【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「あ、あった!これでしょ?」
「は、はい…すみません」
花陽は忘れていった財布を取りに、穂乃果と部屋に戻ってきた。
「買い出しの精算したとき、そのままにしちゃったみたいで」
「気付いてよかった。私の部屋にあると、どこ行ったかわかなくなっちゃうもんね」
「はい」
「え~?冗談で言ったんだけどぉ…」
落ち込む穂乃果。
「本棚とか、もう少し整理しないと。雪穂ちゃん言ってたよ。漫画とか順番に並んでないから、探すのが大変だって…」
「あちゃ~…雪穂め、わざわざ花陽ちゃんまで言わなくても。あ、それよりさ、時間、ある?」
「はい?」
「花陽ちゃんに相談したいことが…」
「相談?」
「今度の最終予選のことなんだけど…」
「あぁ、はい」
「花陽ちゃんだったら、なに歌う?」
「これまでの曲で…ってことですか?」
「そう」
「なぜ花陽に?」
「それはラブライブに一番詳しいのは花陽ちゃんでしょ?」
「はぁ…でもラブライブ自体、まだ歴史が浅いし、傾向と対策みたいなのはないですよ」
「そっか…じゃあ、花陽ちゃん個人としては?」
「う~ん…そうですね…」
しばし考え込む花陽。
「なに?なに?」
急かす穂乃果。
「そんなに急には…でも、敢えて選ぶなら『これからのSomeday』ですね」
「へぇ…そうきたか!なんで?なんで?」
「まず曲調も歌詞も、そんなに季節感を問わないので、冬に歌っても違和感ないと思うし…なにより明るくて楽しい曲だから」
「ふむふむ」
「それに…まだ絵里ちゃんと希ちゃんが入る前だったから、9人で披露したことはないんですよね。そういう意味では、すでにある曲だけど、新鮮な感じになるんじゃないかと」
「なるほど、なるほど…」
「穂乃果ちゃんは?」
「私?私は…『START:DASH!!』かな…。なんて言ってもμ'sのデビュー曲だし。…最初は花陽ちゃんしか来てくれなかったけど…花陽ちゃんが来てくれたから今があって…」
「私がいなくても、穂乃果ちゃんたちなら、きっとやってましたよ」
「そうかも知れないけど…花陽ちゃんが会場に入ってきたときは『神』だと思ったよ。だから私の中じゃ花陽ちゃんは『かよちん』じゃなくて『かみちん』なんだよ」
「それ、恥ずかしいです」
「ファーストライブの幕が開いた時の絶望感…そして、例えひとりでも、観に来てたくれた人に伝えたい!って気持ち…それはずっと忘れちゃいけないんだ」
「でも、そのあと、みんなで歌ったよ」
「そうだね。9人で学校の講堂は満員に出来た。だから次は…ラブライブのステージで…満員の会場で歌いたい!」
「『START:DASH!!』は、穂乃果ちゃんにとって、私たち以上に想い入れが強い曲なんだね…」
「『初心忘るべからず』…ってとこ」
「なんか穂乃果ちゃんらしくない言葉が出てきたよぅ…今日は雪が降るかも!」
「あぁ、花陽ちゃんまで私をバカにする?穂乃果だってそのくらいの言葉は知ってますぅ」
穂乃果は子供のように「べぇ~」っと舌を出した。
「それと、もうひとつ、やりたい曲が…」
急に真顔に戻った穂乃果。
「え?」
「許して貰えるなら、この曲をやりたい…」
「許す…なにを?」
「『No brand girls』」
「あ!さっき雪穂ちゃんも言ってた…」
「雪穂が?」
「うん、ライブで絶対盛り上がる曲だよね!って」
「へぇ…雪穂がねぇ…」
「一番疲れる曲だけど」
「動きが激しいからね…。でも、その通り!穂乃果もライブでやりたいんだ。それでね…お客さんと掛け合いとかするの!穂乃果たちが『Oh! Yeah!』って言ったら、あっちから『Oh! Yeah!』って返してもらうの」
「コール&レスポンスってやつですね!」
「『♪壁はHi! Hi! Hi!』のところも、一緒に拳を突き上げてもらって『Hi! Hi! Hi!』って!」
「うん、うん。いいかも、それ!」
「でしょ?でしょ?」
「…でも、私たちの単独ライブじゃないから、それは難しいかも…」
「…だよねぇ…」
「それで?」
「えっ?」
「許されるなら…って?」
「あ…うん…。ほら、この曲ってさ、穂乃果が唯一振り付け考えたやつだからさ」
「あ、そういえばそうだね」
「だけど張り切り過ぎて、空回りして、結局熱出して倒れて…μ's崩壊の危機を作ったっていう…」
「崩壊は大袈裟だよ」
「穂乃果にとってはトラウマなんだよ!だから、次、歌う機会があれば完璧なパフォーマンスをして、名誉挽回したい」
…あ、さっき雪穂ちゃんが言い掛けた「お姉ちゃんが…」って言葉…
もしかして、この事だったのかな…
そっか…あのライブ、雪穂ちゃんも観に来てたもんね…
穂乃果ちゃんの頑張りを一番間近で見てて、でもあんな風になっちゃって…悔しかったんだろうな…
「花陽ちゃん?」
「えっ?あ…今度はムチャしちゃダメですよ」
「あははは…」
「あ、じゃあ、花陽はそろそろ…」
「うん、わかった。ごめんね、呼び止めちゃって」
「いえ…」
そう言って花陽が立ち上がろうとした時だった。
2人のスマホが同時に鳴った。
「LINE?」
「LINEです!」
「ん?真姫ちゃん?」
「真姫ちゃんですね!」
「緊急招集だって!」
「なにかあったのかな?」
「考えてても仕方ない。取りあえず、急ごう!」
穂乃果と花陽は、部屋を飛び出し、階段を駆け降りる。
「あら、お出掛け?」
と、穂乃果の母。
「ごめん、ちょっと!」
「え~あの~お団子美味しかったです!ごちそうさまでした!」
花陽は一礼して、先に店を飛び出した穂乃果のあとを追う。
「にゃ?真姫ちゃんからだ!」
「アタシも」
「緊急招集?」
「何事よ一体?」
「わからないけど、行くしかないにゃ!」
「まだ食べ終わってないんだけど…」
「お持ち帰りにしてもらう?」
「麺が延びるわ!って、仕方ないわねぇ、行くよ!」
「はいにゃ!」
にこと凛も、慌ててラーメン屋をあとにした。
こうして穂乃果、花陽、凛、にこ…そして、それぞれ別の場所にいた海未とことりが、指定された集合場所に呼び出された。
そこに現れたのは真姫。
「真姫ちゃん、一体、どういうこと?」
代表して穂乃果が訊く。
「今から希の家に行くわよ」
「希ちゃんち?」
「理由はあとで話すから、とにかく今は黙って着いてきて…」
…希ちゃん?…まさか引っ越しちゃうとか?…
希の家庭環境を知っている花陽に、とてつもない不安が襲い掛かってきた…。
~つづく~