【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「はい、じゃあ、みんな…お洋服脱いで…洗濯カゴに入れて…」
3人の中でも1番上のこころは、多少恥じらいを感じていたようだが、花陽に対する安心感なのか、言われるままに服を脱いでいく。
残りの2人は臆面もなく、すっぽんぽんになった。
こたろうの股間には、花陽が『普段目にしないもの』が付いていたが、凝視するわけにもいかず、かといって過剰に眼をそらすわけにもいかないため、平静を装うことに極力努めた。
幸い、こたろうはすぐに浴室に入って行ったので、さほど長く対面することはなかったのだが…。
…保母さんになったら、ああいうのを毎日見ることになるんだよねぇ…
慣れておかないと…なのかな…
自問自答する花陽。
思わず長考しそうになったが、すぐに気を取り直して、入浴を手伝う準備をする。
…といっても彼女はパーカーにショートパンツという格好であった為、靴下だけを脱ぎ、腕捲りをしただけだが。
「入るよぅ!」
一声掛けて、浴室の扉を開けた…
その瞬間…
バシャッ!
「ぴゃあ~!!」
響く花陽の絶叫!
「なに!?」
慌てて駆け寄る、にこ。
そして、全身びしょ濡れになった花陽を見て、すべてを理解。
「あぁ、やられちゃったか…」
「避けられませんでした…」
「こた!今日はお姉ちゃんじゃない…って言ったでしょ!」
「ふく、きてるの…しらなかった…」
「だからって、いつもやるな!って言ってるでしょうが!!」
「…ごめん…」
にこに怒られたこたろうはの顔は、見る見るうちに真っ赤になり、やがてシクシクと泣き始めた。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんは大丈夫だから泣かなくていいんだよ…」
もちろん花陽に非があるわけではないが、ここは大人としての対応をせざるを得ない。
…矢澤家の末っ子は、花陽が『普通に』風呂に入るものだと思い、ふざけてお湯を掛けたのらしい。
こたろうにとってはある意味、にこに対するお約束の『悪戯』だったようだ。
しかし…
「見事なまでにずぶ濡れね…」
「下着まで濡れちゃいました…」
「だったらアンタも一緒に入っちゃいなよ!」
「どこにですか?」
「お風呂に決まってるでしょ」
「えっ?」
「当たり前でしょ?もう夏じゃないんだし、そんな濡れたままの格好で、いつまでもいられるわけないじゃない」
「でも着替えが…」
「アタシのを貸してあげるわよ」
…希ちゃんの家ではスエットを借りて着たけど…
…にこちゃんのはちょっと小さ過ぎるような…
「…着れるかな…」
ついポロッと一言。
これに対し『希の家での件(くだり)』は知らないまでも、その意味を察したにこは
「失礼ね!」
と一喝。
「なんでもいいから、早く脱ぎなさいよ。風邪引くわよ!ほら、ほら」
「は、はい…」
にこは強引にパーカーを引っ張り、無理矢理それを奪い取る。
その勢いに押されて、花陽は仕方なく中に着ていたTシャツを脱ぎ始めた。
その姿を矢澤4姉妹弟が、じっと見つめている。
「ん?…いや、みんなでそんなジッと見てなくても…」
慌てて浴室の扉を閉める。
「にこちゃんも…」
「そ、そうね。脱いだら、そこに置いといて。とりあえず乾燥機に掛けてあげるから。じゃあ、アタシは後片付けしてくるから、あとはヨロシク!」
「は、はい…」
イソイソとその場を立ち去るにこ。
心なしか顔が赤い。
一方の花陽も、まさか自分が風呂に入ることは想定していなかったので、着ていたものは全部脱いだものの、どうしたら良いかわからない。
子供相手に変に隠して…というのもどうかと思うが、だからといって堂々と入る勇気もない。
「はっくしょん!」
そんなことを考えているうちに、くしゃみをした。
…これは早く入らないと、本当に風邪を引きますね…
「花陽さま?大丈夫ですか?」
中からこころの声。
「花陽お姉さま?」
ここあも心配して声を掛けている。
…そう、私はお姉さんになるんだから、恥ずかしがってちゃダメなのよ!
そう自分に言い聞かせた花陽は、意を決して中に入った。
「お待たせ…。ゴメンね、心配してくれた?」
「あ、はい…」
と言ったとたん、急にこころが黙りこんだ。
ここあも、こたろうも花陽を見て動きが止まった。
3人ともただの1点を見つめて呆(ほう)けている。
「ん?お姉ちゃん、なにかおかしい?」
ポカーン…としてる3人に、素朴な疑問をぶつける花陽。
「はい、お姉さまとはだいぶ違いますので…思わず…見とれてしまいました」
と言ったこころの視線の先は、花陽の胸元だった。
「想像以上です」
「にこねぇは…ペッタンコ…」
「あら、こたろうくん、それは言っちゃダメだよ。大きさは、人それぞれなんだから。それより、ほら、順番に頭と身体を洗わないと」
「は~い!」
「誰から?」
「下から順に」
「はい、じゃあ、こたろうくんからね。頭からシャワー掛けても平気かな?」
「へ~き~」
「じゃあ、いくよ。あ、お姉ちゃんにくっつかない…ぴゃあ!…こら!お顔をスリスリしないの」
「おっぱい…ぼよよんって…きもちいい…」
「でも、ダ~メ!…あん!モミモミもしちゃダメ!」
花陽の知り合いに幼児教育に携わっている者がいる為、話は聴いている。
これくらいの子供に『胸を触られる、尻を触られる』は日常茶飯事で、それをイチイチ気にしていたら、仕事として成り立たない…と。
もちろん頭では理解しているものの、直接『生』で触られることへの覚悟は、15歳の花陽にはまだなかった。
「こたろう、それはセクハラというのです。ママ以外の女の人にそういうことをしては、いけないのです!」
そんな悩める花陽に助け船を出したのは、次女こころだった。
「せくはら…って?」
「え~と…」
こころが答えに窮する。
性的嫌がらせ…って言ってもわからないよね…
「嫌だ…っていうのに、女の人にエッチなことをすること」
と花陽。
これで理解してくれたかな?
「えっち…って?」
ダメかぁ…
「エッチっていうのはねぇ…」
これは説明するのが面倒ですね…などと花陽が考えていた時だった。
「こたろうだけ、ズルい」
「えっ!ここあちゃん?」
「ここあもする」
「わっ!ここあちゃんまで!ダメ、ぷにぷにしないの!」
「花陽お姉さま…とっても柔らかいです」
「う、うん…ありがとう…なんだけど…アワアワの手でスベスベとかしちゃダメだってば…あん!そこもダメなの…うひゃっ!くすぐらないの!ストップ!ストップ!あん…こころちゃん、なんとかして…」
「…こころも参戦します!」
「うそっ!?…あっ…待って!…あん…あ~…」
花陽が3妹弟の頭と身体を洗い終わり、彼らから開放されたのは、入浴から30分ほど経過してからだった。
ぐったりとして浴室を出る。
そこにはにこが用意したバスタオルが置かれていた。
「にこちゃ~ん…」
身体を拭いたあと、バスタオルを巻き付け、脱衣所からにこを呼ぶ。
「あぁ、出たのね。疲れたでしょ?」
「はい…」
「小さい子供がいると、毎日こんななのよ」
「頭が下がります…それより、花陽の服は?」
「あ~、ゴメン!乾燥機に掛けるの忘れてた!」
「な、なんですとぉ!?」
花陽のハの字眉毛が、逆向きになる。
「ちょっと待ってて…今、替わりのものを持ってくるから」
「替わりのもの?」
一旦、脱衣所から姿を消したにこが手に何かを抱えて戻ってきた。
「これを穿きなさい」
「パンツ?うわっ!ちっちゃい…」
「未使用だから」
「ここあちゃんの?」
「アタシのよ!!!」
花陽はまじまじとそれを見た。
「にこちゃんマークがバックプリントされてる…」
「いいから、早く穿きなさいよ!」
「はい…」
笑いを堪えながら、脚を通す。
結果は…案の定…
「キツキツです…前はなんとか…ですが、お尻の方は食い込んでTバックみたいに…」
「うるさいわねぇ…ノーパンよりマシでしょ?あとこれ!」
「な、なんと…これは…パジャマ?」
「もう、今日は泊まっていきなさいよ」
「えっ?」
「風呂上がりに夜風に当たって、湯冷めから風邪なんか引かれても困るし」
「でも、明日は学校が」
「アンタは早起きなんだから、家に戻ってから制服に着替えて出てくればいいじゃない」
「でも…」
「デモもストもないの!大丈夫、家にはアタシが説得してあげるから」
「う~ん…」
「とにかく風邪引くから、早く着なさい」
「はぁ…」
渋々、にこが差し出したパジャマを着る花陽。
「七分袖?」
「長袖よ!」
「胸元が苦しいです」
「ボタンを外せばいいでしょ!」
「おっぱい、見えちゃいます…」
「全部外すからでしょ!」
「にこちゃん、いろいろ、サバ読んでますねぇ?」
「なにが?」
「身長とかスリーサイズとか…」
「贅沢言うなら、脱がして、外に放り出すわよ…」
「ぴゃあ!ごめんなさい」
結局、パジャマは着ずに、にこの所有物の中で、1番大きなトレーナーを借りた。
「七分袖?」
「長袖よ!!」
~つづく~