【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「とりあえず、これで電話は終わったわね…」
「はい…。でも、いくら家の許可をもらったとはいえ、朝帰りなんて、アイドルとしてあるまじき行為なんですからね!」
「アイドルとしてアルマジロの交尾?」
「あ、あるまじき行為です!…って、なんですか、それは!?」
「まぁまぁ…海未には口が避けても言わないけどね、そんなこと」
「間違っても言わないでくださいね」
花陽の頭の中に、海未が激怒している様子が浮かんできた。
同時に他のメンバーのリアクションも考える。
希ちゃんは…「そうそう、アルマジロと交…違うやん!」…かな?
エッチな話、好きそうだし。
絵里ちゃんは無言でスルーしそう。
ことりちゃんは、にっこり微笑んで「にこちゃ~ん…」。
でもスルー。
凛ちゃんと真姫ちゃんは「そのギャグ、さむいにゃ!」「なにそれ、意味わかんない」って言って、にこちゃんが怒るパターン…だね。
そう言いつつ、本当は凛ちゃんと真姫ちゃんは、にこちゃんが大好きなんだけど。
最後、穂乃果ちゃんは…聴いてなくて「なに?なに?」って、ひとり取り残されるパターン…。
「花陽?なに、ニヤニヤしてるの?」
「えっ?いえいえ…ところで、こころちゃんたちは?」
「寝たわよ」
「もう?…って、あっ!そろそろ8時半か…」
「普段はもう少し遅くまで起きてるけどね…それなりに気疲れもあったと思うし」
「悪いことしちゃったのかな?」
「そんなわけないでしょ!あの子たちがあんなに『はしゃいでる』姿、久々に見たわよ。花陽が遊んでくれて楽しかったみたい。…アタシも忙しいから、そんなに毎日は構ってあげられてないしね…」
にこが襖を開けると、3妹弟が仲良く川の字に寝ていた。
「可愛い寝顔ですね。こうやって見ると、にこちゃんの幼少期から順番に並んでるみたい」
「憎たらしいくらい似てるからね…」
「憎たらしいだなんて、そんな言い方…」
「だって、そうでしょ。宇宙No.1アイドルのにこさまは、この世の中に1人いれば充分じゃない。コピーが何人もいたら、価値がなくなるんだから」
どこまで本心かわからないが、実ににこらしい『言い訳』だ。
「でも、考えようによっては『最強の3姉妹ユニット』にもなりますよ」
「ま、まぁ…確かにそういう可能性もなくはないわね」
まんざらでもない様子。
「どうしますか?こころちゃんがアイドルやりたい…って言ったら?」
「好きにさせるわよ…自分の道だもの」
「にこちゃんが、妹さんたちを見てる時って、本当に優しい目をしますね」
「そ、そう?」
「やっぱり羨ましです。花陽もそういうお姉さんが欲しかったです」
「いるじゃない」
「?」
「花陽には、一緒に夢を叶えてくれる仲間が…」
「あ…」
「少なくともアタシと違って、充実したスクールアイドル生活を送れてるでしょ?だから逆にアタシは、アンタが羨ましいわ」
にこはサラッと言ったが、花陽にはズシリと響く言葉だった。
にこが入学してから味わった挫折や苦悩…それを自ら語ったことはない。
それだけに、こういう言葉を耳にするのは珍しかった。
思わずにこの顔を見る花陽。
…確かに私に音ノ木坂に入学して、怖いくらい順調にアイドルへの夢を叶えている…
…でも、にこちゃんは…
そんな花陽の心中を察したのか
「なに、難しい顔をしてるのよ!さて、アタシもお風呂入ってくるから、髪の毛乾かしたら、DVDでも観てて」
と襖を閉めて、明るい声で振る舞った。
「いいんですか?」
花陽もまた、にこの気持ちに応え『少し大袈裟に』返事した。
「アタシは穴が空くほど見てるからね」
「はい、ありがとうございます」
こうして2人は脱衣所へと向かった。
花陽は髪の毛を乾かしたあと、にこの部屋に入った。
DVDを観て待っていて…と言われたが、人の物を勝手に弄るのは気が引ける。
…とはいえ、同じ趣味をもつ者同士。
どんなDVDを所有しているかは気になるところ。
棚に並んでいるラインナップを一通り眺めてみる。
…さすがにこちゃん…
マニアックなDVDが並んでますね…
おぉ、こんなタイトルまで!
観たかったんだよねぇ…これ!…
…ん?…これは?…
右から左へと動いていた花陽の視線が、ピタリと止まった。
「にこ、2歳…3歳…4歳…5歳…」
そのタイトルを呟いた花陽には、なんとなくピンとくるものがあった。
「これはきっと幼き頃のにこちゃんが、マイクを持って歌ってる映像ですね」
花陽が玩具のマイクを手に、歌手の真似事を始めたのは2歳からであり、その頃の映像が家にある。
漠然と憧れていたアイドルという職業…。
小学生になり、花陽はそれを諦めたのだが…
「にこちゃんはブレなかったんですね…」
そのDVDを手に取り、ひとり呟いた。
だが、やはりそれを観る勇気は、花陽にはなかった。
ただ、ジッとそのケースを眺めていた。
「どうしたの?」
気付くと花陽の後ろににこが立っていた。
「えっ!?あぁ…」
「観てなかったの?」
「色々有りすぎて目移りしちゃったというか、なんというか…」
「気に入ったのがあったら、貸してあげるわよ」
「本当に?」
「アンタくらいしか、わかる人いないでしょ」
「あははは…そうですね」
花陽は笑いながら、1枚のDVDを手に取った。
「そうしたら、これを借りていきますね」
「なにそれ?」
「『にこ、2さい…』」
「それはダメ!」
花陽が言い終わらないうちに、にこが被せぎみに叫ぶと、その手からDVDを奪った。
「こんなもの、良く見つけたわね…でも、これはダメ!」
「うふっ…。観たいですけどねぇ、にこちゃんのちっちゃい頃の映像」
「今と変わんないわよ」
「…そうですね…。その頃からの夢を、今も追い続けてるなんて…やっぱり、にこちゃんはスゴいです」
「アンタは違うの?」
「私は一度諦めた夢ですから…。穂乃果ちゃんに誘われなかったら…今頃、何してたんでしょうね」
「それはアタシも同じよ。穂乃果たちが来なければ、部室に閉じ籠って、ひたすらDVDを観るだけの毎日だったかも」
「花陽は…にこちゃんがいてくれて、本当に良かった!…って思ってます」
「ん?」
「だって、こんなに趣味の合う人が身近にいるなんて…これまでの過去を振り返れば、奇跡じゃないですか」
「そうかもね」
「何よりも、ひとりでも信念を曲げずに、これまでやってきたこと…本当に、本当に尊敬してます」
「アンタだけだよ、そんなこと言ってくれるのは。そもそも凛も真姫も先輩だとすら思ってないからね」
「そんなことないですよ。凛ちゃんも真姫ちゃんも、にこちゃんのこと、大好きですよ」
「そんなこと…知ってるけどさ…もう少し、接し方ってあるでしょ?」
「でも、ほら、μ'sは先輩禁止だから…」
「だったら、花陽は?」
「えっ?」
「アンタはアタシの事、先輩として見てない?」
「にこちゃん…?」
花陽はこの時、にこがなにを言わんとしているのか、まだ理解していなかった…。
~つづく~