【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
チャリ~ン…
ガラン、ガラン、ガラ~ン…
ぱん!ぱん!
賽銭を入れ、鈴を鳴らし、二礼二拍手…そして手を合わせ、願い事を唱える。
「かよちんは何お願いしたの?」
「秘密だよぅ」
「凛にも?」
「うん。あんまり人に話しちゃいけない…って、お婆ちゃんが言ってたから…。でも、たぶん凛ちゃんや、みんなと同じことだよ」
「ことりちゃんは?」
「ことりもヒ・ミ・ツ」
「みんな、ずるいにゃ!」
「さぁ、後も閊(つか)えていますから、終わったら移動しま…穂乃果?」
「穂乃果ちゃん、ずいぶん長いにゃ~」
「どうせ、欲張りなお願いしてるんじゃない?」
真姫の言葉に、願い事を念じ終えた穂乃果が反論する。
「そんなことないよぅ!ただ私達9人で、最後まで楽しく歌えるように…って」
「そうですね。みんな思うことは同じです」
「でも長すぎにゃ」
「だって一番大切なことだもん!だから念入りに…」
「あれ?」
「どうしたの真姫ちゃん?」
「花陽は?」
えっ?と周りを見渡す5人。
周囲に姿が見当たらない。
「だって、今、ここに…あ、あそこです!」
海未が遥か後方を指差す。
…誰か助けてぇ…
「瞬間移動?」
思わず真姫が呟く。
「おお!花陽ちゃんが流されていく!」
「そして…人波に消えたにゃ…」
「迷子が…出たね…」
「出ましたね…。穂乃果ではなく、花陽でしたか」
海未は、やれやれ…といった感じで、小さく首を振った。
…う~ん、新年早々、みんなとはぐれちゃった…
…なんで、いつもこうなっちゃうんだろう…
「あれ?花陽さん?」
「ん?雪穂ちゃん?」
「ひとり…ですか?」
「あははは…ちょっと、みんなとはぐれちゃって…あ、明けましておめでとう」
「おめでとうございます!お参りはこれからですか?」
「今、済ませてきたんだけど、その後、流されちゃって…ここまで…」
「くすっ…」
「あ、今、笑ったでしょ?」
「はい、花陽さんて、可愛いなぁ…って思って」
「年下に可愛いって言われちゃった…」
「あ、ごめんなさい!でもバカにしてるわけじゃないんですよ。お姉ちゃんも言ってるんだ…『花陽ちゃんて、やることすべてが、ギュッてしたくなっちゃうんだよ』って。でね『なんで雪穂は花陽ちゃんみたいじゃないの!』とか言うんだよ」
「穂乃果ちゃん…なんてことを…」
「だから、雪穂も言ってやるんだ。『雪穂も花陽さんみたいな、優しいお姉ちゃんがよかった』って」
「あ、ありがとう…なのかな?」
…なんか、知らないところで自分の名前が出てくるのって、恥ずかしいなぁ…
「あ、それより、雪穂ちゃんは合格祈願?」
「はい」
「やっぱり、音ノ木?」
「はい!」
「穂乃果ちゃんには?」
「まだ、ハッキリとは…でも、薄々気付いてるかと…」
「そう…言いづらい?」
「…ていう訳ではないんですけど…これからラブライブの本戦だし、余計な気を使わせても…」
「そっか…」
「あの…」
「なあに?」
「迷惑ですか?」
「えっ?」
「あの…その…花陽さんたちは『先輩の妹』って…やりづらくないですか?」
「なんだ、そういうこと?だったら、全然大丈夫だよ。μ'sは先輩後輩禁止だから」
「まぁ、お姉ちゃんは全然、先輩らしくないから、問題ないですけど」
「また、そういうことを…あれ?そう言えば、今日は亜里沙ちゃんと一緒じゃないの?」
「いえ、一緒に来たんですけど、先に絵里さんのとこに行くって…。なので私は、その間に甘酒でももらおうかと」
「絵里ちゃん?」
「この中で手伝ってるみたいですよ?」
「手伝い?…希ちゃんの?…ん?希ちゃん…あぁ、花陽も希ちゃんの激励に行くんだった!」
「あ、じゃあ、私はこれで」
「一緒に行く?」
「…遠慮しておきます…今はまだ、そういう立場じゃないので…」
「…そっか…わかった。じゃあ、ちゃんとお参りしてね!」
「はい、ありがとうございます」
手を振って2人は別れた。
…なるほど…亜里沙ちゃんは、絵里ちゃんが卒業してるから、あんまり気にしないかも知れないけど、雪穂ちゃんは、穂乃果ちゃんが在学中だもんね…
おまけにμ'sのリーダーで、生徒会長…
それは花陽たちが感じる以上に、プレッシャーがあるよねぇ…
「かよちん、遅かったにゃ!」
「ごめんね、凛ちゃん!…それで希ちゃんには会えた?」
「それがまだなんだ…って言ってたら来たにゃ!希ちゃん!」
「お、みんなお揃いやね?明けましておめでとう」
「おめでとう!」
先程、姿を消した花陽も無事合流し、巫女として神社の手伝いをする希を表敬訪問する1、2年生組。
「忙しそうだね」
「ふふふ…毎年いつもこんな感じやけど。 でも今年は弟子がおるんよ」
「弟子?」
「希~…これそっち?」
驚くく6人の前に、荷物を持って歩いてきたのはのは…巫女の姿をしたアイドル研究部の部長だった。
「に、にこちゃん!?」
「ぬあぁ~っ!何よ!来てたの?」
「来るよね…ふつう」
「はい、来ますね…。それより、巫女の姿がとても似合いますね!」
海未が言うように、髪を後ろで束ねたにこの姿は新鮮だが、その格好に違和感はない。
「当たり前でしょ!アタシは何を着ても似合うのよ」
「今日のにこちゃんは『巫っ女巫っ女み~』だね」
「さすが花陽ちゃん。にこっちの一番弟子だけあって、上手いやん!」
「その格好だと、にこちゃんでも大人っぽく見えるにゃ」
「『でも』は余計よ!」
「そうだねぇ…にこちゃんじゃないみたい。清楚っていうか、厳(おごそ)かというか…」
「そんなに誉めても、お年玉なんかあげないからね」
「にゃ!ばれたか!」
「残念!」
べ~と舌を出す凛と穂乃果。
「あら、みんな !」
「あぁ!絵里ちゃん!明けましておめでとう!」
「おめでとう!」
「絵里ちゃんは絵里ちゃんで、かっこいい!」
「そう?花陽、ありがとう」
「絵里ちゃん!みんなで写真撮るにゃ~」
「駄目よ、今忙しいんだからぁ」
「いいんやない?何十分も掛かるわけやないし」
「にこちゃんも早くするにゃ」
「しょうがないわねぇ…」
「あ、すみません、写真撮ってもらえま…あれ、亜里沙ちゃん?」
「あ、こんばんわ…」
「亜里沙、まずは『明けましておめでとうございます』…でしょ?」
「そうだった。明けましておめでとうございます!」
「おめでとう!」
「どうしてここに?」
「お姉ちゃんの巫女姿を見に…」
「ハラショーでしょ?」
「はい、ハラショーです」
「やめてよ、穂乃果。身内どうしで…それで何かお願いしてきたの?」
「えへっ、これからしてくるの…音ノ木坂に合格して、μ'sに入れますようにって!」
「!」
その場にいた9人の時間がが、一瞬、止まった。
それに感づいたのか
「私、変なこと言いました?」
と訊く亜里沙。
「ううん、違うの。受験頑張ってね!って」
「はい、穂乃果さん!ありがとうございます。 じゃあ、雪穂が待ってるのでいきます」
「ん?雪穂?」
「甘酒もらうのに並んでます」
「ははは…甘酒なら家でも飲めるじゃん」
「では!」
「またね…」
「さてと、私たちも油を売ってないで仕事しないと。これ、運んでる最中だったんじゃない?」
「そやね…」
「ごめんね、今日はそういうわけだから」
「うん、頑張ってねぇ!」
3人はそれぞれ荷物を抱えながら、この場から離れて行った。
その姿をみた凛は
「姉妹みたいだにゃ~」
と呟く。
「『あの日』以来、にこと希の距離が劇的に縮まりましたものね」
「ちょっと遅すぎるけど」
「でも、もうあと3ヶ月もないんだよね、3年生…」
「花陽!その話はラブライブが終わるまでしないって、この前約束したでしょ!?」
「あ、ごめんね、真姫ちゃん…。さっき雪穂ちゃ…じゃなかった…亜里沙ちゃんの話を聴いたら『あぁ、そうなんだ…』って」
「確かそうだけどさ、今日は1月1日なんだし、お正月だよ?お正月!もっと明るくいこうよ!」
「そうだね!そう言えば、あっちにうどんが売ってたよ?みんなで食べない?暖まるよ」
「おぉ!さすが、ことりちゃん!穂乃果もお腹が空いてきたとこで…」
「うどんかぁ…ラーメンは」
「ありません!」
「海未ちゃん、ツッコミ早いにゃ!」
「この時間に食事とはいかがなものかと…」
「今日くらいはいいんじゃない?」
「真姫ちゃんのいう通り!お正月だよ?お正月!」
「力(ちから)うどんってあるかな?」
「えっ!おもち!?」
5人の声に、花陽はえへへ…と笑った。
「よいしょ…で、どうするの?今後のこと…これ、ここ?…」
「うん、それはそこ。…やっぱり一度みんなには、きちんと話した方がいいやろね…。あ、にこっち、これは向こう」
「向こうね…」
「希、これは?」
「えりちのは、そっち」
「こっちね。…理想と現実と…悩むわね…」
「卒業したくないなぁ…」
「気持はわかる…けど、にこっちは頑張らないと、卒業出来ないんやない?」
「あり得るわね」
「りゅ、留年?冗談じゃないわよ!意地でも卒業してやるわよ!」
その言葉に希が、絵里が、そして言った本人も笑った。
だが、その胸の内は三者三様…。
μ'sの今後について、結論が見出だせずにいた…。
~つづく~