【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

57 / 121
先輩禁止! その21 ~引き留められた理由(ワケ)~

 

 

 

 

 

「にこちゃん、それはどういうことかなぁ…」

しばし沈黙したあと、ようやく花陽が口開いた。

 

花陽を引き留めたのは、にこの

「今日はまだ帰さないんだからぁ」

という言葉。

 

「え~と、え~と…」

戸惑う花陽。

 

「花陽…」

「は、はい…」

「ここまま帰れると思って?」

「あ、いや…その…」

「花陽!」

「はい!」

「…」

 

 

 

ぴゃあ!誰か助けてぇ!

なに?なに?なにを言われるの?

 

 

 

「手伝っていきなさい」

「はい?」

「晩御飯作るのを」

「へっ?晩御飯?」

 

 

 

はぁ…なんだ、そういうこと…

思わせ振りな台詞を言わないでください…

花陽はその場にへたりこんだ。

 

 

 

「どうしたの?」

「て、手伝います…」

「ありがとう!そう言ってくれると思ったわ」

にこは満面の笑み。

「そうしたら、早速、野菜を…ん?どうしたの?」

「腰が抜けました…」

「はぁ?」

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました!」

「ただいまです」

「たらいま」

にこと花陽が夕食を作り始めてから1時間ほど過ぎた頃、こころ、ここあ、こたろうの3妹弟が帰ってきた。

「お帰り。すぐに手洗いとうがいをしなさい」

「はい、お姉さま」

「はい、にこお姉さま」

「あ~い」

3人が洗面所に向かおうとしたとき、こころが花陽に気付いた。

「あら、花陽さま」

「こころちゃん、お帰りなさい」

「なにをなさっているのですか?」

「んふっ!みんなの晩御飯を作ってるんだよ!」

「まぁ、なんと!」

「今日は…ハンバーグとオムレツ、そしてポテトサラダです」

「ハンバーグ…しゅき…」

「こたろう君はオムレツじゃなくて、目玉焼きね」

「ありがどう…」

「ご飯炊けるまでは、まだ時間があるから、テレビでも見てなさい」

「は~い」

にこが声を掛けると、3妹弟は隣の部屋へ移動した。

「ハンバーグとオムレツは…あとは焼くだけね」

「ポテトサラダも出来ましたよ」

「お味噌汁は終わったし…」

「ご飯が炊ける頃合いを見計らって、仕上げればいいわね」

「そうですね」

「食べて行くんでしょ?」

「えっ?」

「作らせるだけ作らせといて『はい、サヨナラ』なんてマネ、すると思う?」

「いや、そんなことは…」

「遠慮しなくてもいいのよ」

「でも、ほら…明日学校だし…」

「別にいいじゃない、1日くらい行かなくても」

「ダメです!」

「アンタは本当に真面目だねぇ…。まぁ、それは冗談としても、アタシがこんなことを言うなんて、滅多にないことなんだから、たまには最後まで付き合いなさいよ」

「はぁ…」

「はい、決まり!じゃあ、すぐに家に電話して。『ご飯食べていくよ』って」

「は、はい…」

花陽はにこが食事に誘ってくれた嬉しさ半分、帰宅が遅くなることへの不安半分の気持ちで電話した。

 

にこにも電話に出てもらい、家族には了解を得た。

 

 

 

このシチュエーション…前にもありましたねぇ…

そう、ついこの間…

あの時は希ちゃんと、まさか『あんなこと』になるなんて…

今日はにこちゃんが…

いやいや、今日はさすがに…こころちゃんとかもいるし、それは…

 

 

 

 

「花陽?」

「は、はい!」

「ボーっとしてたみたいなだけど」

「あ、いえいえ、何でもないです!」

「顔が赤いけど…」

そう言うなり、いきなりにこは、自分の額を花陽の額に押し当てた。

反射的に身体ごと仰け反る花陽。

「なに?」

「チューされるのかと思って…」

「な、なに言ってるのよ!アタシはただ熱でもあるんじゃないかと…おかしなことを言うんじゃないわよ…」

「で、ですよねぇ!ちょっと急にでビックリしました。大丈夫です、熱はないです」

「なら、いいけど」

「す、すみません」

 

「…」

 

「…」

 

 

「にこお姉さま、鶴って折れますか?」

「えっ?鶴?」

なんとなく気まずい雰囲気を救ったのは、にこの妹…ここあだった。

「今、テレビでやってたんですけど、こころ姉さんも折り方知らない…って」

「鶴?鶴ねぇ…」

「はい、花陽は折れますよ」

「ん?」

「鶴くらいなら。教えてあげようか?」

「はい、お願いします」

「折り紙はある?」

「はい、こっちに」

「にこちゃん、ちょっといい?」

「いいわよ。まだご飯炊けないし」

「じゃあ、ちょっと…」

花陽は隣の部屋に移ると、ここあが用意した折り紙を手に取る。

「こうして…こうして…ここをこっちに折って、こうやって…仕上げ…と。はい、出来た!」

「うわぁ、お上手です」

「花陽お姉さま、すごいです」

「しゅごい…」

「お姉ちゃんね、折り紙得意なんだよ」

「そうなんですか?」

「他のも作れます?」

「うん。例えば…よいしょ…よいしょ…よいしょ…はい、ペンギンさん」

「まぁ、なんと!」

「ペンギンだ」

「ペンギン…」

「あとは…はい、イルカさん」

「なんか、すごいんですけど…」

ここあが、感嘆の声をあげる。

「さすが、お姉さまがバックダンサーから昇格させただけのことはありますね。やはりアイドルは、ひとつやふたつ、特技がなければ、生き残れませんものね」

「ふふふ…そうだね」

こころの辛辣な言葉にも、笑顔で答える花陽。

「じゃあ、今日は特別に…みんなの顔を折ってあげるね」

そう言うと、器用に2種類の紙を組み合わせ、4姉妹弟の顔を完成させた。

「たいしたものね…」

あとから様子を見にきたにこも、思わず誉めるほどの出来映え。

「芸は身を助ける…ね。将来はそういう職業に就いたら?」

「そうできればいいですけど…」

「…」

「?」

 

将来か…

にこはどうする?

もう卒業まで半年切った…

早く結論を出さないと…

 

 

 

 

 

~つづく~

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。