【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

73 / 121
最高のライブ その10 ~私はノーブラ!~

 

 

 

 

 

「あ、あった!これでしょ?」

「は、はい…すみません」

 

花陽は忘れていった財布を取りに、穂乃果と部屋に戻ってきた。

 

「買い出しの精算したとき、そのままにしちゃったみたいで」

「気付いてよかった。私の部屋にあると、どこ行ったかわかなくなっちゃうもんね」

「はい」

「え~?冗談で言ったんだけどぉ…」

落ち込む穂乃果。

「本棚とか、もう少し整理しないと。雪穂ちゃん言ってたよ。漫画とか順番に並んでないから、探すのが大変だって…」

「あちゃ~…雪穂め、わざわざ花陽ちゃんまで言わなくても。あ、それよりさ、時間、ある?」

「はい?」

「花陽ちゃんに相談したいことが…」

「相談?」

「今度の最終予選のことなんだけど…」

「あぁ、はい」

「花陽ちゃんだったら、なに歌う?」

「これまでの曲で…ってことですか?」

「そう」

「なぜ花陽に?」

「それはラブライブに一番詳しいのは花陽ちゃんでしょ?」

「はぁ…でもラブライブ自体、まだ歴史が浅いし、傾向と対策みたいなのはないですよ」

「そっか…じゃあ、花陽ちゃん個人としては?」

「う~ん…そうですね…」

しばし考え込む花陽。

「なに?なに?」

急かす穂乃果。

「そんなに急には…でも、敢えて選ぶなら『これからのSomeday』ですね」

「へぇ…そうきたか!なんで?なんで?」

「まず曲調も歌詞も、そんなに季節感を問わないので、冬に歌っても違和感ないと思うし…なにより明るくて楽しい曲だから」

「ふむふむ」

「それに…まだ絵里ちゃんと希ちゃんが入る前だったから、9人で披露したことはないんですよね。そういう意味では、すでにある曲だけど、新鮮な感じになるんじゃないかと」

「なるほど、なるほど…」

「穂乃果ちゃんは?」

「私?私は…『START:DASH!!』かな…。なんて言ってもμ'sのデビュー曲だし。…最初は花陽ちゃんしか来てくれなかったけど…花陽ちゃんが来てくれたから今があって…」

「私がいなくても、穂乃果ちゃんたちなら、きっとやってましたよ」

「そうかも知れないけど…花陽ちゃんが会場に入ってきたときは『神』だと思ったよ。だから私の中じゃ花陽ちゃんは『かよちん』じゃなくて『かみちん』なんだよ」

「それ、恥ずかしいです」

「ファーストライブの幕が開いた時の絶望感…そして、例えひとりでも、観に来てたくれた人に伝えたい!って気持ち…それはずっと忘れちゃいけないんだ」

「でも、そのあと、みんなで歌ったよ」

「そうだね。9人で学校の講堂は満員に出来た。だから次は…ラブライブのステージで…満員の会場で歌いたい!」

「『START:DASH!!』は、穂乃果ちゃんにとって、私たち以上に想い入れが強い曲なんだね…」

「『初心忘るべからず』…ってとこ」

「なんか穂乃果ちゃんらしくない言葉が出てきたよぅ…今日は雪が降るかも!」

「あぁ、花陽ちゃんまで私をバカにする?穂乃果だってそのくらいの言葉は知ってますぅ」

穂乃果は子供のように「べぇ~」っと舌を出した。

 

「それと、もうひとつ、やりたい曲が…」

急に真顔に戻った穂乃果。

 

「え?」

「許して貰えるなら、この曲をやりたい…」

「許す…なにを?」

「『No brand girls』」

「あ!さっき雪穂ちゃんも言ってた…」

「雪穂が?」

「うん、ライブで絶対盛り上がる曲だよね!って」

「へぇ…雪穂がねぇ…」

「一番疲れる曲だけど」

「動きが激しいからね…。でも、その通り!穂乃果もライブでやりたいんだ。それでね…お客さんと掛け合いとかするの!穂乃果たちが『Oh! Yeah!』って言ったら、あっちから『Oh! Yeah!』って返してもらうの」

「コール&レスポンスってやつですね!」

「『♪壁はHi! Hi! Hi!』のところも、一緒に拳を突き上げてもらって『Hi! Hi! Hi!』って!」

「うん、うん。いいかも、それ!」

「でしょ?でしょ?」

「…でも、私たちの単独ライブじゃないから、それは難しいかも…」

「…だよねぇ…」

「それで?」

「えっ?」

「許されるなら…って?」

「あ…うん…。ほら、この曲ってさ、穂乃果が唯一振り付け考えたやつだからさ」

「あ、そういえばそうだね」

「だけど張り切り過ぎて、空回りして、結局熱出して倒れて…μ's崩壊の危機を作ったっていう…」

「崩壊は大袈裟だよ」

「穂乃果にとってはトラウマなんだよ!だから、次、歌う機会があれば完璧なパフォーマンスをして、名誉挽回したい」

 

…あ、さっき雪穂ちゃんが言い掛けた「お姉ちゃんが…」って言葉…

もしかして、この事だったのかな…

そっか…あのライブ、雪穂ちゃんも観に来てたもんね…

穂乃果ちゃんの頑張りを一番間近で見てて、でもあんな風になっちゃって…悔しかったんだろうな…

 

「花陽ちゃん?」

「えっ?あ…今度はムチャしちゃダメですよ」

「あははは…」

「あ、じゃあ、花陽はそろそろ…」

「うん、わかった。ごめんね、呼び止めちゃって」

「いえ…」

そう言って花陽が立ち上がろうとした時だった。

2人のスマホが同時に鳴った。

 

「LINE?」

「LINEです!」

「ん?真姫ちゃん?」

「真姫ちゃんですね!」

「緊急招集だって!」

「なにかあったのかな?」

「考えてても仕方ない。取りあえず、急ごう!」

穂乃果と花陽は、部屋を飛び出し、階段を駆け降りる。

「あら、お出掛け?」

と、穂乃果の母。

「ごめん、ちょっと!」

「え~あの~お団子美味しかったです!ごちそうさまでした!」

花陽は一礼して、先に店を飛び出した穂乃果のあとを追う。

 

 

 

 

 

「にゃ?真姫ちゃんからだ!」

「アタシも」

「緊急招集?」

「何事よ一体?」

「わからないけど、行くしかないにゃ!」

「まだ食べ終わってないんだけど…」

「お持ち帰りにしてもらう?」

「麺が延びるわ!って、仕方ないわねぇ、行くよ!」

「はいにゃ!」

にこと凛も、慌ててラーメン屋をあとにした。

 

 

 

 

 

こうして穂乃果、花陽、凛、にこ…そして、それぞれ別の場所にいた海未とことりが、指定された集合場所に呼び出された。

 

そこに現れたのは真姫。

 

「真姫ちゃん、一体、どういうこと?」

代表して穂乃果が訊く。

「今から希の家に行くわよ」

 

「希ちゃんち?」

 

「理由はあとで話すから、とにかく今は黙って着いてきて…」

 

…希ちゃん?…まさか引っ越しちゃうとか?…

 

希の家庭環境を知っている花陽に、とてつもない不安が襲い掛かってきた…。

 

 

 

 

 

~つづく~


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。