【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「それじゃあ、2枚目を見て」
サリナがA4サイズの紙を捲(めく)った。
「これが花陽ちゃんの身体の3D画像。順番に…上から見たところ、正面、横からで…最後が後ろから」
「上からって言うのは新鮮ですね」
「前と横は鏡でも見れるけど、上からって自分じゃ…ね」
サリナは蛍光ペンを手に、書き込みながら説明を続ける。
「それで…花陽ちゃんのお胸の形は…これ。非常に綺麗な『半球型』ね」
キュッとペンでマルを付ける。
「日本人の多くは、大きくても垂れたり横に広がったりする『しずく型』なんだけど…貴方のは、いわゆる『美巨乳』って呼ばれるタイプね」
花陽の耳元で
…ウチと同じやね…
と希が囁く。
…因みに『えりち』は、この『釣鐘型』ってヤツやん…
紙の文字を指差しながら補足説明を加えた。
「さてさて、ここからが本題の本題。これで終わったら、単なる身体測定になっちゃうからねぇ…。肝心なブラ選びを始めましょう!」
「は、はい」
「まず、花陽ちゃんのブラサイズは『D65』から『E65』になりました」
「はい」
「これが基本ベース。そうしたら次は『どんなブラ』が欲しいか…ってことなんだけど…」
「そうですね…」
と言いかけて、花陽は口ごもった。
…どんなブラ?…
いざ訊かれると、具体的に答えられない。
「あの…可愛いのがいいな…とは思いますが…」
「うん、デザインの話ね。それは、またあとで訊くわ。…えっと…私が訊いたのは『使用用途』のこと」
「使用用途…ですか?」
「ブラだってTPOに合わせて、使い分けが必要でしょ?例えば…スポーツの時とか、デートの時とか、パーティーの時もあるし…全部同じでいい…って訳ではないでしょ?」
「あ…あまり考えたことがなかったです…」
「まぁ、15歳だからね…まだ、そこまで気を使わないか…」
花陽は、そう言われると『子供扱い』されたようで、少し切なくなった。
「彼氏はいるの?」
ブンブン!と首を大きく横に振る。
「そんなに力強く否定しなくても」
サリナは明るく笑った。
「ノゾミィは?」
希も花陽の真似をした。
「真似しないでください」
と今度は花陽が苦笑いする。
「2人とも可愛いんだから、彼氏くらい作らないと…」
「うちは女子校だから…」
「そう言えば、そうだったわね」
…でも、好きな娘はいるんよ…
希は心の中で呟いた。
「…で、結局どんなのが欲しいの?」
「今日は取り敢えず『普段使い』のブラでいいと思うけど。あ、出来れば通気性がいいのがいいよね?」
答えられない花陽に替わって、希がフォローする。
「通気性?」
「うん…ほら、彼女、運動してるから」
「あ、さっき言ってたね。運動部なんだ?」
サリナに訊かれて、希と花陽は顔を見合わせた。
…アイドル研究部…って、どっち?…
名前だけなら文化部だが、やってることはストレッチして、走って、筋トレして、ダンスして…運動部と変わらない。
しばし沈黙…。
「私、おかしなこと訊いた?」
とサリナ。
「いやいや、ごめんなさい、何でもないです。どちらかと言うと運動部かな…ダンスの真似事をしてるから」
と希。
希でも、まだスクールアイドルのことは、伏せておきたいらしい。
「あら、ダンス部なの?…っていうことはノゾミィも?あれ、聴いてないわよ?」
「えっと…とある事情により今年から始めたので…」
「そうなの?なんか意外だわ…。じゃあ、2人とも踊る度に、お胸がユッサユッサしちゃうのね」
…私は経験したこと無いけど…とサリナは軽く毒づく。
「だったら、スポーツブラは?」
「もちらんそれは、私も花陽ちゃんも持ってるけど…わりと『そのまま』ウェアに着替えちゃうことが多いから」
「そうか、そうか、なるほど、なるほど。…なら、ある程度、動き易さも重視した方が良さそうね」
「…ですね」
この一連の流れの中に、花陽は会話に入ることが出来きず、ただ黙ったままで頷いた。
「じゃあ、実際、目で見てみようか」
「はい…」
「うん、そうしたら商品ルームに移動するから、一緒に来てね。…あ、一応、手荷物は持って」
サリナは先に席を立つと、2人を先導して歩いた。
さっき花陽が服を『脱ぎ着』した部屋のドア。
その横にもう1枚ドアがあった。
サリナがそれを開ける。
その瞬間
「うわぁ…」
と思わず花陽が声をあげた。
彼女が開けたドアの向こうには、色とりどりのブラやショーツが、壁一面にディスプレイされていた。
いや、壁一面は誤った表現である。
壁『四』面…が正解か。
そして部屋の中央には棚が3列。
こちらにも、隙間なく商品が陳列されている。
よく見ると、部屋の奥には螺旋階段も見える。
「ここ、2階もあるんよ」
花陽に希が耳打ちした。
落ち着いた雰囲気のカフェスペースとは、一転、真逆の華やかな世界がそこに広がっていた。
花陽は部屋と部屋の狭間に立ち、一言呟いた。
「どこでもドアの向こうとこっちみたいです…」
その表現の上手さに、希は思わず頷いた。
~つづく~