【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
ピンポーン…
玄関のチャイムが鳴る。
「あ、来た、来た …」
エプロン姿のにこが、いそいそとドアを開ける。
すると、そこには立っていたのは…花陽だった。
「お待たせしました…」
少し息を切らしている。
「それ、家から持ってきたの?」
「はい、いいトレーニングになりました…」
そう答えた花陽の腕には、10kgの米が抱えられていた。
「や、やるわね…。まぁ、それよりあがって…」
「は、はい。では、失礼します…」
室内に入ると『小さいにこ』が3人出迎えた。
「あ、花陽さま、こんにちわ」
「花陽お姉さま、こんにちわ」
「はなよねーたま、こんにちわぁ」
「こころちゃん、ここあちゃん、こたろうくん…だっけ?こんにちわ。みんな元気かな?」
「はい、お陰さまで。それよりも、花陽さまは『お米の大会』で優勝されたそうで…おめでとうございます」
「あ、ありがとう。今日はね、その時にもらったお米を持ってきたんだよ。新米だから、すごく美味しいよ!」
「本当にいいの?」
コンロでお湯を沸かしているにこが、花陽に訊いた。
「もちろんです!元々はにこちゃんが教えてくれたイベントですし、これくらいのことでしたら」
「そういうことなら、遠慮なくいただくわ」
「はい!」
花陽は優しく微笑んだ。
利き米コンテストの決勝。
A-RISEの統堂英玲奈と3ポイント先取の早押し勝負に挑んだ花陽は、3対2で激闘を制し、見事に優勝商品の米俵2俵(米120kg)をゲットしたのだった。
ちなみに米俵自体はダミーだったのだが、翌日には10kgの米が12袋、自宅に配送されたのである(主催者側は、ひと月に10kgづつ…と考えていたようだが、花陽の希望で『一括納入』されたのは言うまでもない)。
花陽が今、にこの家に運んできたのは、その『12分の1』なのである。
「ここじゃ、落ち着かないでしょ?アタシの部屋に行こうか…」
「あ、お姉さま、私たちはお出掛けしますので、気になさらずに…」
「そう?遊びに行ってもいいけど、時間までには帰ってくるのよ」
「はい、お姉さま!行って参ります。ここあ、こたろう、お出掛けするわよ」
「はい!」
「あ~い…」
「では、私たちは、しばし公園で遊んで参りますので…花陽さまはどうぞごゆっくりと」
「あ、ありがとう…気を付けてね」
花陽は3人を笑顔で見送った。
「気を使わせちゃったかな?」
「デキた妹でしょ?」
「本当にしっかり者だね、こころちゃん」
「ま、まぁねぇ~。姉の教育がいいから」
「うん、そうなんだろうね」
「あれ?否定しないのね…。凛なら真っ先に『それは違うにゃ~!』とかいうのに…」
「あははは…凛ちゃんはにこちゃんのこと好きだからねぇ。つい、言いたくなっちゃうんだよ」
「ナメられてるだけじゃない?」
「慕われてるんだよ」
にこは急須にお湯を注ぐと、湯呑みとお茶菓子を盆に乗せ、自分の部屋へと移動した。
花陽も後を着いていく。
にこの部屋。
花陽はついこの間、メンバーと訪れたばかりだ。
…というより「押し掛けた」が正確な表現か。
ピンクを基調とした乙女チックな室内は、男子がひとり取り残されたら、恥ずかしさのあまり、数秒で部屋を出てしまうだろう。
こっちの方がよっぽど落ち着かないよね…と心の中で苦笑する花陽。
壁にはμ'sのポスターが貼られている。
しかし前回と違うのは『顔に細工がされていない』ということだった。
「い、一応『にことバックダンサー』は、終わったから…」
花陽は一言もそのことには触れなかったが、にこは自ら言い訳っぽく呟いた。
「妹さんたち、理解してくれた?」
「どうかしら?まぁ、あの子たちもバカじゃないからねぇ…」
「受け入れてくれるといいね?」
「それはアンタたち次第よ」
「ん?」
「μ'sがラブライブに出場できるかどうか…にかかってるんだから」
「確かに…」
にこが偶然とはいえ、A-RISEが出場した利き米コンテストで、やたら『前哨戦』と拘(こだわ)った理由は、そこにあるのかも知れない。
「あ、お米…ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
「正直、助かるわ」
「はい」
「念の為に訊くけど…同情…じゃないでしょうね?」
「えっ?」
「確かに『優勝したら、分け前をよこしなさいよ』とは言ったけど」
「そんなつもりで持ってきたわけじゃ…」
「母子家庭で子だくさん=にこの家は貧しい…みたいに思われるのは、アイドル好きを否定されること以上に、屈辱的なことだから」
「にこちゃん…。母子家庭で、妹弟(きょうだい)が多い…っていうのは、ビックリしたけど、貧しいとは思ってないよ」
「まぁ、アンタならそう言うわよね」
「いや、他のメンバーだって…。じゃなきゃ、自分の趣味に、あれだけのお金、注(つ)ぎ込めないもの」
「ん?なかなか痛いとこを突くじゃない」
にこはハッハッハッと高笑いした。
…が、すぐに
「と、言いつつ結構節約してるんだから」
と花陽の耳元で囁いた。
苦労してるとは思われたくないが、苦労してることは認めてほしい。
実に複雑な心情である。
花陽は、にこがことあるごとに、見栄を張ってしまう行動パターンの一端を理解した気がした。
~つづく~