【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「エントリーNo.11!音ノ木坂学院スクールアイドル…μ's!」
司会者のアナウンスに、会場のテンションは一気に高まった。
ラブライブ本大会のステージ順を決める抽選会。
集まっているのは、スクールアイドル全都道府県の代表47組。
その中でも知名度No.1は、なんと言ってもA-RISEを破ったμ'sである。
名前を呼ばれた瞬間、場内は「うわぁ~」とも「うぉ~」ともつかない、どよめきが起きた。
「想像以上に注目されてますね…」
「しかたないよ。他のチームの合言葉は『打倒μ's!』だもん」
海未とことりが、周りを見渡しながら小声で話す。
「μ'sの代表者の方?ステージへどうぞ」
司会者が、なかなか登壇しないμ'sのメンバーに、声を掛ける。
「にこちゃん!?」
「へっ?」
「くじを引くのは、にこちゃんだよ!」
「えぇっ!?ア、アタシ?穂乃果じゃないの?」
「卒業するまでは部長でしょ?」
「そうにゃ!最後はビシッと決めるにゃ!」
「う…うん…わかったわよ…」
にこは、真姫と凛に促され席を立った。
…いよいよね…
これまでのことが頭に浮かぶ。
だが、感慨に耽っている場合ではない。
通路を歩くにこに、突き刺さる視線。
…μ'sの…矢澤にこさんだ…
…思った以上に小っこいのぅ…
…やっぱ、東京の人はスッとしちょるね…
…フン!好かんばい…
…あれが優勝候補の?…
…普通の女子校生?A-RISEのようなオーラはないわね…
羨望と敵意に満ちた眼差し。
にこはそれを肌で感じていた。
ステージに登り、客席側へと振り返る。
…うっ、さすがに緊張する…
…あの一角以外、すべてがライバルなのね…
…でも、アタシは負けない!必ず優勝してみせる…
強い決意のもと、抽選箱に手を入れた…。
「アンタらがμ's?」
会場をあとにしようとしたメンバーを、不意に呼び止める関西弁の声。
振り返るとそこには、3人の少女が立っていた。
「はい…私たちがμ'sですが…」
代表して海未が答える。
「ふ~ん…なるほど、頭数だけは揃っとるんやね」
「『枯れ木も山のなんとか』…っちゅうことやない?」
「『枯れ木』は言い過ぎちゃうん?」
3人の少女の話す言葉は、明らかに希が使う『それ』とは違った。
「何よ!いきなり!」
「にこっち!」
瞬間湯沸し器と化したにこを、希が制する。
「あなたがたは?」
絵里がスッと一歩前に出て、3人に問い掛ける。
「まぁまぁ、そう睨まんと…。東京モンはこれだからイヤやわ」
「『枯れ木ってなんやねん!?』くらい言ってもわらんと」
「…」
「ホンマあかん空気やね…まぁいいわ…。ウチら?ウチらは…」
「大阪代表の『太陽の闘』」さんですね?」
「花陽!」
「かよちん!」
「花陽ちゃん!」
そう…答えたの花陽。
これには、その3人も一瞬『意外』という表情を見せた。
「ラップとヒップホップという、スクールアイドルとしては異色のパフォーマンスをするチームです。前回の大会では『東のA-RISE』『西の太陽の闘』と並び評されてました。結果は…でしたが、間違いなく実力はあると思います。一部ではその独自のスタイルが、ネットユーザーには受け入れられなかったとも言われていますが…」
「おおきに」
「へぇ…ウチらの知名度もなかなかのもんやない」
「当然やね…」
「この娘のアイドル知識は誰にも負けないんだから」
と、なぜか自分のことのようにドヤ顔をする真姫。
「前回は前回、今回は今回」
「A-RISEを負かしたチームゆうことでで、注目されてるみたいやけど、そう簡単にはいかへんよ!」
「アンタらがナンボのモンか知らんけど、優勝はウチらがもらうさかいに」
「ほな、そういうことで」
3人はそれだけいうと、スタスタと歩き去った。
「…」
「コッチやなく、アッチやった」
「もう、毎回毎回かなわんわ…しっかり、しぃやあ」
「これだから東京に出てくるの、イヤやねん」
3人は再びμ'sの前を通り過ぎると
「ほな…」
と言いながら向こうへと消えて行った。
「なに、あれ?」
さすがのにこも、毒気を抜かれて、茫然としている。
「ものの見事にステレオタイプの関西人でしたね…」
「確かに…」
首を縦に振る一同。
「でも、ちょっと、気合いが入ったよ!やっぱり、みんな、どこのチームも優勝目指して頑張ってるんだ。油断してるつもりはないけど、少しでも気を抜いたら負ける!」
「穂乃果…そうですね。あの人たちも言っていましたが、今回は今回。他のチームもレベルアップしてるでしょうし、A-RISEを破ったなどという『アドバンテージはない』と思った方がいいかも知れません」
「海未の言う通りね。あの不躾な態度は気に入らないけど、初めから負けを覚悟して出てくるようじゃ、戦う資格はないと思うし…あれくらいのことを言うのも当然と言えば当然じゃない」
と真姫。
「そういう意味では、このステージ順は大きいわね…」
絵里はにこを見た。
そして他のメンバーも…。
「それにしても、改めて…にこちゃん、すごいよ!」
花陽が興奮気味に言う。
メンバーは部室へとやってきた。
「あ、当たり前でしょ!?私を誰だと思ってるの?大銀河の宇宙No.1アイドル!『ニコニ~にこちゃん』よ!」
…って、くじを引く瞬間はチョー緊張したけど…
「でも、1番最後って…それはそれでプレッシャーね」
真姫がいつものように、指先で髪を絡ませながら呟く。
「私も最後って聴いた時は『まさか!』って思ったけど…もう、そこは開き直るしかないもの」
と絵里。
「でも、私はこれでよかったと思う!念願のラブライブに出場できて、しかもその最後に歌えるんだよ!大トリだよ、大トリ!鳳啓介!」
「ポテチン!…って、穂乃果ちゃんもずいぶん古い人を知ってるんやね?」
「名前だけ…」
その他のメンバーはポカーンとしている。
「まぁ、そうなるわね…」
…それを知ってる、ウチもウチやけど…
「それはそうと、この結果はウチのスピリチュアルパワーのお蔭やね…」
「いやいや、やっぱり現生徒会長兼μ'sのリーダーの力でしょ」
「え~…かよちんのお米パワーだよ!」
「凛ちゃん、それは関係ないと思う…」
「…誰の力でもなく、これがμ'sの…今の勢いなんだと思います」
「まぁ、そうだね…」
海未の言葉に納得する一同。
「ちょっとぉ、引いたのはアタシなんだけど…」
「はいはい、そうね」
「えらいにゃ、えらいにゃ」
「相変わらず、雑な扱い…」
真姫の凛の対応に、にこは溜め息を吐いた。
「さぁ、練習を始めるわよ!」
絵里がパンパンと手を叩く。
「は~い!!!!」
「本番に向けて、ラストスパートにゃ~!!」
「うん!ファイトだよ!」
その掛け声を合図に、練習へと繰り出すメンバー。
「まったく…アタシのことはスルーなの?」
笑ってるのか、怒ってるのか、どちらとも言えない表情で、にこは部屋を出ようとした。
「大丈夫です!」
…びっくりしたぁ!…
「花陽?…まだいたの?」
「ちょっと、出遅れました…」
「相変わらずトロいわね」
「ははは…」
「…で、何が大丈夫なのよ?」
「みんな、あんなこと言いながら、にこちゃんには、すごい感謝してましたよ」
「わ、わかってるわよ、そんなこと…」
「えっ?」
「最後まで、いつものアタシたちでいよう…ってことでしょ?だからこれも普段通り…お約束…」
「あ…はい!」
「変に気を使われるのも、性に合わないしね…さぁて、練習行くよ!」
「はい!」
「花陽…」
「はい?」
「ありがとね…」
「えっ?に、にこちゃん?…」
…出遅れたなんて、見え透いた嘘を…
「早く来なさいよ~」
にこはそう言うと、先に歩いて行ってしまった。
「じゃあ、ここで一旦休憩しましょう」
絵里が練習を止める。
「ふぅ~」
「今日は随分、暖かいですねぇ…」
海未が穂乃果にペットボトルを手渡す。
「ありがとう。う~ん、本当にあったかいねぇ…お昼寝したくなっちゃうよぅ」
「穂乃果は季節を問わず、眠いじゃないですか…」
「はははは…」
「いよいよ春って感じだよね!桜の開花も、今年は早い…って言ってたし」
「へ~…ことりちゃん、そうなんだ…」
「少しくらいはニュース見なさいよ」
真姫が穂乃果の隣に座る。
「えへへへ…そうだね」
「でも、確かに…なんか気持ちいいねぇ…」
花陽も「よいしょ…」と真姫の隣に腰を下ろした。
休憩時間でありながら、絵里は凛に、振り付けの指導をしている。
ダンスに関して妥協を許さない姿勢は、入部してから変わらない。
にこは希と談笑している。
2年生3人がスクールアイドルを始めた頃は反目しあっていた2人。
それが今、仲良く、楽しげに話をしている。
「花陽ちゃん?」
「ことりちゃん…」
花陽は名前を呼ばれただけで、ことりが何を言わんとしてるのか理解した。
そこで休んでいた5人は、みんな同じ気持ちでその光景を見ていたのであろう。
「…はい、わかってます…」
「穂乃果ちゃんも…」
「…」
「寂しくなっちゃダメ!今はラブライブに集中だよ!」
「そうですよ、集中!集中!」
海未のセリフは、自分自身に投げ掛けているようにも聴こえた。
「…分かってるよ、ただ…」
「ただ?」
「ぎゅ~っ」
突然、海未に抱きつく穂乃果。
「なんですか?いったい?」
「急に抱きしめたくなっちゃった!」
「ほ、穂乃果…」
「私も!ぎゅ~っ!」
「も~苦しいですよ…ことり、穂乃果…」
「ぎゅ~」
「きゅ~」
「穂乃果…ことり…苦しいですって…」
その姿を横目で眺めていた真姫。
「わ、私はそういうのしないからね…」
花陽に牽制球を投げる。
「しないの?」
「や、やるなら…凛としなさいよ…」
「うふふふ…」
…それか私と2人きりの時に…
「えっ?」
「べ、別に…さぁ、そろそろ休憩時間は終わりじゃない?続きを始めるわよ」
真姫はスッと立ち上がると、手を叩いて練習の再開を促した。
~つづく~