【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
ハロウィーンライブを無事に終えたμ's。
評価は上々だった。
観覧に来ていたミュータントガールズからも
「さすがμ'sです。素晴らしいライブでした」
「A-RISEに負けていなかったよ!」
「♪会えたのは素敵な運命…。お話を聴いたあとだから、この歌詞はμ'sそのものなんだな…って思いました」
「♪もっともっと踊らせて…。私たちも負けずに踊ります」
満足した様子で会場をあとにしていった。
これからは年末に行われる最終予選に向けて、ラストスパートだ。
各々、受験やら生徒会やら、部活以外にやらなくてはならないことは、山ほどある。
それはしかし、スクールアイドルの宿命。
言い訳にできない。
そんな中…
「かよちん、今日もおにぎりが大きいにゃ!」
「新米、120kgももらったからね。旬のものは旬のうちに食べないと」
新米120kgとは『利き米コンテスト』の優勝賞品である。
なお、そのうち10kgは矢澤家に移譲されている。
「だからって、食べすぎじゃない?花陽の食事量は見慣れてるけど、さすがに多すぎじゃ…」
「そうかな?でも、その分動いてるし。春先に比べれば、運動量は倍くらいになったよ」
「倍は言い過ぎにゃ!」
「まぁ、別にいいけど…。それにしても、よく味付けもされてないご飯をそんなに食べれるわね」
「そんなことないよ!ちゃんと噛めば噛むほど、一粒一粒の甘味が感じられて…」
「わ、わかった!そうね、あなたに訊いた私が野暮だったわ」
真姫は花陽のお米談義が長くなりそうなのを察知して、その話を打ち切った。
しかし、この時すでに、花陽の身体には『ある異変』が起きていた…。
生徒会室…。
何故かルームランナーに乗って走る穂乃果。
その傍らで海未は、いつものように説教をしている。
「弛んでる証拠です!書類もこんなにため込んで、すべてに対してだらしないから、そんなことになるんです! 」
「ごめんごめ~ん…でもさぁ、毎日あんなに体動かして、汗もかいてるでしょ?まさか、あそこまで体重が増えているとは… 」
「身長は変わらないの? 」
ことりはポテトチップスを食べながら、穂乃果の走る様子を見ている。
「それがねぇ、ことりちゃん…変わってないんだよ。あははは…」
「笑い事ではありません!」
「そうだよねぇ…うん、雪穂にも怒られちゃった…『そんなアイドル見たことない!』って 」
「当たり前です!」
「あ、ねぇ、ことりちゃん、それオニオンコンソメ味?」
「うん!新しく出たやつだよ」
「食べたかったんだよねぇ、一口ちょうだ~い!」
「穂乃果!雪穂の言葉を忘れたんですか!」
「大丈夫だよぅ!朝ご飯減らして来たし、今も…ほらっ、走ってるし! 」
「そもそも生徒会室は、トレーニングジムではありません!」
「それはそうだけどさぁ…ここまですることかな?」
「…どうやら現実を知ったほうが良さそうですね」
「現実? あれ、海未ちゃん、それは…ファーストライブの衣装?…なんで?」
「いいから!黙って着てみてごらんなさい! 」
「着るの?これを?今?」
「私の目が間違ってなければ、これで明らかになるハズです…穂乃果の身に、何が起きたのか… 」
「穂乃果ちゃんの…身に… ホラー映画みたい…」
「わかったわよ!着ればいいんでしょ!着れば!」
穂乃果は海未から衣装を奪い取ると、隣室に移動した。
そして、2分後…。
「あぁ~~~~!!!」
穂乃果の叫び声。
慌てて駆け寄ることり。
「穂乃果ちゃん、大丈夫? 」
「…ごめん…今日は…一人にさせて…」
「き、気にしないほうが…体重は増えたかもしれないけど、見た目はそんなに変わっ…」
「本当? 本当?」
「え?え~と…」
穂乃果に詰め寄られ、視線を反らすことり。
「気休めは本人のためになりませんよ!さっき鏡で見たでしょ? 」
「…」
「見たんでしょ!」
「うわぁぁぁぁっ 」
「体重の増加は、見た目はもちろん、動きの切れをなくし、パフォーマンスにも影響を及ぼします! ましてや穂乃果はリーダーなんです!これではメンバーの士気にも及びます」
「大袈裟だよ」
「いえ、大袈裟ではありません!従ってラブライブに向けて、これからダイエットしてもらいます! 」
「ダ、ダイエットぉ!?」
穂乃果はそう叫ぶと膝から崩れ落ちた…。
「収穫の秋!秋と言えばなんといっても新米の季節です! 」
「聞き飽きたわよ」
「今日のおにぎりは、いつにもまして大きいにゃ~」
「花陽の身体が欲してるんだ。そしてお米も私を呼ぶんだよ」
「まさかそれ、一人で食べるつもり?」
呆れ顔の真姫。
「だって新米だよ?ホカホカでツヤツヤだよ?これくらい味わないと…」
そう言って、巨大おにぎりをパクつこうとした花陽の隣に『ぬっ』と現れたのは、穂乃果だった。
「…美味しそう… 」
「あれ、穂乃果ちゃん…いたんだ?…食べる? 」
「あ!いいの? 」
「いけません!!」
「のわっ!!海未ちゃん!い、いつの間に!」
「それだけの炭水化物を摂取したら、燃焼にどれだけかかるか、わかってますか? 」
「うううっ…」
涙目になる穂乃果。
「どうしたにゃ?」
「まさかダイエット? 」
「う、うん、ちょっとね…。最終予選までに減らさなきゃって 」
「それはつらいねぇ…せっかく新米の季節なのに、ダイエットなんて可愛そう」
花陽は泣き顔の穂乃果を尻目に、ひとり、おにぎりをモグモグ食べる。
「さぁ、ダイエットに戻りましょう!」
「ひどいよ海未ちゃん!」
「仕方ないでしょ!可愛そうですが、リーダーたるもの、自分の体調を管理する義務があるんです!それにメンバーの協力があったほうが、ダイエットの効果が上がるでしょうから、花陽も真姫も凛もお願いしますね!」
「確かにそうだけど…これから練習時間も増えるし、いっぱい食べなきゃ元気でないよ?」
「花陽、それはご心配なく。食事に関しては私がメニューを作って管理するので、無理なダイエットにはなりません…」
…しかし、花陽も案外サディスティックね。穂乃果が食べられない!って言ってるのに、全然気遣いがないわ…
…真姫ちゃん、仕方ないにゃ。かよちんはご飯を食べてる時は、周りが見えなくなっちゃうにゃ…
「食べたいときに食べられないのは…可愛そうだねぇ」
花陽の頬はリスのように膨らんでいる。
その様子をまじまじと見ていた凛と真姫。
そして…やがて気付く。
「にゃ?かよちん…」
「?」
「気のせいかと思ってたんだけど、あなた…やっぱり…」
「?」
「ぴゃあ~~~!!」
体重計に乗った花陽の悲鳴が、学校中に響いた。
屋上…。
「うぅ…うぅ…」
「…うぅ…うぅ…」
穂乃果と花陽の嗚咽が、交互に流れる。
「かよちんの家(うち)の体重計は、壊れてたみたいにゃ…」
「アクシデントって言えば、そうなんだろうけど…」
真姫は少しだけ同情していた。
「まさか、こんなことになっていたなんて…」
絵里が呟く。
「まぁ、二人とも育ちざかりやから、そのせいもあるんやろうけど… 」
「でも、ほっとけないレベルなんでしょ?」
にこが、うずくまる2人を見て、わざと聴こえるレベルの声の大きさで言う。
さらに落ち込む穂乃果と花陽。
その前に海未が歩みより、持っていた紙を見開いた。
「これが、今日からのメニューです! 」
2人がおそるおそる、そこに書かれた文字を見る。
「ええ、夕飯…これだけ?」
「 お…お米が… 」
「夜の食事を多くとると、体重増加につながります! 」
「あああっ…海未ちゃんの鬼!」
「うううっ…新米が…」
「その分、朝ご飯はしっかり食べられるので、ご心配なく…」
「ぐすっ…頑張るしかないよ、穂乃果ちゃん… 」
「うん、そうだね…。あ!でも、よかったよ!」
「えっ? 」
「穂乃果と同じ境遇の『仲間』が『もう一人』いてくれて!」
「…『仲間』?…」
「今、目ぇ、逸らした?」
「あ…いや…」
…逸らしてたにゃ…
…逸らしたしたわね…
凛も真姫も、その瞬間を見逃してはいなかった。
~つづく~