き酒の話?」
と訊き返したのは凛。
「…なワケないでしょ!参加するだけならタダってことよ!」
「にこ、あなたも出るのですか?」
「何か起こるかも知れないじゃない」
「否定はしませんが…」
「ようし、にこちゃんが出るなら凛も出るぅ!!参加賞くらいはもらえるんじゃないかにゃ~?」
「海未ちゃんも出ようよ!」
穂乃果が海未の手を引っ張った。
「なんで私が…」
「ひょっとして…自信ない?」
「ちょっと穂乃果!なに煽ってるのよ!…やめてよね、なんでも全員参加みたいな空気にするの」
と真姫が穂乃果を牽制した。
「いいでしょう、私も出ます!」
「海未!」
「不肖、園田海未。高坂穂乃果に負けるつもりはありません。ことりはどうしますか?」
「私は…いいかな…。みんなの応援をするね」
「私もパス!」
「真姫、アンタは出なさいよ!」
と、にこ。
「どうして?意味わかんない!なんでも全員でやればいい…ってものでもないでしょ」
「私も遠慮するわ。ウォッカの違いならわかるけど、お米の違いは…」
お笑いのテクニックでいうなら『てんどん』…希の利き酒に引っ掻けたのだろうが…
「…絵里ちゃん、それは寒いにゃ…」
みんなの意見を代弁したのは凛だった。
「えっ?どこか窓が空いてるのかしら」
と絵里は辺りを見回す。
それを見て全員がクスクスと笑い始めた。
…いわゆる天然ってやつね…
…にこっち、それは言ったらあかんからね…
こそこそと話す、にこと希。
絵里は不思議そうに首を傾げていた。
「あれ、花陽ちゃん…随分と静かだね」
「ん?…あぁ、穂乃果ちゃん…お米2俵ってことは…だいたい120kgだよね?120kgってことは…3ヶ月分だなって思って…」
「ちょっと待ちなさいよ!」
にこが怒鳴る。
「ん?」
「まさか、アンタひとりで食べる量じゃないでしょうね」
「そうだけど…」
「かよちんは家族のとは別に、1升炊きのマイ炊飯器を持ってるにゃ~」
「嘘でしょ?なんで米120kgで3ヶ月なのよ。1ヶ月10kgにしたって、1年分でしょ!」
「なるほど。よくクイズの賞品とかで、○○1年分とか言うもんね」
穂乃果がうんうんと頷きながら、同意した。
「でも凛の家は、1ヶ月、どれくらい食べてるか知らないにゃ~」
「私も知らないわ。お米は取り寄せだと思うけど、自分で頼んだことないし」
「さすが真姫ちゃんにゃ~」
「ことりも、あまり気にしたことがないかな…」
…ウチは2kgもあれば充分やね…
絵里と花陽以外のメンバーはまだ知らないが、希はひとり暮らしで自炊している為、瞬時に消費量を弾き出した。
「アンタたち、それでも日本人?いい?1日お米を2合炊くとするわよ?お米は2合で約300g…茶碗で4杯くらい。これを1ヶ月30日で掛けると9kgでしょ?…だから4人家族で1日1杯ずつ食べる計算で…だいたい1ヶ月10kg…」
「にこちゃんにしては、計算早いにゃ」
「さすが主婦!」
凛と穂乃果が野次る。
「主婦じゃないから!」
にこが反論した。
「子供3人育てるのは大変にゃ」
「妹と弟!」
にこの家庭は母子家庭。
仕事で忙しい母親に代わり、3人の妹弟の面倒みていることを、メンバーは、つい、この間知った。
にこが料理上手なことは周知の事実だったが、その裏ではそんな理由があったのだ。
それ以来「にこ=主婦」というイメージが付いてしまったらしい。
「と、兎に角、120kgの米が3ヶ月で無くなるってことは、1ヶ月で40kgでしょ?」
「ハラショー!…さっきの計算からすると4人家族が1日3食…1杯ずつ食べたとしても、1ヶ月30kg弱…まだ余るわね…それは確かに凄いかも」
絵里が感嘆の声をあげた。
「1ヶ月の食費、どんだけ掛かるのよ!」
やはり家計を預かる主婦としては、そのあたりが気になるらしい。
「でも、かよちんは、ご飯だけでも大丈夫だから」
「それはそれでバランスが悪いわ。炭水化物ばかりだと太るわよ」
「絵里の言う通りです。食欲の秋とはいえ、食べ過ぎには気を付けてくださいね」
「はい!」
「これは花陽ちゃん、なんとしても優勝しなきゃ!だね?」
穂乃果は自分が参戦するにも関わらず、すでにそれを忘れたのか、花陽の応援を始めるのだった…。
~つづく~