【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
時刻はまもなく 、午前10時を迎える。
決勝に勝ち残った花陽は、メンバーと離れ、ステージへと向かった。
その後、花陽と英玲奈の他、男性が2人、女性1人…計5人は、スタッフからプロフィールのヒヤリングや、段取り等の説明が行われた。
A-RISEの…白い衣装を身に付けた英玲奈の姿はやはり目立つ。
地元秋葉原だけに、早くもその存在に気付いた観客がいるようだ。
スマホをかざして写真を撮っている様子が散見される。
ステージの左右に置かれた大きめのスピーカーからは、音楽が流れ始めてきた。
花陽がインターネットで配信されると言っていた通り、いつの間にかカメラマンがステージ上に2人、観客がいる道路側にも2人。
こちらは、高さ1m程の台の上に乗っている。
スタッフのマイクチェックが行われたあと、スピーカーから聴こえていたBGMが消えた。
それが、決勝が始まる合図だということ、なんとなく観客にも伝わった。
会場のざわめきが、一瞬、静寂に変わった。
「はい、みなさん、こんにちわ~」
その静けさを蹴破るように、ステージ上手(かみて)から、マイクを持ったテンションの高い女性が現れた。
少し茶色がかった髪をポニーテールにしている、やや細身のメガネ美人。
しかし、声量は予想外にパワフルだ。
「本日はアキバ○○プレゼンツ『愛・米・味(アイマイミー)フェスタ ~このお米はなんじゃろな~』にお集まり頂き、誠にありがとうございます!」
「このイベント、そんな名前だったんだ…」
と穂乃果。
「さて、ステージ上には、既に2回の予選をクリアされ、見事決勝に進出された5名の方々がいらっしゃいます。早速、お話を聴いて参りましょう!」
女性司会者はそう言うと、ステージ後方で待機していた5名に、前へ出るよう促した。
「では、こちらから…お名前と年齢、意気込みをお願い致します」
「はい、統堂英玲奈…18歳。優勝目指して頑張ります…」
そう話し終わるか終わらないうちに、観客から「英玲奈さ~ん!」の黄色い声が飛ぶ。
「おっと!いきなり凄い声援です。そうなんです、実は統堂さん、ここの目の前にある高校の…スクールアイドル…A-RISEのメンバーなんですよね!」
「えっ?…あぁ…まぁ…」
割りと控え目な返事。
それを聴いた…花陽の隣に並んでいた男が「チッ!デキレースかよ…」と小さく呟いた。
「A-RISEと言えばスクールアイドルの甲子園とも言える『ラブライブ!』の2連覇が懸かるわけですが…」
「まだ地区予選を突破したわけではないですし…他の学校も力があるので…」
と、軽く花陽をチラ見した。
「そう甘くはないと思いますが、精一杯頑張ります」
「さすが統堂英玲奈。イメージ通りのクールなキャラに仕上げてきたわね」
とにこ。
「キャラに仕上げたって…そんなんやないでしょ?」
希が苦笑した。
「あぁいう受け答えは、司会者泣かせだね。真姫ちゃんみたいにゃ」
「なんでそこに私が出てくるのよ…」
真姫が凛を軽く小突いく。
「…はい、ありがとうございました!…それでは次の方に参りましょう…」
このあとメイド喫茶で働いているという自称『ミカリンスキー(21歳、女)』、IT企業の役員だという『水谷(33歳、男)』、そして、英玲奈の時に舌打ちした、食レポブロガー『湯川(28歳、男)』が、それぞれのプロフィールを交えて紹介された。
そして…
「はい、最後の方です。お名前と、お歳、豊富をお願い致します」
「は、はい…こ、こ、小泉花陽です。15歳です」
マイクを通しても、聞き取れないほど小さな声。
「小泉花陽さん、15歳!若い!」
すかさず司会者がフォローした。
間、髪を容れず
「かよち~ん!!」
「花陽ちゃ~ん!!」
「花陽~!」
の3バカ…いや、凛、穂乃果、にこの大きな声が会場に響き渡る。
「お友達かな?元気いいねぇ!そういえば…資料によると小泉さんもスクールアイドルやってるんですね」
「えっと…は、はい…」
「名前は?」
「μ'sです」
「薬用せっ…」
「違います!」
「かよちん、ツッコミ、早いにゃ!」
「さんざん言われ続けてきたからねぇ」
穂乃果が笑う。
「条件反射ね」
と真姫。
「やっぱり、スクールアイドルをやってるということはラブライブ!の出場が目標ですか」
「は、はい…もちろん、それはそうですが…その前に…今日は統堂英玲奈さんに勝って、優勝します!!」
その瞬間、英玲奈がニヤリと笑った。
「おぉ!花陽ちゃん、言うねぇ!」
「かよちん、優勝宣言、スイッチが入ったにゃ~!」
「まぁ、花陽も成長したってことね」
「にこっち、嬉しそうやね」
「そりゃあ、可愛い後輩だもの」
「それだけ?」
「希、どういう意味よ?」
「いや、別に…それより、応援、応援」
「花陽ちゃん、頑張れぇ!」
珍しくことりが、大きな声で叫んだ。
「ことり…」
その声にびっくりしたのは海未だった。
「ことりもそんな声が出せるのですね?」
「なんか自然に出ちゃった。本当に頑張れって思ったから…」
「ならば私も負けないですよ…。花陽~!」
「花陽ちゃ~ん!」
「かよち~ん!」
「花陽~!」
ことりのコールが呼び水になって、μ'sのメンバーが口々に花陽の名前を叫んだ。
「あらあら、A-RISEに負けず劣らず大人気ですね。この声援に負けないよう頑張りましょう!」
まだμ'sのことを知らない司会者は、5人目の決勝進出者の紹介を、そう締め括った。
当の本人…小泉花陽は…自分の名前が大声で連呼され…嬉しさ半分、恥ずかしさ半分…少し泣きそうになっていた…。
誰かたすけてぇ…
~つづく~