スーパーロボット大戦OG ~太陽と花と月~   作:定泰麒

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OG1編
『ATX』起動


 

 「あの『男』、やりますね」

 「そうでなければ、このチームには呼ばんよ」

 「そりゃ、そうですけど」

 「『キョウスケ・ナンブ』、強いのは『悪運』だけじゃなさそうだ」

 「同感です」

 

 地球連邦軍北米支部ラングレー基地。ヨウガの隣いる男こそ、『ATXチーム』の隊長であり、『元教導隊』という経歴を持つ凄腕のパイロット、ゼンガー・ゾンボルト。

 グルンガスト零式という特機を与えられた人物であった。

 

 俺は、ゼンガー少佐とともに新入りのキョウスケ・ナンブ少尉の戦闘を見ていた。射撃の方はそうでもないが、接近戦の腕前は下手したら俺よりも上かも知れない。

 でもまぁゲシュペンスト同士で戦闘するなら負けることはないといった所だ。

 

 「どうやら彼が最後の『ATXチーム』の一員になりそうですね」

 「うむ、俺もそう思っていた。それでは、格納庫へと向かおうか」

 「はい、ボス。いや……オヤブン」

 「ふん、好きに呼べ」

 

 堅物すぎる所があるけれど、時々冗談に乗ってくれるこの男。本当に難儀な人だ。

 

 

 

 

 

 「あら、噂をすれば何とやらね」

 「うむ、何か私のことを話していたのか?」

 「まぁまぁゼンガー少佐。エクセレン少尉がお喋りなのは知っているでしょ。そんなことより、彼と話を……」

 「そうだな。キョウスケ少尉、とりあえず合格と言っておこうか。そこで、お前には『ATX計画』で開発されている試作機のテストパイロットを務めてもらう」

 「やったぁ。ということが彼が最後の『チーム』の一人ということですね~。にしても大尉ひどくないですかぁ!」

 「そういうことになるな」

 「『ATX計画』……?」

 「私の言葉は無視なのね……」

 

 格納庫。先ほどまでいきなり戦闘訓練をさせられたキョウスケとそのパートナーとして選ばれたエクセレンがそこにはいた。

 キョウスケ少尉には悪いと思うが、ゼンガー少佐ってこういう人だからと諦めてほしいものだ。これから一緒のチームでやっていくのだから。

 

 「まぁじゃないと、会話が混沌とかすからな。ハハハ!」

 「ほんとっ、大尉はやりにくいわ~。でも負けませんからね私!」

 「へいへい。それでキョウスケ少尉、『ATXチーム』って言うのは「俺から話そう」……えっ、了解です」

 「ATX計画というのはな、このラングレー基地で進められている強襲用人型機動兵器の開発計画のことだ」

 「……つまり、俺とエクセレン少尉に新型PTの量産試作型が与えられるということですか。ゲシュペンストに代わる」

 「半分は正解だ。他にも、『ATX計画』で預かり、テストを行っている機体がある」

 「そうだ。ゼンガー少佐の乗ってる機体なんて特機でな。しかし、俺もしばらくはゲシュペンストを俺用にカスタマイズしたのに乗っている。というのも、まだ機体が届いてなくてな」

 「なるほど……このプロジェクトはただごとじゃないな。裏の顔がちらほら見え隠れしている気がするんだが……」

 「わお! なかなか鋭いじゃない?」

 「いい勘をしているな、キョウスケ少尉」

 「なんて説明したものか……地球を守るため創設されたぐらいに思っていてもらいたい」

 「そうだな。『ATX』は地球を脅威から守るために作られたが、今の上層部はその危機感が足りない。だからこそ、脅威に対して早急に対処できる者を育成する必要があるのだ」

 

 このキョウスケという男、その人をも射抜くような目と同様に勘の方も鋭いらしい。ざっと来る前の経歴を見てみたが、なんとも今までの上司に恵まれていないことか。連邦軍内でもあまり評判のよくない人物ばかりリストに載っている。

 あれだけ機体を動かせる実力と、これだけの勘を持っていたなら、もっと前に昇格していてもおかしくはなかっただろう。これがキョウスケという男に対する俺の評価だ。

 

 「んで、キョウスケはめでたく最後の1人……つまり5人目に選ばれたわけ」

 「そういうことだ。という訳で歓迎する、キョウスケ・ナンブ少尉」

 「……ありがとうございます。大尉」

 

 

 

 

 

 「15歳でそのパイロットの腕前、お前の父は本当に凄い男だったのだな」

 「ええ、なんでも『教導隊』の候補に挙がったことがあったらしいです」

 「ほうつまりは、同僚であったかもしれないということか」

 

 コロニー統合軍から1人の男が、DCへと出向という形で入隊をしていた。その名前は、テンペスト・ホーカー。『元教導隊』の1人。だが、過去にあった『ホープ事件』という苦い記憶を基に復讐心を磨きに磨いて、ようやくその復讐相手に手が届くところまで来ていた。

 その過程で、彼の下に1人の少年がビアン・ゾルダークから部下として送られてきた。少年の名は、フィン。彼もまた復讐者であった。

 

 「なぜビアン元帥は俺に、お前の世話をしろと?」

 「それは前線への派遣を僕自身が望んだんです」

 「なぜだ? まだ15歳のお前が前線に?」

 「それは、どうしても倒したい相手がいるのです。父を殺したらしき相手が」

 「復讐か……、なるほど。ビアン元帥が俺にお前の世話を任せた理由がわかった。今日はもういい、先ほどの機体実地訓練で疲れただろ。もう下がって寝ろ」

 「はい。失礼します」

 「ああ……」

 

 DC本部に用意されたテンペスト専用の部屋。既に夜の10時を過ぎていた。窓を開け、乾いた部屋の空気を入れ替える。そのまま先日までいた天を見上げた。

 

 「レイラ、アンナ……すまない。もう少し、あと少しだけ待っててくれ、お前らを殺した連邦軍を俺がこの手で!」

 

 

 

 

 

 「フィン君。君のゲシュペンストなんだが、私の方でいじらせてもらうぞ」

 「いいんですか。わざわざ総帥に改造なんかしてもらっても」

 「いい。私は個人的に君を気に入っている。でも、その変わりに君も更に訓練に励まないといかんくなるがな」

 「もちろんです。より一層訓練に励みたいと思います」

 「ふっ。そうだ、フィン。君に特報があるぞ」

 「特報ですか? それは一体?」

 「『黄色』のゲシュペンストを見つけた!」

 「そっそれは本当ですか!? 教えてください、それは今どこに?」

 「『ATX計画』に関わる部隊に所属しているらしい。その小隊は、強者揃い。今の君でもどこまで戦えるかわからん。だから訓練に励め、いずれ指令を出してやろう」

 「はい!!!」

 「うむ、いい返事だ!」

 

 そうしてビアンの部屋から、フィンが出て行った。

 

 ビアンは、フィンという少年に対し期待をしていた。それはフィンという少年から並々ならぬものを感じたからである。パイロットとしての技能だけでなく、その才能全てにだ。

 例えるならば、今は何も書かれていないまっさらな紙。だが、その紙はただの紙じゃない。巨大で巨大で、歩いても歩いても端にたどり着かないほどの紙。だからこそ、そこに何を見て、何を描き、何を完成させるのか。言うならば見えない可能性を感じていたのだ。

 

 「リューネ。どうだ木星の方は?」

 「ああ、それなりだね」

 「そうか、ならばいい」

 「ふーん、だが珍しいね親父の方から電話入れてくるなんてさ」

 「なんとなくな、お前と話がしたくなった」

 「そうかい、じゃあ忙しいから切るよ」

 「ああ、またな」

 「おう!」

 

 ビアン・ゾルダークには娘がいた。リューネと名付けられた女の子である。活発で手が付けられない彼女はお転婆であった。毎日5kgのリストバンドを腕にはめ、筋トレは欠かさない。

 そんな彼女にビアンは、木星へ行くように手配していた。それは、今から自分が起こそうと思っている戦争に巻き込ませないため。未来を娘に託したのだ。

 

 「それでは、さっそく設計図から取り掛かろうとしよう。アードラーを呼んでくれ」

 「はっ!」

 

 部屋の前で守衛をしている兵士に指示をする。ビアンが呼んだアードラーという人物は、科学者という面で見れば極めて優秀な男だが、その野心と思想は愚かなものであった。そんなものなどとうの昔に見切っていたビアンは、もはや駒としてしか彼を見ていなかった。

 

 

 

 

 

 「マリオン博士。例の機体は、どうなっているんですか?」

 「ああ、あなたね。そうね……後は、マオ・インダストリーから動力源を届けてもらえれば完成といった所ね。でも、何時になるかわからないわ。あなたからもマオ・インダストリーに頼むことね」

 「動力源……、プラズマ・ジェネレーターという奴ですか?」

 「そうよ、にしてもなんで今さらあの機体を見直すことになったのかしら。あんなピーキーな機体、それこそあなたのような技量の高い人ぐらいじゃないと無理なのにね」

 「さぁ、あんまり上の考えてることは俺にはわかりません」

 「そうね。私も同意見。それじゃ、邪魔だから出て行って頂戴。これからグレッグ司令の所に行かないといけないの」

 「そうですか、失礼しました」

 「はいはい、じゃあね」

 

 キョウスケ少尉が、ラングレー基地に来て2週間が経った。俺は、自分の機体になる予定の完成度がどの程度まで出来上がっているのが気になり、マリオン博士の下に訪れていた。

 結果は、もうすぐであるということがわかったけれど機体の最も重要なパーツである、動力源が届いていないことが分かった。

 ほんとにマオ社に催促してみるか。

 

 「ああ、ちょうどいい所に!」

 

 俺がラボから自室へと向かう最中に小走り気味でキョロキョロと目を動かしていたエクセレンを見かけた。そして彼女は、俺を見つけると笑顔になり、近づいてきた。

 

 「どうした、エクセレン」

 「ボスが集合をかけたわ。早くいきましょ! 大尉」

 「はいはい、了解です。少尉殿」

 「もう大尉ったら、うふふ!」

 「なんだ、その笑い方は。腕組んでくるな、離れろ離れろ!」

 

 エクセレンは、俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。もちろんそれを外し、2人でブリーフィングルームへと向かった。

 

 「救難信号?」

 「フロリダから飛び立った輸送機がバグス…いや正体不明機から襲撃されたらしい」

 「それは、もしかしてブリットの乗ったT3ですか?」

 「そうだ」

 「ブリット……もう1人のメンバー、ブルックリン・ラックフィールド少尉のことか?」

 「そそ。あの子ったら若いのに鈍くさいとこがあるから……」

 「それは、本人のせいじゃない気もするが」

 

 

 俺がエクセレンとともにブリーフィングルームに着いた時、キョウスケは既に来ていた。

 どうやら今回の任務は、輸送機の救出といったことになりそうだ。ゼンガー少佐は、零式にて出撃。他3人である俺たちは、ゲシュペンストにて出撃になった。

 

 

 

 

 

 「ちっ、覚悟を決めないといけないか!」

 

 白いゲシュペンストは正体不明の敵に襲われていた。しかし、その相手はわかっていたバグズと呼ばれるまるで虫のような形をしたロボットであることを。

 

 「T-LINKリッパー、セット!」

 

 白いゲシュペンストの機体から、手裏剣のような物体2つが飛び出し、白いゲシュペンストを覆うように宙を舞う。

 

 「GO!!」

 

 その機体に乗る男の声とともにバグズへと向けられたT-LINKリッパーは、バグズを切り裂き、爆散させると、また白いゲシュペンストの下に戻って行った。

 

 およそ、6体ほどいるバグス達相手に向け、搭載されたスピリットミサイルや装備しているメガ・ビームライフルを使い戦いを挑むが、弾数や機体の損傷も大きくなり、少々危険な状態であった。

 

 「1機だけじゃそろそろ限界か! 何か手を考えなくては!」

 

 しかし、事態は悪くなるばかり。自分が相手をしている敵の増援が登場し、守るべき対象が襲われ始めた。

 

 「しまった。輸送機が!」

 

 だが、まるでドラマのようにピンチの時にヒーローが現れた。白いゲシュペンストに駆るブリット少尉のチームメイト。

 ゼンガー少佐率いる『ATXチーム』。ようやく、チーム全員がここにそろったのであった。

 

 「グルンガスト零式。見参……!」

 「隙ありっ!!」

 

 もはや他の物など見えていないかの如く、輸送機へと攻撃をする敵へと向かったゼンガーは、彼の機体が装備する斬艦刀を取り出し、敵への追撃をかけた。

 

 「一意専心!!」

 

 大きな斬艦刀を振り上げ、敵へと振るう姿は、まるで日本にいた武士のようであった。

 

 「わお。いきなり切り札を使っちゃう? もう少し、勿体つけたほうがねぇ……」

 「エクセレン……。それがゼンガー少佐だろ」

 「まぁね!」

 

 これがゼンガー・ゾンボルトという男。先手必勝、一撃必殺の精神の持ち主である。

 

 「ゼンガー少佐!」

 「……詰めが甘かったようだな、ブルックリン。斬られる前に斬れ……いつもの教えを忘れたか」

 「す、すみません。敵機の数が多くて……」

 「ほらほら、言い訳はしなぁい。武士は喰わねど片思いってね」

 「こっちも大変だったんです。それにそれを言うなら『片思い』じゃなくて、『鷹容姿』ですよ!」

 「あらん、さすがは日本マニア。結構余裕あるじゃない」

 「お前ら……『高楊枝』な!」

 「え? そうでしたっけ、大尉? それで、もう1機のゲシュペンストは一体?」

 「『ATXチーム』の新メンバー。キョウスケ・ナンブ少尉だ」

 「じゃあ、やっと4人目が?」

 「よろしく頼む、ブルックリン」

 「了解! ブリットで結構です、キョウスケ少尉!」

 「よし、タウゼントフェスラーを援護し、脱出させる。各機ぬかるなよ」

 「わかりました!」「はぁい」「……了解」「了解です」

 

 ここから形勢は逆転した。4機のゲシュペンストを率いて、グルンガスト零式が縦横無尽に戦場を跋扈する。もはや敵に勝ち目などなかった。

 見事に輸送機である、タウゼントフェスラーを守り抜き戦闘空域を脱出させた『ATXチーム』には、安堵感が漂っていた。

 

 「これで、一安心ですね! ゼンガー少佐!」

 「油断するな、ブルックリン。戦いは、まだ終わっていないぞ」

 「えっ」

 

 その声を発した瞬間、また増援が現れた。

 

 (きっと、ゼンガー少佐のグルンガスト零式を調べに来たのだろう。まだ戦場に出て、間もないしなあの機体は)

 

 ヨウガは、直観的にそれを感じた。単に、理由もなく敵が出てくるわけがないと思ったからである。

 

 「ゼンガー少佐。ここは、俺たちに任せ、引いてください」

 「うむ、俺も同じことを思っていた。後はお前らに任せる」

 「えっ!」

 「はぁ!? ちょっとボス! 大尉も! ちゃんと説明してよね!」

 「問答無用! 敵を倒すまで、帰還は許さん。基地に戻るまでが、任務だと思え!」

 

 ゼンガー少佐は、それだけ告げると基地へと戻って行った。もちろん彼も、敵にわざわざデータをやることはないと考えたためであるが、それを言わなかったのは、彼が不器用という理由だけじゃなかったはずだ。

 

 「もぅ、大尉! どういうことよ! 説明してよね!」

 「まぁまぁ、落ち着け。後でゼンガー少佐が教えてくれるだろうよ! 今はとりあえずこいつらを片付けようや!」

 「……チーム初の実地訓練としては手頃か」

 「喋ってる場合じゃなさそうです! 敵が来ます!」

 「さて……やろうか……」

 

 4機のゲシュペンストが動きだした。

 

  

 

 

 

 

 

 

 




今回から、ヨウガ視点の場合一人称で書いていきます。
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