【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
《それでは、8時となりましたので、予備予選を開始させて頂きます》
設置されたスピーカーから男性スタッフの声が流れた。
イベントスペースには横に10席、縦に15席…計150席の椅子が並べられている。
少し空席があるものの、花陽以下μ'sの5名は無事に着席していた。
スタッフから、ハガキ大の紙が配られる。
そこには整理券と同じ番号と、米の名前が3品種、そしてアルファベットが3つ記されていた。
《この時点で席にいない方は、残念ながら失格です…ということで、今、ご着席の皆様…146名で予選を始めます》
アナウンスは続く。
《では、ご説明致します。まず初めは日本を代表するお米『コシヒカリ』『ササニシキ』『あきたこまち』を食べ比べて、どれがどれかを当てて頂くというものです》
あら、サービス問題じゃない…と、にこが呟く。
《前方にテーブルがございます。皆様はスタッフの誘導の下(もと)、横一列…10人ずつ前に進んで頂き、各々用意されたA、B、Cのご飯を食して頂きます。そして、今、お配り致しました『回答用紙』に、それぞれ、どれがどれかを線で結んで下さい。書き終わりましたら、この箱に入れて頂きます》
これに書けばいいんだね?と手元の紙を確認する穂乃果。
《お済みの方は、正解発表が行われる8時55分まで、別室にてご休憩頂きます》
「にゃ~!ずるいにゃ!じゃあ、私たちはずっと待たなきゃいけないにゃ~」
「まぁ、ウチらは来たのが最後の最後やからね。早く来た人は、逆にずっと待ってたんやろうし、それは仕方ないんやない?」
《尚、カンニングや、それと同等の不正行為があった場合は、発見次第、失格と致します。従いまして参加者の皆さま方におかれましては、回答前のスマホ等のタブレット端末、イヤホン及びヘッドホンの使用は、許可を出すまで一切禁止致します》
「待ち時間にスマホを見れないのは、結構辛いにゃ」
「でも、私たちは5人いるから、お喋りしてたら、すぐ順番がくるよ」
「穂乃果ちゃんの言う通りやね。英玲奈さんはひとりで参加…って言ってたから、暇もて余すんやないやろか」
「でも英玲奈さんは、わりと前の方でしたから」
と花陽。
「ひとりで参加ってことは、結構、自信あるってことだよね?食通なのかな」
「少なくとも、穂乃果よりはいいもの食べていそうじゃない」
「む?にこちゃんだって、ひとのこと言えないでしょ?」
「まぁまぁ、食通かどうかはわからへんけど、自信はありそうやったね」
「和食ってイメージなないにゃ」
「ひとは見かけによらんものやからね」
「綺羅ツバサは味音痴って言ってたわね。それはいい情報をもらったわ」
「にこちゃん、何か企んでる?悪い顔してるにゃ」
「べ、別に!ネットを使ってネガティブキャンペーンを仕掛けようなんて思ってないから」
「自分から言ってるにゃ~」
5人がそんな下らない話をしていると
「あ、そろそろ、ウチらやん」
と、希が年長者らしく、注意を促す。
《はい、最後の列の方…お待たせしました。真ん中から左右に別れて、前に進んでください》
外側に座っていた穂乃果を先頭にして、前のテーブルに進み、所定の位置に案内される。
《では、よろしいですか。制限時間は1分半。A・B・Cのご飯の3銘柄を当ててください。よーい、スタート!」
ふむ、これは簡単…と10人中もっとも早く抜けたのは、案の上、花陽。
続いて、凛と希が抜けていく。
Aがササニシキなのはわかるけど…問題は…と苦戦しているのが穂乃果。
にこも同様に悩んでいるようだ。
《5、4、3、2、1…はい、そこまで~」
にこと穂乃果は時間ギリギリに記入し、回答用紙を提出した。
控え室に向かう道中…
「かよちん、正解は?」
と凛が花陽に訊いた。
「Aから順番にササニシキ、あきたこまち、コシヒカリだよ」
「だよねぇ、だよねぇ!BとCが迷ったけど、花陽ちゃんに試食させてもらった味を思い出して…うん、うん、合ってる」
「穂乃果ちゃんは、ホンマに本番に強いやね」
「えへへへ…」
「凛はすぐにわかったにゃ。Bはかよちんが作るおにぎりの味だったから。希ちゃんとにこちゃんは?」
「ウチもバッチリやん」
「アタシもよ」
「その割りに時間ギリギリだったにゃ」
「慎重になっただけだから」
「にこっちは、緊張しぃやからね」
「放って置いてよ」
そうこうしているうちに、休憩室に着いた。
ドリンクバーが設置されており、先に終わった参加者は各々グラスを片手に一服していた。
そこにはもちろん統堂英玲奈の姿もあった。
ヘッドホンをして、目を瞑(つむ)り、曲に集中しているようだった。
しかし、気配を感じたのか、英玲奈は目敏(めざと)く花陽たちを見つけると、自ら声を掛けてきた。
「終わったようだな…ん?はて、ひとり足らないようだが…」
「そうなんです。実は6人で来たんですけど…海未ちゃんの前で最後のひとりになっちゃって…」
と花陽。
「そうなのか。私の中では彼女が一番のライバルかとにらんでいたのだが…」
「確かに和食っぽいイメージですもんね」
「その分やと、余裕で突破…って感じやね」
「これくらいは…な。そっちはどうだ」
「まぁ、大丈夫じゃないの。こっちもこんなとこで、あなたに負けるわけにはいかないし」
「にこちゃん、ここで張り合わなくても」
穂乃果も流石に呆れて、にこに注意を促す。
「はははは…。矢澤さん、あなたは面白い人だ。私は好きだよ、そういう強気な性格」
「な、なによ…」
「にこちゃん、顔が赤いにゃ~」
「う、うるさいわよ。…ってか、突然おかしなことを言わないでよ…」
意図せず、心理戦で先手をとられたのは…にこっちのようね…
希は隠れて苦笑した。
《それでは、結果発表を行います。参加者の皆様は、外にお集まりください》
アナウンスが流れ、統堂英玲奈を含めた6人は、一緒に会場に戻った。
続く