【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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先輩禁止! その13 ~愛・米・味~

 

 

 

 

 

時刻はまもなく 、午前10時を迎える。

決勝に勝ち残った花陽は、メンバーと離れ、ステージへと向かった。

 

その後、花陽と英玲奈の他、男性が2人、女性1人…計5人は、スタッフからプロフィールのヒヤリングや、段取り等の説明が行われた。

 

A-RISEの…白い衣装を身に付けた英玲奈の姿はやはり目立つ。

地元秋葉原だけに、早くもその存在に気付いた観客がいるようだ。

スマホをかざして写真を撮っている様子が散見される。

 

ステージの左右に置かれた大きめのスピーカーからは、音楽が流れ始めてきた。

 

花陽がインターネットで配信されると言っていた通り、いつの間にかカメラマンがステージ上に2人、観客がいる道路側にも2人。

こちらは、高さ1m程の台の上に乗っている。

 

スタッフのマイクチェックが行われたあと、スピーカーから聴こえていたBGMが消えた。

 

それが、決勝が始まる合図だということ、なんとなく観客にも伝わった。

会場のざわめきが、一瞬、静寂に変わった。

 

 

「はい、みなさん、こんにちわ~」

その静けさを蹴破るように、ステージ上手(かみて)から、マイクを持ったテンションの高い女性が現れた。

少し茶色がかった髪をポニーテールにしている、やや細身のメガネ美人。

しかし、声量は予想外にパワフルだ。

 

「本日はアキバ○○プレゼンツ『愛・米・味(アイマイミー)フェスタ ~このお米はなんじゃろな~』にお集まり頂き、誠にありがとうございます!」

 

 

「このイベント、そんな名前だったんだ…」

と穂乃果。

 

 

「さて、ステージ上には、既に2回の予選をクリアされ、見事決勝に進出された5名の方々がいらっしゃいます。早速、お話を聴いて参りましょう!」

女性司会者はそう言うと、ステージ後方で待機していた5名に、前へ出るよう促した。

「では、こちらから…お名前と年齢、意気込みをお願い致します」

「はい、統堂英玲奈…18歳。優勝目指して頑張ります…」

そう話し終わるか終わらないうちに、観客から「英玲奈さ~ん!」の黄色い声が飛ぶ。

「おっと!いきなり凄い声援です。そうなんです、実は統堂さん、ここの目の前にある高校の…スクールアイドル…A-RISEのメンバーなんですよね!」

「えっ?…あぁ…まぁ…」

割りと控え目な返事。

 

それを聴いた…花陽の隣に並んでいた男が「チッ!デキレースかよ…」と小さく呟いた。

 

「A-RISEと言えばスクールアイドルの甲子園とも言える『ラブライブ!』の2連覇が懸かるわけですが…」

「まだ地区予選を突破したわけではないですし…他の学校も力があるので…」

と、軽く花陽をチラ見した。

「そう甘くはないと思いますが、精一杯頑張ります」

 

 

「さすが統堂英玲奈。イメージ通りのクールなキャラに仕上げてきたわね」

とにこ。

「キャラに仕上げたって…そんなんやないでしょ?」

希が苦笑した。

「あぁいう受け答えは、司会者泣かせだね。真姫ちゃんみたいにゃ」

「なんでそこに私が出てくるのよ…」

真姫が凛を軽く小突いく。

 

 

「…はい、ありがとうございました!…それでは次の方に参りましょう…」

 

このあとメイド喫茶で働いているという自称『ミカリンスキー(21歳、女)』、IT企業の役員だという『水谷(33歳、男)』、そして、英玲奈の時に舌打ちした、食レポブロガー『湯川(28歳、男)』が、それぞれのプロフィールを交えて紹介された。

 

そして…

「はい、最後の方です。お名前と、お歳、豊富をお願い致します」

「は、はい…こ、こ、小泉花陽です。15歳です」

マイクを通しても、聞き取れないほど小さな声。

「小泉花陽さん、15歳!若い!」

すかさず司会者がフォローした。

 

間、髪を容れず

「かよち~ん!!」

「花陽ちゃ~ん!!」

「花陽~!」

の3バカ…いや、凛、穂乃果、にこの大きな声が会場に響き渡る。

 

「お友達かな?元気いいねぇ!そういえば…資料によると小泉さんもスクールアイドルやってるんですね」

「えっと…は、はい…」

「名前は?」

「μ'sです」

「薬用せっ…」

「違います!」

 

 

「かよちん、ツッコミ、早いにゃ!」

「さんざん言われ続けてきたからねぇ」

穂乃果が笑う。

「条件反射ね」

と真姫。

 

 

「やっぱり、スクールアイドルをやってるということはラブライブ!の出場が目標ですか」

「は、はい…もちろん、それはそうですが…その前に…今日は統堂英玲奈さんに勝って、優勝します!!」

その瞬間、英玲奈がニヤリと笑った。

 

 

「おぉ!花陽ちゃん、言うねぇ!」

「かよちん、優勝宣言、スイッチが入ったにゃ~!」

「まぁ、花陽も成長したってことね」

「にこっち、嬉しそうやね」

「そりゃあ、可愛い後輩だもの」

「それだけ?」

「希、どういう意味よ?」

「いや、別に…それより、応援、応援」

「花陽ちゃん、頑張れぇ!」

珍しくことりが、大きな声で叫んだ。

「ことり…」

その声にびっくりしたのは海未だった。

「ことりもそんな声が出せるのですね?」

「なんか自然に出ちゃった。本当に頑張れって思ったから…」

「ならば私も負けないですよ…。花陽~!」

「花陽ちゃ~ん!」

「かよち~ん!」

「花陽~!」

ことりのコールが呼び水になって、μ'sのメンバーが口々に花陽の名前を叫んだ。

 

 

「あらあら、A-RISEに負けず劣らず大人気ですね。この声援に負けないよう頑張りましょう!」

まだμ'sのことを知らない司会者は、5人目の決勝進出者の紹介を、そう締め括った。

 

 

当の本人…小泉花陽は…自分の名前が大声で連呼され…嬉しさ半分、恥ずかしさ半分…少し泣きそうになっていた…。

 

 

誰かたすけてぇ…

 

 

 

 

 

~つづく~


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