【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「…はい…え~…少しトラブルがありましたが…気を取り直して参りましょう。…このあと後半戦を始めます」
まだ観客がざわつく中、女性司会者は自分を落ち着かせるように、息を整えながら、ゆっくりと会場にアナウンスした。
勝ち残った英玲奈と花陽は、ステージから姿を消していた。
一旦控え室に戻ったようだ。
「少し準備があるため、しばしお待ちいただきます。その間…と言っては何ですが、皆様には素敵なプレゼントがございます!」
司会者はひと呼吸置いてから、言葉を続けた。
「これよりA-RISEのスペシャルライブを行います!!」
おぉ!と男性の低い声。
きゃあ!という女性の黄色い声。
そして…A-RISEがステージ袖から、手を振りながら現れた。
もちろん先程まで解答者として、ステージにいた英玲奈も、合流している。
3人の姿を見て、さらに高まる歓声。
「サプライズって言いながら、結構ファンの人が来てるね」
と穂乃果。
「コアなファンなら、それくらいの情報持ってるわよ」
「にこちゃんも知ってたの?」
「アタシは…今、μ'sのことで目一杯よ。そんな余裕はないわよ」
「でも、目がA-RISEに釘付けにゃ」
「そ、そりゃ、長い間憧れの存在だったし…でも今はライバルだもの。見ておかないわけにはいかないでしょ!」
「ライバルか…」
穂乃果が呟いた。
「スクールアイドルを始めた当初、まさかこんな日が来るとは夢にも思わなかったよ…」
…それは穂乃果ちゃんより、にこっちの方が強く感じてるんやないかな…と希は思ったが、口にはしなかった。
そんなことを言ってもにこは、素直に首を縦に振らないことが、わかっているからだ。
「皆さん、こんにちわ。A-RISEです!」
「お集まりのお客様は、ご存知の方が多いかと思いますが…改めて自己紹介をお願い致します」
「はい、A-RISEの綺羅ツバサです」
「統堂英玲奈…」
「優木あんじゅです」
「よろしくお願いします」
3人は同時に頭を下げた。
「私たちは、道路を挟んで向かいのUTX学園のスクールアイドルをやってます。今日は地元のイベントということで、こういう機会を設けていただき、ありがとうございます」
代表してツバサが挨拶をした。
「先程も触れたのですが…A-RISEの皆さんは、スクールアイドルの甲子園とも言われるラブライブの、前回チャンピオンなんですよね。今年は連覇が掛かりますが、意気込みはいかがですか」
「もちろん、出るからには優勝を目指しています。…ですが、全国的にレベルが上がってますし、そう簡単にはいかないでしょうね…。まずは本大会に出れるよう頑張ります」
「実に謙虚なお答えですね…」
「それより、世間的にスクールアイドルの認知度はまだまだ低いと思ってます。今日は少しでもその存在に興味を持っていただけたらな…と思ってます」
「なるほど。あ、では、準備が整ったようなので、早速…」
「あの…一言いいですか…」
司会者の進行を遮って、手を挙げたのは、英玲奈だった。
「どうしても、言っておきたいことが…。私は今日のイベントに個人的に参加したんだ。もちろん多少の自信はあったが、それでも、まさか、決勝に残れるとは思ってなかったし…、勝ち残れるとも思っていなかった。正直、この結果には自分自信でもビックリしてる…。だから…これだけは信じてほしい…決して八百長なんかじゃないんだということを…。このライブと私のイベント参加は別物なんだということを…」
普段はクールなキャラクターの英玲奈が、神妙な面持ちでそう訴えると、会場は水を打ったように静まりかえった。
「アタシは信じてるよぉ!!」
その静寂を破ったのは、にこだった。
今まで聞いたこともないような、叫びにも似た大きな声だった。
その言葉を合図に、堰を切ったように英玲奈を励ます大歓声が木霊した。
「にこっち…」
「統堂英玲奈が八百長してたかどうかなんて知らないわよ。でも、彼女が疑われたら、花陽も同類だと思われるじゃない?そんなの可哀想でしょ?」
「にこちゃん、優しいにゃ!」
「と、当然よ」
凛に頭を撫でられ、照れるにこ…。
ステージ上では、観客の声援に対し、3人が深々と頭を下げている。
そのお辞儀は1分以上も続いた。
歓声はやがて…3人のパフォーマンスを促す手拍子へと変わっていった。
それを機に、音楽がカットインする。
スピーカーから流れてきたのは彼女たちの代表曲「private wars」。
歌、ダンスとも完璧だった。
ところどころ、アドリブで観客を煽る仕草も見られ、余裕すら感じられた。
ステージ慣れしていると言っていい。
A-RISEはこのイベント空間を、一瞬にして、自分たちののライブ会場に変えたのだった。
そして、息つく間もなく、たて続けてにもう1曲披露した。
「ハラショー…さすがA-RISEね」
絵里が唸る。
「あら、前は『素人同然のダンス』とか言ってなかったっけ?」
「真姫…それはアナタたちを鼓舞するためのセリフで…。ううん、違うの…まだあの時はスクールアイドルの本質をちゃんと理解していなかったの。歌って、踊るということが、どれだけ大変か…。でも今なら彼女たちのスゴさがわかるわ」
「ウチらはあの人たちを越えなきゃ、本戦にはいけないんやね」
「頭では理解していましたが…やはり…高い壁ですね」
「希ちゃんも海未ちゃんも、今さらじゃない?」
「穂乃果?」
「A-RISEはA-RISE、μ'sはμ's。私たちはどうやっても、自分たちのできることしかできないんだしさ、較べて見たところで始まらないよ」
「その通りね。たまには穂乃果もいいこと言うじゃない」
「にこちゃん、たまには…って」
「そうね。A-RISEとは音楽性も違うし…同じフィールドで張り合っても意味ないし」
真姫は自分の髪の毛を、指でクルクルと絡めながら言った。
その時だった。
ステージの上から、全く予期しない言葉が飛んできた。
「折角だから、μ'sにも歌ってもらいましょうよ!」
~つづく~