【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「さて…と…。せっかく花陽が来てくれたから『昨日のライブ』の様子でも見てみようか?」
「はい!」
にこはそう言うと、机の上にあるパソコンを立ち上げた。
「♪にっこにっこに~!」
「今の起動音?」
「何よ、別にいいじゃない!」
「そうだけど…」
徹底してるなぁ…と顔がニヤけてしまう花陽。
「μ's、アキバ、サプライズライブ…と…これね」
「あ、昨日からまた再生数が増えてる…」
「まぁ、アタシも何回も見ちゃうからアレだけど」
「はい、私もです」
「どれどれ…」
…
《アカペラかよ、やるな!》
《ホントにガチ?打合わせ無し?なら、即興でこれだけ出来れば、たいしたもんだ!》
《誰だよ、コイツら》
《ツインテールの子、可愛い》
《いい曲ですね。μ'sの作品はどれも素敵ですが、こういうのがあると、幅が広がりますね》
《なにコレ?感動した!!》
《なんか聴いてたら急に涙が出てきた》
《小悪魔がひとり混じってる》
《A-RISE推しだけど、ちょっと浮気しそう》
《歌、下手すぎだろ》
《みんなの私服が見れて、得した気分になりました!衣装とは違って、それぞれの個性が際立っていましたよ!》
《μ's…神だわ。予選突破間違いないね!》
《1番右の子の服、センスいい!》
《第一声で寒イボ立った…》
《こんなん演出に決まってんじゃん…》
《しゃしゃり出てくるな!》
《合唱コンクールw》
《まさかのμ's登場。A-RISEの神対応に感謝!》
《普通にいい曲だと思います》
…
「コメント見ても、概ね、好評ですね」
「結構A-RISEファンからの中傷コメもあるけど」
「まぁ、それは仕方ないです…が…ところどころ、にこちゃんのコメも混じってますね…」
「ん?」
「それもかなりの数で…」
「それはさておき…」
「あ、ごまかした…」
花陽が苦笑いをした瞬間、にこが急に真面目な顔をした。
「?」
「…花陽はさ、なぜA-RISEが私たちに曲披露の機会を与えたと思う?」
「そこに戻りますか…」
花陽は首を傾げて、う~ん…と唸った。
μ'sがアカペラで曲を披露して『元々A-RISEの為に設定された』ライブの時間は終了した。
決勝戦後半に臨む、英玲奈と花陽はそのままステージに残ったが、スクールアイドル2組は、先程まで参加者が使用していた控え室に通された。
スタッフから「決勝戦が終わるまで居てもよい」と言われたが、双方とも戦いの行方が気になる為、そう長居をするつもりはない。
ドリンクバーで喉を潤すと、足早に外に出た。
その間、A-RISEと何も話さなかったのか…というとそういうわけでもない。
主に話をしたのは綺羅ツバサと穂乃果。
「やはり、アナタたちは素晴らしいわ。こういう『武器』も持っているとはね…。もはや、ただのスクールアイドルじゃない…ということを確信したわ」
社交辞令的挨拶も含まれているのだろうが、そう言ったツバサの表情は、とても嬉しそうだった。
「あ、ありがとうございます。なんか、貴重な時間を頂いて…」
「いいのよ。これでアナタたちの知名度も上がったんじゃないかしら。そして、それがスクールアイドルの地位向上…さらにはラブライブの発展に繋がれば、それはそれでいいと思ってるんだから…」
「 はぁ…」
「お互い、本選目指して頑張りましょう」
「は、はい!」
「でも、負けないわよ…」
「わ、私たちもです!」
穂乃果の答えに、ツバサとあんじゅは「ふふふ…」と笑いながら、控え室から姿を消していった。
そのあと、決勝戦で英玲奈を破り、優勝を果たした花陽がメンバーと合流。
時刻がちょうどお昼時であったことから、近くのファストフード店に立ち寄り、簡単な祝勝会を行った。
最初は激戦を振り返り、花陽の偉業(?)を褒め称えていたメンバーだったが、徐々に話題はサプライズライブについてへと移っていく。
「ぶっつけ本番のわりには、うまくいったにゃ…」
と、凛が言えば
「上出来ではないでしょうか。歌い終わったあとにもらった拍手は、今までとひと味もふた味も違いました」
「穂乃果ちゃんの第一声で、空気が変わったのがわかったよ。ちょっと、ゾクッとしちゃった…」
と海未もことりも興奮して語る。
「えりちの判断が良かったんやない?」
「まさか、あそこであの曲を選ぶとはねぇ…」
「真姫のピアノがあれば、もっと良かったんだけど」
「それは贅沢にゃ!」
口々に感想を述べていく。
誰もが満足そうだ。
「突然の…本当にハプニングだったけど、取り敢えず結果オーライ…ってことで…」
穂乃果がこの話をまとめようとした時、楽しい時間に終止符を打ったのが、にこだった。
「ところで、A-RISEの狙いはなんだったのかしら」
この一言で浮かれていた空気が一変する。
唐突に緊張感が訪れた。
「A-RISEの狙い?」
真姫がその言葉をオウム返しした。
「それはツバサさんが、言ってたじゃん。スクールアイドルの地位向上、ラブライブの発展の為だって…」
「穂乃果はその言葉を真に受けてるの?」
「えっ!」
「今、自分で言ったじゃない…『結果オーライだった』って」
「言ったけど…」
「じゃあ、失敗してたら?」
「えっ?」
「失敗してたら?」
「そ、それは…」
「アタシの実力があったから、うまくいったけど」
「私たち…やね」
「そこは聞き流しなさいよ…」
「つまり、にこちゃんはA-RISEが私たちを潰しにきたんじゃないか…って言いたいわけね…」
「真姫ちゃん…そんなことって…」
「そこは私も気にはなっていました。この間のライブ会場提供の件もそうですが、少しお節介が過ぎるのではないかと…。何も考えもなく、敵に塩を送るということがあるのでしょうか…」
「海未ちゃんまで…。それは…それはツバサさんたちがμ'sをライバルだと認めてくれてる証でしょ」
「彼女たちの言葉を額面通りに受けとるなら…ね」
「絵里ちゃん…」
「ただ穂乃果の言い分もわかるわ。その…言動に悪意みたいなものは感じられないのも確かだし」
「だよねぇ、だよねぇ」
「試されてるんじゃないかな?」
「ことりちゃん?」
「μ'sがA-RISEと対等に渡り合える存在なのかどうか…って。ううん、むしろ、そういう存在になってほしい…っていう願望?」
「同じ会場、同じ条件で歌って…コケるようなら、それまでのもの…。A-RISEのライバルにはなり得ない…ってことやね」
「ことりの私見ですけど。…花陽ちゃんはどう思う?」
「えっ?」
「ツバサさんではないけど、A-RISEのメンバーと一番長くいたのは、花陽ちゃんでしょ?何か感じたことはない?」
「は、はい…えっと…『正々堂々』です!」
「正々堂々?」
「はい、英玲奈さんの印象…。見た目クールですけど、あの人は熱いし真っ直ぐです。小細工とか…そういうのを嫌うタイプです。ツバサさんはわからないけど、英玲奈さんを見れば、多分、同じなんじゃないかと思います。でなければ、長い間、一緒に活動出来ないですから」
「かよちんも熱いにゃ」
「そしてツバサさんたちは、つまらないんだと思います」
「つまらない?」
「スクールアイドルとして、頂点を極めて…それはそれで良いのかも知れないないけど…もっと自分達のパフォーマンスを高めてくれる…そういう存在が、今は居ないんだと思います。だから、ことりちゃんの言う通り、自分達を脅(おびや)かすような存在の出現を待ち望んでるんだと思います」
「それがウチら…やと」
「はい」
「そうであれば光栄なことですが…」
「潰すとか潰さないとか…そういう考えはないと思います。純粋に真剣勝負がしたい…そういうことじゃないかと…」
「応えたいね…その想いに」
「穂乃果ちゃん」
「そして…超えたい!」
「そうですね。私たちは何度も逆境を乗り越えて来たんです。今回だってそうです」
「そうやね。ある意味ギャンブルやったけど…それに勝ったんやから」
「そうにゃ!凛たちは凛たちで、常に全力のパフォーマンスを見せればいいにゃ!」
「そうね。私たち挑戦者なんだから」
「…ということで、その話は終わったんだと…」
「アンタたちはピュア過ぎるのよ」
「そうかなぁ…。でも、にこちゃんが憧れてたA-RISEだよ。そういうことをする人たちじゃないでしょ?」
「それとこれとは別よ。今のアタシは単なるファンじゃなないからね。音ノ木坂のスクールアイドル部部長として、μ'sを失敗させるわけにはいかないんだから…」
「頼りにしてます!」
「アンタだけだよ、そう言ってくれるのは…」
そう言うとにこは、花陽の背後から抱きついた…。
~つづく~