【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
すみません。
体調不良により、しばらくお休みしてました。
「のわっ!」
部室のドアを開けたにこは、その瞬間、テーブルの上の光景を見て、思わず足を止めた。
「いい匂いやね」
逆に、続けて入ろうとした希は部屋に充満している『香り』に 感嘆の声をあげた。
「炊きたてですから」
部屋の奥で花陽は、満面の笑みでメンバーを向かえた。
「ハラショー!これ全部、花陽が?」
「当然です」
「圧巻ですね。さすがと言わざるを得ません」
海未もそう言うしかなかった。
屋上での練習を終えたμ'sのメンバー8人を部室で待ち受けていたのは、テーブルに並べられた数多くのおにぎり…と、その創造主・花陽だった。
「すごいね。お店みたい!」
「ことりちゃん、いいこと言った!」
「ん?」
「これからμ'sのライブをやるときは、花陽ちゃんのおにぎりも一緒に売ろうよ。完売間違いなしだよ!」
「そんなことだと思ったにゃ」
「だったら、自分のとこの饅頭でも売ったら?」
「おぉ!さすがにこちゃん!ナイスアイデア!ラブライブならぬ『穂むらイブ』だね」
「でも、それだとウチらには、お金入らんけどね」
「何を言ってるんですか!スクールアイドルが営利目的で活動をしたら、それはもはやアマチュアとは言えません」
「そっか…。でも、衣装とかお金掛かるし…持ち出しばかりだと…真姫ちゃんの負担が…」
「待ってよ!私の存在理由はスポンサー?」
「いやいや、それは…ちょっとは期待してるけど」
「くだらないことを言ってないで、早く席に着きなさいよ」
「珍しく真姫ちゃんが積極的なんだにゃ」
「べ、別に…そんなんじゃ…」
「真姫の言う通りね。せっかく花陽が準備してくれたんだがら、早速始めましょう!」
絵里がパンパンと手を叩いて、メンバーを椅子に座らせた。
「それでは…」
花陽は、いわゆる『お誕生日席』に陣取り、仕切り始めた。
「今日は、あまり練習に参加出来なかったから、その時間を利用して、ご飯を炊きました。今週末、利き米コンテストもあるし、少しでも参考になれば…」
「花陽ちゃん、前置きはいいから、早く食べようよ!」
「そうだね…」
花陽は苦笑いしつつ、その穂乃果に質問をぶつける
「ズバリ!『日本の代表的なお米』と言って思い付く銘柄は?」
「う~ん、やっぱ『コシヒカリ』かな」
「なるほど、なるほど。やはり、そうだよね…と、いうわけで、まずは炊きたての魚沼産コシヒカリを…」
と言うと、花陽はどこからか炊飯器を取り出し、しゃもじでご飯を小さな皿に盛り付け、メンバーに配膳した。
「まず、見てほしいのが、ツヤです」
「お米が光ってるにゃ」
「確かにピカピカやね」
それを聴いて満足そうな花陽。
言葉を続ける。
「そして、香り」
「これはもう、間違いなく美味しい匂いだよ。だから、早く食べようよ」
「穂乃果、うるさいですよ!」
海未が一喝する。
「まぁまぁ…では、食べてみてくださいな」
「いっただきまぁす!」
穂乃果が勢いよく口に運ぶ。
「穂乃果!もっと味わって食べてください」
「ごめん、海未ちゃん。…でも、お腹空いちゃってるから」
「穂乃果ちゃんらしいね」
相変わらずの会話に、ことりは目を細めた。
「コシヒカリはツヤ、香り、旨味、モチモチとした食感のどれもが平均的に優れていて…冷めても美味しいのが特殊なんです」
「だから、日本の代表格なんやね」
「はい!」
「花陽ちゃん、おかわり!」
「穂乃果!」
「大丈夫だよ、海未ちゃん。いっぱい炊いてあるから」
「そういう問題ではありません。礼儀作法が…」
「海未ちゃん、その話はあとにしようよ」
ことりが助け船を出す。
「ことりは穂乃果に甘過ぎます!」
この3人は何度このやりとりを繰り返してきたのだろうか…。
「穂乃果ちゃんの気持ちはわかるよ。美味しいもんねぇ。目の前のおにぎりも飾りじゃないから、あとで食べてくださいな。でも、次は違うお米で…。ヨイショ!っと…続いては…ジャ~ン!『あきたこまち』で~す」
花陽はもうひとつの炊飯器を手に取り、胸の前にかざした。
「えっ?炊飯器を2つも持ってきたの?」
と驚く絵里。
「今日は凛ちゃんに手伝ってもらいました」
「お米もあったから、重かったにゃ…」
「そこまでする?」
にこも呆れ顔。
「はい、どうぞ」
そんなことは意に介さないと、花陽は先程同様、小皿にご飯を盛り、配膳した。
「これも美味しいご飯だね」
と穂乃果。
「さっきのコシヒカリと比べて、どう違うでしょうか?」
「えっ?どう…って…両方とも、美味しいよ!」
「それじゃ、比較にならないでしょ!」
「真姫ちゃん、そんなに怒らなくても…」
「べ、別に…怒ってないわよ」
「それじゃ真姫ちゃんは?違いがわかるの?」
穂乃果はテーブルに乗りだし、目の前の真姫の顔を覗き込んだ。
「私はこっちの方が…表現が難しいけど…さっぱりしているように感じたわ」
「私も真姫と同意見です。コシヒカリよりモッチリしてるけど…それでいてしつこくないと言うか…」
「さすが真姫ちゃんと海未ちゃん。そう、あきたこまちは水分が多目で、粘り気があるんです。だから、おにぎりに最適なお米で…花陽のおにぎりは大抵これを使ってます」
「へぇ…ウチもお米はあきたこまちなんやけど…これほど美味しくない気がする…なんでやろ?」
「それは時間ですねぇ…」
「時間?」
「あきたこまちは、吸水性があまりよくないから、しっかり研いで、長めに水に浸すのがポイントなんです」
「なるほど…」
希は花陽が「自宅」で作った朝食のことを思い出していた。
同じ米を使って炊いている筈なのに、明らかに花陽のご飯は美味しかった。
あのときは色々と気が昂(たかぶ)っていた為、雰囲気によるものだと思っていたのだが…
「ちなみに、あきたこまちにも弱点はあって、お寿司とかチキンライスとか…調味料を加えるご飯は不向きなんです。」
花陽が付け加えた豆知識を聴いて
「一口にお米と言っても、奥が深いんやね」
しみじみ呟く希であった。
~つづく~