【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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にこ編は一旦、完結です。

※一部加筆修正しました。



先輩禁止! その27 ~一文字違うだけで~

 

「かよちん、遅いにゃ~」

「具合でも悪いのしら?」

「あっ、来た!」

「はぁ…はぁ… ごめんね…遅くなっちゃった…」

「花陽が遅れてくるなんて、珍しいわね」

「ちょっと、寝坊しちゃって…」

「寝坊?かよちんが?」

「う、うん…。あ、ほら、急がないと…」

と言って先に歩き出す花陽。

「かよちん、カバンは?」

「カ、カバン?あ、忘れてきちゃった!」

「お弁当も?」

「う、うん…」

「慌てるにも程があるんじゃない?」

「そ、そうだね…あははは…」

凛と真姫は不思議そうに顔を見合わせた。

 

「何か隠してるわね」

「怪しすぎにゃ…。それに真姫ちゃん…今日のかよちん、なんかエッチじゃないかにゃ?」

「私も会った瞬間ちょっと感じたわ。具体的に何がどう…って言えないけど…」

「う~ん…う~ん…」

凛は唸りながら、花陽の後ろ姿を凝視した。

「わかったにゃ!制服のウエストがキュッとなってるにゃ!」

「あ、本当ね」

「だから、かよちんのおっきなおっぱいが、より強調されて見えるにゃ!」

「そういえば、スカートもいつもより短い気がするわ…」

「ホントにゃ!パンツ見えそう」

凛は歩きながら、スカートの中を覗くフリをした。

「こらこら…」

『フリ』だとわかっていても、真姫は注意せずにはいられない。

「ん?どうしたの?何かあった?」

2人の前を歩いている花陽が、振り返って声を掛けた。

「あ…なんでもないにゃ…」

「ゆっくり歩いてると遅刻しちゃうよ」

2人はうん、うんと頷きながら、花陽の後を追う。

「かよちんがイケイケに目覚めたにゃ…」

「まさか…」

「利き米コンテストで優勝して知名度が上がったところで、次なる戦略は『エロ可愛い 』で売り出すつもりにゃ…」

「う~ん…持ってるポテンシャルは高いから、否定はしないけど…でも花陽がその路線って…」

「そうかな?凛はもっと、かよちんのいやらしさを前面に打ち出した方がいいと思うけどにゃ。かよちんは大人し過ぎなんだにゃ!」

「今のままでも充分だと思うわ。ガツガツする花陽って、アタシはなんかイヤ!」

真姫の声が、少し大きくなった。

「どうしたの、さっきから?」

それに気付き、再び花陽が振り返って訊いた。

「今日の花陽は、スカートが短いんじゃない?…って話してたの」

「真姫ちゃん、それ言っちゃうにゃ?」

「えっ?あ、スカート丈?…やっぱり、わかっちゃう?…お洗濯したら縮んじゃって…」

「洗濯したにゃ?」

「今の時期に?」

「う、うん…ちょっと汚れが目立ったとこがあって…」

「ブレザーも洗ったの?」

「う、うん、ブレザーも…これもちっちゃいよね」

「おっぱいが窮屈そうにゃ」

「そ、そうかな…」

「それとも花陽が太ったのかな、練習、少しお休みしてたし…」

「そうかもね…」

真姫はいつも通り(?)気のない返事。

しかし凛は声には出さないものの『?』マークが頭に渦巻いたままの様子だった。

「かよちん、大丈夫?汗がスゴいにゃ!」

「うん、大丈夫!大丈夫!ほら、走ってきたから」

 

 

 

…だから、にこちゃん、すぐバレる…って言ったのに…

 

花陽は冷や汗が止まらなかった。

 

 

 

 

 

話は1時間ほど前に遡る…。

 

 

 

♪にっこにっこに~ にっこにっこに~ にっこにっこに~…

「…う~ん…」

にこが目覚ましに手を伸ばし、アラームを止めた。

花陽もその音に気付き、目を覚ました。

「…おはよう…ございます…」

「おはよう…」

にこはベッドから這い出て、真っ暗な部屋の電気を点けると、カーテンを開いた。

続けてガラス窓と雨戸を開く。

眩しい光が差し込んできた。

「う~ん…今日はいい天気ね…」

「…そうですか…」

花陽はまだ、頭が働いておらず、ボーっとしている。

辛うじてにこの部屋で朝を迎えたことは理解している。

「にこちゃん、今、何時ですか…」

「7時よ」

「…7時ですか…7時…ぴゃあ!遅刻する!」

「大丈夫よ。アタシはいつもこの時間に起きてるんだから」

「ダメなんです!花陽は一度、おうちに帰って制服に着替えないと!」

「あぁ、そうだったわね…」

「なんで起きられなかったんだろう…」

花陽は昨晩の記憶を振り替える。

 

…スマホのアラームは…

スマホ…バッグに入れっぱなしだった…

…でも、明るくなれば自然と目が覚めるのに…

あぁ、にこちゃんの部屋は完璧なくらい真っ暗だった…

不覚です…

 

「馴れないことして、よっぽど疲れたんじゃない?爆睡してたわよ」

「はぁ…」

「取り敢えず起きて、ご飯食べなさいよ…って、ウチは朝、パン食だけど」

「は、はい…」

うんしょ…と花陽がベッドから抜け出す。

そして気付いた。

「あれ?昨日借りたスエットじゃありませんよ…」

「あぁ、2人で寝たからかしら。アタシもアンタも寝汗がスゴくて、途中で着替えたのよ」

「…途中で…着替えた?…花陽は記憶がありませんが…」

「だから言ったじゃない、爆睡してたって…」

「ええっ?ええっ?それってもしかして…」

「アタシが着替えさせたのよ!」

「ぴゃあ!に、に、にこちゃん!」

「希と違って変なことはしてないから、大丈夫よ。アタシは3人のオムツ換えをしてきたんだから、どうってことないわ」

「オムツ?」

「パンツまで汗ビッショリだったのよ」

花陽は恐る恐る自分の履いている下着を確認する…。

「アンタのよ。洗濯して乾燥機入れといたから、乾いてたし」

「あは…あは…はははは…」

「ほら、恥ずかしがってる場合じゃないよ。モタモタしてると、ホントに遅刻するわよ」

「は、はい!」

「アタシは妹たちを起こして準備させるから、アンタはお湯沸かして。あと、食器棚に食パンが入ってるから、トースターで2枚ずつ、4枚焼いて!」

「は、はい…」

 

 

 

そして…

 

 

 

「ごちそうさまでした…」

「洗いものはいいわ、アタシがやるから。アンタは制服に着替えなさい」

「制服?」

「家に帰ってる時間はないんでしょ?その格好で学校に行く気?」

「いえ…」

「家だけに…いえ…とは」

会話を聞いていたこころが、ボソッと呟く。

「下らないことを言ってないで早く仕度しなさい!…で…花陽は…あ、洗濯して乾いた服…袋に入れておくわね。…これがアンタのブラ。さすがにこれはアタシのって訳にはいかないから…。これがブラウスで、スカート、ブレザー…1年のリボン…OK?」

「にこちゃんのは?」

「アタシのはアタシのであるわ。オシャレさんはちゃんとスペアを用意してるものなのよ」

「はぁ…」

「早くしなさい。こっちも忙しいんだから」

「わ、わかりました…」

…と、にこの勢いに押されて着替える花陽。

 

しかし…

 

「にこちゃ~ん…やっぱり、ちっちゃいですぅ」

「やっぱり…って、なによ!」

「おしりが見えそうだし…」

「今日一日くらい我慢しなさいよ!」

「う~ん…」

「わかったわよ…待ってなさい。確か未使用のものがあったハズ…」

にこは自分のクローゼットをゴソゴソ漁る。

「あったわ、はい、これ」

「!」

「黒のストッキング。これなら『直接』は見られないでしょ」

「は、はい…」

「アタシはこのあと、こころたちを送り出してから行くから、アンタは先に出なさい。朝は凛たちと待ち合わせてるんでしょ?」

「はい…。あの~…一日お世話になりました!」

「こっちこそ、ありがとね。じゃ、またあとで…」

 

 

 

…それで、靴まで借りて、出てきたものの…

そりゃあ、バレちゃうわよね…

 

 

 

「かよちん、お昼はどうするにゃ?」

「そうだねぇ…どうしようかな…」

「良かったら、私のお昼、少し分けてあげるわよ」

「真姫ちゃん…」

「真姫ちゃん、優しいにゃ~」

「べ、別にそんなんじゃないわよ。そんなに食欲がないだけなの」

「う、うん。ありがとう。でも幸い、お財布だけは持ってるから、なんとか…」

「そう…困ったことがあったら言いなさいよ」

「うん」

「なんか真姫ちゃんは、かよちんに対して異様に優しいにゃ」

「そ、そんなことないってば!」

「あるにゃ~!」

「な~い!」

「あ~る!」

「まぁまぁ…」

そんなやりとりをしているうちに、学校に着いた。

 

 

 

「おはよう!」

凛、真姫、花陽が揃って教室に入る。

入学当初の真姫は、小声でボソッと呟く程度の挨拶だったが、今では明るく大きな声が出せるようになった。

少なくとも3人の中で、クラスメイトの印象が一番変わったのは、真姫だろう。

半年以上も過ぎて、今更学校に馴れた…というのは表現として違うかも知れないが…彼女自身のカドが取れたことにより、周りの対応が変わってきたのは事実だろう。

それは教室で、花陽と凛以外の友人と話している姿が散見されることからもわかる。

それを花陽は、嬉しくもあり、羨ましくも思っていた。

花陽が普通に話せるのは、相変わらずμ'sのメンバーだけだったからだ。

 

「あ、小泉さんだ!」

「小泉さん、おはよう!」

「女王参上!」

教室に入るなり、先に来ていたクラスメイトが、口々に花陽の名前を呼ぶ。

「えっ?えっ?」

花陽は突然の出来事に戸惑い、凛に助けを求めた。

「何事?」

「見たわよ!お米クイーンになったんでしょ?」

「そう、そう。私も見た!」

「私は現地にいたんだ。それでみんなにLINEしちゃったの。まさか優勝するとは思ってなかったけどさ」

「おめでとう!スゴいねぇ!」

「あ、ありがとう…」

気付けば花陽は10名程に取り囲まれていた。

「あとね、その時のライブも見たよ!西木野さんとか星空さんとかはアレだけど、小泉さんがあんなに生き生きしてるなんて…かなりビックリしたわ」

「普段全然違うものね」

「そ、そうかな…」

「なんか小泉さん見てたら、アタシもアイドルやれるんじゃないか…って気になるよね?」

「それはさすがに失礼じゃない?」

「そうだよね。あははは…」

「ねぇ…今度ライブっていつやるの?」

「えっと、次は…」

質問攻めにあう花陽。

その様子を見ながら、凛はそっと教室を出た。

 

「…ホントに失礼にゃ…」

凛が独り言。

「それに『西木野さんとか星空さんはアレだけど』…アレってなんにゃ!?」

自然と声が大きくなった。

「妬いてるんじゃないわよ」

「ま、真姫ちゃん!黙って背後に忍び寄るなんて人が悪いにゃ!」

「♪甘いよ、甘い!そんな装備じゃ逃げられるわけないじゃないの…狙いをつけて、密かに背後から…なんてね」

「ごまかさないでよ」

「何を怒ってるんだか…」

「みんな、かよちんのこと、バカにしすぎにゃ!『かよちんが出来るなら、私もなれる…』なんて、なれるわけないにゃ!」

「まぁまぁ、みんな普段の花陽しか知らないから、ギャップに驚いてるだけよ」

「それは、今までかよちんのことを、ちゃんと見てないからにゃ…」

「でも、これで花陽のこともわかってくれたと思うし…」

「かよちんが評価されるのは嬉しいけど…なんか複雑にゃ」

「だからそれは嫉妬じゃなくて?」

「う~ん…」

 

…私も凛の気持ちは痛いほどわかるけどね…

まぁ、チヤホヤされて急にどうこうなるような子じゃないから…

誰かさんと違って…

 

 

 

「はっくしょん!はっくしょん!」

「ぬ?にこっち、風邪ひいたん?」

「ひいてないわよ!きっと凛あたりがアタシの噂をしてるのよ!」

「人気者は大変やねぇ…」

「ふん!思ってもいないことを…」

 

 

 

「でも、花陽にも問題があるんじゃない?」

「かよちんに?」

「少なくとも学校の中じゃオドオドしなくてもいいんじゃない?」

「かよちんは自分に自信が無さすぎにゃ」

「花陽のアガリ症というか、対人恐怖症というか…あれはいい加減に治さないと…」

「真姫ちゃんなら治せるにゃ?」

「どうかしら…。一か八かでショック療法をしてみたけど、あまり効果はなかったし…」

 

真姫の言う『ショック療法』とは、海未が

「園田海未役の園田海未です」

という迷言を発した、あの音ノ木坂の放送事故を指している。

 

 

 

 

 

「花陽!練習着はどうしたのですか?」

「あ、えっと…忘れちゃって…」

「忘れたんですか?しばらく練習してなかったからって、たるんでますわよ。そういうのは穂乃果だけで充分ですから」

「ちょっと海未ちゃん!いちいち穂乃果を引き合いに出さないでよ…」

 

放課後の屋上。

 

先に来ていたのは1年組。

続いて上がってきた2年組の海未は…花陽の『異変』に真っ先に気付き、開口一番、そう述べた。

 

「でも花陽ちゃんが忘れ物なんて、ちょっと珍しいね」

これにはことりも不思議そうな顔をして、海未を見る。

「なにかあったのでしょうか…」

「忘れ物くらいするでしょ」

「あなたと一緒にしないでください」

「まぁまあ…」

繰り返される日常…

ことりはこのやりとりを何年見てきたことか…と苦笑した。

 

「花陽ちゃん!練習着はどうしたん?」

最後に3年生組が現れた。

「あははは…ちょっと…」

「全くアンタはドジなんだから」

と、これは事情を知ってるにこ。

「そ、そうですね…」

花陽はそれに話を合わせる。

「それより、ウチのクラスでも花陽ちゃんのことは、話題になってたよ…1年生で『おメ○クイーン』になった子がいるんやってね…って!」

「『オコメ』でしょ!」

「あぁ、そうやった!『お○コ』やなくて『オコメ』やった…」

「『○メコ』って?」

「アンタは口にしなくていいの!!…」

「花陽ちゃん、それは関西弁で…」

「こらぁ!!…希!ちょっと!」

と、にこは手招きをして希を屋上の隅に呼び寄せた。

 

「にこっち…顔が怖いんやけど…」

「当たり前でしょ!花陽にあんなこと言ってどうするつもり?」

「ちょっとからかっただけやん」

「そういうことを受け入れる子じゃないでしょ!」

「わからへんよ」

「希!」

「冗談やって!」

「アンタの花陽に対するセクハラぶり、最近、目に余るわよ」

「だって…可愛いんやもん…」

「だとしても!あの子はそういう世界に引き込んじゃダメなの!わかるでしょ!」

「どうやろか?案外イケるタイプかもよ」

 

…実証済みやし…

 

「希…いくらアンタでも…花陽を汚すようなことがあれば…殺すわよ…」

「…にこっち…」

「あの子は単なる後輩じゃない…アタシの大事な妹なんだから…」

「…」

「いいわね?」

「ワシワシくらいはしてもいいやろ?」

「アンタもしぶといわね…」

 

…にこっちと花陽ちゃんの間に、なにかあったかね?…

でなければ、急にこんなことは言わへんもん…

それにしても…

またひとりライバルが増えてしまったやん!

 

でも、まだこの様子やと、ウチが一歩リードしてるみたいやけど…

 

 

 

「そういえば、花陽ちゃん、おしりはもう、大丈夫?」

「うん、ことりちゃん、ありがとう。今日はこんな格好だからごめんなさいだけど、明日からは今までの分を取り返しますよ」

「うん、頑張ってね!」

 

 

 

 

 

先輩禁止!

~おわり~


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