【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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最高のライブ その9 ~ハナ雪~

 

 

 

 

 

「おかしいと思わない?」

「おかしい?」

「絵里ちゃんが?」

 

結論が出ないまま、穂乃果の部屋から散会したメンバー。

 

1年生組も一度は帰宅の徒に就いたが、途中立ち止まり、さっきまでの出来事を振り返っている。

 

「だって変じゃない?絵里があそこまで率先して、ラブソングにこだわるなんて」

「絵里ちゃんはああ見えて、ロマンチストなんだにゃ」

「だとしたら、真姫ちゃんと一緒だね」

「花陽!私は…別にそんなんじゃないわよ」

「だって、天体観測が趣味だなん…」

「今は絵里の話でしょ!」

「…そうでした…」

「実際ラブソングってどうなんにゃ?」

「絵里ちゃんの言う通り、人恋しい季節だし、万人受けはすると思う。でも、普通、冬のラブソングと言えばバラードが定番だし、そうなると『ダンスで魅せる』という部分では、弱くなることは否めないかも…」

「だったら、やっぱり止めるべきよ!どう考えたって、今までの曲をやったほうが完成度は高いんだし…」

「希ちゃんのカードを信じてるんじゃないかにゃ?」

「それは一理あるかも知れないけど…」

「そう言えば絵里ちゃん、なんとなく希ちゃんを気にしていたような…」

「…なるほどねぇ…カギは希が握ってる…か…。ごめん、先に帰ってて…」

「えっ?真姫ちゃん?どこ行くの?」

「急用を思い出したの!」

「にゃ?にゃ?…行っちゃった…。あんなに素早く動く真姫ちゃん、初めてみたにゃ…」

2人は走り去る真姫の後姿を見送った。

「ふぅ…なんか、喉が乾いたにゃ。かよちん、コンビニ寄っていい?」

「うん、いいよ。花陽も喉が乾い…あれ?あれ?…あぁ!」

「にゃ?」

「穂乃果ちゃんちに、お財布忘れてきちゃった!」

「にゃにゃ~!?」

「ゴメン、凛ちゃん。取りに行ってくる…」

「ジュースくらいなら、奢るにゃ」

「でも、お財布だし…置いておかれても穂乃果ちゃん、困ると思うから…」

「まぁ、そうだね…」

「…というわけで…」

「気を付けて行くにゃ!」

「うん、ありがとう!」

 

…にゃ…暇にゃ…

にこちゃんでも呼んで、ラーメンでも食べに行こうかにゃ…

 

 

 

 

 

「えりち…」

「どうしたの?」

「いくらなんでも強引すぎやない?みんな戸惑ってるやん」

「いいの、私がそうしたいんだから…。私をμ'sに引き込んでくれたお礼…。今度は、希のずっとやりたかったことを、私が叶える番…」

「まったく…お節介やね…」

「あなたに言われたくないわ」

「ウチはもう、ラブソングにそこまで拘ってないんよ」

「嘘!ちゃんと自分の気持ちを伝えるべきよ!希が言えばみんな絶対協力してくれる」

「ウチは、今のままで充分なんやって」

「意地っ張り…」

「えりちに言われたくないな…」

 

そんな会話をしながらゆっくり歩く2人の背後に、音も立てずに忍び寄る怪しい人影…。

「ちょっと待って!」

 

呼び止められて振り返る絵里と希。

「あなたは!?」

「何かあったん!?」

そう、そこにいたのは真姫だった。

 

「人の話を盗み聞きするなんて、真姫ちゃんのキャラやないんやない?」

「確かに。いい趣味とは言えないわね」

絵里が同意する。

「知らないわよ。後ろを歩いてたら、あなたたちの話が聴こえてきただけだもの」

「物は言い様ね」

「それで、用件はなんやろか?」

「やっぱり今回の一件は、希…あなたが首謀者だったのね?」

「首謀者って、ウチは悪代官か!?」

笑いながらツッコミを入れる希。

「前に私に言ったわね…面倒くさい人だって」

「そうやっけ?」

「言ったわよ。最初の合宿の時にね…」

「よく覚えてるね。すごいやん」

「茶化さないで!…はぁ…自分のほうがよっぽど面倒じゃない」

「真姫、気が合うわね」

「?」

「私もそう思う」

絵里はそう言うと、真姫に右手を差し出した。

それを照れ臭そうにして、握り返す真姫。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~!!」

花陽が穂乃果の家…『穂むら」に入ると、店内から明るい大きな声が聞こえてきた。

「あれ?花陽さん…?」

店番をしていたのは、穂乃果の妹、雪穂だった。

「あ、雪穂ちゃん…穂乃果ちゃんは?」

「お母さんと一緒に買い出しに…。1時間は掛からないと思うけど…。」

「そっか…どうしようかな…」

「なにかあった?」

「あ、うん…穂乃果ちゃんの部屋にお財布忘れちゃって」

「それは大変だ!」

「あ、でもいないなら、また、出直すね」

「私が取りに行ってもいいけど」

「いない間に持って帰るのも…なんか悪いし…」

「あ、だったらさ、時間に余裕があるなら、お団子食べて待ってる?お父さんの新作なんだけど…。」

「えっ?いいの?」

「うん!」

「そう言えば穂乃果ちゃん、この間そんなこと言ってたねぇ。…あ…でも…」

地獄のダイエットを終えたばかり。

さすがの花陽も躊躇した。

「あ、そうか…。花陽さんもお姉ちゃんと一緒に減量したんだっけ?でも、海未ちゃんにちゃんと報告すれば大丈夫だよ」

「…だよねぇ…じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」

「はい、喜んで!あ、そこに座ってください」

案内されたのは店内にあるテーブル席。

いわゆるイートインスペース。

花陽がそこに座ると、雪穂がお盆に団子とお茶を乗せて運んできた。

「これは?」

「まぁ、食べてみてくださいな」

「では…早速…なんと!柚子味噌ですか!?」

「はい!」

「美味しいよ!うん、美味しい!雪穂ちゃん、これは売れるよ!」

「やった!花陽さんのお墨付きをもらえば間違いなしだね」

「えぇ、私にそんな権限はないよ」

「なにを仰(おっしゃ)いますやら。『アキバのお米クイーンも太鼓判!』って…あ、それいいかも!」

 

…あはは、やっぱり姉妹だね…こういう時の雰囲気とか、穂乃果ちゃんソックリ…

 

「ところで、花陽さんは、雪穂と初めて会ったときのこと…覚えていますか?」

店内に誰もいないが、雪穂は急に小声で訊いてきた。

「初めて会った時のこと?うん、覚えてるよ。確か雪穂ちゃんはバスタオル姿で…」

「わぁ~!!忘れてください、忘れてください!今すぐあの時のことは忘れてください!」

「そんなに連呼しなくても…」

「いやいや、あんな恥ずかしい姿を見られたのは一生の不覚…」

「…ごめんね。元はと言えば、私が部屋を間違って開けちゃたのが原因だから」

「違いますよ。お姉ちゃんがちゃんと案内しなかったのがいけないんです」

「じゃあ、そういうことにしておくね」

「はい」

 

…穂乃果ちゃんの部屋は、穂乃果ちゃんの部屋で…開けたら海未ちゃんが妄想全開のアイドルポーズをしていたんだけどね…

 

「早いなぁ…まさかあの時は、私がこうなるとは思ってなかったもんねぇ…」

「私、μ'sの人たちにすごく感謝してるんです!」

「えっ?」

「海未ちゃんやことりちゃんはともかく…あんなにガサツで、いい加減で、だらしなくて、ダメなお姉ちゃんに皆さん付き合ってくれて…」

「あはは…ひどい言いようだね…」

「初めはスクールアイドルやるって言ったとき、お姉ちゃんがなれるわけない!って思ってて…だって、学校を救うとか言うんですよ!出来るわけないじゃないですか…」

「そうだね」

「でも…出来たんですよね…。廃校を阻止しただけじゃなく、あのA-RISEのライバルって言われるまでになった…。それもこれも、花陽さんたちが加入して、お姉ちゃんを支えてくれたからだと思うんです。だから、もう、皆さんには感謝しかなくて」

「ありがとう、雪穂ちゃん。…でも、少しだけ違うよ」

「?」

「私たちが穂乃果ちゃんを支えたんじゃなくて、穂乃果ちゃんが私たちを引っ張って来たんだよ。確かに、みんな迷ったり、立ち止まったりしながらだったけど…ついにラブライブの最終予選まできた!だから私たちは、きっかけを作ってくれた穂乃果ちゃんに感謝、感謝なんだよ」

「花陽さん…」

「だからお姉ちゃんのこと、あんまり悪く言っちゃダメだよ」

「はぁ…わかりました…。ところで最近…亜理沙と話してるんですが」

「亜理沙ちゃん?絵里ちゃんの妹の?」

「はい…。あの…その…私たちもμ'sに入れるかな…って」

「!」

「あ、いや…最初はお姉ちゃんのことバカにしてたんだけど…皆さんのパフォーマンス観たら、かっこよくて、可愛くて…すごく素敵で…キラキラしてて…私もこの中に入れたら…って」

「嬉しいな、そう思ってくれてるなんて」

「亜理沙なんか、もう何曲も振り付け完コピしてて…。あ、でも、来年、入部希望者が殺到したら、μ'sは何人になっちゃうんだろう?10人…20人?Aチーム、Bチームに分けるのかな?それともオーディション?」

「…」

「あ、ごめんなさい!ひとりで盛り上がっちゃって」

「ううん…いいの…。その先のことなんて、まったく考えてなかったから…」

 

…いや、考えてなくはないんだけど…

3年生が卒業したら…μ'sはどうなるんだろう…

にこちゃんは『部活だから新入生が入ってくるのは当たり前』って言ってたけど、雪穂ちゃんが言う通りいっぱい入ってきたら…

 

「花陽さん?」

「えっ?あぁ…えっと…穂乃果ちゃんはその想い伝えたの?」

「まだ言ってないですよ。そんなこと言ったら、すぐ調子に乗るし…あ、だから今の話はナイショですよ!」

「うん、わかった」

「そう言えば、お姉ちゃん『どうしよう?どうしよう?』って悩んでたけど、なにかありました?」

「実は、まだ最終予選になにを歌うか、決まってないんだ」

えへへ…と笑う花陽。

「そうなんですか!だったら私は『No brand girls』がいいです。すごくノリがいいし、ライブでやったら絶対盛り上がるし」

「うん、わかる!…けど…すごく体力が消耗するんだよねぇ…」

苦笑いの花陽。

「もうひとつ理由があって、お姉ちゃんが…」

と雪穂が言い掛けた時だった。

 

「ただいま!あれ、花陽ちゃん?どうしたの?」

 

花陽の待ち人が帰宅した。

 

「あ、帰ってきちゃった!続きはまた今度ということで…」

「うん」

「なに?なに?雪穂、穂乃果の悪口言ってなかった?」

「えへへ…そんな話はしてないですよ。新しいお団子、美味しいな…って」

「でしょ?でしょ?私も1本食べちゃおう」

「お姉ちゃん!」

「今日一日頑張った…♪自分にご褒美だ~」

 

 

 

 

 

~つづく~


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