【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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先輩禁止! その4 ~先生禁止!~

 

 

 

 

 

 

「『かよ』…聴いたわよ。階段から滑り落ちたんだって?大丈夫?」

「情報早いね…」

「そのあと、希に襲われたって」

「襲われ…てはいないよ」

ちょっと怪しかったけど…と返答に一瞬詰まった。

「最後は部室でヌードに…」

「なってないよ!」

これは即答した。

「…だろうね…」

「…にこちゃんだね?『先生』にそんなことを吹き込んだのは」

「正解…。もちろん信じてるわけじゃないけど、面白いから最後まで聴いてみた」

「にこちゃんらしいというか…」

「子供っぽいというか…。なんであんな見え透いた嘘をつくのかしら」

「花陽が思うに、家庭環境が影響してるんだよ」

「家庭環境?」

「ほら、にこちゃんと妹さん弟さんとは、少し歳が離れてるでしょ」

「そうね。正確にはわからないけど、少なくとも6歳以上は違うかしら」

「だからきっと、昔から妹さんたちに、色んなお話をしてあげたんじゃないのかな…」

「読み聞かせ?」

「うん、昔話とかおとぎ話とか。でも同じ内容だと飽きちゃうから、そのうち面白おかしく脚色して、楽しくお話ししてあげてたんじゃないかな?」

「その延長で、私たちにも『盛って』話す…ってこと?」

「悪気はないと思うけど…」

「かよらしい分析だわ…。私はただ単に、かまって欲しいだけだと思うんだけど」

 

花陽のことを『かよ』と呼ぶ電話の相手は…真姫だった。

真姫は『親友になる第一歩』として、花陽とツーショットの時に限り、そう呼ぶと宣言していた。

 

「でも、ケガの話は本当なんでしょ?」

「それも、ちょっと違うよ…おしりを打っただけだから」

「打撲?」

「なのかなぁ…さっき凛ちゃんに見てもらったら、アザになってるって…」

 

そう、さっきまで凛はここにいた。

真姫からの電話は、凛が帰って間もなくのことだった。

 

「結構、強く打ったのね」

「でも、どうしようもないよね。簡単に治るものでもないし」

「本当はすぐに冷やせばよかったんだけど…」

「さすが先生」

「私がいれば何らかの応急処置ができたのに」

「うん…でも、おしりだし…」

「ケガに恥ずかしいも何もないでしょ!」

「う~ん…」

「なによ?」

「先生だったら、おしり出せる?」

「ヴェェ~!なんで私がおしりを出さなきゃいけないのよ」

「だから、先生が、怪我した場合だよ」

「わ、私は…かよみたいなドジはしないもの」

「それはそうだけど…って、答えになってないよ」

「でも、不幸中の幸いね」

「ん?」

「脚とか手とか、肌が露出する部分だったら一大事だわ。そんなのアイドル失格でしょ?」

「おぉ、先生にアイドルとしての自覚が芽生えてる!」

「茶化さないで!」

「ごめん、ごめん」

「階段から落ちた…って聴いたときは血の気が引いたんだから」

「それはホントにごめん」

「痛みが引かないようなら医者(ウチ)に受診しなさいよ」

「うん。先生に診てもらう」

「かよ…」

「ぬ?」

「さっきから気になってるんだけど、その『先生』って呼び方、なんとかなならない?」

 

真姫が花陽を『かよ』と呼ぶときは、花陽は真姫を『(ピアノの)先生』と呼ぶことにしていた。

 

…が…

 

真姫には違和感があるらしい…。

 

「じゃあ、なんて呼べばいい?」

「『マキ』でいいんじゃない?」

「よ、呼び捨て?」

「と、友達なんだから…呼び方も対等じゃないと…」

「う、うん…。じゃあ…マキ…ちゃん」

「『ちゃん』はいらないの」

「あははは…いきなりは無理だよ」

「慣れね」

「それより…マキ…ちゃん」

「なに?」

「今日、花陽に用があったんじゃ?」

「えっ、あぁ…べ、別にたいしたことじゃ…」

 

そんなぁ!

元はといえば真姫ちゃんが原因で足を滑らせたんだよ!

…とは、さすがに言えないよね…

 

「マキ!」

「えっ!?」

「…隠し事はダメだよ!」

「かよ…」

「…なぁんて、ね」

「うん…わかったわ、ゴメン。実は…ちょっと、おにぎりにチャレンジしてみようかと思って…」

「わぁ!素敵だね」

花陽のテンションが一段アップした。

「どうせなら、お米の研ぎかたから教わった方がいいんじゃないかと」

「うん、うん。いいね、いいね。それは大事なことだねぇ」

「急ぐことじゃないから、別にいつでもいいんだけど」

「そうしたら…明日、試食会をしようよ」

「試食会?」

「うん、そうしよう!」

「ちょっ…ちょっと、なに勝手に決めてるのよ…って、明日?」

「うん、明日」

「話を聴いてた?そんな急ぐことじゃ…」

「大丈夫だよ。ほら、みんな『利き米コンテスト』に参加するって言ってたから、グッドタイミングだよ」

「私は出ないけど…」

「それに花陽は、まだ明日はダンスとか厳しそうだし」

「それはそうね」

「じゃあ、早速準備をしないと」

「本気なの?」

「マキちゃ…マキ、わざわざ、電話してくれてありがとう」

「当たり前でしょ!…と、友達なんだから」

口調から真姫が照れてるのがわかる。

「うん。じゃあ、また明日」

「お大事に」

 

スマホを切った花陽は、勢いよくベッドから起き上が…れずに

「いたたた…」

と、臀部を押さえながら、ゆっくりと降りた。

 

「おばあちゃんみたい」

誰もいない部屋で、ひとり、花陽は呟いた。

 

 

 

 

 

~つづく~


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