【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「にこちゃん、それはどういうことかなぁ…」
しばし沈黙したあと、ようやく花陽が口開いた。
花陽を引き留めたのは、にこの
「今日はまだ帰さないんだからぁ」
という言葉。
「え~と、え~と…」
戸惑う花陽。
「花陽…」
「は、はい…」
「ここまま帰れると思って?」
「あ、いや…その…」
「花陽!」
「はい!」
「…」
ぴゃあ!誰か助けてぇ!
なに?なに?なにを言われるの?
「手伝っていきなさい」
「はい?」
「晩御飯作るのを」
「へっ?晩御飯?」
はぁ…なんだ、そういうこと…
思わせ振りな台詞を言わないでください…
花陽はその場にへたりこんだ。
「どうしたの?」
「て、手伝います…」
「ありがとう!そう言ってくれると思ったわ」
にこは満面の笑み。
「そうしたら、早速、野菜を…ん?どうしたの?」
「腰が抜けました…」
「はぁ?」
「ただいま帰りました!」
「ただいまです」
「たらいま」
にこと花陽が夕食を作り始めてから1時間ほど過ぎた頃、こころ、ここあ、こたろうの3妹弟が帰ってきた。
「お帰り。すぐに手洗いとうがいをしなさい」
「はい、お姉さま」
「はい、にこお姉さま」
「あ~い」
3人が洗面所に向かおうとしたとき、こころが花陽に気付いた。
「あら、花陽さま」
「こころちゃん、お帰りなさい」
「なにをなさっているのですか?」
「んふっ!みんなの晩御飯を作ってるんだよ!」
「まぁ、なんと!」
「今日は…ハンバーグとオムレツ、そしてポテトサラダです」
「ハンバーグ…しゅき…」
「こたろう君はオムレツじゃなくて、目玉焼きね」
「ありがどう…」
「ご飯炊けるまでは、まだ時間があるから、テレビでも見てなさい」
「は~い」
にこが声を掛けると、3妹弟は隣の部屋へ移動した。
「ハンバーグとオムレツは…あとは焼くだけね」
「ポテトサラダも出来ましたよ」
「お味噌汁は終わったし…」
「ご飯が炊ける頃合いを見計らって、仕上げればいいわね」
「そうですね」
「食べて行くんでしょ?」
「えっ?」
「作らせるだけ作らせといて『はい、サヨナラ』なんてマネ、すると思う?」
「いや、そんなことは…」
「遠慮しなくてもいいのよ」
「でも、ほら…明日学校だし…」
「別にいいじゃない、1日くらい行かなくても」
「ダメです!」
「アンタは本当に真面目だねぇ…。まぁ、それは冗談としても、アタシがこんなことを言うなんて、滅多にないことなんだから、たまには最後まで付き合いなさいよ」
「はぁ…」
「はい、決まり!じゃあ、すぐに家に電話して。『ご飯食べていくよ』って」
「は、はい…」
花陽はにこが食事に誘ってくれた嬉しさ半分、帰宅が遅くなることへの不安半分の気持ちで電話した。
にこにも電話に出てもらい、家族には了解を得た。
このシチュエーション…前にもありましたねぇ…
そう、ついこの間…
あの時は希ちゃんと、まさか『あんなこと』になるなんて…
今日はにこちゃんが…
いやいや、今日はさすがに…こころちゃんとかもいるし、それは…
「花陽?」
「は、はい!」
「ボーっとしてたみたいなだけど」
「あ、いえいえ、何でもないです!」
「顔が赤いけど…」
そう言うなり、いきなりにこは、自分の額を花陽の額に押し当てた。
反射的に身体ごと仰け反る花陽。
「なに?」
「チューされるのかと思って…」
「な、なに言ってるのよ!アタシはただ熱でもあるんじゃないかと…おかしなことを言うんじゃないわよ…」
「で、ですよねぇ!ちょっと急にでビックリしました。大丈夫です、熱はないです」
「なら、いいけど」
「す、すみません」
「…」
「…」
「にこお姉さま、鶴って折れますか?」
「えっ?鶴?」
なんとなく気まずい雰囲気を救ったのは、にこの妹…ここあだった。
「今、テレビでやってたんですけど、こころ姉さんも折り方知らない…って」
「鶴?鶴ねぇ…」
「はい、花陽は折れますよ」
「ん?」
「鶴くらいなら。教えてあげようか?」
「はい、お願いします」
「折り紙はある?」
「はい、こっちに」
「にこちゃん、ちょっといい?」
「いいわよ。まだご飯炊けないし」
「じゃあ、ちょっと…」
花陽は隣の部屋に移ると、ここあが用意した折り紙を手に取る。
「こうして…こうして…ここをこっちに折って、こうやって…仕上げ…と。はい、出来た!」
「うわぁ、お上手です」
「花陽お姉さま、すごいです」
「しゅごい…」
「お姉ちゃんね、折り紙得意なんだよ」
「そうなんですか?」
「他のも作れます?」
「うん。例えば…よいしょ…よいしょ…よいしょ…はい、ペンギンさん」
「まぁ、なんと!」
「ペンギンだ」
「ペンギン…」
「あとは…はい、イルカさん」
「なんか、すごいんですけど…」
ここあが、感嘆の声をあげる。
「さすが、お姉さまがバックダンサーから昇格させただけのことはありますね。やはりアイドルは、ひとつやふたつ、特技がなければ、生き残れませんものね」
「ふふふ…そうだね」
こころの辛辣な言葉にも、笑顔で答える花陽。
「じゃあ、今日は特別に…みんなの顔を折ってあげるね」
そう言うと、器用に2種類の紙を組み合わせ、4姉妹弟の顔を完成させた。
「たいしたものね…」
あとから様子を見にきたにこも、思わず誉めるほどの出来映え。
「芸は身を助ける…ね。将来はそういう職業に就いたら?」
「そうできればいいですけど…」
「…」
「?」
将来か…
にこはどうする?
もう卒業まで半年切った…
早く結論を出さないと…
~つづく~