【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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心のメロディ その13 ~電車でGO!~

 

 

 

 

 

その後9人は、寺院や遊園地などを周り、弾丸ツアーはいよいよ終わりを告げようとしていた。

 

「地元に住んでても、行ったことがないところが、結構あるのね」

にこたちは遊園地をあとにして、駅へと歩を進めている。

「そうやね…。知ってた?最後に乗った遊園地のタワー…」

「あのゴンドラで上に吊られて、グルッと1周するやつ?」

にこは立ち止まり、園外からでも見える、その構造物に目をやる。

「あれなぁ…近いうちに取り壊されるんやって…」

「なくなっちゃうの?」

「うん、花陽ちゃん…残念やけどね」

「…なら、このメンバーで乗ったのは、最初で最後ってことね」

にこはその遊園地のシンボルを、感慨深げに見た。

「え~、まだ先の話でしょ?最後だなんて言わず、また来ようよ!」

「そうですね。卒業しても会えないわけじゃないのですから」

「むしろ、これからの方がいっぱい遊べるよ!」

「穂乃果、海未、ことり…」

にこがそれぞれの顔を見回す。

3人は黙って首を縦に振った。

「し、仕方ないわねぇ!アンタたちがそう言うなら、付き合ってあげてもいいわよ」

「うん、約束だよ!」

と穂乃果。

「…って、なにこの雰囲気…。こんな話をしたら、湿っぽくなるじゃないの!今日はパーッと騒ぐんでしょ?次はどこ?さっさと移動するわよ!」

「そうですね。…とは言え、そろそろ時間も時間ですし…これが最後かと…」

海未が時計をチラッと時計を見た。

 

 

 

「最後は、海を見に行こう!」

 

 

 

唐突な穂乃果の言葉。

 

 

 

「そうだ、海に行こうよ!」

「園田海未に行こうよ?…私ですか?」

と海未。

「その件(くだり)はもういいにゃ!」

「失礼しました…。ですが、今から海って…お台場にでも?」

「ううん、そんなとこじゃなくて…もっと、誰もいない静かなところ…。9人しかいない場所で、9人だけの景色が見たい…ダメかな?」

「ダメも何も…行くと言ったら、行くのでしょう?」

「えへへへ…」

海未は呆れがらも、反対はしなかった。

「本当に今から行くの?」

「行けるとこまで行ってみようよ!」

「穂乃果…」

絵里もまた、それ以上は言わなかった。

この状況では、なにをどう言っても変わらない。

わかってることだった。

「凛は賛成にゃ!夕陽が沈む海岸…見てみたいにゃ!」

「行けるところまで…って、冒険みたいでワクワクするね」

「…とか、のんびりしたこと言ってると置いてくわよ!」

「ぴゃあ!」

にこが花陽の脇を抜け、一目散に走り出した。

「にこちゃんズルい!」

穂乃果があとを追う。

 

…あ、このシチュエーションは…

 

穂乃果は自分がμ'sを続けるか否かでグズグズしてた時、にこに階段ダッシュの勝負を挑まれた時のことを思い出した。

 

…あの時も、にこちゃんがフライングでスタートしたんだっけ…

…途中で転んじゃって…勝負自体が流れちゃったけど…

…にこちゃん、ありがとう!…

…にこちゃんがいてくれなかったら、μ'sはここまで続かなかった!…

…高坂穂乃果はここにいなかった!…

…本当にありがとう…

 

あの時とは真逆の気持ち。

もっと、もっとこのメンバーで続けたい!

必死に、にこの背中を追う穂乃果。

 

 

 

「さぁ!2人を追いますよ!」

「走るの?」

少し面倒そうに訊く真姫。

「それは走るしかないやん!」

「ハラショー!こうなったら、とことん付き合うわよ!」

「はぁ…」

とため息を吐いたあと、真姫も走り始めた。

「ことりちゃん!かよちん!負けずに行くにゃ~!」

 

にこと穂乃果のあとを、海未が…希が…絵里が…そして、真姫、凛、ことり、花陽が追いかける。

 

…まったく、いつも勝手に走っていくのですから…

 

海未はそう思いつつも、それはそれで悪い気がしなかった。

 

 

 

 

 

《危険ですから、駆け込み乗車はおやめください…》

 

駅までダッシュしてきた9人は、そのアナウンスを聴いてスピードを緩めた。

 

「意外と…距離が…あったわね…」

「にこちゃんが…急に…走り出すから…」

「アンタが…時間との勝負とか…言うから…」

「違うよ…それは…花陽ちゃんだよ…」

「どうでもいいにゃ…喉、乾いた…」

にこ、穂乃果…そして、凛が息を切らせながら、ホームへの階段を降りていく。

「うん、なにか飲もう」

3人は自販機でジュースを買って、ひと息をついた。

 

その間に海未たちも降りてきた。

「みんな、この電車に乗ってください!」

3人は慌てて来た電車に飛び乗った。

 

「全員いるかな?」

穂乃果が人数確認をする。

「1、2、3、4、5、6、7、8…ひとり足りない!?」

「また、穂乃果ちゃんを置いてきたちゃった?」

ことりが周りをキョロキョロする。

「数えてるのは、穂乃果だよ!」

「あれ、そうだね…じゃあ…誰?」

「1、2、3、4…あ、自分を数えるのを忘れてた!」

「穂乃果ちゃん…」

ことりは苦笑。

これが、にこなら「うぉ~いっ!」と裏拳で突っ込みを入れてるとこである。

 

 

 

地下鉄からJRに乗り換えた一同。

電車は都内を抜け、神奈川県に突入した。

 

川崎、横浜、戸塚…大船…。

 

「ここから先は、三浦方面と湘南方面に分かれますが…」

「日の入は…今日は17時半みたいやから、あと1時間ほどあるね…」

「乗り換えるの面倒だし、このままでいいんじゃない?」

「面倒という理由には納得しませんが、確かに乗り遅れなどがないとは言えませんから」

海未は穂乃果の顔を見る。

「ん?私?」

「いいでしょう、このまま進みましょう!」

 

 

 

《藤沢~、藤沢~》

 

 

 

「ここで乗り換えると、江ノ島に行けます」

「江ノ島かぁ…行ってみたいけど、静かではないよね?」

「まだ、この時間は賑わってるでしょうね」

「じゃあ、もうちょっと先に行こう!」

 

辻堂、茅ヶ崎、平塚、大磯、二宮…

行ったことはなくとも、箱根駅伝ファンなら馴染みの地名(駅名)を、次々と通過していく。

 

そして小田原…。

 

「この先は、もう熱海やん?」

「熱海?意外と近いんだね!」

「温泉旅行のイメージがありますが…特急に乗ればアッという間です」

「温泉入って帰る?」

「さすがにそこまでの時間はありません!」

「え~、ここまで来て…」

「どうせ希は『みんなの裸が見たいとか』言うのでしょ?」

「海未ちゃん、わかってるやん」

「…」

「冗談やって!あ、でも、そろそろ降りないと…さすがに限界やない?」

「そうですね!穂乃果!」

「うん、わかった。じゃあ、次の駅で…」

 

 

 

 

…心の準備は出来てる?…

 

真姫は花陽と凛の目に問い掛けた。

静かに頷く2人。

 

 

 

 

…穂乃果、ことり…

 

…わかってるよ、海未ちゃん…

 

…うん、ことりも大丈夫だよ…

 

2年生組もアイコンタクトで会話を交わした。

 

 

 

電車が駅に着く。

ドアが開き、9人はホームに降りた。

 

夕陽に照らされ、赤く染まったホームは、眩しくもあり、心なしか切なくもあった…。

 

 

 

 

 

~つづく~


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