スーパーロボット大戦OG ~太陽と花と月~   作:定泰麒

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父という生き物

 「俺の名前は、アルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世だ! よろしくな!」

 「随分豪勢な名前だな。さしずめ愛称は、ポチか?」

 

 『コガネ』のブリーフィングルームが笑いの渦に包まれた。これはヨウガが『コガネ』に乗船し、『フィスト小隊』の一員になった初日のことである。

 

 アルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世と名乗った男は、周りに笑いが絶えないなか素直に笑えないでいた。自分のボケよりも、ヨウガの返しの方が周りにウケたためだ。

 ヨウガは、事前に資料を通して男の名前を知っていたからこそできた返しであった。

 

 「ハハハ! あのヘクトールから一本取るなんて凄い新人が入ってきたわね!」

 

 男の名前はヘクトール・マディソン。この言葉を吐いたのは、パトリシア・ハックマン。通称・パットは『コガネ』の乗船しているもう一つの小隊『フィンガー小隊』の一員であり、ヘクトールの彼女でもあった。

 

 ヘクトールとパットもゴールデンエイジの一員。そんな彼らが乗る機体は、ゲシュペンストMk―Ⅱ。ヘクトールはtypeRに。パットはtypeSに乗っている。

 

 「あらぁ~、素敵な方ですねぇ~。でもぉ~、わたしにはウィンがいますからぁ~」

 

 グレース・ウリジン。 間延びした口調の為、初対面の人からはトロく見られてしまいがちだが、頭の回転が速く頭脳明晰。ゴールデンエイジの中で座学においてトップであった。

 異性好きという特徴があるが、グレースは『フィンガー小隊』の隊長であるウィンのことを深く愛しており、一途な性格でもあった。

 そんなグレースが乗るのは、ヒュッケバインmk-Ⅱであるが機体の色をピンク色にしていて、周りからは賛否両論を得ていた。

 

 

 

 

 

 「キャラが濃い奴ばっかだな。親父」

 「そうだな、だがああいう奴らだからこそ、エースとしてパイロットを続けられているんだろう」

 「そこに関しては同感だけど。……なぁ、親父聞きたいことがあるんだけどいいか?」

 「なんだ? 珍しいな。言ってみろ」

 

 『コガネ』艦長室。新任のパイロット紹介も終わり、久しぶりにヨウガとショウイチロウは、親子で会話をしていた。

 艦長室は、ショウイチロウ専用の部屋であり、彼の好きなように装飾が施されている。本棚には、【孫子の兵法】や【戦争論】等の戦争にまつわるような本がたくさん収められている。

 

 「なぜ俺をここに呼んだんだ?」

 「……。理由などない。お前の腕ならあいつらに劣らないと思って参加させた、それだけだ」

 「本当にそれだけか?」

 「無論だ。しかし、言っておかなければいけないことがある」

 

 ヨウガはショウイチロウを訝しげに見つめる。『コガネ』に派遣されたということに何か違和感をヨウガは感じていたからであった。

 

 「お前は、今から半年後。『ATX計画』に派遣されることが決まっている」

 「どういうこと? なんで現時点でそんなことが決まってるんだ?」

 「元々、お前は『ATX計画』に参加させることになっていた。そこを俺が半年でいいから先にこっちに参加させろと嘆願したからだ」

 「おかしくないか。そこに親父が俺をここに呼ぶ理由は存在していないと思うんだが」

 「いずれ来る日のためにお前は、ここにいなければならなかった……それだけだ」

 「いずれ来る日のために……。親父は、俺に何を隠している?」

 「それこそいずれわかる。だから、今は任務を遂行しろ」

 「そうかい……。それじゃあ失礼します。『艦長』」

 「うむ……」

 

 決してヨウガとショウイチロウの仲は悪い訳ではない。シンノミヤの現宗主と次期宗主とされているヨウガに軋轢が全くないと言えば嘘になるが、ショウイチロウは長男であるヨウガのことを心から愛していたし、ヨウガもそのことをわかっている。

 しかし、今回の異動だけには違和感を覚えていた。滅多にヨウガの事に口出しや手出しをしないショウイチロウがわざわざ自分の力でヨウガを呼び寄せたからだ。

 

 シンノミヤ。漢字で書くと、新野宮。その一族は、旧歴から続く名門の一族であった。連邦軍発足当時から重要人物として新野宮家は携わっていた。

 その歴史と功績は、コロニー統合軍のブランシュタイン家にも負けずとも劣らない。

 

 過去に地球とコロニーとの間で軋轢が生まれ戦争が起こった時があった。その時には、新野宮家とブランシュタイン家はお互いにライバルとして数々の戦いをしている。今でも知られているその名勝負の数々は、各国の歴史教科書にさえ刻まれている。

 しかし、今では戦争は過去のことであり、新野宮家とブランシュタイン家は良好な関係にあった。

 

 何代目かの新野宮家の当主には超能力を持つ人物がいたという眉唾モノの話があった。実はそれは当たらずとも遠からずといった感じで新野宮家には、不思議な力を持つ人物が何人も存在していた。

 

 それは、予知というか勘が当たるというか運がいいとかそういった類のモノ。

 

 ケンゾウ・コバヤシという科学者の言葉を借りれば、それを『念動力』というらしい。さらに言えば、歴史上で一番最初に確認された『念動力』の持ち主は、新野宮家の宗主であった人物であったらしい。

 

 ショウイチロウ・シンノミヤ。彼は元『念動力』の持ち主だった。『念動力』は親から子へと受け継がれるという性質を持っているという可能性があった。

 ショウイチロウは『念動力』を持っていた時の名残りか、現在でも軽い予知能力を持っている。ヨウガが『ATX計画』へ参加予定というのを聞いた時、嫌な予感が胸をよぎった。

 可愛い子には旅をさせよという古いことわざがある。意味は、かわいいと思う子供にはつらく苦しい旅をさせて世の中のたいへんさを経験させなさいといったものだ。

 その言葉を胸に、今までヨウガには大変な思いをさせてきた。ヨウガをコロニーのノゾミに行かせたのもショウイチロウであったし、ヨウガの初任地がエジプト・ムータ基地という一番戦闘に巻き込まれやすい基地に送ったのもショウイチロウであった。

 

 そんなショウイチロウが、ヨウガをわざわざ自分の目の届くところに置いたのも嫌な予感を信じたためであった。

 

 一方、ヨウガはそのことを全く知らなかった。

 

 

 

 

 

 「最近は身を潜めていた反連邦組織がここ最近徐々に表に出始めてきている。今回の作戦は、情報部によってもたらされたその反連邦組織の基地の一つを叩く。それでは、各自詳しいデータを見てくれ」

 

 ブリーフィングルームにて、次の戦闘の作戦会議が練られていた。

 

 「マップを見てください。このD‐17のポイントに敵の基地があります。周りは森なので、木々に囲まれて見えにくいため、発見するのに情報部はかなりの時間をもようしたようです」

 

 そうだろうな、こんだけ木に囲まれてりゃ見えるものも見えないか。ヨウガはつぶやくと、引き続き話を聞く。

 

 「本艦は、そこから約5㎞離れたB-3に着陸します。そこから『フィスト小隊』『フィンガー小隊』は各自で散開し敵の基地を破壊してください」

 

 大まかな作戦内容が伝えられた時、ヨウガの斜め前の席の人物がスッと手を挙げた。

 

 「アーウィン大尉。どうぞ」

 「はい。敵の基地にたどりつくまでにどれほどの敵が出現するか予測は出来ていますか?」

 「基地周辺に偵察の戦闘機が常に4機いることが確認されています。2機ずつで小隊を組んで臨機応変に動けるようにしている模様です。それとなんですが……。先日、エジプトのムータ基地から量産型ゲシュペンストが2機盗まれたと報告が入っています。位置的に考えたら、もしかしたらここに盗まれたゲシュペンストがあるかもしれません」

 「となると、もしかしたら罠が張られている可能性がありますね」

 

 もし盗んだ犯人が、その基地にいるとしたら連合軍の基地から機体を盗むという離れ技をやってのけた人物がいるということになる。それに基地から盗むのは相当に困難なことであり、その盗むという作戦を考えた人物も優秀な人間でないと出来ることではない。そう考えた時に、罠が張ってある可能性というのは結構高いとアーウィンは考えた訳である。

 

 「その可能性は十二分にあります。気を付けていただきたい。特にあなた達が乗っているのは、連邦の試作機や実験機といったかなり貴重なモノなので慎重にお願いします」

 

 こうして作戦会議は終わった。

 

 「ヨウガ。あなたもそろそろ慣れてきたんじゃないうちのチームに」

 「そりゃ3ヶ月もいりゃ誰でも慣れるだろうよ」

 「いや、誰でもではないわ。ほら私達ってキャラ濃いじゃない、だからついて来れないが続出してるのよね」

 「ハハハ! そうだな、濃すぎるもんな」

 

 作戦開始5分前。ミーナはヨウガに話しかけていた。2人の仲は良好で、友人として普通に話せる程になっていた。

 

 「2人ともそろそろおしゃべりはやめておけ」

 

 ジェスは隊のリーダーとして2人に注意を促す。

 

 「了解」

 「ちょっとぐらい、いいじゃないジェス。まだ5分もあるのに」

 「集中しろと言っているんだ」

 「ふんっ、いつからそんな堅物みたいになったの。学生時代の熱いあなたはどこに行ったのよ」

 「何を言ってるんだ。俺の心は熱く燃えたぎっているさ」

 「あっそう」

 

 そこからは沈黙が場を支配した。ヘクトールは今回の出撃メンバーに入っていない。というのもインフルエンザにかかってしまっていたからだ。

 もし彼がこの場にいたならば、沈黙という言葉は消えていただろう。

 

 「各自慎重に前方へ。限界まで気づかれないようにするんだ」

 「「了解」」

 

 作戦が開始され、『フィスト小隊』はD-17へとまっすぐに向かう。対して『フィンガー小隊』敵の基地の裏へと回り攻撃をするという陽動作戦であった。

 

 「敵全然出てこないわね。本当に基地なんてあるのかしら」

 「それは間違いないだろう。なにしろ情報部からの情報だ、間違っていたら情報部としての威厳がたたないだろうよ」

 「それもそうね」

 

 3人はC-13にたどりついていたが未だに敵がでてくる気配がない。いるとされていた偵察機でさえ見当たらない。

 そんな時、機体のレーダーに敵の戦闘機と思われる赤い点が2つ出現した。

 

 「ジェス! これって!」

 「そうだろうと思う。偵察機だな」

 「隊長さん、どうする? そろそろ始めるか?」

 「そうだな! フィスト1。各機攻撃開始」

 「「了解!」」

 

 敵機の機影を確認し、2機のPTと1機の特機は敵の戦闘機の前に飛び出した。と言っても敵側も戦闘機こちらのレーダーに映るということは、敵のレーダーにも映っているということだ。

 既に、敵の援護こちらに向かっているだろう。

 

 罠さえなければの話だが。

 

 

 

 

 

 「いいからお前は逃げるんだ!」

 「でも父さん。僕以外にゲシュペンストを操れる人なんて、この場所には父さんぐらいしかいないじゃないか!」

 「ゲシュペンスト1機なんかなくても、ここには戦闘機が14機に戦車が10機もある。これだけあればPTなんて怖くないさ」

 「でもでも「うるさい! 行けったら行け! 俺も後で合流するから、とりあえずバン大佐の元へ行くんだ」

 「わかったよ父さん。またあとで会おう」

 「おうさ!」

 

 現在、ヨウガ達に迫られている反連邦基地での出来事。父親の名前はヴァンス。子供の名前は、フィンといった。

 かつてヴァンスは、連邦軍の兵士であった。それなりに活躍した戦闘機乗りであり、勲章をもらったほど腕もよかった。

 そんな彼が、なぜ反連邦組織に入っているかというと、その当時の彼の直属の上司であったハンス・ヴィーパーという男のせいであった。

 ハンスは、自分の部下であるにも関わらず活躍をするヴァンスという男を憎んでいた。同じ年齢で、ハンスの方が階級は上でも、ヴァンスに嫉妬していたからだ。

 そんなある日のこと、ヴァンスの下に一本の電話が入った。妻が危篤という連絡だった。すぐさまハンスに特別休暇をもらいに行った。

 しかし、そのことをハンスは許可をしなかった。さらにこの基地から出て行ったら、お前は重罪人だと脅した。

 ヴァンスは迷いに迷った挙句、脱走者という重罪人になる決意した。紆余曲折あり、ようやく妻の下にたどり着いた時、妻はなくなっていた。幼い息子を残して……。

 やり場のない怒り、そして脱走者という称号を得て彼は、息子をつれて反連邦組織へと向かった。

 

 それから7年。8歳だった息子も15歳になった。その過程で徹底的にパイロットとしての技術を叩きこんだ。ヴァンスには息子に自分を守る方法しか教えてやれなかったからだった。

 

 そして、フィンには才能があったのか10歳で訓練を始めてわずか5年でヴァンスを超えるパイロットになっていた。

 

 

 

 既に情報は得ていた。約1時間後に敵の襲撃があると。今から全員で逃げても追いつかれて殺される。それならば戦って果てるそれが戦士。

 それでも息子は愛おしい。こいつさえ生きていれば、それだけで俺は……。ハンス・ヴィーパー! 貴様のことは、永遠に覚えておく。俺はここで果てるかもしれない。だが仇は息子がとる覚悟しておけ。

 

 フィンが乗る輸送機を見送る。そこには、フィンだけでなく残って戦う戦士たちの愛すべき者達が乗っている。残った戦士たちは、よく残ってくれたと思う。感謝しなければいけない。

 

 「諸君ら、よく残ってくれた。俺は諸君らを部下に持てて本当に嬉しく思う。俺は、まだ生きていたい! 愛する者とまだ人生を歩んでいたい。だからこそ、ここで勝って生き残ってやらうではないか!」

 

 「「「「「おう!」」」」」

 

 「ここで勝てたら、俺たちは英雄だ! 諸君! 勝って祝杯を!」

 

 「「「「「おう!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 「ジェス隊長。輸送機が見えますがどうしますか?」

 「撃ち落とすんだ。あれにゲシュペンストが乗っていたりしたら、後々厄介なことになるだろう」

 「了解!」

 

 陽動は続いていた。ジェス隊長やミーナのおかげで戦闘機3機に戦車2機破壊していた。まだ敵の戦力は尽きないようだった。そんな中で、敵の基地のある場所と思われるところから1機輸送機が飛び出してきた。

 ジェスの指示通りに、輸送機を撃墜するためスラスターを全開にして輸送機を追う。

 

 距離およそ500m。もうすぐでM13ショットガンの射程範囲に届くとヨウガが思った時だった。

 

 「やらせん! やらせんぞぉ!」

 

 左方向からのマシンガンの弾。距離が遠かったために掠った程度の損傷ですんだ。何事だとレーダーを確認すると、量産型ゲシュペンストのようだった。どうやら例の奪われた機体のようだ。

 

 「落とさせはしない! 輸送機だけはぁ!!!」

 

 ヨウガはその気迫に少しだけ腰が引けた。そしてその声にどこか懐かしさを憶えていた。

 

 「その声! ヴァンス先輩ですか!」

 「!!! お前、ヨウガか!」

 「なぜ先輩が、反連邦組織なんてものに……?」

 「なぜ……お前だって、わかっているだろ! ハンスに嵌められた俺はこの道しかなかった。しかし、何の因果だろうな。ここでお前に会うとは……さぁどれだけ腕を上げたか見せてみろ!」

 

 ヨウガはヴァンスのことを知っていた。ヴァンスこそヨウガの初めて所属した基地での戦闘機チームの隊長であったのだ。主席として基地に配属されてきたヨウガの鼻を明かした男でもあった。

 

 「くそっ! なんで!」

 

 ヨウガはヴァンスが命を賭けて迫ってきていることがわかりわざとコックピットを外してショットガンを放つ。

 

 「なかなか。どうして!」

 

 それをさも楽勝といわんが如く避けて見せたヴァンスは、容赦なくコックピットにマシンガンを撃った。さすがにヨウガも直撃を受ける気はなく全ての弾丸をすれすれで避けるという離れ技をみせた。

 

 「先輩。本気なんですね」

 「当たり前だ! ここは、戦場だぞ! お前こそ、本気でこい! さもないと死ぬぞ!」

 「わかりました! 容赦なく、殺します!」

 「それでいい! それじゃ第2ラウンドと行こうか!」

 

 お互いに剣を取り出す。ヴァンスがプラズマカッターを背中から引き抜く。対するヨウガは腰に下げているシシオウブレードを鞘から抜きヴァンスに剣先を向けた。

 

 「ほほう。良い物を持ってるじゃないかヨウガ」

 「ええ、これでもエースなんでもらえました」

 「ふん。お前を倒して俺の物にするとしよう」

 「俺は負けません!」

 

 プラズマカッターがヨウガの面前に叩きつけられようとするが、シシオウブレードでそれを見切ったヨウガは、受け流しそのまま敵の右腕を吹き飛ばした。

 

 「さすがに接近戦は分が悪いか!」

 「剣術を習ってる俺に剣で勝負したら、そりゃまずいでしょ!」

 「ふん! ならば!」

 

 切れた右腕を左腕で持ったヴァンスは、ヨウガに投げつけた。

 

 「そんな子供だましなんて」

 

 避けようと無意識にスラスターを右に。

 

 「しまった!」

 

 切れた右腕に狙いを定めてマシンガンを撃つ。弾丸は腕の装甲を貫き、腕はヨウガのすぐ近くで爆散した。そこで咄嗟にでた声。

 ヨウガは、完全にバランスを失いかけていた。

 

 「もらった! すまないな、ヨウガ!」

 「ちっ! こんなとこで! 死ねないんだ!」

 

 バランスを失ったヨウガに追い打ちにと左腕に搭載されたプラズマ・ステークを取り出しジェット・マグナムを食らわせようとした。

 それこそ一瞬であった。ヨウガを倒そうとしてはずのヴァンスのゲシュペンストの頭部を青色の光のようなものが覆いかぶさったと思ったら、光が消えるとそこには頭部が残っていなかった。頭部がなくなると、機体は膝から崩れ落ちた。

 

 「大丈夫か?」

 

 その声は、ジェスのものだった。戦闘機や戦車をミーナに任せヨウガの援護に来たのだった。

 

 「大丈夫です。助かりました」

 「いや、いい。チームなんだから。それにしても、中尉をそこまで追い詰めるとは、かなりの腕前であったと見た」

 「ええ、俺の尊敬していた先輩です」

 「うん……? それは「うっ、うう」

 

 ジェスの声を遮ったのは、ヴァンスであった。

 

 「先輩? まだ、生きておられるのですか?」

 「ふんっ! だが、もうすぐ死にそうなのだがな……」

 「せっ先輩……。今、助けに行きますから!」

 「馬鹿野郎! くんじゃねぇよ! 俺たちは敵だ」

 「そんな……」

 「だが1つ頼みがある……。いいか?」

 「頼み……それはなんですか?」

 「息子に、フィンに伝言を頼みたいんだ」

 「息子さんに……良いでしょう。このシンノミヤ・ヨウガ。我が祖先の名に懸けてその伝言を伝えましょう」

 「そうか、ありがとよ。では、生き急ぐなと絶対に死ぬなと伝えてくれ。後、愛しているとお前を母さんと一緒に身守っていると……それから、それから……だめだな。伝えたいことが多すぎて何を言っていいかわからない。ハハハ。我ながら散り際は良かったぜ! なぁヨウガ」

 「そんな、先輩!」

 

 ヨウガは気休めに先輩と叫ぶ。だが、それ以降ヴァイスの声は一言も聞こえてはこなかった。

 

 

 

 

 

 「ヨウガ、あの男は一体何者だったんだ? 今は、上司と部下ではなく、同い年の友人として話をして欲しい」

 「ジェス……あの男の人はな……先輩は……。パイロットとして初めての任地で俺を救ってくれた人なんだ」

 

 作戦が終わり、ヨウガとジェスはシャワールームで汗を流していた。普段はムードメーカーであるヨウガが見るからに気落ちしているがわかった。

 そしてその原因が、自分が倒したゲシュペンストに乗っていた相手が原因だということもわかっていた。反連邦組織に知り合いがいる。さらに先輩と呼んだとこを聞いたジェスとしては気が気ではなかった。

 ジェスとしては部下の命を預かる者として放っておくこともできないし、1人の友人としても放っておくことができなかった。

 

 

 

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