スーパーロボット大戦OG ~太陽と花と月~   作:定泰麒

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物語の幕開け

 「俺は、主席でノゾミの士官学校を卒業した。ライバルと呼べるのも1人しかいなかったし、正直なところ俺より強いという人物を『元教導隊』の人達しか知らなかった。つまり自分よりも上の存在など数人しか存在していないと思っていたのさ」

 

 シャワールームから上がり、パイロット達の集う休憩所へとヨウガとジェスは足を運んでいた。

 

 「つまり、調子に乗ってたんだ。それこそ……先輩。ヴァンス先輩に会うまではな」

 

 これより語られるは、ヨウガの過去の話。当時、エースで新野宮家の時期宗主としてちやほやされていた今の彼にとって黒歴史と呼んでもいい自分の恥ずかしい話。

 そんな話を話すのは、ジェスを1人の友人として、チームの隊長として信頼していたから他ならなかった。

 

 

 

 

 

 「おい、新人。てめぇ調子乗ってるんじゃねぇぞ!」

 「へー、そんな口俺に聞いていいんですか? 絶対に昇進できないタイプですね『先輩』」

 「こいつ……! 言わせておけば!」

 「そんな言うんならシュミレーションで勝負しましょうか? ハンデも差し上げますよ」

 「お前、なめてんじゃねぇぞ! ハンデなんぞいらん。お前なんぞ1分で叩きつぶしてやる」

 

 エジプト・ムータ基地。ヨウガが初めて任地された場所だ。普段のヨウガならば、先輩に生意気な口を叩かない。というのも彼の家柄が彼をそうさせていた。

 

 誇り高い一族。それが新野宮家と考えていたからである。では、なぜこんなことになったのかというと、任務初日に突然先輩に呼び出され、その場所に行ってみると、待っていたのは所謂新人いびりというものであった。

 

 6人いた。正直、いつの時代だと思ったよ。話を聞いてみると、その基地の伝統らしかった。そんなもんで痛いことはされたくなかったから、逆に6人をぼこぼこにしてやった。あいにく俺は、肉弾戦もそれなりに行けたからな。

 

 それが先ほどの言葉に繋がる訳だ。

 

 シュミレーションはすぐに行われた。未だPTが実験段階であった時代。最新の式のシュミレーターで戦闘機に乗り、シュミレーションを開始した。

 

 「先輩……こんなもんですか?」

 「くっ! ちょこまかと避けてんじゃねぇ」

 

 開始1分などとうに過ぎていた。センスがある上に努力したヨウガは、ベテランのパイロットと戦っても遜色がないほど実力があった。

 対する相手は、ヨウガが卒業した士官学校より、かなり質の劣る士官学校出のもうすぐ現役になって2年になるといったパイロットであった。

 正直、実力もセンスもヨウガの足元にも及ばなかった。完全にヨウガにもて遊ばれていた。

 

 「もう終わりにしますね!」

 

 一気に先輩との距離を近づけ、バルカンで破壊。もはやヨウガをいびろうとしていたパイロットのプライドはズタズタになっていた。

 

 「わかりましたか? 先輩。今後は、後輩いびりなんてやらない方がいいですよ」

 「くぅぅ。クソ野郎!」

 

 負け犬の遠吠え。それを背にヨウガは、自室へと歩き出した。

 

 「おい。ヨウガ一等兵! いるか?」

 

 ヨウガは自室で眠っていた。そんなさなかで、部屋のドアをノックしたあとでドアの向こう側から声が聞こえた。

 その声は、先ほど達の先輩のものではないなとわかりながらも確認のために相手の正体を聞き出す。

 

 「はい。あのどちら様ですか?」

 「お前の命を預かることになった者だ。『ウーロン小隊』隊長と言えば分かるか? とりあえずここを開けてくれ」

 「ということは、ヴァンス大尉ですね。失礼しました。今、開けますから」

 

 大雑把でありながらも慎重にことを進める2つの両極の性格を持つヨウガは、ドアの向こう側にいる男が自分の所属することになる小隊の隊長であることを資料を通して知っていた。

 急いで部屋の鍵を開ける。

 

 「ふむ。どうやらシンノミヤ家の長男は、相当の腕前らしいな」

 「急にどういうことでしょうか?」

 「いやな、さっきなんだが馬鹿な後輩たちがお前さんにやられて面目が立たんと俺に泣きついてきたんだ」

 「はぁ~。それでどういったご用件でしょうか?」

 

 嫌な予感しかしなかった。少し前までの自分になんてことをしたんだと叱りたい気持ちになっていた。

 

 「いやぁな、疲れてるとこ悪いんだが、俺とも戦ってくれんかなと。一応これでもこの基地でエースなもんで新人がエースっていう状況は、いろいろとまずいんだよな。上下関係的に」

 「なるほど。言いたいことはわかりました。ヴァンス大尉と戦って小官に負けろというんですね」

 「うーん、ちょっと違うな。負けなくていい。全力で俺に向かってきてくれ」

 「えっ? 全力でですか?」

 「そう。お前の今の持っている全てを出して俺を倒しに来てくれ」

 「……いいんですか? 本気だして?」

 「あたぼうよ。新人に負けるような腕前じゃないからな俺も」

 「わかりました。やらせてもらいます」

 

 この言葉からもわかるように、ヨウガは自身の実力はかなりのものだと自惚れていた部分があった。自惚れるほどの実力を持っていたのもまた事実であるが……

 ヨウガとヴァンスは、シュミレーターの下へと向かった。

 

 「それじゃあ、本気で来いよ! 新人!」

 「はい。行かせてもらいます」

 

 期待の新人VSムータ基地のエース。降って湧いたかのような対戦カードに見物人が集まる。その中には、先ほどのした先輩達の姿もあった。

 

 「さすがだな。新人でこれだけやれてりゃ、エースだろうな」

 「大尉こそ。だてにエースやってないようですね」

 

 戦闘機による戦闘。相手の裏を取って銃を撃つの繰り返し。その中で、テクニックや作戦というものを多用して敵機を撃墜するかというのが腕の見せ所であった。

 

 興奮したね。あの時は……久しぶりに拮抗する、いや、それ以上だと全身で感じ取った。それほどヴァンス大尉は強かった。俺の攻撃をまるで全部読んでるといわんばかりに全てかすりもせず避けて見せた。それがヴァンス大尉。当時のムータ基地エース。その称号は伊達じゃなかった。

 

 「これでも『教導隊』の候補に挙がったんだぜ」

 「そりゃこれだけの実力だったら、候補に選ばれますって」

 「お前に褒められると、なんとなく嬉しいな。自分でも不思議だが」

 

 こんな会話をしていながらも、2人はお互いにミサイルやバルカンを撃ちまくっている。よく舌をかまないものだ。

 

 「しかし、まぁ、そろそろ終わりにしようか。こっちにはミサイル1発とバルカン2射分しか残ってねぇしな」

 「小官も、ミサイル2発にバルカン1射分しか残っていません」

 「ふっ! 行くぞ!」

 「はい!」

 

 一方の戦闘機は爆散。もう一方は、未だ空を飛んでいる。勝敗はついていた。

 

 「大尉。ずるいですよ。あんな隠し玉」

 「馬鹿正直に俺の言葉を信じたお前が悪い」

 「……その通りと言いたくないのが本音です」

 「ハハハ! そうそれでいい。戦場じゃなにが起こるかわからん。見て、聴いて、感じて覚えろ。それが戦士というものだ。あいにくお前には、才能がある。すぐに俺なんか超えられるさ」

 「はい! 小官は負けず嫌いなので、次は勝たせてもらいます」

 「そうか、いつでもかかって来い!」

 

 士官学校卒業後、はじめてヨウガを負かした相手がヴァンスであった。そして、ヨウガの今を形造った人物の1人。ヴァンスから学んだことは、経験。

 センス・技量を補えるどころか、それらを増幅さえさせる言葉。

 

 当時のヨウガには、一番足りていないものこそが経験であった。ヴァンスは、経験の差でヨウガに勝ったと言ってよかった。

 実は、まだヴァンスの戦闘機にはミサイルが3発。バルカンも5射分ほど残っていた。

 

 ここでヴァンスがヨウガに伝えたかったのは、熱くなりすぎるな。クールに冷静に。特に戦場では、冷静でいることこそが勝利の源。一筋の光に活路を見出す。

 そして、今回の件の反省を促いしていた。やりすぎるなと、じゃないと味方に裏切られるぞと。ヴァンスという男は、間違いなく最高の上司であったに違いない。

 

 あの人はかっこよかった。父さんとは、違う意味で尊敬出来る人だった。俺に社会というものを教えてくれた人の1人。そんな人を脱走者として手配した、ハンス・ヴィーパーには怒りさえ覚えるよ。脱走者になんてなっていなければ今頃、どっかの艦隊で艦長にでもなっていたんじゃないかと思う。というか、最悪、家の権力使って艦長にしてたね。

 

 そう最後の言葉をヨウガは締めた。ジェスは、それを聞いてなんて言ってわからなかった。励ます言葉さえ思いつかなかった。なんせヨウガの恩人を直接手にかけたのは自分だったのだから。

 対して、ヨウガは煙草を吸ってくるとジェスに言って、喫煙所へと向かった。

 

 

 

 

 

 「たくよっ! いつになったら、おめぇという奴は、一人前になってくれるんだ!」

 「すっすいません。もう一度やり直してきます」

 「さっさと終わらせろよ! 俺たちはな、時間との勝負なんだ!」

 「はい! 失礼します」

 

 機体格納庫付近の喫煙所。ヨウガがそこについた時、中では整備長と新人の整備係がいた。どうやら整備長が新人に指導をしているようだった。

 新人は、そういうと喫煙所から逃げるように飛び出していった。

 

 「整備長。ブレッド君、何かやらかしたの?」

 「いやぁな、パーツ換装の見取り図であいつがポカやらかしてたんだよ。一か所だけだったんだが、一か所違えば、パイロットの命に係わるからな。やり直しさせたんだ」

 「なるほどねぇ~。しかし、新人に見取り図を任せるとは、相当にブレッドのことを信じてるんだな」

 「なんというか、あいつはエースなんだよな」

 「整備にもエースなんてものがあるのか?」

 「ああ、もちろんパイロットにもあるように整備係にもエースは存在してるさ」

 「へぇー。詳しく聞きたいな」

 

 2人は煙草をふかしながら話を続ける。

 

 ヨウガは、喫煙室に来る理由がある。自室でも、さっきまでいたパイロット専用の部屋でも煙草は吸えるが自室ではなんか味気ない。パイロット達は自分以外に煙草を吸わないから遠慮してしまう。よって整備士たちや料理人たちなどの裏方の人たちが集まる喫煙室に来るのであった。

 

 「あいつはな、センスの塊なんだな俺が見るに。てのも、整備ってのは頭の中に整備する機体のデータを叩きこまないとできないもんがあるんだなこれが。それで、どんな奴でも5年くらいやれば心臓部の位置を見ればどこにどのパーツが組み込んであるかわかるんだ」

 「凄いな、整備士ってのも」

 「だろう。だが、あいつはな半年でそれをやれるようになったんだ。努力の賜物……違うな、間違いなく天才的なセンスを感じた。だから今のうちにあいつの実力を叩き上げておきたいんだ」

 「いろいろ考えてるんだな、整備長も」

 「そりゃ人並みには考えるさ。これでも整備長だからな!」

 

 煙草を吸い終わる5分間、整備長と話し続けたヨウガは吸い終わるとジェスのいる休憩室へと戻らず、自室へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 「どうしたの? あなたが悩みこむなんて珍しいじゃない」

 「ああ、ミーナか……」

 「たくっ! そんなんで、隊長なんかよく勤まるわね!」

 「そうだな。自分でもそう思ってしまうよ」

 「ふんっ……。それでどうかしたの?」

 

 ヨウガが煙草を吸いに行った後で、入れ違いになるようにミーナが休憩室へとやってきた。そこでミーナが見たのは、いかにも落ち込んでいますと言わんばかりのジェスの姿であった。

 

 「さっきの戦闘でさ、盗まれたゲシュペンストの一機を倒したんだが、どうやらそれに乗っていたのは、ヨウガの恩人らしかったんだ。それでなんか……釈然としなくてな」

 「ふーん。でも、あなたのやったことは間違ってないじゃない。いまいちヨウガの恩人ってのはわからないけど、あなたは軍人で敵を倒すのは当たり前でしょ。そこに悩むところなんて一つもないわ」

 「わかってるさ。俺は正しかったと思う。でも、その殺した相手の過去を聞いてしまったんだ。なんでも、元連邦軍の凄腕パイロット。反連邦軍の下に行ってしまったのも、馬鹿な上司のせいだったらしい。そんなことを聞いてしまうとなんかな……」

 「ねえ、ジェス。私達は、今まで多くの人を殺してきたわ。その中には、同情を禁じ得ない過去を持っていた人たちがたくさんいたはずよ。今頃悩むなんて遅いわよ。私はとっくに乗り越えた。じゃないと心が壊れてしまうもの。だからあなたも忘れた方がいい。きっとヨウガも怒ったりなんかしていないはず、むしろ感謝さえしているかもね。……自分の手で恩人を殺さなくて済んだのだから」

 

 ミーナ・ライクリングは、それだけ言うと休憩室から去って行った。

 

 

 

 

 

 「そんな基地が制圧されたなんて……父は、父さんはどうなったんですか!?」

 「残念ながら……亡くなってしまったようだ……」

 「う、うそだ……父さんは、ここに来ると、すぐに後を追うと……言っていたのに……」

 「私も悲しく思うよ、フィン。彼は、私にとって友人であり、かけがえのない最高の部下だった」

 「一体……誰が、父を殺したんですか!?」

 「詳しくはわからない。だが、こちらの掴んだ情報では、連邦軍のエースチームが今回の作戦に関わっていたようだ」

 「もっと詳しいことはわからないんですか?」

 「うーむ、どうやら『黄色』のゲシュペンストと戦闘していたという情報があるが……その機体にやられたのかはわからない」

 「『黄色』のゲシュペンスト……」

 

 バン・バ・チュン大佐。彼は、反連邦軍のレジスタンスを率いている男だ。そのカリスマ性、聡明性は指揮官としてもかなり優秀な人物である。そんな彼の横には、ヴァンスの息子・フィンの姿があった。

 フィンは、基地を脱出後。無事にバン大佐の下にたどり着いていた。到着後にバン大佐との面会を果たした彼の下に届いた情報は、偉大な父の死というなんとも悲しい報告であった。

 

 「バン大佐……お願いがあります」

 「なんだ、できる限り答えてあげよう」

 「僕を、前線に出させてください。父の仇をとりたいのです」

 「フィン……それは……」

 「僕は、並みの人たちよりうまく機体を操縦できます。それにこの持ってきた『ゲシュペンスト』を操作できるのも、ここには僕ぐらいしかいないでしょう。お願いします。やらせてください」

 「うーむ、その通りなのだが……。わかった。ならば今から2か月後、君を前線に出す。しかし、今から君には、今から『ある人』に会って欲しい」

 「『ある人』……。それは誰ですか?」

 「それは『ビアン・ゾルダーク』。我々のリーダーになる男だ」

 「『ビアン・ゾルダーク』……」

 

 その男は、超が付く天才科学者。そして、地球を愛する男である。そんな男のことをフィンはまだ一切知らずにいた。

 

 そして、2か月後。運命の歯車は回り始める。ヨウガの『ATX』への派遣。フィンの『ディバイン・クルセイダーズ』への加入。

 正史とは違う正史。これもまた神が定めた運命、神は彼らに何をもたらし何を奪うのか……それこそ、神のみぞ知るということに違いなかった。

 

 

 





 少々、飛ばしすぎ感が否めないのですが次回から本編に入ります。
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