【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「えっ!?」
突然ステージ上から自分たちの名前を呼ばれ、穂乃果たち一同は顔を見渡した。
声の主は綺羅ツバサ。
何を思ったか、突然、μ'sに「1曲歌え」と呼び掛けてきたのだ。
もちろん、そんな打合せはしていない。
女性司会者も想定外といった感じで、頭に「?」が浮かんでいるようだった。
「μ'sの皆さん…お揃いなんでしょ?」
ツバサが、観戦していた穂乃果たちを指差す。
一瞬にして、観客の視線が集まった。
「目敏(めざと)いわね」
にこが呟いた。
「さっきも言ったけど、私たちはスクールアイドルの認知度を高めることも、ひとつの使命だと思ってるの。偶然にも、決勝に残った小泉さんは…音ノ木坂のスクールアイドル、μ'sの一員。しかも私たちと同じ地区で予備予選を勝ち上がっている者同士。だったら、今、この場所で私たちだけが曲を披露するのは、不公平じやないかしら」
ツバサは一気に捲し立てた。
あんじゅは「やれやれ」という表情で…、英玲奈はうっすらと笑みを浮かべて…彼女を見ている。
「私たちの時間を削ればいいだけのことでしょ?」
ツバサはマイク越しにスタッフに問い掛けた。
「穂乃果ちゃん…」
ことりが不安げな声を出す。
「ウチらにライブ会場を提供してみたり、曲を披露する場を設けてくれたり、色々と気を使ってくれるんやね」
希は苦笑いしている。
「私たちのことを買いかぶり過ぎではないでしょうか?」
「それだけ自信…というか、余裕がある…ってことじゃない?」
海未と真姫も次々に意見する。
「穂乃果…どうする?」
「絵里ちゃんはどう思う?」
「リーダーはあなたなんだから…任せるわ」
「…」
「何を悩んでるのよぅ。当然、やるべきでしょう」
「にこちゃん…」
「穂乃果、売られたケンカ、買うわよ!」
「…うん。わかった!受けよう!」
「穂乃果!」
「海未ちゃん、わかってる。リスクはあるよ。でも、それ以上に得るものは大きいよ」
「音源はどうするのです?」
「それなら持ってるわよ」
「今までの楽曲なら、この中にすべてあるから、向こうでスピーカーにさえ繋がれば音は流れるわ」
真姫が携帯の再生プレーヤーをポケットから出して、メンバーに見せた。
「ふふふ…やるしかないやん!」
「…仕方ないですね…」
「これこそがサプライズライブにゃ~!!」
「ホントに前哨戦になっちゃった…」
にこの顔は少し曳きつっている。
「にこちゃ~ん?」
「大丈夫よ。武者震いだから」
にこはことりに顔を覗かれ、慌てて伏せた。
「は~い!やります。音ノ木坂スクールアイドル、μ's、歌わせていただきます!!」
穂乃果の宣言に、拍手が起きる。
「それでこそ、μ'sだわ」
ツバサは、満足そうに微笑むと、英玲奈とあんじゅを連れ立って、袖へと消えた。
μ'sのメンバーがステージに向かう。
ことの成り行きを見守っていた花陽も、合流した。
「穂乃果ちゃん!」
「花陽ちゃん、大丈夫?」
「たぶん穂乃果ちゃんなら、やるって言うと思ってたから、心の準備はしてました」
「うん!」
互いに顔を見合わせ、ニッと笑う。
μ'sのメンバーはもちろん、全員私服。
ことりと真姫はハイヒールを履いている。
「ことりちゃんも真姫ちゃんも、それで踊れるん?」
「なんとかするわよ」
「うん、踊れなくはないと思うよ」
「でも、怪我はあかんよ…」
「それなら、私に考えがあるわ」
「えりち!」
「花陽ちゃんだって、まだお尻は万全じゃないんでしょ?」
「…」
「アカペラ!?」
絵里の提案にメンバー全員が、驚きの声をあげた。
「ダンスを合わせてるヒマはない、(ダンス)シューズもない、怪我人もいる…それしかないでしょう?」
「それにA-RISEとも、差別化が図れる…やね」
「その通り」
「でもアカペラの曲なんて…あっ!」
「歌えるわね…みんな!」
「穂乃果、音、外さないでくださいね。出だしが大事なんですから」
「任せて!…それじゃあ、いきますか!」
「会場にお集まりの皆さん、始めまして。私たちは音ノ木坂学園のスクールアイドル、μ'sです。A-RISEの皆さん、私たちにお時間をいただき、本当にありがとうございます。折角プレゼントしていただいた時間なので、精一杯、その恩に応えたいと思います。それでは、聴いてください…」
「♪愛してる、ばんざ~い!ここでよかった…私たちの今がここにある…」
~つづく~