【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
いよいよ迎えた最終予選、当日。
前日の予報は大きく外れ、昨晩から降り続く雪は、未だ止まない。
穂乃果たち2年生組は、学校にいた。
この日は、来春入学を希望する音ノ木坂の新入生に向けての、学校説明会があった為である。
交通機関の乱れ等により、予定より1時間遅れでスタート。
それでも無事、生徒会としての仕事を全うした3人は、後(おく)れ馳(ば)せながら、ライブ会場へ向かおうとする。
ところが…
都内の交通網は、積雪に対して非常に脆弱である。
道路は渋滞し、電車は止まるという最悪の事態。
途方に暮れる3人…。
「穂乃果ちゃん、走って行こう!」
「ことりちゃん!?」
「死ぬ気でやれば怖くなんかないよ!行こう!」
恐らくそれは、ことりが人生で発してきた言葉の中で、一番を力強い台詞。
「この日のために頑張って来たんだよ!やれるよ!」
「ことりちゃん…」
「ことり… 」
穂乃果も海未も、こんなに目力が強いことりを初めて見た。
「みんなが待ってるよ!」
「そうだね…行くしかないよね…。よ~し、ことりちゃん!海未ちゃん!走るよ!!」
「穂乃果ちゃん!」
「穂乃果!」
しかし、勢いよく飛び出したものの、今日の敵は一筋縄ではいかない。
そこに現れたのは…
「甘いよ、甘い!そんな装備じゃ、走れるわけないじゃない!」
「スノーブーツ用意したから、これ履いて!」
「さぁ、早く行きなさい!私たちもあとから追いかけるよ!」
校門の前で待ち受けていたのは、ヒデコ、フミコ、ミカ。
穂乃果の親友。
μ's結成当初から積極的にバックアップをしてきた、いわば影の功労者。
彼女たちのフォローなしでは、今のポジションにμ'sは存在していない。
実はアイドル研究部の、隠れ部員ではないのか…とも言われている。
そして、今回も彼女たちが穂乃果を救う。
移動手段を失った穂乃果たちの為に、音ノ木坂の全生徒に呼び掛け、雪掻きを行い、会場までの移動経路を確保する…という人海戦術作戦を展開。
μ'sは音ノ木坂の廃校を救った、いわば英雄的存在。
次は自分たちがμ'sを助ける番…と、多くの生徒が集まった。
中にはμ'sファンの他校の生徒もいるらしい。
作戦は功を奏し、道は開けた。
あとは会場に向かって、ひらすら走るのみ…。
だが、強い風と降りしきる雪が、3人の行く手を阻む。
「あぁ…うっ…雪が足にまとわりついて…あぁ…」
体力には自信がある海未も、さすがにこの状況では、思うように前に進めない。
思わず弱気な言葉が口を吐(つ)く。
「諦めちゃダメ!」
2人を励ます言葉か、或いは自分自身を奮い立たせる台詞か、ことりが叫ぶ。
「せっかく…せっかく、ここまで来たんだから、ここで諦めちゃダメだよ!」
「わかっています!私だってそうです!2人の背中を追いかけてるだけじゃない!やりたいんです!私だって誰よりもラブライブに出たい!9人で最高の結果を残したいのです!行きましょう! 」
ことりの言葉に、海未が呼応する。
前へ!前へ!
穂乃果たちは階段ダッシュで鍛えた脚力で、仲間が待つ会場へと走る。
歩道では雪掻きを手伝った音ノ木坂の生徒たちが、声援を送る。
強風に煽られながらも、慣れない雪道を走る3人。
脳内に流れる曲は、穂乃果が自分たちの原点と言った『Start:Dash!!』か。
そして、見えてきたゴール地点。
待ち受けていたの、絵里をはじめとしたμ'sの面々。
歓喜の瞬間が訪れる。
しかし本番はこれからだ。
この日の為に、それぞれの想いを歌詞に込めた曲。
それを披露する時がきた。
屋外に作られた特設会場は、悪天候だったにも関わらず超満員に膨れ上がっている。
そして、いつの間にか、あれだけ強く降っていた雪は…止んでいた。
舞台は整った。
「私がスクールアイドルを始めたのは、学校の廃校を阻止したい…ただそれだけだった。でも、ラブライブに出たい!予選を突破したい!A-RISEに勝ちたい!想いをがどんどん強くなって…ようやく、ここまでこれた!」
「もう、ここまできたら、A-RISEどうこうやなく、自分たちの力を出しきるだけやん」
「うん、これまで支えてくれた人たちの為にも、みんな、最高のライブにしよう!!」
「今日が最後みたいなことを言わないで」
「にこちゃん?」
「アタシたちの目標は、ラブライブの優勝よ!今日のステージはあくまでも通過点!」
「にこちゃん…」
「だから、立ち止まらずに行くわよ!!突っ走るわよ!!」
「うん!」
「ようし、全力でいっくにゃ~!!」
「みなさんこんにちは! 音ノ木坂学院スクールアイドル…」
「μ'sです!」
「これから歌う曲は、今日の為に新しく作りました。沢山のありがとうの気持ちを込めた歌です!…応援してくれた人、助けてくれた人がいてくれたおかげで、私達は今、ここに立っています!だから…心を込めて歌います!聴いてください…」
「『Snow Halation』」
…学校が大好きで…
…音楽が大好きで…
…アイドルが大好きで…
…踊るのが大好きで…
…メンバーが大好きで…
…この毎日が大好きで…
…頑張るのが大好きで…
…歌うことが大好きで…
…μ’sが大好きだったから…
ステージの上には、パフォーマンスを終えた4チームが並んでいる。
4位、3位と順に発表され、ラブライブ本選出場チームは、下馬評通りA-RISEとμ'sに絞られた。
「それでは第2位の発表です。…第2位は…」
司会者の口から「『あ…』」と、母音が聴こえた瞬間、勝敗は決した。
綺羅ツバサは一瞬、目を瞑ってから、空を見上げた。
そして大きく深呼吸したあと、穂乃果に握手を求める。
穂乃果は差し出された右手に対し、両の手で握り返し、深々と頭を下げた。
それは憧れであり、目標であり、ライバルであったA-RISEへの感謝の気持ちだったのであろう。
ツバサの目は「本選、頑張ってね…」と言っていた。
ステージからの帰りしな、統堂英玲奈は拍手をしながら、花陽に近づき
「おめでとう…また負けてしまったな」
と耳元で囁く。
「あ、ありがとうございます!」
花陽はやっとのことでそう言うと、振り返ることなくこの場から立ち去る彼女の後ろ姿に、一礼をした。
~つづく~