【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまにゃ~」
メンバーたちが、テーブルにあったおにぎりを食べ終えると、次々に満足そうな声をあげた。
「さすが花陽ちゃんやね。めっちゃ美味しかったよ」
「う~ん、やっぱりご飯はうまい!」
「穂乃果は調子に乗りすぎです。…でしたらパンばかり食べずに…」
「海未ちゃん、今はその話はやめようよ…」
穂乃果が海未の顔の前で、手をバツにした。
すると突然
「花陽!ハラショーでしたよ。美味しいご飯を食べると、改めて日本人で良かった…と思うわね」
と絵里が発言した。
(…真姫ちゃん、今のはギャグなのかにゃ?)
(わ、私に訊かないでよ…)
(ウチはギャグやと思うけど…)
(だったら、笑ってあげたほうがいいんじゃないかな?)
(ことりの言う通りです…が、国籍が日本でしたら、日本人なわけで…)
(見た目が見た目だから、改めて宣言されても…やっぱり違和感があるわ)
絵里の「日本人発言」に、ざわめくメンバー。
なに?私、おかしなことを言った?…と、当の本人は、不思議そうに周りを見ている。
その重い空気を断ち切ったのは、にこだった。
「そ、それで…結局、どれが『日本の代表的なお米』なのよ」
「そ、そうやね。利き米コンテストの1回戦は、そこから3銘柄を当てるんやった」
ナイスフォローやん!と希はにこにウインクした。
当たり前でしょ、部長なんだから…と、ドヤ顔のにこ。
「それが、難問なんですよ…」
花陽は、一瞬困った顔をしたが、すぐに楽しそうに話し始めた。
「少し前までは『コシヒカリ』『ササニシキ』が、2大ブランドだったんです」
「そう言えば、最近ササニシキって見ないわね」
「さすが、にこちゃんは、主婦だけあって詳しいにゃ!」
「主婦じゃないから!」
「ササニシキは育てるのが難しいお米なので、かなり品種改良がされて、オリジナルの生産量は減ってるんです」
「園田家の利用するお寿司屋さんは、ササニシキだと申してましたが」
「さすが、海未ちゃん!お家(うち)が日舞の家元だけあって、お寿司屋さんもこだわりがあるんですねぇ…。ササニシキは粘り気が少なく、あっさりしてるから、お寿司には最適なんです。でも今言った事情から、お寿司屋さんでも使うところが少なくなってます。新米より古米が良いとの話もありますが、結局のところ、炊き方やお酢によっても味がかわりますから、一概にどれが正解…とは言えないんです。ただ、あんまり粘り気の強いお米は不向きかと…」
「なるほど、そういう背景があるのですね」
「次に続くのは…あきたこまち…ですかね。味のわりには値段も安く流通量も多いし、知名度も高いですから」
「つまり、今、花陽ちゃんが炊いてくれたのが、No.1とNo.2になるんだね?」
穂乃果が尋ねる。
「あくまでも個人の意見ですが。ちなみに、あきたこまちはお寿司には不向きとされてます。」
「まぁ、コシヒカリやあきたこまちは、ウチも知ってるし、納得やけど…」
「そうなんです。ここからが難しいんです。どんどん新種が出てきてて、チェックしきれないんです…」
「してるんだ?」
とは、またも穂乃果。
「出来るだけ、そのように心掛けてます」
「穂乃果も見習った方が良いですよ」
「お米のチェック?」
「違います。芸は身を助けると言いますから、花陽のように、何かを極めると言うのは、とても大事だということです」
「またお説教?」
「確かに花陽ちゃんは、アイドルマニア、大食い、お米の知識…と色んな引き出しがあるから、芸能界でも充分やっていけるかも…やね」
「その通りです。他のメンバーも絵里はダンス、希はスピリチュアル、にこは徹底したアイドル意識、ことりは元カリスマメイド、真姫は音楽、凛は運動神経とアピールするものがありますが…穂乃果はどうですか?」
「海未ちゃん、カリスマメイドはちょっと…」
「ならデザイナーにしましょう」
「うん、それなら…」
「あ、ことりちゃんまで…」
「さぁ、穂乃果には、なにがあるのですか?」
「穂乃果には…穂乃果には…ないねぇ…」
「ないんかい!」
見事なツッコミはにこ。
「ないねぇ…。強いて挙げれば…どこでも、すぐ寝れる?」
「何の話をしてるのよ!海未は穂乃果のことになると熱くなりすぎよ。今はお米の話でしょ」
「そ、そうでした…」
真姫に注意され、海未は俯いた。
それをことりは、楽しげに見ていた。
「あとは…『きらら』『ゆめぴりか』『ななつぼし』『ふっくりんこ』『はえぬき』『どまんなか』『ひとめぼれ』『つや姫』『なすひかり』『きぬむすめ』『ヒノヒカリ』『さがびより』『あきほなみ』『青天の霹靂』『栃木の星』『あきさかり』『秋の詩』『みずかがみ』とか…あ、『日本晴』も忘れちゃいけないですね」
「なんか落語の『寿限無』みたいになってきたやん」
「宝石?」
「絵里、それはジュエルじゃない?」
「おぉ、真姫ちゃん、するどいやん!」
「寿限無ってなんなんにゃ?」
「あれ、みんな知らんのん?」
うん、うんと頷くメンバー一同。
「『寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末 、雲来末、風来末、食う寝る処に住む処…』って、今はウチの時間やないんやけど。時間があったら、またあとで教えてあげるから」
希は落語も詳しいのね…と海未がボソッと呟いた。
「お米の種類は、まだまだありますよ。『森のくまさん』とか『ミルキークイーン』とか…」
「なんか急にメルヘンチックな名前になったね」
「はい、かわいいですよねぇ」
ことりの言葉に同調する花陽。
「いや、いや…とても覚えられないよ」
穂乃果がオーバーアクションで、顔の前で手を振った。
「舐めてたわ。そんなに種類があるなんて」
にこもお手上げのジェスチャー。
「日本人の主食ですからねぇ。これを機にもっと興味を持った方がいいですよ。ご飯は美味しいに越したことがないですから」
花陽は笑顔で、メンバーにそう諭したのだった。
~つづく~