【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「折角だから、もうひとつ訊いてもいい?」
「今度は何よ?」
「にこちゃんは…高校卒業したら、どうするの?」
「どう…って…」
「進路…」
「あぁ、進路ね…」
「この時期にきて、決まってないことはないよね?」
「まぁね…」
「進学?就職?」
「専門学校に行こうと思ってる」
「専門…学校?」
「でも、まだ悩んでる」
「何の専門学校?」
「ふたつあるの。ひとつは調理師」
「あ、にこちゃん、お料理上手だもんね」
「アイドルとして、活動できる時間なんて、アッと言う間じゃない。引退しても、手に職付けてれば、なんとかなる」
「アイドルにはなるんだ」
「当たり前じゃない。それがアタシの夢なんだから」
「うん、そうだね」
「ただ…大人になった分だけ、現実が見えてきたのも事実。将来に保険は掛けておかないと…」
「なるほど…」
「それと、もうひとつは…演劇の専門学校」
「演劇?」
「まぁ、似たような理由だけど。μ's始めて思い知らされたことがあって…発声とかダンスとか…基本が出来ていない」
「そうかな…」
「9人いるから埋没するけど、アタシひとりだけで見たら…可愛さだけは負けないけど…それ以外は…」
「はぁ…」
「見た目だけのアイドルなら、それでいい…いや、良くないわね。最近の芸能会は実力もないと、生き残れないから」
「アイドルにも格差社会はありますものね」
「だからイチから基礎を学ぶ必要があるんじゃないか…ってことね」
「…」
「なに?おかしなことを言った?」
「いえ、そうじゃなくて…ちょっと、感動したというか…。ちゃんと将来のことを考えてるんだ…と思って」
「当たり前じゃない。いつまでも高校生のままでいられないんだから」
「絵里ちゃんと希ちゃんは?」
「絵里は4大に進学するんじゃない?学部までは知らないけど」
「ふむふむ」
「希は…旅行会社に就職するみたいよ」
「旅行会社?」
「ツアコンにでもなるんじゃない」
「あ、それでパワースポット回りとかしそうですね」
「そんな都合良くいかないと思うけど」
「でも…みんな卒業しちゃうんですね」
「そうね…」
「そうしたら…そうしたらμ'sはどうなっちゃうのかな…」
「…スクールアイドルなんだから、卒業したら出来ないわよ」
「…」
「その替わり、新入生が入る…それでいいんじゃない?」
「…なのかな?」
「そもそも部活なのよ、部活。結果としてアタシたちが初代になったけど、どこの部活だって同じじゃない」
「そうですけど…寂しいです…」
「ちょっと、勝手に感傷に浸ってるけど、まだ追い出さないでよね。ラブライブ本選に出るって目標は果たしてないんだし、出るだけじゃなくて優勝目指してるんだから」
「う、うん」
「やるだけやって、結果出して…そのあとのことは、それから考えればいいの」
「さすが部長。やっぱりにこちゃんは尊敬できる先輩です!」
花陽はグッとにこを引き寄せた。
「あ、こら!急に…」
にこは突然抱き締められ動揺する。
「よくわからないけど、ギュっしたい気分なんです」
「アンタねぇ…」
と言いかけて、にこはすぐに黙りこんだ。
抱き締められたにこの顔は、花陽の胸元へ引き寄せられていた。
…あ、やわらかい…
にこは反射的に花陽の胸に顔を埋めると、子供が甘えるようにスリスリと擦りつけた。
…って、アタシは何をしてるのよ…
でも…
この安心感は…なに?…
すごく、温かい…
いやいや、後輩に甘えてどうするの…
「花陽!アンタはアッチ向きなさいよ!」
「アッチ?」
「壁の方」
「はぁ…」
取り敢えず指示に従う。
すると今度はにこが、後ろから花陽を抱き締めた。
「ぴゃあ!に、にこちゃん」
「後輩のクセに、このにこさまを『よしよし』するとは、どういうこと?立場が逆でしょ?」
「何故でしょう?なんかお話してたら、急に労(いたわ)ってあげなきゃ感が強くなっちゃって…」
「ふん!生意気よ」
「はい…。でも、にこちゃん…花陽の胸にスリスリしてたけど…」
「そ、それは、その…」
「してもいいですよ…それくらいなら…」
「な、なに言ってるのよ…このアタシがそんなこと…希じゃないんだから…」
「でも昼間…『希にはワシワシさせて、アタシはダメなの』みたいなこと、言ってましたよね?」
「こ、言葉の綾よ」
「じゃあ、絶対にしませんね?」
「先輩をからかうな」
「先輩禁止でしたよね?」
「…」
「な~んて、ウソですよ…」
「…」
「あれ?にこちゃん?」
「…」
「怒りました?…」
「ウソじゃ、済まされないよ!」
「ん?」
「アタシを本気にさせたら怖いんだから!」
にこは掛けていた布団を跳ね上げると、花陽の上に覆い被さった。
「花陽、覚悟!!」
「えっ?えっ?」
「…なぁ~んて…」
「ひょえ~…襲われるかと思いました…」
「これで、おあいこ」
「は、はい…」
「花陽…」
「はい」
「でも、ちょっとだけ、わがままを聴いてほしいの」
「はい?」
「さっき…すごく温かかった…」
「えっ?」
「だから、一緒にギュっとしながら寝て…」
「…はい…」
「今、笑ったでしょ!」
「いや…その…『素』のにこちゃんが見れて嬉しいな…と思って」
「ばか…」
「じゃあ、ギュっしますよ」
「ちょっと待って…」
にこは掛け布団を元に戻した。
「いいわよ」
「はい、じゃあ…ギュっ!」
「…アンタ…本当にプニプニしてて、気持ちいいわね。もっと早くに気付けばよかったわ…。これから毎日一緒に寝てくれない?」
「花陽は抱き枕じゃないですよ」
「ぐっすり寝れそうだわ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「花陽…」
「はい」
「最初はね、アンタたちがアタシを誘ってきた時、絶対続かないと思ったの」
「…部活のことですか?」
「そう」
「まぁ、そうですね…花陽も半信半疑なとこがありましたし…」
「でもさぁ、花陽…アンタがいたから協力してもいいかなって思ったんだ」
「え?」
「アンタだけだよ、アタシのことを馬鹿にしないで付き合ってくれたのは」
「みんな、そんなつもりはないですよ」
「少しは理解してくれてるとは思うけどね。アイドルの本質は、真のアイドル好きじゃないとわからないのよ」
「それも、わからなくはないです…」
「守ってね」
「へっ?」
「部活を…」
「な、なにを突然?」
「アタシが帰る場所を残しておきなさいよ」
「にこちゃん…」
「頼むわよ!」
「…」
「返事は?」
「…」
「返事…って、泣いてるの?」
「だって…急に変なことを言うから…なんか、今すぐいなくなっちゃうみたいで…」
「バカねぇ、そんなわけないじゃないの。言ったでしょ…ラブライブで優勝するって!こんな中途半端な状態で辞めないわよ」
「良かった…」
「さて…下らない話をしてないで、いい加減寝るわよ」
「下らなくはないですけど」
「いいから。睡眠不足はお肌の敵なのよ」
「は~い」
「じゃあ、おやすみ…」
「おやすみなさい…」
それからほどなくして、ふたりは深い眠りに落ちた。
真っ暗な部屋に、にこと花陽の寝息だけが静かに聞こえた…。
~つづく~