【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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最高のライブ その15 ~穂乃果vsツバサ~

 

 

 

 

 

「ではラブライブ本大会のルールを説明します」

 

コンタクトを忘れたのか、眼鏡をかけた花陽が、部室のホワイトボードに文字を書き込みながら説明する。

 

「まず曲についてですが、新作である必要はありません。衣装もダンスも曲の長さも、基本的には自由です」

「1時間やってもいいんやね?」

「構わないです。それだけの体力があれば…ですが」

こういうモードに入った時の花陽は、先輩であろうとなかろうとコメントが手厳しい。

「優勝チームは最終予選と同じで、全代表が1曲ずつ歌って、最後に会場とネットの投票で決める…実にシンプルな方法です」

「いいんじゃないの?わかりやすくて」

と真姫。

「何組出るんやっけ?」

「47組です!」

「ひょえ~…それを1日で?まるで紅白歌合戦だねぇ。日本野鳥の会も来るのかな?」

穂乃果はそう言うと、机に突っ伏した。

「仮に1グループ3分のパフォーマンスとして、入れ替えの時間等を考えれば5分…掛ける47組では…235分!これは確かに長丁場です」

「さすが海未ちゃん、計算が早い!…って何時間?」

「割る60分なので…3.9時間…下手をすれば4時間越えです…」

「長いにゃ~」

「長いねぇ」

「凛と穂乃果なら途中で寝るわね」

「真姫ちゃん、それは凛ちゃんと穂乃果ちゃんでなくても同じだよ」

「どういうことにゃ?」

「全部で50近くのグループが1曲ずつ歌うのよ。 よっぽどのファンでない限り、来場者すべてが、全部を真剣に観て、公平に判断してくれるとは限らない」

「そうやねぇ…えりちの言う通り、普通は自分の高校か、同じ都道府県を応援するもんね」

「ネットの視聴者なんか、もっと極端よ!お目当てのグループだけを観るって人も多いから」

「そういう事情は、にこっちの方が詳しいか」

「そこで、出場グループの間では、いかに大会までに、自分たちをアピールできるか?が重要だと言われてるらしくて」

「アピール?」

「つまり、言葉は悪いですが『名前を売る』ということです」

「週刊誌にスクープされるとか?」

「そんなことがあったら出場停止になります!!」

「いや、冗談だから…」

花陽の怒りの口調にたじろぐ穂乃果…。

「μ'sはA-LISEを破ったグループとして注目を浴びているので、現時点では他に比べれば一歩リードしています。会場のポイントも加算されるので『地の利』もあります」

「だけど、それも本大会のある3月には、どうなっているか…ってことやね」

「はい 」

「でもさぁ、事前に印象付けておく方法なんてあるの?」

机に顔を着けていた状態から、身を起こして穂乃果が訊いた。

「はい!ふたつあります。ひとつはブログやSNSで情報を発信し続けること」

「もうひとつは?」

「それが意外に重要だと言われているのが、キャッチフレーズなんです」

「キャッチフレーズ?」

「はい、出場グループは、この紹介ページにキャッチフレーズを付けられるんです」

「 『歩く人間山脈、アンドレ・○・ジァイアント』とか『音速の貴公子、アイ○トン=セナ』とか『マシンガン打線』『カナリヤ軍団』とかやろ?」

「『赤い彗星、シャア=アズ○ブル』もあるにゃ!」

「例えがどれも古いですけど…端的にその人物やグループの特徴を伝えるという意味では、良い例かと」

思わず花陽は苦笑する。

「実際には、どんなのを付けてるんやろ?」

「えっと…『あなたと雪国の女子高生 ~あな雪~』…」

「なんか、聴いたことあるフレーズやね」

「あとは…『恋の小悪魔 』とか」

「にこっちやん」

「アタシに許可なく使わないでくれる?」

「『はんなりアイドル 』」

「京都代表?」

「かよちんと凛なら『はなりんアイドル』にゃ」

「他には『With 優』とか…」

「…なるほど、みんな考えてるわね…」

絵里が腕を組む。

「当然、ウチらも付けておいたほうがいい…ってことやね」

「…ですね!私達を一言で言い表すような」

「μ'sを一言で…か…」

と考える穂乃果。

ん~…ん~…と2、3度唸ったあと、パチンと手を叩いて、こう言った。

「薬用石…」

 

「却下です!」

「海未ちゃん、早っ!」

「当たり前です!穂乃果の考えてることなど」

「9人組!」

「それも当たり前です!」

「否定ばっかりしないで、海未ちゃんもちょっとは考えてよう」

「分かってます、ですが… 簡単には。キャッチフレーズとなると、そんなにコロコロ変えられるものではありませんから」

「そうだよね。なかなか難しいと思うよ。9人の性格は違うし、一度に集まったわけでもないし」

「でも、ことりちゃん!優勝したいって気持ちはみんな一緒だよ!」

「…となると…キャッチフレーズは…」

 

「ラブライブ優勝!」

全員で唱和する。

 

「何様ですか… 」

呆れる海未。

 

「…って、海未ちゃんも一緒に言ったじゃん!!」

 

 

 

 

 

「じゃあ、今日は花陽ちゃんと買い出しに行くから」

「ことりちゃん、花陽ちゃん、よろしく~」

「私は弓道部に…」

「あ、たまには顔出さないと…だもんね」

「はい。辞めた訳ではありませんので…」

「行ってらっしゃ~い!」

 

 

 

ひとりになった穂乃果が…たまには、どっか寄って帰ろうかな…などと考え事をしながら歩いていると

「高坂穂乃果さん!」

と呼び止められた。

 

「!?」

 

声の主は綺羅ツバサだった。

「話があるの !」

「え?」

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね、でもどうしてもリーダー同士、あなたと話がしたくて」

「あ、いえ…私も話がしてみたいと…でもツバサさんから誘われるとは…」

「迷惑かな?」

「とんでもないです。むしろ、光栄です。私がスクールアイドルを始めたのは、ツバサさんたちの映像を観たのがきっかけですから」

「そう…あ、コーヒー飲める?」

「え、あぁ、はい」

学校から特に目的もなく歩きながら話しているうちに、少し離れた公園に辿り着いた。

ツバサはそこにあった自販機でホットコーヒーを買うと、穂乃果に手渡す。

「遠慮しなくていいから」

「では、お言葉に甘えて…いただきます」

穂乃果はそれを受け取ると、2人はベンチに腰をおろした。

「ツバサさんも、缶コーヒーなんて、飲むんですね」

その質問にプッと吹き出すツバサ。

「なにか、おかしなこと言いました?」

「あなた、勘違いしてるわよ。私はセレブでもなんでもないんだから。学校の施設を見ちゃうと、確かにそうなんだけど、別に普段は普通の高校生よ」

「あははは…そうですよね!少し安心しました」

 

 

 

「あれ?穂乃果ちゃんじゃない?」

「あ、本当だ…」

その2人がいるところの側を、偶然通り掛かったのは、ことりと花陽。

「ほの…」

「待って、ことりちゃん!!」

穂乃果を呼ぼうとしたことりの口を、慌てて塞ぐ花陽。

「一緒にいるのはA-RISEのツバサさんじゃ…」

「えっ!?あ…こんなとこで何してるのかな?」

「まさか…引き抜き?」

「引き抜き…どうしよう、花陽ちゃん…」

「と、取り敢えず、ちょっと様子を見てみましょう」

「う、うん…」

ということで、ことりと花陽は少し遠巻きに2人の行動を観察することにした。

 

 

 

「どう、練習は頑張ってる?」

「はい!本大会ではA-LISEに恥ずかしくないライブをしなきゃ!…ってみんな気合入ってます!」

「そう…」

「あの…A-LISEは…」

「心配しないで、ちゃんと練習してるわ…。ラブライブって目標がなくなって、一時はどうなるかって思ったけど、やっぱり私達、歌うのが好きなのよ」

「よかった…。でも、皆さん3年生ですよね?今後の進路は…」

「そうね…。実は今、芸能プロダクションから誘いを頂いてるの」

「わぁ!さすがA-RISE!じゃあ、卒業しても解散しないでプロで?」

「そこはまだ、結論が出てないの…。本当にその世界で勝負していけるかっていう、覚悟の問題ね」

「覚悟…ですか?」

「結果がすべての世界に挑むのよ、中途半端な気持ちじゃ、あっという間に消えていくわ」

「確かにそうですね…」

「それに本大会に出られなかったことによって、少し気落ちしたところがあったの。自信をなくしたというか…」

「すみません…」

「謝らないで!別にあなたたちが悪いなんて、これっぽちも思ってないんだから。ただ、やっぱり、どうしてもちゃんと訊いておきたくって…」

「?」

「私たちは最終予選に、全てをぶつけて歌った!それはμ'sこそが、唯一のライバルだと思っていたから」

「…」

「だけど…負けた。勝てなかった。本大会には進めなかった…。でも、そのことに何のわだかまりもない!堂々と勝負して、力を出し尽くして負けたんだから仕方ない!…と思っていたんだけどね…」

「えっ?」

「やっぱり、悔しくて…。ちょっとだけ…じゃないか…メチャクチャ引っかかってるの…なんで負けたんだろう?…って」

「A-RISEが負けた理由?」

「そう。逆に言えば、μ'sが勝った理由。自惚れてる訳じゃないけど、キャリアは私たちの方が上。負けるわけがないという気持ちでステージに臨んだわ」

「わかります。強い気持ちを持つことは大事ですから」

「確かに、あの時のμ'sは完璧だった。パフォーマンスが素晴らしかったのはもちろんのこと、私たちよりもファンの心を掴んでいた。だから私は結果が出る前に確信したわ…負けたな…って」

「はぁ…」

「でも実は、私が訊きたいのはここからなの」

「えっ?」

「どうして、あの日、あの時、あのステージでそれだけのことが出来たのか?ってこと」

「どうして?」

「雪であなたたちは遅刻寸前だったし、普通、ああいう状況で100%のパフォーマンスなんて、できないものよ」

「そうですね。バタバタしてましたね」

「それに…確かに、努力はしたんだろうし、練習も積み重ねてきたのはわかる。チームワークだっていい 。私たちが認めたグループなんだから、実力に問題はない…そんなことはわかってるわ。むしろμ'sの出現によって、私たちは大きな刺激を受けた。より高いレベルを目指さなければ!という、モチベーションになったの…。だからA-RISEは、あなたたちよりも強くあろうとしてきた! 少数精鋭!それがA-LISEの誇り!スタイル!負けるはずがない!そう思ってた。でも…負けた…」

「それは…」

「μ'sを突き動かしているものって何!?…あなたたちを支えているもの、原動力となる想い…それはなんなの?…それを訊いておきたくて…」

「えっ?えっ?えっと… ごめんなさい!私、よくわからないです!」

「えっ?」

「私がスクールアイドルを始めたのは…学校が廃校になる…って聴いて、なんとかしなきゃ!って思った時、A-RISEの映像を観て、これだ!って思って…」

「 …」

「そのあと、なんとか廃校はなくなったんだけど、今度はラブライブ直前で私の不注意から、エントリーを取り消す事態になって…。スクールアイドルとしての目的も目標もなくなっちゃて…私は脱退も考えました」

「脱退?リーダーなのに?」

「はい、色々あって…。みんなにすごい迷惑を掛けました。だけど奇跡的に、もう一度ラブライブが開催されることが決まって…そこからは打倒A-RISEを合言葉に頑張ってきました。だから、あの日のパフォーマンスは。A-RISEあってのことだと思います!」

「そう…ありがとう」

「ごめんなさい、なんかちゃんと答えられなくて」

「気にしないで」

「でも!A-LISEがいてくれたからこそ、ここまで来られたのは間違いないです!」

「そう言ってもらえて、うれしいわ。だけど、あなたたちには『それ以外』のプラスαがあるのよ、きっと…。それが何か、あなたは気付いているんじゃないかしら…。私たちにはない、μ'sを突き動かす、大きな原動力があることを…」

 

 

 

「あ、帰っちゃうね、ツバサさん」

「話、終わったみたいだね」

「なんだったんだろう…やっぱり、スカウトなのかな?」

 

「小泉さん、それは、ない!」

 

「ぴゃあ!…えっ?英玲奈さん!…に、あんじゅさん」

振り返った花陽とことりの後ろには、何故か統堂英玲奈と優木あんじゅがいた。

 

「いつからここに!?」

「最初からだ」

「えぇ?」

「私たちは初めから、ここから少し向こうに立っていた。そこにあとから、あなたたちがここにきた」

「だったら、声を掛けてくれれば」

「お互い、そんなタイミングじゃなかったのよねぇ」

「優木さん!どういうことですか?」

「南さん…あんじゅって呼んでもらっていいわよ」

「はぁ」

「私たちは止めたんだけど、どうしても直接、話がしたいって…。だから私と英玲奈はツバサを監視しに来たの」

「監視…ですか?」

ことりと花陽が顔を見合わす。

「割りと暴走するタイプだからな、こちらのリーダーに失礼があっちゃいけない」

「元々、μ'sを注目し始めたのはツバサだし、リーダー同士、何か感じるものがあったみたい。シンパシーってやつ?」

「かなり肩入れして頂いてるのは、感じていましたけど」

「それで、ツバサさんは、何を話にきたんですか?」

「ツバサはね、ラブライブに負けたことがやっぱり悔しくて…自分たちに足りなかったものを探りにきたの」

「足りなかったもの?」

「実は…まだ内緒だけど、私たち、卒業後もA-RISEを続ける予定なの」

「な、なんと!す、すごいです!」

「まだ確定ではないんだがな」

「だけど、今回、ラブライブの本大会に出れなかったことで、彼女自身の中でケチがついちゃって」

「完璧主義者だからな、ステージパフォーマンスに関しては」

「だから、それを確かめたかったみたい」

「何かあったら、飛び出そうと思ったんだが、あの様子だと何事もなかったようだな」

「なので、あなたたちが心配していたような『邪(よこしま)』な、話ではないわよ」

「はぁ…良かったです…」

「仮に私たちがスカウトしたとして、首を縦に振るような人?あなたたちのリーダーは」

 

「違います!」

 

ことりと花陽は、同時に力強く答えた。

そしてお互いの顔を見て、笑った…。

 

 

 

 

 

~つづく~

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