【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「このあと、どうする?」
ハンバーガーを食べ終えた穂乃果が訊く。
「穂乃果は家に帰ってください。雪穂のお祝いをするのでしょ?」
「そうだね…。それじゃ、ケーキでも買って帰りますか」
「私も付き合いますよ」
「ありがとう、海未ちゃん!」
「ことりは衣装に付けるアクセサリーを見に、何軒かお店を回ろうかと…」
「あ、じゃあ、花陽も手伝います!凛ちゃん、真姫ちゃん、一緒に行こう」
「凛はパスにゃ~。前に一緒に行ったことあるけど、ことりちゃんの買い物は長いにゃ」
「ことりちゃんは生地ひとつにしても、こだわりがスゴいから。でも、あれこれ考えて選ぶのって楽しいよね?」
「うん!」
「かよちんとことりちゃんは、気が合うにゃ」
「確かに」
真姫が同調する。
「そうかな?」
ことりと花陽は顔を見合わせた。
「えっと、それで真姫ちゃんは?」
「私も遠慮しておくわ。一緒に買い物とか…苦手だもの」
「そっか…。じゃあ、花陽ちゃん、行こうか」
「はい。では、また明日」
「うん、バイバイ!」
4人に別れを告げて、ことりと花陽は一足先に店を出た。
「ごめんね、花陽ちゃん。付き合わせちゃって…」
「いえ、花陽が着いてきただけですから…。それで最初はどこに行きますか?」
「うん、それがね…」
「えっ?カフェ?」
花陽は一瞬、耳を疑った。
「うん。どうしても食べたいチーズケーキがあって…お願い!付き合って!」
「は、はい…別にいいですけど…」
「いつもカヨパカさんには、お世話になってるから、たまにはお礼をしないとね」
「えっ?別に気にしないでください。そういうことなら帰ります」
「それに…花陽ちゃんに話したいこともあるの」
「えっ?花陽にですか?」
「うん。カヨパカさんじゃなくて、花陽ちゃんに」
「はぁ…」
花陽は首を傾げながら、ことりのあとに付いていった。
「どう?ここのレアチーズケーキ」
「美味しいですぅ!この2層になってる上と下で味が違うんですね。一緒に食べると、お口の中で甘味と酸味が渾然一体として…濃厚だけど、しつこくないというか…絶妙なバランスですぅ」
「さすが花陽ちゃん!よくわかってる」
「え~?誰でもこれくらいは言いますよ」
「そうでもないよ。穂乃果ちゃんなんか、なに食べても『美味しい』しか言わないもん」
「あははは…なんか想像出来るね…。あ、そういえば、ことりちゃんとは真姫ちゃんのおうちでも、チーズケーキ食べたよね」
「うん!すごく食べたかったケーキだし、美味しかったけど…お部屋が広すぎて緊張しちゃったな」
「確かに、落ち着かなかったですね。…でも、ことりちゃんはホントにチーズケーキが好きなんだね」
「花陽ちゃんの白米ほどじゃないよ」
「え~?聴いたことあるよ。ことりちゃん、お鍋の中にチーズケーキを入れようとしたことが、あるとかないとか…」
「む?…えっと…その話は置いといて…」
…あったんだ…
思わず花陽の口元が弛んだ。
「それで花陽に話って?」
「あ、うん…。でも、ここじゃ…。まずはアクセサリー探さないと…」
「あ、はい…」
「ごちそうさまです。ホントにいいんですか?」
「気にしない、気にしない。花陽ちゃんには、いつも手伝ってもらってるからから。たまには…ネ?」
「すみません。では、お言葉に甘えて…」
「ホントに、ホントに…ありがとう!」
「へっ?」
「なんでもない…あっ!これ可愛い!胸に着けたらおかしいかな?…」
ことりはアクセサリーショップに並んだ商品の、品定めを始めた。
「結局、おうちまで来てもらっちゃった」
「構いませんよ。まだ時間も早いですし」
「やっぱり、外で話すことじゃないかな…って」
「はぁ…」
ことりの部屋に入る。
最近は凛の部屋より来る頻度が高い。
そのせいか、なんの違和感もなくここで過ごすことが出来る。
むしろ、落ち着く感じすらある。
「ごめんね、穂乃果ちゃんちみたく、常にお饅頭があるわけじゃないから、これくらいしかなくて…」
と、ことりがお茶菓子を用意した。
これくらい…と言いつつ、それは明らかに高価なものだった。
壁にはハンガーに吊るされた、作りかけの衣装が9着。
「もうすぐ完成だね」
ピンク、ブルー、グリーン、オレンジ…色彩鮮やかな『それ』を眺めながら、花陽がしみじみと呟いた。
「花陽ちゃんが手伝ってくれたおかげだよ」
「…お手伝いしてるつもりなんだけど、毎回毎回、足を引っ張っちゃって…」
「そんなことないよ。今回のアイデアだって、花陽ちゃんからもらったんだし」
「そのまま採用されるとは思ってませんでした」
「お正月に、お餅つきをしたでしょ?」
「はい」
「それはμ'sのことを支えてくれた人たちへの恩返しだった」
「うん」
「でも考えてみたら…μ'sの…というより、私たち3人にとっての最初のファンに、きちんとお礼が出来てなかったな…って。どうすればいいんだろう…って思ってた時に、花陽ちゃんが『この衣装を着たかった!』って言ってくれて…。だから、今回は花陽ちゃんへの恩返し。これで返せたとは思えないけど」
「お礼とか、恩返しとか…そんなの変ですよ!だって、μ'sに入れてもらったのは花陽の方だし…」
「花陽ちゃんが来てくれなかったら、ファーストライブはやってなかったし、μ'sはなかった…そうしたら、あの衣装もお披露目することはなかった…」
「違います!3人がいたから、花陽は観に行ったんです!」
「違うよ、やっぱり花陽ちゃんが来てくれな…」
「そんなことないよ!花陽が来なくても、絶対3人はやってたよ!だって、穂乃果ちゃんだよ!海未ちゃんだよ!ことりちゃんだよ!その日がダメだったとしても…」
「ふふふ…」
「えへへ…」
2人は笑ってしまった。
この調子じゃ、いつまで経っても終わらない。
水掛け論である。
それに気付いた。
「なんか、タマゴが先かニワトリが先か…みたいになっちゃったね」
「ですね」
「じゃあ、私たちがいて、花陽ちゃんがいて…ということで」
「はい!」
「だけど、ひとつだけ言えることは…あの衣装を見て『着たい!』って言ってくれた人がいたこと。嬉しくないわけないよ、だって、ことりが初めて作った衣装だもん!」
「う、うん…」
「だから、花陽ちゃんに想いが届いたかどうかは別として、これはことりからの…ささやかなお礼…」
「ことりちゃん…。届いてるよ、気持ち。花陽はことりちゃんにそう言ってもらえるだけで…幸せです」
「良かった…」
「でも、次は…花陽があの時の3人を見て感動したみたいに、今度はラブライブのステージで…全国のみんなにこの衣装を見てもらうんです!そしたら、きっと、ことりちゃんはデザイナーへの道がまた拓けると思いますよ!」
「ふふふ…花陽ちゃん、ありがとう」
「いえ…あ、なんか熱くなっちゃって」
「ことりはこっちの花陽ちゃんも、好きだよ」
「ぴゃあ!そ、それは凛ちゃんのセリフですぅ!」
「ふふふ…あ、そうだ!違うんだよ、ことりが話をしたかったのは、このことじゃなかったんだ!」
「違うんですか?」
「うん、このことはオマケみたいなもので…」
「オマケ?」
「…花陽ちゃん、さっき、泣いてたでしょ?…」
ことりはスッと顔を近づけて、訊いた。
「えっ?」
咄嗟に目を逸らす花陽。
「お手洗いに行った時…」
…!…
…見られちゃった?…
「あ…いや、あ、あれは…そう!コンタクトが外れちゃって直しに…それが涙に見えちゃったのかな?…」
「ダメだよ、我慢しちゃ…」
ことりは諭すように、静かに呟いた。
~つづく~