【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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先輩禁止! その26 ~ギュっと~

 

 

 

 

「折角だから、もうひとつ訊いてもいい?」

「今度は何よ?」

「にこちゃんは…高校卒業したら、どうするの?」

「どう…って…」

「進路…」

「あぁ、進路ね…」

「この時期にきて、決まってないことはないよね?」

「まぁね…」

「進学?就職?」

「専門学校に行こうと思ってる」

「専門…学校?」

「でも、まだ悩んでる」

「何の専門学校?」

「ふたつあるの。ひとつは調理師」

「あ、にこちゃん、お料理上手だもんね」

「アイドルとして、活動できる時間なんて、アッと言う間じゃない。引退しても、手に職付けてれば、なんとかなる」

「アイドルにはなるんだ」

「当たり前じゃない。それがアタシの夢なんだから」

「うん、そうだね」

「ただ…大人になった分だけ、現実が見えてきたのも事実。将来に保険は掛けておかないと…」

「なるほど…」

「それと、もうひとつは…演劇の専門学校」

「演劇?」

「まぁ、似たような理由だけど。μ's始めて思い知らされたことがあって…発声とかダンスとか…基本が出来ていない」

「そうかな…」

「9人いるから埋没するけど、アタシひとりだけで見たら…可愛さだけは負けないけど…それ以外は…」

「はぁ…」

「見た目だけのアイドルなら、それでいい…いや、良くないわね。最近の芸能会は実力もないと、生き残れないから」

「アイドルにも格差社会はありますものね」

「だからイチから基礎を学ぶ必要があるんじゃないか…ってことね」

「…」

「なに?おかしなことを言った?」

「いえ、そうじゃなくて…ちょっと、感動したというか…。ちゃんと将来のことを考えてるんだ…と思って」

「当たり前じゃない。いつまでも高校生のままでいられないんだから」

「絵里ちゃんと希ちゃんは?」

「絵里は4大に進学するんじゃない?学部までは知らないけど」

「ふむふむ」

「希は…旅行会社に就職するみたいよ」

「旅行会社?」

「ツアコンにでもなるんじゃない」

「あ、それでパワースポット回りとかしそうですね」

「そんな都合良くいかないと思うけど」

「でも…みんな卒業しちゃうんですね」

「そうね…」

「そうしたら…そうしたらμ'sはどうなっちゃうのかな…」

「…スクールアイドルなんだから、卒業したら出来ないわよ」

「…」

「その替わり、新入生が入る…それでいいんじゃない?」

「…なのかな?」

「そもそも部活なのよ、部活。結果としてアタシたちが初代になったけど、どこの部活だって同じじゃない」

「そうですけど…寂しいです…」

「ちょっと、勝手に感傷に浸ってるけど、まだ追い出さないでよね。ラブライブ本選に出るって目標は果たしてないんだし、出るだけじゃなくて優勝目指してるんだから」

「う、うん」

「やるだけやって、結果出して…そのあとのことは、それから考えればいいの」

「さすが部長。やっぱりにこちゃんは尊敬できる先輩です!」

花陽はグッとにこを引き寄せた。

「あ、こら!急に…」

にこは突然抱き締められ動揺する。

「よくわからないけど、ギュっしたい気分なんです」

「アンタねぇ…」

と言いかけて、にこはすぐに黙りこんだ。

抱き締められたにこの顔は、花陽の胸元へ引き寄せられていた。

 

…あ、やわらかい…

 

にこは反射的に花陽の胸に顔を埋めると、子供が甘えるようにスリスリと擦りつけた。

 

…って、アタシは何をしてるのよ…

でも…

この安心感は…なに?…

すごく、温かい…

 

いやいや、後輩に甘えてどうするの…

 

「花陽!アンタはアッチ向きなさいよ!」

「アッチ?」

「壁の方」

「はぁ…」

取り敢えず指示に従う。

すると今度はにこが、後ろから花陽を抱き締めた。

「ぴゃあ!に、にこちゃん」

「後輩のクセに、このにこさまを『よしよし』するとは、どういうこと?立場が逆でしょ?」

「何故でしょう?なんかお話してたら、急に労(いたわ)ってあげなきゃ感が強くなっちゃって…」

「ふん!生意気よ」

「はい…。でも、にこちゃん…花陽の胸にスリスリしてたけど…」

「そ、それは、その…」

「してもいいですよ…それくらいなら…」

「な、なに言ってるのよ…このアタシがそんなこと…希じゃないんだから…」

「でも昼間…『希にはワシワシさせて、アタシはダメなの』みたいなこと、言ってましたよね?」

「こ、言葉の綾よ」

「じゃあ、絶対にしませんね?」

「先輩をからかうな」

「先輩禁止でしたよね?」

「…」

「な~んて、ウソですよ…」

「…」

「あれ?にこちゃん?」

「…」

「怒りました?…」

「ウソじゃ、済まされないよ!」

「ん?」

「アタシを本気にさせたら怖いんだから!」

にこは掛けていた布団を跳ね上げると、花陽の上に覆い被さった。

「花陽、覚悟!!」

「えっ?えっ?」

「…なぁ~んて…」

「ひょえ~…襲われるかと思いました…」

「これで、おあいこ」

「は、はい…」

「花陽…」

「はい」

「でも、ちょっとだけ、わがままを聴いてほしいの」

「はい?」

「さっき…すごく温かかった…」

「えっ?」

「だから、一緒にギュっとしながら寝て…」

「…はい…」

「今、笑ったでしょ!」

「いや…その…『素』のにこちゃんが見れて嬉しいな…と思って」

「ばか…」

「じゃあ、ギュっしますよ」

「ちょっと待って…」

にこは掛け布団を元に戻した。

「いいわよ」

「はい、じゃあ…ギュっ!」

「…アンタ…本当にプニプニしてて、気持ちいいわね。もっと早くに気付けばよかったわ…。これから毎日一緒に寝てくれない?」

「花陽は抱き枕じゃないですよ」

「ぐっすり寝れそうだわ」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

「花陽…」

「はい」

「最初はね、アンタたちがアタシを誘ってきた時、絶対続かないと思ったの」

「…部活のことですか?」

「そう」

「まぁ、そうですね…花陽も半信半疑なとこがありましたし…」

「でもさぁ、花陽…アンタがいたから協力してもいいかなって思ったんだ」

「え?」

「アンタだけだよ、アタシのことを馬鹿にしないで付き合ってくれたのは」

「みんな、そんなつもりはないですよ」

「少しは理解してくれてるとは思うけどね。アイドルの本質は、真のアイドル好きじゃないとわからないのよ」

「それも、わからなくはないです…」

「守ってね」

「へっ?」

「部活を…」

「な、なにを突然?」

「アタシが帰る場所を残しておきなさいよ」

「にこちゃん…」

「頼むわよ!」

「…」

「返事は?」

「…」

「返事…って、泣いてるの?」

「だって…急に変なことを言うから…なんか、今すぐいなくなっちゃうみたいで…」

「バカねぇ、そんなわけないじゃないの。言ったでしょ…ラブライブで優勝するって!こんな中途半端な状態で辞めないわよ」

「良かった…」

「さて…下らない話をしてないで、いい加減寝るわよ」

「下らなくはないですけど」

「いいから。睡眠不足はお肌の敵なのよ」

「は~い」

「じゃあ、おやすみ…」

「おやすみなさい…」

 

 

 

それからほどなくして、ふたりは深い眠りに落ちた。

真っ暗な部屋に、にこと花陽の寝息だけが静かに聞こえた…。

 

 

 

 

 

~つづく~

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