【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「花陽は、凛や真姫と違って、アタシに気を使い過ぎるんじゃないか…ってこと」
「そうかな…」
「今日だって…『先輩の命令』だから、従っただけでしょ?嫌なら嫌だって、はっきり言えばいいのよ」
「そんなことないですよ。命令だなんて…」
「アンタは本当に優しいね…」
そう言うとにこは突然、花陽の両手を握り締めた。
「に、にこちゃん!?」
「花陽…ありがとう。今日は久々に楽させてもらったわ」
「い、いえ…こちらこそ、色々勉強させてもらったし、楽しかったですよ」
「うん、また頼むわ」
「はい。出来ることがあれば喜んで!」
…はぁ…この娘は人を疑うということをしないのかしら…
普段はネガティブキャラなのに、どうしてこうも素直なの…
アタシも純真無垢の頃はあったけど…もうその時には戻れないのよね…
「にこちゃん?」
「ん?な、なんでもない…。さあ、歯磨きとかして寝る準備するわよ」
と二人は洗面台へ移動する。
「…あ、歯ブラシは持ってないけど…」
「使ってないのがいっぱいあるから…はい!」
にこが引出しを開けると、山のように『歯磨きセット』が現れた。
「ママ…じゃない、母は仕事で出張が多くて…今日もなんだけど…それで、ビジネスホテルに良く泊まるの。これはその時の戦利品。今日のところはこれで我慢して」
「我慢だなんて…充分です」
「最近のは、わりと質も良くなってるのよ」
「そうなんですね…」
「今、アンタ『なんて、貧乏ったらしいんでしょう…』って思ってるでしょ?」
「思ってないです」
「母の稼ぎはいいし、保険金、遺族年金も入るから、それなりの暮らしはさせてもらってるけどさ…締めるところは締めないと…」
…保険金?遺族年金?…
…部屋に遺影らしきものはなかったけど…
「にこちゃんのお父さんって…」
「察する通りよ…それ以上はノーコメント」
「は、はい」
「同情ってヤツは、一番嫌いなんだから」
「わかりました」
そうして2人は一緒に、黙々と歯を磨いた。
「さて…今日はもう寝るわよ。アンタは、朝、一旦家に帰るんだから、少し早く起きなきゃ…でしょ?」
「そうですね…」
「…と言っても、来客用の寝具なんてここにはないから、アタシと一緒のベッドに寝てもらうんだけど」
「わぁ…」
「大丈夫よ。それなりの大きさなんだから」
「は、はい」
凛がいたら、確実に
「にこちゃんには大きすぎるにぁ~」
と弄られるところ。
そういう意味では花陽のリアクションは物足りない。
…ダメだわ、刺激を求めすぎるとバカになる…
にこは頭を小さく左右に振った。
「にこちゃん、どうかした?」
「なんでもない」
…今日、2人は何度こんな会話をしただろうか…。
「花陽は奥に入って」
「花陽が奥ですか?」
「壁際なら、どんなに寝相が悪くても、ベッドから落ちる心配はないでしょ?」
「そんな気を使っていただなくても」
「使うわよ。また、お尻でも打たれたら、面倒じゃない」
「…すみません…。でも花陽はそんなに寝相は悪くないですけど」
「いいから、早く入りなさいよ」
「はい」
うんしょ、うんしょ…と言いながら、花陽が先にベッドに入る。
電気消すわよ…とにこ。
『希の部屋の時』と違い、真っ暗になった。
「暗いの苦手?」
にこがベッドに入りながら訊いた。
「いえ、大丈夫です?にこちゃんは?」
「明るいと寝れない。本当はアイマスクしたいくらい。でもパックするとできないから…」
「そういえば今日は?」
「もういいわよ、今日は。…それにしても…さすがにひとり横にいると暖かさが全然違うわね」
「寒くなりましたからね…」
「それもそうだけど…。じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい…」
「…」
「…」
「こういう時って、寝るタイミングが難しいですね」
「寝ようと意識すると寝れないわね」
「枕投げでもします?今日は海未ちゃん、いませんし」
「アンタにしては、面白いことを言うわね…。」
「あの時は、まだ馴れてなくて、凛ちゃんと2人、ただ怯えていましたけど」
「アタシは不意打ちをくらって、瞬殺されたわ」
「次があったら、ちゃんと参加したいですねぇ」
「アタシはゴメンよ。ひとり狙われるのがオチだから」
「じぁあ、チーム戦にします?3チームに分けて」
「そこまでしてやりたい?」
「…というか、前回は本当に見てるだけだったので…」
「アンタも枕投げだなんて、まだまだ子供ねぇ…」
「あんまり、そういうのやってこなかったから…。みんなで、盛り上がるのとか」
花陽はへへへ…と笑った。
「アタシはひとりの方が楽だったりするけどね」
「今も?」
「今は…まぁ、ときどき…」
にこは仰向けだった体勢を変え、花陽に背を向けた。
「にこちゃん…聴いていいかな?」
「なに?」
「にこちゃんが最初にやってた時のユニット名」
「『ラブリーエンジェル』よ」
「ラブリーエンジェル?」
…ダー○ィペア?…
花陽は、とあるアニメの主人公を思い起こした…
「わりとベタですね」
「いいのよ。アイドルなんて『覚えてもらってナンボ』でしょ」
「そうですね…。それで…一緒にスクールアイドルしてたお友達って…今は?」
「…」
「あ、訊いちゃいけなかったかな…」
「別にいいけど…。2人に見せたいわ、アタシが目指してたのはこれなんだ!って」
「見せたい?…」
「ひとりは転校して、ひとりは辞めたわ」
「えっ!?」
「ア、アタシが原因じゃないわよ…」
「あ、うん…」
「あの娘たちもアイドルになりたかったのは事実。でも本気度っていうか、覚悟が足りなかったのよね。だから凄いと思うわ…μ'sは。アンタはともかく、アイドルのアの字も頭になかった連中が、毎日真剣に取り組んでるんだから」
「うん、うん」
「あ、これも内緒だからね。凛とか真姫とか、すぐに調子に乗るから」
にこは暗闇の中、身体の向きを反対に変えると、花陽に顔を近づけて言い聞かせた。
~つづく~