【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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最高のライブ その11 ~運命~

 

 

 

 

 

「へぇ、希ちゃんて、ひとり暮らしだったんにゃ…」

「不肖、園田海未…不覚にもまったく知りませんでした」

 

真姫に引率されて、希の家まで来た穂乃果、海未、ことり、凛、にこ…そして、花陽…。

全員、初めての訪問のようである…花陽以外は。

 

 

 

花陽は…そう、つい2ヶ月ほど前、ここで熱い夜を過ごした。

玄関に足を踏み入れた途端、その時のことが鮮明に甦り、一瞬、頭がクラクラしてよろけた。

 

「ん?かよちん?」

「あ、大丈夫だよ。ちょっとバランスを崩しただけだから」

「なら、いいんだけど…」

 

 

 

「希!なぜ、そういう大事なことを黙っていたのですか?」

海未が少し険しい顔で訊く。

「別に隠してたわけやないんやけど…無用な心配をされても、アレやし…。ウチ、子供の頃から両親の仕事の都合で転校が多くて、まぁ、それはそれでそんなもんやと思ってたんやけど…さすがに少し落ち着きたくなって…。高校進学時に、無理言ってこうさせてもらったんや」

「ひとり暮らしかぁ…憧れちゃうなぁ!」

「穂乃果のようなガサツな人間には出来ませんけどね」

「またぁ、海未ちゃんはすぐ、そういう風に決めつけるぅ。穂乃果だって、その気になれば…」

「…ってことは、炊事洗濯からなにやらなにまで、全部ひとりでやってるんでしょ?凛には無理にゃ~」

「なぁんだ、案外、希もアタシと変わらない生活してるんじゃない」

「いやいや、にこっちには負けるわ。ウチには子供、3人もおらんし」

「だから、あれは妹と弟だって!」

あはは…とメンバーに笑いが起きた。

 

「それで、一体、なにがあったのでしょう」

と、ひと呼吸置いてから、海未。

「それは私から説明するわ」

「なんで真姫ちゃんが説明するにゃ?」

「べ、別にいいでしょ。たまたま事情を知っただけで…」

 

だが凛と花陽はピン!ときた。

2人の前から走り去ったあと、希と絵里を突き詰めたに違いない…と。

「真姫ちゃんも、随分、熱い人間になったにゃ」

「なにか言った?」

「なんでもないにゃ」

その様子を見て、花陽はひとりクスクスと笑った。

「?」

不思議がる真姫。

 

「真姫ちゃん、本当に話すん?」

「ここまできて、教えないわけにはいかないでしょ?」

「ウチはもう、いいんやけどね」

「みんなも不思議に思ったでしょ?絵里が妙にラブソングに拘るのを」

「まぁ、確かに」

「実は希の為だったのよ。希の夢を叶える為に、絵里が仕掛けたことなの」

「夢?ラブソングが?」

口を揃えて驚く6人。

「笑わんといて…。別にラブソングに拘ってたわけやないから」

「真姫、それじゃ言葉不足だわ。希がしたかったこと…夢は『9人みんなで、曲を作りたい!』ってことだったの」

「9人で!?」

「あっ!それじゃあ…」

花陽がハッとして、絵里の顔を見た。

「そう、花陽が提案してくれたアイデア。まさにそれ」

「かよちんは知ってたにゃ?」

「いや、全然…」

「ひとりひとりが持ち寄った言葉を紡いで…想いを紡いで…本当に全員で作り上げた曲…。そんな曲を作りたい、そんな曲でラブライブに出たい。それが希の夢だったの…」

「ラブソングなら、テーマとしてアイデアが出しやすいかな…って思ったんやけど、考えが浅はかやったね。改めて海未ちゃんの大変さを実感したわぁ。やっぱり才能って大事やね」

「いや、それほどのことでは…。ですが、それならそうと言って頂ければ」

「そうだよ。希ちゃんが言えなくても、絵里ちゃんがちゃんと言ってくれれば!」

「穂乃果、それは私も何度もそう思ったわよ。…でも希に止められて…」

「言ったやろ?ウチが思ってたのは、夢なんてものやない…って」

「じゃあ、なんなのよ?」

「う~ん、にこっち、なんなんやろね?」

「アタシが訊いてるんだけど」

「ははは…そうやね。上手く説明出来ないんやけど…ただ…曲じゃなくてもいい、9人が集まって力を合わせて、何かを生み出せればそれでよかったんよ…。ウチにとって、この9人が集まったことは、神様によって導かれた『運命』やと思ってるから」

「『運命』?またそっち方面の話?」

「ウチは転校、転校ばかりで友達が出来なくて、引き籠りの一歩手前やった。そんな時に…えりち…ウチと同じように人付き合いの下手な、意地っ張りに出会ったんよ」

「意地っ張りは余計じゃない?」

「そして、もうひとり…にこっち…」

「アタシ?」

「えりちは、なんとか振り向いてくれたんやけど、にこっちは最後まで心を開いてくれなかった…」

「…」

「だけど、それを大きな力でつないでくれる存在が現れた…それが穂乃果ちゃん、あなた…」

「えっ?私?」

「想いを同じくする人がいて、つないでくれる存在がある。この子たちなら、きっとそうしてくれる。ウチはそう信じたんや。ウチの運命を、この子たちに託そう…そう決めたんよ」

「だから、あんなに私たちに協力的だったのですね」

海未の言葉に、頷く希。

「真姫ちゃんを見たときも、熱い想いはあるけど、どうやってつながっていいかわからない。あぁ、この子も人付き合いが下手なんや…って」

「面倒な人たち!」

「ちょっと、凛!今、ここで私のマネしなくてもいいでしょ!」

「ふふふ…ホントやね。凛ちゃんの言う通りやと思う。ここに集まったメンバーは、みんな、なんらかのコンプレックスを抱えて生きてきた…。それが9人も集まった…って、これはもう奇跡やないかと思うんよ」

「それはアタシが部長として、まとめあげてきたからであって」

「うん、ありがとな」

「…って、ここは突っ込むとこでしょ!」

素直に認められると、それはそれで恥ずかしい。

本当に面倒な連中である。

「紆余曲折はあったけど、誰ひとり欠けても、μ'sはμ'sじゃなくなるんよ…だから、必ず形にしたかった…この9人で何かを残したかった」

「うん、それはわかるよ」

穂乃果が同意すると、残りのメンバーも黙って頷く。

「でも…μ'sは、もうすでに何か大きなものを生み出してる。だから…ウチはそれで充分! 夢はとっくに叶ったんよ。もう…とっくに…」

ひとつ、ひとつ、過去の記憶を確認するかのように、ゆっくりと話した希。

最後に

「だからこの話はおしまい。それでいいやろ? 」

と付け加えた。

 

「…って、希は言うんだけど、みんなはどう思う? 」

絵里がメンバーに問い掛けた。

 

「いいんじゃない、みんなで作れば?仲間なんだから…」

返答したのは、にこ。

 

「にこっち!?…」

 

仲間…というワードが、にこの口から飛び出すとは思わなかったのは、希だけではなかった。

他のメンバーも、思わず彼女の顔を見た。

 

「…な、なによ…当たり前のことを言ったまでだから」

「ふふふ…そうですね。反対する理由はありませんよ」

「うん、ことりも賛成!」

「じぁあ、ここまで支えてきてくれた、希ちゃんへの誕生日プレゼントということで!」

「プッ!穂乃果ちゃん、ウチの誕生日は6月やけど」

「あ、そうだった!」

「だったら、ちょっと早いけど、クリスマスプレゼントってことでどう?μ'sから…μ'sを作ってくれた女神さまに」

「女神さまは言い過ぎやん!…でも、えりち…みんな…。うん、ありがとな。このプレゼント、一生の宝物やね…」

希の頬に、一筋の涙が走った。

 

 

 

「にゃ?希ちゃん、これって?」

「あっ!それは!」

凛が目敏(めざと)く、棚に飾ってある写真を見つけた。

 

花陽が手に取って見る。

以前は合宿で撮った集合写真だったが、今は一次予選のステージの画に変わっていた。

 

「そういうの飾ってるなんて意外ね」

にこが少し意地悪く、希の顔を見る。

「べ、別にいいやろ。ウチだってそのくらいするやん… 仲間…なんやから…」

「希ちゃん!」

「可愛いにゃ~!」

ことりと凛が希に抱きつく。

「もう!笑わないでよぅ! 」

「にゃ?話し方変わってるにゃ~!」

照れてベッドに逃げる希。

「暴れないの!たまにはこういうこともないとねっ」

絵里が背後からスリーパーホールドを仕掛ける。

「もう…」

希は観念したのか、バタバタするのをやめた。

「おぉ、なんか、その姿勢はエロいにゃ!」

「そのままチューしそうだね」

「恋愛映画で爆睡してたコンビが、よく言うわね」

「たはは…真姫ちゃん、痛いとこを突くねぇ…」

そう言って、穂乃果が何気なく見た窓の外…。

ある異変に気付く。

 

「あっ!見て、見て!」

「えっ、なに?」

「嘘でしょ?雪?」

「聴いてないわよ!!」

絵里、真姫、にこが窓の外を見る。

「雪にゃ!雪にゃ!」

と、3人を押し退けるように、凛も身を乗り出して、外を眺める。

 

「あっ!穂乃果ちゃん!」

「なに?花陽ちゃん!」

「やっぱり、さっき穂乃果ちゃんが『初心忘るべからず』なんて難しいことを言うから」

「なるほど!それで雪が降ってきたんですね」

「もう!そんなわけないじゃ~ん…ことりちゃん…花陽ちゃんと海未ちゃんが苛めるよぅ」

「うふふ…」

そのやりとりに全員が笑う。

 

「ねぇ、外に出てみない?」

真姫の発案に、目の前にある公園へと飛び出した。

 

そして、ちらちらと舞う雪を見ながら、それぞれが心に自分の感じた言葉を想い描いた。

 

…想い…

…メロディー…

…予感…

…不思議…

…未来…

…ときめき…

…空…

…気持ち…

 

 

 

…好き…

 

 

 

…やっぱり、ウチはこのメンバーが大好きや…

 

 

 

9人はいつの間にか、輪になって、手と手を繋いでいた…。

 

 

 

 

 

~つづく~


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