【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
仰向けになった花陽。
その上には、ことり。
しばし無言で見つめ合う。
どれくらい経っただろう。
突然ことりは急に「えいっ!」と言いながら、花陽の胸元に顔を埋めるように抱きついた。
「びゃ、ぴゃあ!こ、ことりちゃん!?」
「思ってた通りだ」
「えっ?」
「ことりね、自分のいつも使ってる枕がないと、寝れないの」
「そう言えば、合宿の時にも持ってきてたもんね…って、それがこの状況と…」
「花陽ちゃんの身体のプニプニ感が、すごく気持ちよさそうだな…って、思ってて…」
「まさか…抱き枕ですか!?」
「うん!想像通り!柔らかい…」
「わっ!わっ!スリスリしないでください!」
「だ…め?…」
ことりは一旦、上半身を起こすと、目を潤ませながら、花陽の顔を見た。
「ダメ…じゃないですけど…」
「よかった!」
と再び顔を胸に擦り寄せることり。
「…っていうか、そんな目で見るのは反則です…それは絶対に…断れないです…」
…うわぁ~ドキドキしちゃうよ…
…花陽でもそうなんだから、男の人なら、これで撃沈しますね…
…一発で恋しちゃいますよ…
「う~ん、気持ちいい…花陽ちゃんが側にいてくれれば、枕持って行かなくてもいいかも」
「あははは…」
「ことり、この間、忘れ物の夢を見た…って言ったでしょ?」
「えっ?あ、飛行機の?」
「そう。あれね…忘れ物は枕だったんだよ」
「えっ~!その為に帰っちゃったのぅ?」
「だけど、花陽ちゃんがいたんだったら、あんなに大変な思いして戻らなくてもよかったんだね」
「そうですね…あ、いやいや、夢の話ですから…」
「気持ち良くて、このまま寝ちゃいそう…」
「…って、ことりちゃん!ダメですって、寝ないでください!」
「あ、まだ夜じゃないからね…」
「そういう問題じゃないですぅ…」
「じゃあ、続きは夜ってことで」
と言って、ことりはようやく花陽の身体から離れた。
「はい、わかりまし…じゃないです!続きはないですよ」
「えっ?ダメなの?」
「えっと…」
「…冗談だよ…」
「…ですよね…もう、ことりちゃんってば…」
「うふっ、花陽ちゃん、可愛い!」
「からかわないでください…」
「からかってなんていないよ。ことりね…本当に花陽ちゃんのことが好きなんだから」
「へっ?」
「さっき、凛ちゃんが言ってたでしょ?ことりと花陽ちゃんは、どことなく似てる…って」
「あ、そういえば…」
「普通、自分と真逆の人に惹かれたりするものだけど…」
「はい…」
「ことりの場合、それが穂乃果ちゃんと海未ちゃん!」
「花陽は、凛ちゃんと真姫ちゃんかな」
「だよね…。でも、最近ことりは気付いたの。花陽ちゃんといる時が、一番、リラックス出来て、自分でいられるんじゃないかって!」
「それは嬉しいです…えっ?一番?」
「うん。ことりと花陽ちゃんは、すごく感性が似てると思うんだ。だから、なんとなく共通点が多いっていうか…少なくとも、ことりは一緒だと居心地がいいの」
「それは、花陽もわかります。凛ちゃんといる時とはまた違った意味の、落ち着く感じというか…」
「花陽ちゃんとは、アルパカさんが好きだったりとか、スイーツが好きだったりとか、同じ話題で盛り上がれるでしょ?」
「はい」
「それとか、ほら、この間、穂乃果ちゃんちでDVDを観たときも…花陽ちゃんと絵里ちゃんは一緒に観てくれて…同じとこで、笑って泣いて…。穂乃果ちゃんは寝ちゃってたけど…」
「凛ちゃんも一緒に…」
「そうだね」
その情景を思い出して、ふふふ…と笑った。
「あれはあれで、穂乃果ちゃんと凛ちゃんらしいというか…」
花陽も思い出し笑いをした。
「だけど…やっぱり見終わったあとに感想とか言ったりできないのは、ちょっと寂しいかな…なんて」
「なるほど…」
「それにね…最近、穂乃果ちゃんには海未ちゃんさえいればいいんじゃないか…って思っちゃって…」
「はい?」
「あ、変なこと言っちゃったね…」
「ことりちゃんも…なにか、悩んでます?」
「悩みってほどじゃないんだけど…」
「話してください、花陽にも」
「…うん…前々から気付いた…でも、気付かないフリをしてたの…」
「2人となにか…」
「ううん…2人はなにも変わらないよ…穂乃果ちゃんも海未ちゃんも」
「じゃあ、なにが…」
「…穂乃果ちゃんのことは、ことりが一番知ってると思ってた…」
「えっ?」
「穂乃果ちゃんのいいところも、ダメなところも、全部知ってるって思ってた…。でも…違った…勘違いしてた。穂乃果ちゃんがいて、海未ちゃんがいて…その2人をずっと見てきたつもりなんだけど…見てただけだったんだね…」
「…どういうことですか…」
「例えばだけど…この間、穂乃果ちゃん、ダイエットしたでしょ?」
「はい…花陽も一緒に…」
「あ、そうだったね…」
ことりは少しだけ、微笑んだ。
その表情のまま、言葉を続ける。
「穂乃果ちゃんが太った…って真っ先に気付いたのは…海未ちゃんなんだよ」
「!」
その瞬間なんとなく、ことりの言わんとしてることを理解した。
「ランニング中に、ご飯食べてたのを見破ったのも…海未ちゃん。それで、その時言われちゃったんだ…『ことりは穂乃果と何年付き合ってるんですか』…って」
「それは…その…言葉の綾かと」
「ううん、その通りだと思った。…何年一緒に過ごしてきたんだろう…ことりはずっと、穂乃果ちゃんの背中ばかりを追いかけてきた。背中ばっかり見て…いつからか、正面から向き合えなくなってたの」
「…ことりちゃん…」
「μ'sだって、自発的に始めたわけじゃなくって…でも穂乃果ちゃんに引っ張られて、必死に付いてきた。それが今までは普通だった。…でも、あるとき、これじゃいけない!って思って…。ことりが頑張れることはなんだろう、負けないことはなんだろう…って」
「それが衣装作り?」
「うん」
「あの時の言葉、花陽も覚えてます。確かにこちゃんと作業してたときですよね…」
…今までだってそうだけど…私はみんなが決めたこと、やりたいことに…ずっとついていきたいの…
…道に迷いそうになることもあるけれど、それが無駄になるとは私は思わない…
…ふん、主体性がないだけじゃない!…
…にこちゃん!そういう言い方、良くないよ…
…ううん、いいの。にこちゃんの言う通りだから。でもね、だからこそ、これは私がやらなきゃ!って思ってるの…
「花陽はあの時の『だからこそ、これは私がやらなきゃ!』って言葉に強い意思を感じました…」
「この間ね…夢をみたんだ」
「夢?」
「ことりと花陽ちゃんが、悪い敵に襲われて…それを助けにきてくれたのが、プリキュアになった穂乃果ちゃんと海未ちゃんだったの…変なお話でしょ?」
「でも、夢ってそういうものじゃないですか?脈略がないというか…」
「うん、それはそうなんだけど…夢の中でも穂乃果ちゃんと海未ちゃんに助けられてる自分が、ちょっと情けなくなっちゃって」
「考えすぎです」
「そうかな…」
「…ことりちゃんが、そんな風に思ってるなんて、意外でした…」
「か、勘違いしないでね?ことりが勝手に思ってるだけだから。ただ、2人に頼りっぱなしはやめよう…って思って」
「少しだけ違うと思いますよ」
「えっ?」
「逆に穂乃果ちゃんと海未ちゃんは、ことりちゃんのことを頼ってる思います」
「ことりのことを?」
「ことりちゃんがいて…いつも暖かく見守ってくれてるから、穂乃果ちゃんも無茶出来るし、海未ちゃんも厳しいことが言える」
「…」
「ことりちゃんがいなかったら、穂乃果ちゃんの逃げ道がなくなっちゃうよ」
「花陽ちゃん…」
「ことりちゃん、あの時、言いました…『ひとりひとりに役割がある』って…。だから、無理してことりちゃんが海未ちゃんになる必要はないと思います」
「花陽ちゃん…」
「ことりちゃんは、ことりちゃんのままでいいと思います…なんて…」
「ことりのお姉ちゃんみたい…」
「あっ!つい、偉そうなことを…」
「ううん、ありがとう…」
「実は…花陽もことりちゃんと同じようなことを考えてました。いつまでも凛ちゃんに頼ってちゃいけない…って。だから…偉そうなことは言えないんですけど」
「同じだね」
「同じですね」
「うふふ…」
「えへへ…」
「花陽ちゃんの悩みを訊くはずだったのに、ことりの話を聴いてもらっちゃったね…」
「花陽はことりちゃんのお役に立てれば、それだけで嬉しいですよ。だから、いつでも」
「花陽ちゃんもだよ?ひとりで抱え込んじゃダメだよ?」
「は、はい!」
「じゃあ…約束…」
ことりは、右手を差し出した。
それに応えて、花陽も右手を出す。
固い握手を交わす2人。
だが次の瞬間、ことりは握った手をグッと手前に引き寄せた。
花陽の身体の重心が、前へと移動する。
それを抱き止める、ことり。
「!」
「ごめんね、花陽ちゃん…変なことはしないから、しばらくこのままでいて…」
「ことりちゃん…」
「花陽ちゃん…大好き…。妹みたいに可愛くて、お姉さんみたいにしっかりしてて…ことりの心のオアシスだよ」
「ことりちゃん…それは、花陽が思ってることです。可愛くて、スタイルが良くて、優しくて、器用で、お茶目で…。花陽は、ずっとことりちゃんみたいになりたい!て思ってましたよ…」
「嬉しい…花陽ちゃんがそんな風に想っててくれたなんて…」
「はい、花陽もことりちゃんのことが大好きです!」
「凛ちゃんよりも?」
「…えっ?…それは…」
「…ごめんね、ちょっと意地悪だった?…」
「…はい…較べられません…」
「わかってるよ。ことりだって、花陽ちゃんと穂乃果ちゃん、海未ちゃんを同列にはできないから」
「ですよねぇ…」
「だけど、たまにはこうやって、ギュッとしていい?凛ちゃんに怒られちゃうかな?」
「訊いてみます?…」
「意地悪…」
「さっきのお返しです」
「あ!ふふふ、お返しされちゃった…」
「はい」
「あ~ん、もうひとり、花陽ちゃんがいないかなぁ…」
「えっ?」
「一家に一台、花陽ちゃん。癒されると思うなぁ…」
「花陽は家電ですか!?」
花陽が突っ込みを入れながら笑った。
「あとね…花陽ちゃんは無理してダイエットなんかしなくていいのに…」
「えぇ~!気を付けないと、おデブさんになっちゃいますよ」
「大丈夫だよ。花陽ちゃんは全然太ってないよ。ただちょっとプニプニしてるだけ」
「なんか矛盾してます…」
「そうかな?」
「花陽は、ことりちゃんみたいなウエストに憧れてるのにぃ…」
「それじゃ、花陽ちゃんじゃなくなっちゃうよ。プニプニしてない花陽ちゃんは、ダメだよ。ことりが許さないから」
「うぅ…」
「ことりは花陽ちゃんの、女の子らしい柔らかさに憧れるけどな…」
そう言ってことりは、花陽の頬を突っつく。
「慰めはいいです…」
花陽はプクッと頬を膨らませた。
それを見て
「やっぱり可愛い…」
再びことりは呟いた…。
~つづく~