【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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心のメロディ その9 ~名付け親の想い~

 

 

 

 

 

「ただいま~」

穂乃果が家に帰ってきた。

手には海未と選んだケーキの箱。

脱いだ靴も揃えず、階段を駆け上がる。

そして、妹の部屋の前…。

 

「雪穂、いる?」

「あ、お姉ちゃん?お帰り!」

 

その声を聴いて、勢いよくドアを開ける穂乃果。

 

「改めて合格おめでとう!これ、お祝いのケー…」

そこまで言って初めて気付く。

部屋に、もうひとり、いることを…。

 

「穂乃果さん! お邪魔してます」

「いらっしゃい、亜里沙ちゃん!」

 

…って、いたのね…

 

 

 

雪穂の視線が、ケーキの箱に行く。

 

…少しは気を使ってよ…どうせ、私の分しかないんでしょ?…

 

…たははは…亜里沙ちゃんがいたの、知らなくて…

 

…玄関に靴があったでしょ?…

 

…急いで上がってきたから、見てないよ…

 

…だからお姉ちゃんはガサツって言われるんだよぅ…

 

…えぇ!?穂乃果は雪穂の為に、急いで帰ってきたのに…

 

 

 

努力と好意が報われない、姉。

それがわかっていながら、つい悪態を突いてしまう、妹。

 

以心伝心…とまではいかないが、声を出さずに、身振り手振りで会話する2人を、亜里沙は不思議そうな顔で見ていた。

 

 

 

「あ、亜里紗ちゃんも合格おめでとう!」

「えっ?あ!ありがとうございます!」

「ゆっくりしていってね!」

「はい!」

 

 

 

…じゃあ、雪穂、ケーキは下に置いとくね…

 

…う、うん…とりあえず、ありがとう…

 

 

 

今度は目と目で会話をした2人。

なんだかんだ言っても、仲がいい姉妹である。

 

 

 

「あの…」

「ん?なになに?」

自分の部屋に行こうとした時、穂乃果を亜里沙が呼び止めた。

「時間があったら、亜里沙のダンス、見てもらっていいですか?」

「えっ?」

「μ'sの曲です!もう5曲、マスターしました!」

「5曲目も!すごいね!…うん、じゃあ見せてもらおうかな…」

「やった!えっと、どれにしようかな…」

10秒ほど考えてから

「μ's…ミュージックスタート!」

と言って、音楽プレイヤーを再生して踊り始めた。

 

 

 

…!…

…『僕らのLIVE 君とのLIFE』…

…絵里ちゃんと希ちゃんが加わってからの…9人で踊った初めての曲…

…もうすぐ、いなくなっちゃうんだね…3年生…

 

 

 

「どうですか?練習したんです!」

息を切らせながら、亜里沙が訊く。

「うん!バッチリだったよ!」

「本当ですか?嬉しいです!」

「敢えて言うなら…おしりを振るとこは、もう少し大胆にした方がいいけど…最初は恥ずかしいよね…」

「はい!」

「えへへ…」

「あの、私…」

「?」

 

 

 

「μ'sに入っても、問題ないですか? 」

 

 

 

「!」

 

 

 

戸惑った表情をして答えに詰まった穂乃果を、妹がフォローする。

「…亜里沙、お姉ちゃんは本番直前なんだから、あんまり邪魔しないの」

「Oh…」

「あ、こっちこそ…。2人の邪魔しちゃ悪いから、向こうに行くね!じゃあ、ゆっくりしていって」

「は、はい…」

 

 

 

…雪穂、サンキュー…

 

…どういたしまして…

 

 

 

穂乃果は来たときとは逆に、静かにドアを閉めた。

 

 

 

「おしりはもっと大胆に!ですね?…こうかな?」

「そっち向いてやると、パンツ丸見えだよ」

「ハラショー!」

「ハラショー?」

「じゃあ、こうかな?雪穂も明日、ここのを練習しよう!」

「う、うん…あのさ、亜里沙…」

「なに?」

「亜理沙は、μ'sのどこが好きなの?」

「えっ?」

「どこが一番好きなところ?」

「…雪穂?…」

 

 

 

 

 

翌日…。

 

運動部がいない時間を狙って、校内のグランドでウォーミングアップをするμ's一同。

 

「じゃあいくわよ~!次はトラック3周!」

「はいっ!」

絵里の掛け声、メンバーの返事が、貸し切り状態のグランドに木霊する。

「…とは言ったものの、ランニングが一番キツいね…」

と、ゆっくり走り出しながら、穂乃果。

「凛も短距離は得意だけど、長距離は好きじゃないにゃ…」

「…それより、どうするのよ、昨日の話…。3年生に訊くの、訊かないの?」

「でも、真姫ちゃん…本大会が終わるまではダメだって…」

「じゃあ、花陽はこのまま黙ってるつもり?」

「そういうわけじゃないけど」

「続けなさいよ!」

「にこちゃん!」

真姫たちは小声で話していたつもりだが、にこには聴こえていたようだ。

「地獄耳ね」

「ふん!どうせ、アタシたちが抜けたあと、μ'sをどうするか…なんて、くだらないことを話してたんでしょ?」

「くだらない…って」

ムッとする真姫。

「メンバーの卒業や脱退があっても、名前は変えずに続けていく、それがアイドルよ」

「にこちゃんの考えはブレないわね」

「当たり前じゃない!そうやって名前を残してくれたほうが、卒業していくアタシたちだって嬉しいの!だから…うわっ!!」

余所見をしながら走っていた、にこ。

目の前に立ち止まっていた希に気付かず、その豊かな胸にぶつかり『ぼよ~ん』と撥ね飛ばされた。

 

…エアバッグみたいにゃ…

…いや、むしろ、あれは凶器です…

 

希の武器に呆れる、凛と海未。

「痛いじゃない!」

にこが叫ぶ。

「その話はラブライブが終わるまで、しない約束やったやん」

「わ、わかってるわよ!」

「今はラブライブに集中…でしょ?」

絵里も嗜める。

「本当にそれでいいのかな?」

「花陽?」

「だって絵里ちゃん…亜里沙ちゃんもμ’sに入るつもりでいるんでしょ?ちゃんと答えてあげなくていいのかな?…もし私が同じ立場なら…やっぱりハッキリさせて欲しいと思うし」

「かよちんはどう思ってるの?」

「え?」

「μ's続けていきたいの?」

「凛ちゃん…それは…続けたいよ。花陽は、まだまだみんなと一緒にいたい!…だけど…」

花陽はチラッとにこの顔を見た。

「なに遠慮してるのよ?続けなさいよ!メンバー全員入れ替わるわけじゃなく、アンタたち6人は残るんだから」

「遠慮してるわけじゃないです。今後のμ'sをどうするか…この件はみんなで一回話し合いました。でも結論は出なくて…。私たちにとってμ'sはこの9人であって、1人欠けても違うんじゃないか…って意見もあるし…」

「私もそう思う。3年生がいなくなったメンバーで、μ'sって名乗りたくないもの…。でも、にこちゃんの言う事もわかる。μ'sという名前を消すのはツラい…だったら続けていったほうが良いんじゃないかって…」

「真姫、それでいいのよ」

「えりちはどう思ってるん?」

「私は決められない…。それを決めるのは、穂乃果たちなんじゃないかしら」

「絵里ちゃん…」

「私たちは必ず卒業するの。スクールアイドルを続けることはできない。だから、そのあとのことを言ってはいけない…私はそう思ってる。決めるのは穂乃果たち…」

「そうやね…」

「希は?」

「ウチ?」

「そうよ、アンタがμ'sの名付け親なんだから」

「にこっち…。う~ん、ウチはどっちでもいいんやけどなぁ」

「はぁ?どっちでもいいって」

「怒らんといて!…確かにウチにとってのμ'sはこの9人以外、考えられないんよ…。でも、それに拘るのは、ウチらが卒業するまでのこと。…それから先は、えりちの言う通り、穂乃果ちゃんたちが決めることやと思う。もし、μ'sと言う名前が代々引き継がれて…それが音ノ木坂の代名詞みたいになったら…それはそれで名付け親として、光栄なことやと思うしね」

「なるほど…希の言い分も一理ありますね…。はぁ、3人に訊けば答えが出るかと思いましたが…」

「決まらなかったね」

海未もことりも苦笑いするしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

その日の夜…。

 

穂乃果の部屋をノックしたのは、雪穂。

「お姉ちゃん、入るよ?…」

「うん…」

「…元気ないね…具合悪いの?」

ベッドの上に仰向けになって、ボーッとしている姉に、妹が声を掛けた。

「うん、大丈夫…。ただ、ちょっと悩み事というか、なんというか…」

「ひょっとして…μ'sのこと?」

「…」

「隠さなくてもいいよ…実はそのことで話があるんだけど、ちょっといいかな?」

「え?」

「失礼します」

雪穂の後ろから現れたの、絵里の妹だった。

「あ、亜里沙ちゃん!えっ?雪穂、いるならいるって言ってよ?…なに、ダンスの披露?今日はなんの曲?」

「いえ、そうじゃないんです…。穂乃果さん!あの…私…」

「?」

 

 

 

「私、μ'sに入らないことに決めました」

 

 

 

「!」

 

 

 

「ごめんなさい…」

 

 

 

キョトンとする穂乃果を尻目に、宣言をした亜里沙の顔に悲壮感はない。

むしろ少し晴れやかな表情に見えた。

 

そして、雪穂も。

優しく、穏やかに、亜里沙の顔を見つめていた…。

 

 

 

 

 

~つづく~

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