【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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最高のライブ その8 ~海未、受難~

 

 

 

 

 

ラブライブ最終予選のプレイベント。

会場には出場するA-RISE、EastHeart、Midnight Cats…そしてμ'sが顔を揃えた。

 

「それでは…最終予選に進む最後のグループを紹介しましょう。音乃木坂学院スクールアイドル『μ's』です!」

 

どわっ!という地鳴りのような歓声。

これまで歌ってきた会場とは、規模も熱気もまるで違う。

 

ステージを照らしていたライトの熱さに汗をかいていたメンバーも、この瞬間は身震いをした。

 

そんな中、μ'sのリーダー高坂穂乃果は…

「私達はラブライブで優勝することを目標に、ずっと頑張ってきました!…ですので…私達は絶対優勝します!! 」

と宣言。

 

「馬鹿…」

「言い切っちゃった…」

にこと花陽は、思わずそう呟いた。

 

 

 

 

 

最終予選に何を歌うか?

これが今現在、彼女たちに課せられた最大のテーマである。

 

「この間のハロウィーンライブの評判からすれば、大きく路線変更するのは得策ではないわね」

「そやね。えりちの言う通りμ'sはμ'sらしく…で行くべきやろね」

「でも、歌える曲は1曲なので、慎重に決めなきゃ…です。なんと言っても、あのA-RISEに勝たなきゃいけないんですから!」

花陽の言葉に熱が帯びる。

「アタシは新曲がいいと思うわ」

とにこ。

「確かに予選は新曲のみとされていましたから、そのほうが有利かもしれません」

「海未、それって本当?新曲が有利…って、どこの情報?…私は反対。残された時間とかを考えれば、これまで作ってきた曲の中から選んで、パフォーマンスのクオリティを上げていく方が現実的だと思う」

「私も真姫ちゃんの意見に賛成かな。A-RISEに勝てる…でもμ'sらしい曲なんて、そう簡単にできないと思う」

珍しく積極的に意見することり。

 

 

 

「例えばやけど、このメンバーでラブソングを歌ってみたらどうやろか… 」

 

 

 

「ラブソング!? 」

希の唐突な提案に、全員が一斉に声をあげた。

 

この単語に食いついたのは花陽。

「なるほど!! …アイドルにおいて、恋の歌…すなわちラブソングは 定番中の定番!マストアイテムです!…なのに…それが今までμ'sに存在していなかったのは、世界の七不思議と言っても過言ではありません!」

「花陽が暴走モードに入ったわ…」

「凛はこっちのかよちんも好きにゃ~」

「はいはい」

いつものこと…と、軽くあしらう真姫。

「でも、どうしてラブソングって今までなかったんだろう? 」

「あ、穂乃果ちゃん、それは禁句やない?言ったらあかんやろ」

「へっ?」

「わかるでしょ?μ'sの作詞をしてるのは…」

真姫の言葉のあと、8人の目が一点に集中した。

 

 

 

視線を独り占めしたのは…海未。

「な、なんですかその目は… 」

うろたえる。

 

 

 

「そっか。そうだった…」

「穂乃果!何を納得してるんですか!」

「いやいや、それは…ねぇ…」

穂乃果の顔は少しニヤけている。

そして、その言葉に誰も反論しない…。

「え?え?なんで決めつけるんですか!」

「かよちん、ラブソングは諦めた方がいいみたいにゃ」

「う、うん…そうだね」

「あぁ、花陽まで…」

「…ということで、ラブソングはひとまず置いといて…」

「穂乃果!あなたたちに言われたくないです!全員、そういう経験あるんですか!?」

涙目で訴える海未。

「…っていうか、希もそれがわかってて、なんでラブソングだなんて言い出すのよ」

「それはな、にこっち…」

 

ウチの花陽ちゃんに対する気持ちを、曲にして欲しかったんや!

…とは、言えへんね…

 

「ウチのカードがそう示したんよ!」

「あぁ、そう…カードね」

「あっさり流さんといて…」

「それはともかく、やっぱり今から新曲は無理ね」

「真姫…。でも、諦めるのはまだ早いんじゃない? 」

「絵里?」

「これまでの曲で完成度を高めるのをAプラン。新曲で攻めるのをBプラン。今はまだA、B幅を持たせておいた方がいいと思うの」

「そうやね。今までの曲でA-RISEに勝てるのは、どれ?ってこともあるやろうし…」

「あ、だったら、こういうのはダメかなぁ?ラブソングの詞は、みんなでアイデアを出し合って作るんです」

「どういう意味にゃ?」

「作詞を海未ちゃんひとりに任せるのは『酷』なので…だから、みんなで少しずつ歌になりそうなワードとかフレーズとかを出し合って、繋げて、まとめていけば…」

「『酷』って…花陽、同情なら要りませんよ」

「要は『三人寄れば文殊の知恵』ってことやろ?」

「はい。9人いれば9通りの世界があると思うので」

 

…さすが、花陽ちゃんやね。ウチの想いが伝わったんやろか…

 

希はひとり微笑む。

 

「フレーズとかだけなら、穂乃果でも書けるかも。ラブソングだから…『好きです』とか『愛してます』とか、そういう言葉でしょ?」

「単純過ぎにゃ。まぁ、穂乃果ちゃんならその程度だねぇ」

「ちょっと、凛ちゃん、それはないんじゃない?」

「絵里、どう思う?」

「花陽のアイデア、いいと思うわ」

「そう…。どっちにせよ、あまり時間はないんだから、結論は早めに出すわよ。取り敢えず今日のところはそれでいい?」

真姫の問い掛けにメンバー全員が頷いた。

 

 

 

…って真姫ちゃん、リーダーは私なんだけどなぁ…

 

…真姫、部長はアタシなんだけど…

 

 

 

 

 

休日。

 

穂乃果の部屋で、恋愛映画のDVDを観ているメンバー一同。

 

しかし部屋の主と凛は、上映開始から3分で爆睡。

 

海未は相変わらず「ラブシーンなんて破廉恥です!」と座蒲団を頭から被り、画面を観ようともしない。

 

絵里、ことり、花陽の3人はテレビの前に陣取り、前のめりで画面を見つめていた。

ヒロインへの感情移入が激しく、涙を流しながら、物語の行方を見守っている。

 

そして、上映終了。

 

「いい映画だったわね」

「最後、幸せになって良かったね」

「はい、わかってても泣いちゃいますね…」

と満足げな3人。

 

それに対し

「チープなラブストーリーだわ。ひねりが足りない」

と毒付く、にこ。

「とか言いながら、目が潤んでるわよ」

「うるさいわよ。あんまり退屈だったから、アクビが出ただけよ」

「素直じゃないわね…」

「そういう真姫ちゃんは、どうやった?なにかヒントになりそうなものはあった?」

「正直、どういう曲がいいのか…BGMが気になっちゃって、ストーリーに集中出来なかったわ」

「そっか…。肝心な海未ちゃんはあの調子やし、穂乃果ちゃんと凛ちゃんもアレやし…作詞の方は、えりちたちに頑張ってもらうしかないやろね」

「わかったわ」

「花陽ちゃん、頑張ろうね!」

「はい、ことりちゃん!」

 

盛り上がる3人に向かって

「…ねぇ…もうあきらめた方が良いんじゃない?今から曲を作って、振り付けして、歌の練習もなんて…完成度が低くなるだけよ!」

冷たい一言を述べたのは、真姫。

 

「実は私も思ってました。ラブソングに頼らなくても、私たちには私たちの歌がある」

「あら、海未ちゃん…正気に戻ったんやね」

「相手はA-LISEなのですよ!下手な小細工は通用しません」

「そんなこと、私もわかってるわよ。でも審査するのはネットユーザーでしょ?であれば万人受けするテーマにするべきだと思うの。そう言う意味では季節柄、ラブソングは強いと思う。みんなに負担がかかるのは申し訳ないけど、もう少しだけ頑張ってみたいの!」

μ'sに入ってから、あまり感情を表に出すことがなかった絵里だが、この日は少し様子が違った。

 

「…にゃ?絵里ちゃん… 」

「…どうしたの?…」

「ごめん、起こしちゃった?」

「あれ?もう終わったの?」

「いつの間にか寝てたにゃ…」

「穂乃果ちゃんも凛ちゃんも、始まってすぐに寝てたよ…」

ことりが苦笑する。

「…で、なんの話?」

「はぁ…アンタたちが熟睡してる間に、μ'sは分裂の危機だっていうのに…いい根性してるわ!」

 

「?」

「?」

 

穂乃果と凛は目をパチクリさせながら

「分裂ぅ!!」

と大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

~つづく~


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