【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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最高のライブ その13 ~去年の今日とは違うこと~

 

 

 

 

 

除夜の鐘が鳴り終わり、新しい1年が始まった。

 

「いやぁ、まさか着替えてる最中に年が明けちゃうなんて…」

「ちゃんと出かける準備をしておかないからです!」

「確か、去年もこうだったよね?」

「そうだっけ?」

「はぁ…あなたはこの1年間、何も成長していないのですか!?」

「も~、新年早々、怒らないでよぅ。…よし、準備完了!それじゃあ出発進行~!」

 

3人はいつものように騒がしくしながら、神社へと向かった。

 

 

 

ここだけを切り取れば、知り合ってから十数年と繰り返してきた、何も変わらない日常。

穂乃果が海未に怒られ、ことりがそれを見守る…という、もはやルーティーンと言っても良いほどの、ありふれたシチュエーション。

 

 

 

「でもさ、去年の今日とは明らかに違うことがあるよ」

「?」

「それは、私がμ'sの一員だってこと!」

 

 

 

彼女たちが想像すらしていなかった、この1年間の出来事(…正確に言えば4月からの9ヶ月)。

 

朝、目を覚ました時…それまでのことは夢だったんじゃないか…と思うことは何度もあった。

いや、日常においてさえも、自分がスクールアイドルでいることに対し、未だ、半信半疑な状態だ。

 

しかし、それは虚構の世界で起こった話ではない。

 

紛れもなく全てが真実。

 

どんなに夢から覚めても、μ'sのメンバーであることに変わりなかった。

 

 

 

「まさかスクールアイドルとはねぇ…」

「私が一番驚いていますけど…」

「でも、最近の海未ちゃんを見てると、実は一番適性があったんじゃないかと思うよ」

「ことり、それは何かの間違いです!」

顔を真っ赤にして視線を逸らす海未。

「そうかなぁ…」

ことりはニコニコしながら、海未を見る。

「と、とにかく、ラブライブ、優勝しましょう!」

「うん!」

「もちろん!…それにしても、相変わらず凄い人だね…」

「そうですね。迷子にならないでくださいよ」

「迷子って…小学生じゃないんだから」

と、苦笑いする穂乃果。

 

その時だった。

前から歩いて来るμ'sのメンバーを見つけた、穂乃果。

 

「凛ちゃん!花陽ちゃん!」

 

これだけの人混みの中でも、わかる時にはわかるものである。

 

「あ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん!ハッピーニャーイヤー!」

「明けましておめでとうございます」

「おめでとう!」

「おめでとうございます。凛、花陽、今年もよろしくお願いします」

「はい、こちらこそ」

「わぁ!凛ちゃん、その服可愛い! 」

スカイブルーのダッフルコートの下は、白のブラウスに、カーキ色のミニスカート。

すっかり例のトラウマは払拭されたようである。

「そう?…えへへ…クリスマスに買ってもらったんだ !それでね、このコートはかよちんと色違いなんだにゃ」

「少しだけデザインも違うんだけどね」

「うん、2人とも、よく似合ってるよ!」

「にゃは!ことりちゃんに誉められたにゃ!」

「良かったね、凛ちゃん!」

 

…なんか凛ちゃんの女子力が、どんどん上がっていってるね…

…はい…このままでは、私と穂乃果は、置いていかれる一方です…

…今年の目標は、女子力アップだね!…

…承知しました!…

 

「どうかした?」

険しい顔でアイコンタクトを交わす穂乃果と海未に、ことりが訊く。

「へっ?いやいや、別に…」

「それより、真姫の姿が見当たりませんが…」

海未の言う通り、1年生組がひとり足らない。

「あれ、本当だ。真姫ちゃんは?」

「…真姫ちゃん…さっきまでいたんだけど… 」

「恥ずかしいから…って、あそこに隠れてるにゃ~」

「隠れてる?」

「お~い、真姫ちゃ~ん!」

凛の呼び掛けに、電柱の影からチラ見する真姫。

「かくれんぼ?」

「ことりちゃん、小学生じゃないんだから」

「じゃあ、なんでこっちにこないのかなぁ」

「仕方ないにゃ~、かよちん、行くにゃ!」

「うん!」

凛と花陽は真姫へと走りよると、彼女の腕を掴み、2年生組の前へと引きずり出した。

 

「!!」

 

その姿に、ハッと息を飲む3人。

 

「なんと、真姫は和装でしたか…」

「ビューティフォー…」

「可愛い!」

 

そう、真姫の装いは、鮮やかなローズピンクの振り袖姿。

髪の毛をアップにしているせいか、かなり大人っぽく見える。

 

「『孫にも衣装』だね」

「それを言うなら穂乃果ちゃん『馬子にも衣装』だよ」

「どちらにせよ、それは誉め言葉ではありませんよ」

「お姉ちゃん、色っぽいねぇ…」

「オヤジか!」

穂乃果の一言に、凛が速攻で突っ込む。

「わ、私は普通の格好でいい…って言ったのに、ママ…お母さんが着ていきなさいって!…ていうか、なんで誰も着てこないのよ!」

「なんでと言われましても…」

「そんな約束してたっけ?」

「べ、別にしてないけど…」

「だったら、穂乃果も晴れ着にすればよかったよ」

「そうですね。そうすれば『今だけ』でも『おしとやか』でいられるかもしれませんものね」

「海未ちゃん…」

「まぁ、穂乃果ちゃんには無理にゃ…」

「ちょっと凛ちゃん!」

「出掛けるまで、時間掛かりそうだよね」

「うわっ!ことりちゃんまで!」

あはは…うふふ…と笑い声が響く。

 

 

 

その声に敏感に反応した人物がいた。

 

「あら、あなたは!」

「ん?…あっ!」

「やっぱり!」

 

6人に声を掛けてきたの…綺羅ツバサ。

A-RISEのリーダー。

よく見ると、その後ろには優木あんじゅと統堂英玲奈もいた。

「相変わらず、にぎやかね」

「すみません、騒がしくて」

海未が頭を下げる。

「μ'sらしくて、いいんじゃない?」

「あ!?あけましておめでとうございます」

「おめでとうございます」

穂乃果に続いて挨拶をする5人。

するとツバサは

「おめでとう。そして、もうひとつ重ねて…おめでとう」

と言った。

「もうひとつ重ねて?…あっ!ありがとうございます」

「ふふふ…『あの日』はちゃんと言えなかったから…。こう見えて、結構ショックを受けてるのよ」

「すみません…」

「ふふふ…謝ることはないけど」

「初詣?」

珍しくあんじゅが口を開いた。

「あ、はい!みなさんも?」

と海未。

「そうね、地元の神社だから」

「もうお参りは終わったけどな」

英玲奈はいつもの調子で、ぶっきら棒に言う。

「うん、そういうわけで…行くわね…」

「あ、はい…また、今度…」

「時間が取れるといいね。色々、話したいこともあるし」

「私も南さんと話してみたいのよねぇ…」

「優木さんが?」

「衣装のこととか…ネ?」

「あ、はい!是非!」

「じぁあ…」

「はい、また…」

μ'sの6人が、歩き出すA-RISEの3人を見送る。

 

「ねぇ、優勝しなさいよ!ラブライブ!」

数メートル進んだところで、ツバサが振り返り叫んだ。

あんじゅも英玲奈も立ち止まり、6人を見る。

 

「もちろんで~す!」

 

穂乃果の声に満足そうな笑みを浮かべると、ツバサは再び向きを変え、歩き始めた。

 

 

 

 

 

~つづく~


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