【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
穂乃果編は一旦、完結です。
「それでは宴もたけなわではございますが…」
と雪穂が、2階の穂乃果の部屋の窓から身乗りだし、集まった参加者に向かって叫ぶ。
「ここで、本日の主催者でありますμ'sのリーダー…高坂穂乃果より、皆様にご挨拶させて頂きます!」
「はい、ただいまご紹介に預かりました…」
「穂乃果ぁ~固いよ!」
「…ヒデコ!…だよねぇ…。えへへ…今日はみなさん、集まってくれてありがとうございます!!」
「ありがとうございます!」
特に打ち合わせはしていなかったが、自然にメンバー一同頭を下げた。
「あの日、皆さんが一生懸命、雪掻きをしてくれたお陰で、私たちは本大会に進むことが出来ました!正直、こんな形でしかお礼ができなくて…でも、直接、感謝の気持ちを伝えたくて…」
「楽しかったよ!」
「本大会も頑張って!」
「これからも応援するよ!」
その声援に涙ぐむ穂乃果。
他のメンバーも目が潤んでいる。
「あ、ありがとうございます…。それで、最後にもうひとつ、私から連絡事項があります!」
そう言うと大きく息を吸い込んだ。
そして、それを吐き出すように大声で叫ぶ。
「高坂穂乃果、1曲、歌います!!」
「えっ?」
聴いてないよぅ…と、どこかのお笑い芸人並みのリアクションをする、μ'sのメンバー。
…とある、2名を除いては…。
「雪穂、花陽ちゃん、準備して!」
「うん!」
「はい!」
穂乃果に指示された2人は、手早く参加者に『手拭い』を配る。
「『穂むら』の手拭い?」
それは、μ'sのメンバーにも配られた。
だが、まだ誰も何が始まるのか理解していない様子。
「今から歌う曲は…私が未熟だった為に、メンバー全員に迷惑を掛けてしまった曲…」
「あ…」
メンバーの表情が変わった。
「だけど…もう一度みんなの前で歌いたくて、みんなと盛り上がりたくて…だから、一緒に拳をあげて、ジャンプして、タオル…の代わりに手拭いだけど…思いきり振り回してください!!」
「穂乃果!」
「穂乃果ちゃん!」
すべてを理解したメンバー。
「ウチも一緒に歌うよ」
「希ちゃん!」
「穂乃果、それを抜け駆けというのですよ」
「穂乃果ちゃん、そんな面白いこと、黙ってるなんて、ズルいにゃ~」
「みんな… 」
うん!と頷くμ'sの面々。
「真姫ちゃん、準備は?」
「オーケー!」
どこから用意したのか、小型のスピーカーがセットされている。
「それじゃあ、いくよ!μ'sのニューイヤーライブ!スタート!」
イントロからドスッ、ドスッ、ドスッ…と低音のバスドラが響く。
真姫がこの日の為にアレンジした『No brand girls ライブver.』。
自然発生的に手拍子が巻き起こる。
「それじゃあ、みんなで一緒に跳ぶよう!ワン、ツー『♪一進一跳!』」
数十人が一斉にジャンプした。
近所迷惑を省みず、穂むらの前で急遽、路上ライブが開催された。
「ふぅ…みんな盛り上がってくれて、よかったですね」
「うん、海未ちゃん。みんなで跳んで、手拭いグルグルして、本当に楽しかったね」
海未もことりも、興奮冷めやらぬ…という感じ。
「穂乃果ちゃんがやりたかったコール&レスポンスも出来たしね」
「あれはかよちん、気持ち良かったにゃ!」
「アンコールまで歌うと思わなかったけどね」
「それにしても、冬休み中なのに随分集まったわね」
絵里は絵里で、感慨深げに呟く。
「みんな、そんなにお餅好きだったのかにゃ」
「好きだよ美味しいもん!でも、お餅食べたあとは、キツいね」
「そうだにゃ…」
「食べ過ぎなのよ」
凛と花陽に、突っ込んだのは真姫。
「きっと、みんな一緒だからだよ…みんながいて…私たちがいて…だからだと思う」
「穂乃果、それがキャッチフレーズですか?」
「言ってることはわかるんやけど…」
「もう少し、うまくまとまらない?」
希とにこが身悶える。
「そう!それが!最後が!…うまくまとめられない!ん~…ここまで出てるのに…」
「私もです!」
「ウチも!」
「花陽ちゃん、真姫ちゃん、今日は色々ありがとう」
「私は別に何もしてないわよ。花陽に頼まれて、ちょっと曲を弄っただけだから」
「穂乃果ちゃん、盛り上がって良かったね」
「うん、花陽ちゃんのお陰で心のモヤモヤが消えて、スッキリしたよ。最高のライブが出来たよ!!」
「良かった、良かった!」
「あのさ…花陽ちゃん…」
「はい?」
「これからも、頼りにしてるよ!」
「へっ?私?…なんで?…」
「なんで…って…」
「わかるでしょ?今や花陽はμ'sの要なのよ。部長はにこちゃんだけど、卒業は間近だし、穂乃果は生徒会の会長…今までのようにはいかないわ。そうなると、次を引っ張るの、花陽しかいないでしょ」
「ぴゃ!真姫ちゃんは?凛ちゃんは?」
「もちろんサポートはするけど、アイドル研究部の部長って柄じゃないでしょ」
「花陽ちゃんはもっと、自信と自覚を持った方がいいよ」
「はぁ…」
「雪穂もよろしくね」
「な、ゆ、雪穂ちゃん?…え、穂乃果ちゃん、雪穂ちゃんが音ノ木を受けることを知ってるの?」
「当たり前だよ!こう見えても、姉だよ、知らないわけないじゃん」
「そうだよね…」
「仮に合格したとしたら」
「そこは『仮に』なんだ」
「真姫ちゃん、そこはスルーして…。で、同じ部活の後輩になったとしたら、多分、喧嘩ばかりになっちゃうと思うんだよね」
「まぁ、わからなくはないわね」
「でしょ?でしょ?だけど、花陽ちゃんがいてくれれば…雪穂、花陽ちゃんのこと、すごく信頼してるみたいだし」
「うん…それはうれしいけど…」
「穂乃果、今はその話、まだ早いんじゃないの?」
「そうかな?…ははは…そうだね!今は本大会に集中しないとだね!」
「う、うん!」
「でも、やっぱり、これだけはもう1回言わせて。花陽ちゃん、ありがとう!」
「…うん…」
「ありがとう…?…あ、浮かんだ!これだよ、ありがとうなんだよ!」
「へっ?」
「キャッチフレーズ!」
「えっ!?」
「私たちは…いつも誰かに支えられてきた、いつも誰かと共に歩んできた…それは今日のライブで、よくわかった。だから…μ'sのキャッチフレーズは…」
「ツバサ…見た?μ'sのキャッチフレーズ?…って愚問か」
「私たちより先にチェックしてない…ハズがない」
「『みんなで叶える物語』でしょ…」
綺羅ツバサはそう呟くと、クスッと笑いその場を去った。
…プラスαのパワーが、あのパフォーマンスを産み出した…か…
最高のライブ
~完~