【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
気が付くと、会場はかなりの人が集まってきた。
「さぁ、いよいよ、前半戦、最後の問題です!」
始まった頃は疎らだった歓声や拍手も、司会者の発する言葉ひとつひとつに反応がみられる。
「ここまで統堂さん、水谷さん、小泉さんが全問正解で一歩リード。これを1ポイント差で湯川さんが追う展開」
英玲奈さ~ん!の声援があちこちから飛ぶ。
「さすが統堂英玲奈やね。知名度がある」
「その中で、宣言通りに戦ってるのも、たいしたものだわ」
と絵里。
「それに比べ、花陽の知名度はまだまだだね…」
「にこっち、花陽ちゃんの知名度っていうより、μ'sの知名度やない?」
「だからこそ、花陽には、この戦いに勝ってもらって、μ'sの名前を世の中に知らしめるのよ」
「大丈夫。堂々と渡りあってるよ、花陽ちゃん」
穂乃果の言葉に、うんうんと頷くメンバー。
「では、参りましょう!最後の問題!
先程と同様、匂いだけで当てていただきます」
4人はアイマスクを着けて、再び難問に臨んだ。
「解答、オープン!統堂さん…森のくまさん、水谷さんはミルキークイーン、湯川さんは…ヒノヒカリ、小泉さんは…森のくまさん!割れた!答えは3通り!森のくまさんなら女子2人が後半戦進出決定!ミルキークイーンなら水谷さんが進出決定。統堂さん、小泉さんが次点となり…くじ引きで1人を決めます」
くじ引きかよ…と会場がザワついた。
「湯川さん正解なら全員同点の為、4人で…、全員不正解でも、統堂さん、水谷さん、小泉さんでのくじ引きとなります」
「…くじ引きは嫌だねぇ」
「大丈夫、そうはならないにゃ!」
「運命を分ける最終問題の答えは…」
ドラムロールは鳴らない。
しかし見守るメンバーの頭の中には、確実にその音が再生されていた。
「…森のくまさん!!統堂さん、小泉さん、後半戦進出、おめでとう!!」
うわぁ!…とも、きゃあ!…ともつかない歓声が上がる。
まるで自分のことのように、跳び跳ねて喜ぶメンバー。
「かよちん、すごいにゃ…」
凛の目にはうっすら涙が浮かんでいる。
「まぁ、アタシはやると思ってたけどね」
「にこっちだけやないよ。ウチもそうや」
「みんなそう思ってたよ」
そう言ったことりの目も少し潤んでいた。
その時だった。
「ふざけんな!こんなの八百長だ!」
ステージ上から男の叫び声が響いた!
その主は湯川。
花陽の隣にいた男。
解答席から立ち上がり、前へと歩き出す。
ざわつく場内。
女性司会者も、あまりに突然のことで、言葉を失い、ただ湯川の姿を目で追っているだけ。
湯川はそのままマイクを奪う。
「おかしいだろ?こっちはプロだ!こんなガキ2人に負けるワケがねぇ!しかも地元のスクールアイドルだぁ?こんなの完全にデキレースじゃねぇか!」
「違う!」
「違います!」
湯川の言葉に、英玲奈と花陽が同時に反応した。
「私たちは八百長などしていない!」
「そうです。そんなことしていません!」
会場からは湯川に向けたブーイングと『帰れコール』が始まった。
これに対しふてぶてしくも
「アンタもそう思うだろ?」
湯川は振り向くと、解答席にいる水谷に訴えた。
水谷はスクッと立ち上がると、ステージ前方へ歩きだし…湯川のマイクを奪った。
「湯川さん…って言ったっけ?仮に彼女たちが解答をすべて知っていたとしても…だ…アンタもオレも全問正解出来なかった。それが事実だ。違うか?」
「いや…それは…」
「オレは9問正解!アンタは…8問?つまり彼女たちの前に、オレにも勝てなかった…ってことだ。そんなこと言える資格はないんじゃないかな?ブロガーだかなんだか知らないが…今後は違う道を歩んだ方がいいな…じゃ」
水谷はそう言うとマイクを司会者に渡して、その場から歩きだした。
湯川はスタッフに捕り押さえられ、ステージをあとにする。
一度は戻りかけた水谷だが…すぐに引き返して、もう一度、マイクを手に取った。
「言い忘れたことがあった。後半戦に進んだ女の子2人に、もう一度大きな拍手を!」
水谷が観客を煽る。
大きな歓声と拍手が巻き起こった。
それには水谷に対するものも含まれていただろう。
兎にも角にも、こうして前半戦は終了した。
統堂英玲奈、小泉花陽とも後半戦進出!!
~つづく~