【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「ハロウィーンイベント?」
「穂乃果もハロウィーンは知ってるでしょ?」
「絵里ちゃん、バカにしないでよ。それくらい知ってるますぅ。ここのお店だって、ハロウィーン一色だし…。でも、私たちが子供の時にはこんなに流行ってなかったよね?」
「そうね…」
確かに今、穂乃果たちがいるファストフードの店内は、至るところにパンプキンの『ジャック・オー・ランタン』のオブジェが飾り付けられている。
いや、この店だけではない。
もはや日本の街中が、カボチャやお化けの装飾に彩られている。
いつからだろうか…ハロウィーンはここ数年で、一気に秋の一大イベントになった。
絵里が説明を続ける。
「実は今年、アキバをハロウィーンストリートにするイベントがあるらしくてね…地元のスクールアイドルであるA-LISEとμ'sにも出演依頼が来たんだけど…」
「ひょえ~…予選を突破してからというもの、なんだかすごいねぇ」
「あと、この間の『利き米コンテスト』の影響もあるみたい」
「サプライズライブですか?」
「そう。あなたが頑張ってくれたお陰で、私たちも曲を披露させてもらったでしょ。それが今回のプロデューサーの目に止まったみたい」
「いやぁ、あれはA-RISEのツバサさんのお陰で…」
「あなたが決勝に残らなかったら、それも無かったんじゃなくて?」
「そうにゃ!そうにゃ!」
えへへへ…と照れる花陽。
「それって…歌うってこと?」
真姫が面倒くさそうに訊く。
「そうみたいやね」
「ありがたい話だけど…この前のファッションショーといい、そんなことやってていいの?最終予選も近いのに…」
「真姫の言う通り!…私達の目標はラブライブ優勝でしょ!」
「にこ…それはそうだけど…こういう地道な活動も重要よ!…イベントには、テレビ局の取材も来るみたいだし…」
「テ、テレビ!?」
一瞬にして、にこの目に星が輝き、表情が崩れた。。
「態度変わりすぎ…」
冷ややかな視線でにこを見る真姫。
「でも…A-LISEと一緒ってことは、また、みんなに注目してもらえる…ってことだよね?」
「花陽…それはそうかも知れないけど…」
「真姫ちゃん、チャンスにゃ!もっともっと、名前を覚えてもらえるチャンスにゃ!」
「そうよ!A-LISEよりインパクトの強いパフォーマンスで、オーディエンスの脳裏にアタシ達の存在を焼き付けるのよ!この間は突然だっからアカペラだけで終わったけど」
「だから、にこちゃん、態度変わりすぎだって…」
真姫は深く大きな溜め息を吐(つ)いた。
「うん、インパクト!それだね!」
「穂乃果ちゃん、大丈夫なん?意味、わかってるん?」
「意味?も、もちろん!花陽ちゃんが眼鏡の替わりにしてるやつでしょ!?」
「それはコンタクトやん!」
「あははは…そうでした!」
…大丈夫かしら、これで?…
真姫はさっきよりも大きな溜め息を吐いた。
「うーん、インパクトかぁ…」
穂乃果は、自分でそう言ってはみたものの…具体的なアイデアがあるわけではなかった。
部室に場所を変え、ハロウィーンイベントについて、頭を悩ますμ'sのメンバーたち。
「でも、今回は大会じゃないよね?優劣を付けるものじゃないし、そんなの気にしても…」
「そうなんだよ、ことりちゃん…」
「何言ってるの!勝負はもう始まっているのよ!」
「にこちゃんの言う通り!…確かに採点も順位もないけど、観た人の印象に残ったほうが、話題として多く取り上げられるだろうし…」
「さすが真姫!…つまり…最終予選も有利に働くってこと!」
「ふむふむ…」
神妙な顔で頷くことり。
「なるほど…。あれ?でも真姫ちゃん、さっきは『そんなことやってていいの?』って言ってなかったっけ?」
穂乃果が意地悪そうに、真姫の顔を覗き込む。
「れ、冷静に判断した結果よ。私だってラブライブのこと、真剣に考えてるんだから…」
「それで?」
口を挟んだのは絵里。
「それで…って?」
「同じことをしてもダメってこと。向こうは前回の優勝者なんだから、どうしたって取材する側は、まずはA-LISEに行くでしょ?」
「じゃあ私達の方が不利…ってことなのかな?」
「ことりだってわかるでしょ?採点競技ではよくあることだけど、ネームバリューって大きいのよ…先入観っていうのかしら…。そういう意味では、現時点で知名度は圧倒的に向こうの方が上。だからこそ最終予選を前に、印象的なパフォーマンスをして、その差を縮めておきたいのよ」
長年バレエをやってきた絵里だけに、その言葉には説得力がある。
「絵里ちゃんの言うことはわかるけど…A-LISEより印象に残るパフォーマンスって、どうすればいいんだろう…」
「だから何回も言ってるでしょ!…とにかく大切なのは…インパクトよ!」
にこが椅子の上で仁王立ちになる。
「インパクトかぁ…」
穂乃果はにこの顔を見上げたあと、そのまま天を仰いだ。
結局、何のアイデアも出ないまま『振り出しに戻る』のであった…。
…勢いよく立ったはいいけど、降りるタイミングを失ったわ…
にこは暫く椅子の上で、腕を組み、考えるフリを続けた…。
「コスプレですか!?」
海未が驚きの声をあげる。
「本来のハロウィーンは、秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す行事なんやけど…日本では仮装パーティーのイベントみたいになってるやん」
「えっ?仮装パーティーじゃないの?」
「やっぱり穂乃果は、ハロウィーンがなんだか、本質をわかっていなかったのですね」
「希ちゃん…海未ちゃんが苛めるよぅ」
「海未ちゃん…今はそれが問題やないやろ」
「はい、そうでした…」
「折角のハロウィーンなんやから、ウチらも仮装したらどうかな?…ってこと」
「それは面白いにゃ!そうしたら凛は『セーラーム○ン』とかしてみたいにゃ」
…セーラーム○ン?…
どうやら凛はこの間のブライダルファッションショーでウェディングドレスを着用して以来、長年のトラウマだった『少女趣味への抵抗』から開放されたようだった。
そろからというもの、急にスカートタイプのキュートな練習着に変えてみたり、髪形をいじってみたりしてメンバーを驚かせたが…溜まっていたマグマが爆発するが如く、これまでの鬱屈を一気に放出しているようだった。
…それはそれで良かったけど…いきなりセーラーム○ンとは、振り幅、大きすぎじゃない?…と言うのが、その場にいたメンバーの感想。
もちろん誰も口にはしていない。
「でも、あれって主人公5、6人やなかったっけ?」
「残りは敵役でいいにゃ!にこちゃんとか真姫ちゃんとか…」
「なんで私が敵役なのよ。私は『マーキ』だから『マーキ○リー』でしょ」
…えっ?…
…真姫ちゃん?…
「…っていうか、アンタ、セーラーム○ンとか観るんだ…」
幼き真姫が、セーラーム○ンごっこをして遊んでいる姿を脳内再生する、メンバー一同。
自然にクスクスと笑い声が漏れた。
「な、なに言ってるのよ、にこちゃん!私は名前知ってるくらいで…」
「隠さんでもいいんやない?凛ちゃんも真姫ちゃんも、それなりに少女時代があった…ってことやん」
希は、にひひ…と笑った。
「ヴェ~…意味わかんない!」
「凛もその言われ方は、不本意にゃ!」
2人は膨れっ面をして、ソッポを向いた。
~つづく~