【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「我慢?」
花陽はことりの言葉の意味を、瞬時に理解出来なかった。
「…してるでしょ?」
「言ってる意味が…」
「じゃあ、質問を変えるね。花陽ちゃんは、今、ちゃんと相談出来る人がいる?」
「…い、います!…凛ちゃんとか、真姫ちゃんとか…」
「そうは見えないな…」
「どうして、そんなことを…」
「ことりも同じだから」
「えっ?同じ?」
「うん。だから、わかるんだ…花陽ちゃんのこと」
「どういうことですか?」
「ことりが、どうしてカヨパカさんに色々相談するようになったか、わかる?」
「えっと…それは…」
…なにかあったらアルパカさんに話してみたら?と提案したのは私だけど…
「それは、花陽ちゃんがすごく頼りになるから」
「いえいえ、そんな…」
「花陽ちゃんは気付いてないかも知れないけど、いつもアドバイスが的確で…。ことり以外のメンバーもそう思ってるよ」
「たまたまです…」
「それとね、もうひとつ…。ことりにだって、穂乃果ちゃんと海未ちゃんにも話せないことがあるからだよ」
「あっ…」
…そういえば、初めてカヨパカが受けた相談は、穂乃果ちゃんとのことだっけ…
…あれは、ことりちゃんが生徒会の業務でミスして…そのことについて、怒ってくれない…って話だった…
「花陽ちゃんには、凛ちゃんや真姫ちゃんに話せないようなことはない?自分の中で溜め込んではない?花陽ちゃんがことりを助けてくれたように、今度はことりが助けるよ」
「花陽がことりちゃんを助けた?」
「うん!」
満面の笑みで花陽を見ることり。
はて…と首を傾げる花陽。
「秋の合宿のことだよ!」
「秋の合宿…」
「ことりが衣装のアイデアが出なくて悩んでたとき、花陽ちゃんは一生懸命ヒントを探してくれてた」
「なにかしなきゃ!って思ったのは事実だけど…結局たいした役に立たなくて」
「そんなことないよ!ホントに嬉しかった!だって、穂乃果ちゃんなんか、寝てて、なにもしてくれなかったんだから」
「…ははは…」
「その頃からかな…花陽ちゃんに対する気持ちが変わってきたのは…」
「はい?」
「花陽ちゃんが可愛くて、愛しくて…大好きになっちゃったの」
「こ、ことりちゃん!!」
…えっ?…
…えっ?…
…それって、まさか…
…今ここで?…
…えぇ~?…
「迷惑?」
「め、迷惑なんて、そ、そんな!花陽はずっと、ことりちゃんに憧れてきたし…ことりちゃんから、そんな言葉を聴くとは思ってなくて、混乱してるけど…と、突然過ぎます!」
「うん、そうだよね…ことりも『言っちゃった!』って感じだもん。だけど、さっき花陽ちゃんの涙をみたら、力になりたい!って思って…つい」
「あ、はい…あ、いや、だから、あれは泣いてないです…」
「ずっと花陽ちゃんを見てきたからわかるよ。花陽ちゃんは嘘を付いてる」
「ことりちゃん…」
ことりは黙って花陽の目を見てる。
その顔は、少し怒ってるようにも見えた…。
「ごめんなさい、花陽は…ちょっと泣いちゃいました…」
「素直でよろしい」
と言いつつ、ことりが花陽の頭を撫でる。
その瞬間…
花陽の目から涙がこぼれ落ちた。
「あれ、なんでだろ?急に…目が…ごめんなさい…」
「いいんだよ、泣いて。ことりの前ならいっぱい泣いていいんだよ」
「ことりちゃん…」
「凛ちゃんと真姫ちゃんの前だと、泣けないでしょ?」
「う、うん…」
「よかったら、ことりに話してみて」
「う、う…あ…」
「あ、少し落ち着こうか…お水飲む?」
花陽はコクリと黙って頷いた。
…デジャヴュ?…
…なんか、こんな展開、前にもあったような…
…あ、希ちゃんちだ…
「少しは落ち着いた?」
「は、はい…色んな感情がいっぺんに溢れてきちゃって…まだ、整理がついてないですけど…」
「うん、じゃあ、さっき泣いちゃった理由から…」
「はい…」
花陽はもう一度水を飲んでから、思い出すように、ゆっくりと話し始めた。
「さっきみんなと話をしてた時、μ'sがこのまま無くなっちゃうのかな…って思ったら…寂しくなっちゃって…」
「そうだね…あの雰囲気はそんな感じだったよね」
「3年生がいないμ'sなんて、ありえない。…それはわかるんです…。でも一方で、μ'sを見て音ノ木坂を受けた人もいる。μ'sに入りたい!って人がいる…。その時に私たちがμ'sを解散したら、どうなるんだろう?それは私たちを信じてくれた人への裏切り行為になるんじゃないかなって…」
「うん」
「私がそうだったから。3人を見て、やりたい、入りたいと思って…でも、あの時で3人が辞めてたら、その気持ちをどうしたらいいんだろう…って」
「花陽ちゃんらしいね。私たちは、後輩を気遣う余裕がないもの」
「そうですか?」
「メンバーの中で、小さい頃からアイドルに憧れてたのは、花陽ちゃんだけ…」
「にこちゃんもです…」
「そっか!だから、2人は考え方が似てるんだよ。アイドルに対する姿勢とか情熱とか…自分達が与える影響を知ってるんだよね」
「でも!みんなの言うこともわかるんです!だから、どっちがいいとか悪いとかじゃないんだけど…」
「そうだね。たぶん、どっちも正解なんだと思うよ…」
「はい、そう思います。ただ…本大会が終わったら、みんないなくなっちゃいそうで…」
「…」
「凛ちゃんも真姫ちゃんも、元々スクールアイドルに興味があったわけじゃないし…。だけど…にこちゃんと、絵里ちゃんと希ちゃんがいてくれたから、ここまで一緒にきてくれた…。ことりちゃんも、海未ちゃんも穂乃果ちゃんも…」
「花陽ちゃん…」
「…花陽は…耐えられないです…。せっかく仲良しなれたのに、みんながバラバラになっちゃうのは!」
「大丈夫!大丈夫だよ」
「ことりちゃん、ホントに大丈夫?にこちゃんがいなくなっちゃったら、凛ちゃんも真姫ちゃんも、寂しくなっちゃうよ!絵里ちゃんはダンス教えてくれないんだよ!希ちゃんが見守ってくれないんだよ!ことりちゃんも、海未ちゃんも、穂乃果ちゃんも、生徒会の仕事で忙しくなって…花陽ひとりで屋上にいるなんて!」
「花陽ちゃん、落ち着いて!」
「ことりちゃ~ん!」
花陽は込み上げてきた感情が押さえきれず、ことりにしがみつくと、声をあげて泣いた。
「いやです…いやです…みんなと離れたくないです…」
ことりは黙って、花陽を抱き締めた。
ことりが話を始めたのは、暫く経ってからだった。
「確かに…まだ、どうしたらいいのか、よくわからない…。新しいメンバーを加えて活動を続けるかも知れないし、6人だけでやるかも知れない。…もちろん、そうじゃないこともあると思う。だけど、この9人がバラバラになることだけは、絶対にないよ」
「ぐすっ…ことりちゃん…」
「学校を卒業しても、違う場所にいても、違う道を歩んでも…私たちが過ごしてきた時間と絆は、絶対に消えることはない!」
「…本当に?…」
「花陽ちゃんはどう思う?ことりたちとの関係って、そんなにすぐに壊れちゃう?」
無言のまま首を横に振る花陽。
「ね?だから大丈夫!私たちは永遠に友達だもん!」
「永遠に友達…」
…そう言えば、真姫ちゃんともそんな話をしたね…
…10年経っても、20年経っても、同じ景色を見ようね!って…
「…そうだよね… 」
「そうだよ」
「ごめんなさい、泣いたりしちゃって…」
「ううん。ことりだってみんなの前で泣いちゃったことはあるし。でも、どう?少しはスッキリした?」
「あ、はい…」
花陽はしがみついていた腕を離し、改めてことりの前に正座した。
「花陽ちゃんは優しいから…みんなの想いとか、全部ひとりで受けとめちゃうんだよね?」
「そんな、優しいなんて…」
「前に花陽ちゃんが、凛ちゃんの優しさに甘えちゃう…って言ってたでしょ。ことりはね、みんなが花陽ちゃんの優しさに甘えてると思うの。だって花陽ちゃんは頼まれたイヤって言えない人だもん」
「…断るのって、なんか、できなくて…」
「たまには、わがまま言ってもいいと思うよ…」
「…わがまま…」
「そう…。このままだと花陽ちゃんが参っちゃうよ」
「…心配してくれて、ありがとう…」
花陽は正座したまま、頭を下げた。
「そんな土下座みたいなことはやめて!花陽ちゃん、顔をあげて…」
ことりは花陽の上半身を起こそうとした。
その時…
「あっ!」
「ぴゃあ!」
ことりはバランスを崩し、花陽の上に倒れこんだ。
仰向けになった花陽の上に、覆い被さったことり…。
「…」
「…」
無言のまま、見つめ合う2人…。
~つづく~