【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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新しいわたし その7 ~ぶらり新宿~

 

 

 

 

 

フィッティングルームで、ブラジャーのストラップを適切な長さに調整してもらった花陽が、カフェスペースに戻ってくる。

希は先に座って待っていた。

 

「はぁ、緊張しました…」

「だから、ウチも一緒に行ってあげるって言ったやん」

「もっと恥ずかしいです」

「なんで?いつも着替えてるとこは見てるやろ?」

「でも『直(じか)』には無いですよ?」

「そやね」

「一緒に入ったら、希ちゃん、絶対観察しますよね?ジロジロ見ますよね…」

「まぁ、こんなチャンス、滅多にないからね」

「う~ん、それ、趣味…悪いです…」

「なんで?可愛い後輩の裸を見たって問題ないやん?…それとも、ウチに見られるの、そんなに嫌なん?」

「えっ!?」

希の伏し目がちな表情に、花陽は戸惑いを感じた。

 

…なんですか?今の希ちゃんの甘えた雰囲気は…

 

「ウソや~ん!花陽ちゃんは、本当にピュアやね」

「もう、からかうのはやめて下さい。花陽はどうリアクションしたらいいかわかりません」

「いや、そのままでいいんよ」

「ん?…」

 

「花陽ちゃん、お待たせ!」

2人がそんな会話をしていると、サリナがレジカウンターから声を掛けた。

花陽と希は席を立ち会計に向かう。

「はい、お待ちどうさま。まず、こっちが花陽ちゃんのお買い物。中を確かめてね…合ってる?うん、じゃあ、お会計…はい、5千円ね」

花陽がサイフからお札を出し、会計を済ます。

「はい、ちょうど…。レシートと…これが会員カード。あ、年会費も更新料もかからないから、気にしないで。ポイントが貯まると、割引サービスが受けられるの。…100円で1ポイント。今回は初回だからサービスで5倍にしておいたよ」

「あ、ありがとうございます」

「ここに、QRコードが載ってるでしょ?あとでアクセスしてみてね。うちのホームページに繋がるから」

「はい」

「ネットでの購入もここからできるの。あと、新商品の紹介とか、キャンペーン情報も掲載してるから」

「ネットもあるんですね」

「むしろネット販売がメインかな。でも今日みたいにサイズを計ったり、手触りを確認したりとかは、ネットじゃできないでしょ?」

「そうですね」

「だから、たまにはお店に来てね」

「はい」

花陽は丁寧に一礼した。

 

「そして、こっちがノゾミィの」

「えっ?希ちゃん、お買い物したの?」

「うん」

「いつの間に」

「うふふ…」

「ノゾミィは、ジャスト1万円…だけど、今日は2割引きしておくわ」

「本当に?」

「ご新規さんを連れてきてくれたお礼よ」

「ありがとう」

「また、来てね」

「はい」

サリナは店の外まで出て2人を見送った。

「ノゾミィ、花陽ちゃん。今日はありがとう。またね」

「はい。こちらこそ、ありがとうございました」

花陽と希は、振り返りながら何度も頭を下げて、店を離れた。

 

 

 

「ふぅ…まだ、暑いですね」

「暑いね…」

店外に出たとたんに、汗が吹き出してきた。

「本当に9月の終わりなんやろか?」

「本当に…」

相槌を打とうした瞬間…ぐぅ~…と、花陽のお腹が大きく鳴った。

「ぴゃあ!」

「お腹空いたん?」

「いや…その…」

「無理せんで、いいよ」

「…はい…お昼御飯を控え目にしたので…」

「そんなことやないかと思ってたんよ。そろそろ3時やし、お茶にする?」

「はい!」

花陽の目の中に星が2、3個キラめいた。

 

 

 

2人は南口に戻って、流行りのジェラート店に入った。

希はジェラートとドリンクを、花陽はそれにプラスして、クレープを頼んだ。

「はぁ…この小倉白玉クレープ、美味しいですぅ!」

「本当に美味しそうやね」

「はい、幸せです」

「見てるこっちも幸せになるわぁ」

「希ちゃんも一口食べます?」

「ウチは遠慮しとくよ。花陽ちゃんの幸せ奪ったら、可哀想やから」

「そんなぁ、花陽は平気ですよ。もうひとつ、ふたつは食べられますから。次は…ピーチクリームを頼もうかと思ってます」

 

…いくら育ち盛り、食べ盛り、食欲の秋とはいえ、どれだけエンゲル係数が高いんやろ?…

 

さすがの希も、これには驚くしかなかった…。

 

 

 

希は一息付き、花陽は空腹を満たすと、2人は大きな書店へと足を向けた。

「ごめんなぁ、付き合わせちゃって」

「いえ、全然」

「神田周辺は古本屋さんは多いけど、こんなに大きな本屋さんはないからね、新宿に来た時は、つい寄ってしまうんよ」

「どんな本を読むんですか?やっぱり占いの本とか?」

「それもあるけど…まずは2階に行って絵本見たり、美術とか芸術の本を見るんよ」

「え?なんか意外です」

「絵本とか美術の本とか見るのは、精神衛生上、大事なことなんよ。心の浄化やね」

「なんか、深いですね…」

「そのあと4階で新書とか文学の本とか見て、最後に6階で宗教とか心理学とかの本を探すのが、だいたいのパターンやね」

「結構、読書家なんですね」

「ずっと、ひとりやったからね…」

「えっ?」

「いや、なんでもない…。そういう花陽ちゃんは?本は読まないわん?」

「恥ずかしながら、アイドル雑誌とかグルメガイドとか、お料理の本とかしか…」

「いいやん。好きなものがあって、それに没頭出来るって、うらやましいな」

「希ちゃんはないんですか?」

「ウチ?ウチ…そうやね…」

 

…そういうものがあったら、精神世界に逃げたりしなかったんやろな…

 

「あ、着いたよ」

「うわぁ、この建物、全部本屋さんですか…」

「地下1階、地上7階…まぁ、7階は劇場やけどね。隅から隅まで見ていったら、1日あっても回りきれんかも」

「はぁ…」

「でも、ただ、ぶら~っと、流して歩くのもお薦めやけどね。タイトルに惹かれた…とか、表紙が気に入ったとか、そんなんで新たな発見があったりするもんよ」

「レコードの『ジャケ買い』みたいですね」

「そやね」

そんな会話をしながら2人は書店へと吸い込まれて言った。

 

 

 

 

 

~つづく~


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