‥‥というわけでスタートです
戦果は実に上乗な結果であった。会見場を通り抜けエルネスタはご機嫌よく通路を歩く。鼻歌を歌いながら一緒についてきている2体の戦闘擬形体を見る。
2mを優に超える丈があり、頑強で重厚な甲冑のようなフォルムをした騎士のような姿をした戦闘擬形体『アルディ』。もう一体は人間の女性と同じ外見をし、しなやかな体系とメタリックのスーツのような装甲で身を包んでいる戦闘擬形体『リムシィ』。先の試合といい今回の試合といい圧倒的な強さを見せることができた。
黒炉の魔剣の少年や沙々宮創一の娘に戦闘艤装を扱う生徒、そしてレヴォルフの…と今年の鳳凰星武祭は油断ならない相手が多々出場はしているがアルディとリムシィが負けるとは微塵に思っていない。
このまま行けば優勝は間違いないだろう…とほくそ笑んだが通路を歩き続けている最中にエルネスタは一気に不機嫌に転じた。なぜならば今視界に入っており、こちらを見ながら古臭い書物を読んでいる男は嫌でも知っているからだ。
「…どうやら順調に勝ち進んでいるではないか」
「…君こそまだくたばってなかったんだね。君の生命力はゴキブリ並みだよ」
眼鏡をかけ鋭く冷たい目をした男は無関心に鼻で笑う。エルネスタはそんな男を強く睨む
「というより今回は何が狙いなの?あと私の邪魔をしないでくれる?」
「ふん、我が貴様に教える道理はないな」
お互い冷たい黒い視線で雰囲気がどす黒くなっている。どういう状況かアルディはあたふたしリムシィはマスターであるエルネスタが蔑まされていると判断しいつでも攻撃できるよう臨戦態勢に入っていた。
「ま、マスター。こ、このお方は…?」
アルディは恐る恐るエルネスタに尋ねる。アルディの方に振り向くエルネスタは笑顔を見せるが内心ではあの男に対して怒りが満ち溢れていた
「あ、この人は毛利直家。≪思想派≫の首席で私のウルム=マナダイトを奪うわ、人のラボを乗っ取るわ、ラボの関係者を暗殺するわで邪魔をしてくれるクソ野郎だよー」
「…つまりマスターの敵ですね?」
リムシィは直家を敵視し銃型の煌式武装を構えた。今にも光弾が放たれそうになるがエルネスタはリムシィを制止させる。
「マスター、なぜ止めるのです!」
「だめだよ、リムシィ。こいつがいる時点で私たちは
何度もこんな目に合えば嫌でもわかる。こいつと会うたびに四方八方から狙いを定められている感覚、逆にこいつを始末しても実は直家の部下か仲間が身代わりとされていた。同じ派閥の仲間も自分の部下でさえ捨て駒にする血も涙もない男だ。
「理解したか。貴様は賢明で助かる」
「じゃあ聞くけど何か用なの?嫌味でも言いに来たのだけなら今度こそ消えてもらうかもしれないから」
直家はくるりと背を向けた。
「なに、ただの下見だ。…一つあるとしたら
直家はそう言って歩き去っていった。
本当に何を企んでいるのかわからない、気に食わない男だ。さっきあいつは
エルネスタは後ろを振り向く。アルディとリムシィが心配そうに見つめている。今は直家を警戒をする場合ではない。この鳳凰星武祭に集中すべきだ。エルネスタは笑顔を見せて嫌な気分を振り払った。
*
入場ゲート前に立つ蓮華・ピエール・アルフォンソは思った。
こんな大規模な大会はいつ以来だろうか。世界各地でケーキやスイーツの大会に出場し何度も優勝しスイーツ界の女王(王者)へと上り詰めたことか。ある時はある国で修行したくて軍隊に入り鍛え、国籍を手に入れて修行もした。危険な目に会いそうになってもいつ時も器具は手を離さなかった。そうやって手に入れた実力だからこそ一つやりたいことができた
星脈世代でも戦うことだけじゃなくても別の力で人の力になれることを証明したいのだ
私にはスイーツを、甘いものを作って人を笑顔にする力がある。だからこそ女性しか入れないこのクインヴェール女学園の理事長に今ある自分の力を見せて入学することができた。そうして一番弟子である恋歌にも会えた。この子にも、そして学園中、多くの人たちに自分の作るもので喜んで欲しいのだ。世界中に笑顔と希望を与えてくれるあの歌姫のように
「シショー?どうしたデスか?」
恋歌はしんみりとしている蓮華に首をかしげた。蓮華は優しく彼女を撫でる
「…大丈夫よ。恋歌、ありがとうね」
「師匠、まだまだこれからデス!!」
はしゃぐ恋歌をみて蓮華は気持ちを切り替えた。
「行くわよ恋歌。勝って、勝ち進んでいくわよ!」
「はいデス!」
二人は入場ゲートを通りステージへ進んでいく。
『それではKブロック第4回戦第6試合の選手の紹介をしていきましょう!まずはクインヴェール女学園から、『スイーツ学科』主席、そして女学園初の男性?である蓮華・ピエール・アルフォンソ選手とその一番弟子の明星恋歌選手だぁ!』
大歓声とともに蓮華と恋歌がステージへ出て観客達に大きく手を振った
「merci !merci beaucoup!」
「みんなー!ありがとデスー!」
『さて、クインヴェール女学園では初の試みといいますか、『アイドル学科』、『ビューティー学科』と『スイーツ学科』と三つの学科に分けて今回出場する『スイーツ学科』ですが、蓮華選手は入学してすぐに序列2位にまで上り詰めたという実力を備わっているようですね!』
『ナナやん、あと蓮華選手の作るスイーツはすごく美味しいと大好評なんよ。あ~うちも食べたいわ~』
『ほ、ほら解説しなくちゃ!えー気を取り直して、明星選手はクインヴェール女学園序列18位で蓮華選手の一番弟子でスイーツ修行の真っ最中だとか成長性も期待大ですね!』
『それではお次は星導館学園の出場選手の紹介にいくで。星導館学園からは序列番外位のイレギュラー、『明鏡止水』と呼ばれ圧倒的な実力を見せた二水神通選手と小さい体で自分の倍のでかさと強大な火力を誇る『戦闘戦艦』を操作する七海清霜選手です!』
~*~
「こんな大歓声の渦の中…武蔵先輩はやっぱりかっこよかったなぁ…」
入場ゲートを通り抜ける前、清霜はつぶやいた。かつて、自分もこの観客席から星武祭を見ていたことを思い出す。自分の身体よりも重く、巨大な砲塔を備わった『戦闘艤装』を背負い奮戦し優勝へと勝ち進んだあの人の雄姿を、背中を見てかっこいいと思って、惚れて、憧れたんだ。
私もあの人のように『戦闘艤装』を背負ってかっこよくなりたいと強くなりたい。そのためにここまで鍛えて頑張った。これからもあの人の背を追い越せるように走っていくんだ
「七海、そろそろ行きましょう」
神通に声をかけられ頷き入場ゲートを通り抜けステージへ。ステージは大歓声の渦の中。清霜は大きく深呼吸をして対戦相手を、ステージを、多くの観戦席を一望する。
実況と解説では自分たちの紹介をしている。私はいつものように、あの人がかつてやっていたかのように片手を大きく掲げ、指をパチンと鳴らす
「出ろおおおおっ!戦艦『ムサシ』ィィィィッ!!」
*
アルルカントの控室にてカミラ・パレートは映像に映っている清霜が纏う『戦闘戦艦』を見つめる。
「あれー?珍しいね、カミラ。『戦闘艤装』には興味なさそうだったのにさー」
控室にエルネスタとアルディとリムシィが戻ってきた。
「遅かったではないか。何かあったのか?」
「まあねー。直家とかいうクソ野郎に出くわしたぐらいかなー」
__そういえばそうだった。あの男もこの鳳凰星武祭に出場していたな。エルネスタをあいつに出くわさせたのは私の不注意だったが、今はそれはどうでもいい。__
「マスター、テレビに映っているのは『戦闘戦艦』というやつでは?」
「そうだよ、アルディ。リムシィの武装のモデルにしたやつさ」
「『戦闘戦艦』ですか…一世代前の旧式武装、時代遅れの武装と聞きますが」
「リムシィ。油断はするな」
カミラはリムシィの方に顔を向けた。
「…人の技術というものは常に進歩する。かつて人間が戦争に造った『戦艦』もその一つだ。ある戦艦では原子力爆弾に直撃しても沈むことはなかったという伝説もある。それほど人間の技術は恐ろしいものさ。『戦闘戦艦』もそうさ、3年前に火薬と旧式の艤装自身のパワーと己の力で優勝した人がいる」
「ほんとに珍しいねー。否定的なカミラがそこまで称賛するなんてさー」
「ふん、私が認めていないのは沙々宮創一であって人の技術の進歩ではない。…さて、あの子は何を見せてくれのかな…」
*
清霜は自分の倍の大きさの戦闘戦艦『ムサシ』を装備しドヤ顔で腕を組む。それを見ていた蓮華は大きく拍手をしてた
「tres bien!とっても素晴らしいわ!最高のパフォーマンスね!」
「師匠、これは負けていられないデス!」
恋歌はすでに自分の身長よりも長さの片鎌槍型の煌式武装を展開していた。彼女の鎌槍には車の排気装置、マフラーのようなものとメーターが付いている。
「七海から聞きました。是非ともあなたのケーキを食べたいです」
「あら、ありがとう。それじゃあ試合が終わったら一緒にお茶でもどう?」
神通はにこりと笑顔で頷き、二対の小太刀型の煌式武装を展開して身構える。さきほどのおっとりした雰囲気が変わり真剣な眼差しで蓮華を見る
「それでは…参ります」
「うふふ、それじゃあこちらも準備しなくちゃね」
蓮華は笑って答えると懐からメタルグリーンのトゲトゲした球体を取り出して掲げた。
「装甲開始!」
そう叫ぶと球体は光だし蓮華はメタルグリーンのトゲトゲした鎧兜を纏い、二対の刺々しいブレードを持ち構えた。その姿は完全武装なスパルタンの戦士のようだ。
「さあ始めますわよ!ヴァイオレンスとデンジャラスのパジェントを!」
『≪鳳凰星武祭≫Kブロック4回戦6組 試合開始!』
観客も実況も映像を見ていた人たちも『乙女』じゃなくて『漢女』だこれ!というツッコミを入れたと同時に試合は始まった。
「94式45口径46cm連装砲、放て!!」
艤装の主砲、3連装砲が蓮華達に照準を合わせ雷を帯びた光弾を何発も放った。蓮華達は二手に分かれ光弾を躱していく。蓮華の目の前に神通が迫っていた。
「あら、私のお相手は貴女なのね」
「お手前拝見致します」
神通の小太刀が素早く振るわれるが、蓮華も同じ速さで振るう。何度も何度も金属がぶつかるような音とともに火花が散る。鍔迫り合いに持ち込んだとき神通は苦笑いして蓮華を見つめる
「…想像以上のパワーですね」
「当たり前よ。こちとら軍隊にも入ったり、戦闘もしたりで何年修行したと思って!」
蓮華は力いっぱいにブレードで叩き込む。力に押された神通は後へ押されるが怯むことなく相手を見る。ふと蓮華めがけて清霜が放った光弾が飛んできた。しかし、蓮華はその方を見ることなくブレードで光弾を叩き切った。神通はその様子に少々驚きを見せた。
「いったでしょ?鍛えているって。それともう一つ、あなたは誤算をしたようね」
「誤算…ですか?」
蓮華は首をくいっと動かし後ろの方を指す。清霜と恋歌が戦っているのが見える。
「戦艦ガールを私ではなくあの子に相手をさしたことよ。」
「てぇぇぇいっ!!」
清霜は何度も主砲を放つ。だが恋歌に当たることなく光弾は躱される。
「ほら、隙だらけデス!」
恋歌はマフラーから激しく煙を排出する鎌槍を清霜めがけて薙いだ。清霜は艤装でその刃を防ぐ。火花が激しく散るが、船体に傷は一つもつかなかった。恋歌は何度も振るうが船体に火花が散るだけで傷はついてはいない。
「ぬぬぬ、やっぱり傷はつかないデスね…」
「へへーんだ!私の『ムサシ』は頑丈なのさ!今度はこっちの番だ!」
「…でも、足止めには成功したデス」
恋歌は鎌槍の石突を床に突く。すると清霜の足下に緑の光の円陣が発生したと思いきや突然右側の艤装が重くなりガタンと床へ着く。
「え!?」
今度は左側も重くなり床に着く。そして背中の艤装も重くなり清霜は前のめりに倒れる。
「お…重い!?」
『七海選手、急に艤装を持ち上げることができなくなった!?一体どうしたのでしょうか!?』
「理解したデスか?私の能力は『比重』を操作するデス。清霜ちゃんの艤装の比重を大きくさせ持てないほどの重さをかけたのデスよ」
そして、と清霜の目の前に鎌を向ける
「そして、この鎌槍『イ狩リ魔』で刈り取る。そんな算段デス」
「くぅ…っ」
清霜は悔しさで顔を上げようとしても艤装の重さがのしかかり集中ができない。
「師匠!こっちは完璧デス!」
「OKよ、恋歌!校章の破壊は後でもできるからまず先に『明鏡止水』を倒すわよ!」
了解デス!と恋歌は神通めがけて駆け出す。その様子を清霜はのしかかる重さに腕を震わせながら悔しそうに見る
「わ、私はまだ…まだ…」
刺々しくてゴツゴツなパワー系は好きです。
デスデスも好きです
おかまキャラも好きです
おかまキャラ=強キャラのイメージがあります
最近はクレヨンしんちゃんのおかまキャラも見れなくなって寂しいですね
DVDでも借りて見よう