【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
練習後の屋上…。
穂乃果と海未とことり…絵里と希…花陽と凛と真姫と…にこ…。
それぞれが会話をしながら、着替える為に部室へと引き上げていく。
その途中で花陽は真姫に声を掛けられた。
「かよ…じゃなかった…えっと花陽…。このあと、ちょっと付き合ってくれない?」
「あ、真姫ちゃん…今日は凛ちゃんと…」
「そうにゃ。今日は凛がかよちんを予約済みなんだにゃ」
「…そう…わかった…。それじゃ仕方がないわね…。またにするわ…」
「良かったらアタシが付き合ってあげるわよ」
「ありがとう、にこちゃん。…でも、今日は…」
「ゴメンね、真姫ちゃん」
「うん、また。お先に…」
そう言うと真姫は、足早に階段を降りていった。
「にこちゃん、フラれたにゃ~」
「いつものことよ…もう慣れたわ。それよりも珍しいわね…真姫から誘うなんて」
珍しい…というより、通常の練習後に「付き合って」と誘われたのは、初めてのことだった。
…何の用だったのかな?…
花陽はそんなことを考えながら階段を降りていたら、足を踏み外し、数段滑り落ちた。
「かよちんっ!!」
隣にいた凛が、慌てて手を伸ばしたが間に合わなかった。
「はぅっ!」
花陽は階段の踊り場で、臀部を押さえて踞(うずくま)る。
「花陽!」
「花陽ちゃん!」
前を歩いていた絵里と希がすぐに駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「…だと思います…」
「足は?骨とか折れてへん?」
「足は平気そうです。でも、おしりが…」
うぅ…と唸りながら答えた。
「ゴメン、かよちん!間に合わなかった…」
「凛ちゃんは悪くないよ。花陽がボーッとしてたから…」
「打撲してるかも…。部室に戻ったら、ジャージを脱いで見て見ましょう」
「えっ?絵里ちゃん、大丈夫だよ…人に見せるもんじゃないし…」
「なに言ってるのよ!恥ずかしがってる場合?自分で見れる場所でもないでしょ!?」
「にこちゃん…」
「そうにゃ~」
「まぁ、おしり打っただけなら、大事には至らなそうやけどね。花陽ちゃんのおしりは柔らかそうやし…」
「はぁ…」
「立ち上がれる?手ぇ貸すよ」
「すみません…」
希が座り込んでいる花陽に、手を差し延べる。
せぇ~の!…で、花陽は立ち上がろうと…希は引っ張り上げようと…お互い腕に力を込めた。
しかし…
「ありゃ!?」
バランスを崩したのは希だった。
花陽の上に倒れ込む。
「あっ…」
階段の踊り場で横たわり、身体を重ね合う2人…。
「こんな格好、あの時以来やね」
希が他には聴こえないくらいの小さな声で呟いた。
耳元で囁かれた瞬間、花陽の身体がビクッと波打った。
それは体感的な『こそばゆさ』だけではなく、記憶からくる条件反射。
花陽の脳裏に『あの日の夜』の情景が蘇る…。
希に抱き締められた花陽はシャンプーの香りに包まれて、意識が遠退きそうになった。
「なんか希ちゃん、その格好エロいにゃ」
「希、わざと倒れたでしょ?どさくさに紛れて、なにしてるのよ!」
凛とにこが冷ややかな視線で、希を見下ろす。
「む?違うって!これは不可抗力やん!」
希は悪びれる様子もなく立ち上がった。
「しまった!せっかくなら、チューしとけば良かった…」
こんな時に何を言ってるんだか…と、絵里も呆れ顔で希を見ている。
ここでチューなんかされてたら、確実に気絶してました…花陽は恥ずかしげに顔を伏せた。
結局、花陽は自力で立ち上がり、凛に脇を支えながら階段を降りて、部室へと向かった。
部室には、穂乃果と海未とことりがいた。
「真姫は?」
絵里が穂乃果に訊く。
「今日は用がある…って先に帰ったよ。それより、みんな降りてくるの遅かったねぇ…何かあった?」
「たいしたことじゃ…」
「花陽が階段から滑り落ちて、おしりを打ったのよ」
にこが花陽の台詞に喰いぎみに被せてきた。
「えぇ~!!」
声を揃えて驚く2年生組。
「大丈夫?」
「花陽ちゃん」
「ケガはないのですか?」
「たぶん…」
「それを今から検証するんやろ?」
「検証?」
またも2年生組が、声を揃えて訊いた。
「さぁ、花陽ちゃん。ジャージを脱いで、おしりを出すんよ」
「ここで?」
「自分では確認出来んやろ?」
「え~と…はい、わかりました…」
花陽は一旦、みんなに背を向けジャージに手を掛けたが、すぐに向き直って言った。
「やっぱ無理です」
「当たり前です!希は人前でなんてことをさせるんですか!」
「でも、見てみないと…」
「だからと言って、こんなに大勢の前で…破廉恥です!」
「これについては、海未の言う通りだわ。私が最初に見てみよう…って言ったんだけど、全員の前でとは…」
海未に続き、絵里も希に抗議する。
「冗談やん!冗談!」
「希の場合、こういうことは冗談に聴こえません!」
「じゃあ、ウチが隣の部屋でこっそりと…」
「希!」
「まぁまぁ…海未ちゃん、落ちていて。本当に大丈夫だから…」
「なら、良いのですが…。気を付けて下さいよ。貴方は穂乃果に似て、そそっかしいところがありますから」
「海未ちゃん…『穂乃果に似て』は余計だよ」
「でも、まだこの時期だからいいけど、本番前だったらシャレにならないんだから」
「にこの言う通りです。注意一秒、怪我一生と言いますから、本当に気を付けて下さい」
「なるほど!そう言う意味だったんだぁ!」
「凛、どうしました?」
「凛は『週に一度、米一升』だと思ってたにゃ。かよちんの標語じゃ、なかったんだぁ…」
凛のこの一言で、一同がドッと笑った。
~つづく~