…それではスタートです
亨介は呆れていた。本戦に出場しても尚、戦闘に参加せず高みの見物として寛いでいるサザンに対してではなく、本戦一回目の対戦相手に呆れていた。
「観念しろ凶暴星!貴様の暴虐無謀もここまでだ!我こそは『五車星』がひとり、風のヒューイ!」
「同じく、『五車星』がひとり、炎のシュレン!我ら兄弟星がお前たちを討ち取ってやろう!」
青いのと赤いのがどや顔でポージングしているんだけど、俺に言われても困るし…。
「いやあの、お笑いコンビか何かで?」
「さあ行くぞ!我が『蒼星風仁拳』は風を切り裂く神速の拳!」
「同じく我が『紅星炎燐拳』は全てを焼き尽くす灼熱の拳!」
「「覚悟おおおっ!!」」
いや、正面から来るのはいいんだけどさ、…隙だらけなんですけど…
亨介は二人の拳をひらりとかわし、デッキブラシでヒューイを殴り飛ばし、そのままシュレンの校章を破壊する。そしてトドメにもう一度ヒューイを殴り飛ばした
「アベシッ!」
「ヒューイィィィっ!?なぜに二回も!?」
「いや…なんとなく?」
…本戦一回戦は勝ったんだけど、なんだろうか。俺と闘う拳法家って碌なのがいねぇ…
~*~
「…って、さっきから拳法家としか戦ってねえんだけど!?」
「はわわっ!?」
先ほどの試合を振り返って亨介は自分に対してツッコミを入れた。突然のことだったので隣にいた綺凛はびっくりしていた。いやまあ、ピックアップ(?)されていはいないけど、他にもアルルカントとかレヴォルフとか剣士とか科学者っぽいのとも戦ったけど、拳法家としか戦った記憶しかねえ…
「きょーすけ、今日から拳法家殺しと名付けよう」
「紗夜、やめて。どっかのハート様じゃないんだから…あれ?ユリス、その子誰?」
亨介はふと気づけば猫耳のようなカチューシャをつけた可愛らしい小さなメイドがいた。
「あい!初めましてです!フローラと申します!」
フローラは元気よくぺこりとお辞儀をした。どうやら考えに耽ってしまって彼女がいたことに気づいていなかったようだ。フローラはユリスの兄に頼まれて一人でここまできたとのことである。あれ?そういえばサザンのやつ珍しく黙っているけど…
「帝王にメイド…アリだな」
「「やめて」」
またしても帝王のつぶやきは紗夜とユリスに止められてしまった。
「…で、話を戻すが。フローラ、お前の孤児院の皆を助けたいという願いだが安心しろ。お前が入学する頃には私がお前の願いを全て達成している」
フローラははっとしたようにユリスを見る。ユリスは優しくフローラに微笑む
「最後に会った時にも言ったはずだぞ?すべての≪星武祭≫を制して、お前たちを助け、あの国を変えてみせるとな。…それとも私はそんなに信用ならないか?」
「そ、そんなことないです!」
「うむ、ならばよし」
ユリスは満足そうに頷くとフローラの頭を優しく撫でた
「ふむ、さすがはリースフェルト。目標が高い大きい…でもそうは問屋は下ろさない」
紗夜は感心したように頷く
「少なくとも≪鳳凰星武祭≫は私たちが勝たせてもらう。だな、綺凛」
「ふぇえ!?あ、ええっと…その、はい!」
突然ふられたので綺凛はあわふたとしていたが意を決して答えた
「わ、私も負けないです!譲れない願いがありますから!」
そんなやりとりを見ていたフローラは目を輝かせた
「おおー、沙々宮様と刀藤様は、姫様のライバルなんですね!」
「「ライバル?」」
ユリスと紗夜は複雑な表情で顔をしばらく見合わせていたが、そっと綾斗の方へ顔を向ける
「え?な、なにが?」
思わず後ずさる綾斗を二人はじっと見つめたまま、誰とはなしにつぶやく
「_確かに、まあ」
「?」
何のことか綾斗にはさっぱりの様子であり、同じくフローラもきょとんとしていた
「( ^ω^)」
「亨介、変ににやけるな。それはともかk(ry)」
「フハハハハ!ライバルとな!ライバルとて結局はこの帝王が優勝するのだからな!」
「…そうだった。こいつがいた…」
ユリスはため息をついて額に手を当てた。
~*~
茨木斐人は不機嫌なようすで入場ゲートまで歩んでいた。
「…ちっ、どう転んでも結局はあの野郎の一人勝か…」
「何を憂いておる、我が従者よ。魂の悲鳴を上げていては己のカルマが抜けてしまっておるぞ!」
「…ため息をついても腑抜けることはねえよ」
ドヤ顔で聞いてくる柚葉に斐人は彼女の頭を撫でる。_ここまで来たのだが、どうあがいてもディクルには一泡ふかすことはできないかもしれない…。天霧に勝ってしまったら奴の企み通りに、俺が負けてしまったら俺の願いはかなうことができなくなる。本当に皮肉な話だ…_
「…我が従者よ…あ、あの、斐人。私は…」
「柚葉、それ以上言うな。お前に取り憑いている呪い、絶対に俺が解いてやる。」
心配そうに見ていた柚葉を諭すように斐人はそのままステージへ進んでいく。そんな様子を見た柚葉は気を持って張り切りる
「…うむ!では行こう!不死鳥の宴、我らが頂きへ上り詰めようぞ!」
「…綾斗、来たぞ。」
ユリスの一言に綾斗は無言でうなずく。シリウスドームにて本戦6回戦にて、綾斗とユリスの対戦相手であるレヴォルフの生徒、茨木斐人と冥道柚葉がステージへ出てきた。
「レヴォルフに入学してたったひと月で序列4位になった『剣戟男爵≪ナイト・バロン≫』と呼ばれている茨木斐人と序列5位の『刹那の夜天≪イン・ディス・モーメント≫』の冥道柚葉。どちらも詳細データがあまりなかったが油断はするな」
「うん、大丈夫。…ただ、5分もつかどうか難しいかもね」
今回戦う相手は詳細データがなく、亨介とサザン同様に初めて戦う相手である。彼らのこれまでの試合の映像でも主に斐人が前線で戦っているものしかなかった。だからこそ、苦戦は強いられるかもしれないのである。
綾斗は星辰力を高める。体の奥底から力が漲り、綾斗を縛る縛鎖が軋む。
「__内なる剣を以って星牢を破獄し、我が虎威を解放す!」
やがて高まった圧力がそれを弾き飛ばし、同時に膨大な星辰力が噴き上がる。そして黒い純星煌式武装、『黒炉の魔剣』を握る。その様子を見ていた柚葉は嬉しそうに拍手をした
「うむ!黒滅の騎士よ!そなたも我と同様、暗黒を操りし者か。我も闇が滾ってきたわ!」
「えーと…」
「お前のパフォーマンスを褒めてんだ。」
柚葉の言葉に戸惑っていた綾斗に斐人は補足してやった。斐人はすでに円錐型のランスを構えている。
「さあ、てめえの純星煌式武装を頂くぞ」
「生憎、負けるわけにはいかないんでね」
『さあ両方準備万全のようです!この試合勝つのは天霧選手のペアか、またはた茨木選手のペアか!?それでは試合開始です!』
『≪鳳凰星武祭≫本戦5回戦第8試合 試合開始!』
まず最初に動いたのは柚葉だった。彼女が星辰力を高めると足元から黒い沼のようものが広がってきた。
「さあ出でよ、死の沼から這いよりし地獄の亡者よ!抗う愚か者を闇へ誘え!『
柚葉が展開した黒い沼から黒い骸骨が湧き出てきた。ゾンビのように呻きながら綾斗めがけて襲い掛かる
「私がいることを忘れるな!__咲き誇れ、
ユリスは青白い炎の槍を飛ばして黒い骸骨を破壊していく。綾斗は残りの骸骨を斬り倒し、待ち構えている斐人へ駆ける。
「天霧辰明流、中伝『九牙太刀』!」
途中、星辰力を高め猛スピードで斐人に迫り連続の斬撃を放った。だが、斐人は赤いオーラを出して綾斗の連撃を防ぐ。
「…どいつもこいつも必殺技を叫びやがって…」
「まあそれは仕方ないよ…」
綾斗は気が付いた。『黒炉の魔剣』を鍔迫り合いで防いだのは斐人が初めてだった。この魔剣は強力な力をもつ純星煌式武装。並大抵の煌式武装は破壊される。斐人のランスは火花を散らしながら回転している。
「なるほど、ランスというよりかはドリルのようだ」
「ふん、勝手に言ってろ!」
斐人のランスが回転を速める。火花がより激しく散る。
「綾斗!下がれ!_咲き誇れ、
ユリスは9つの火球を斐人めがけて飛ばし、綾斗は合図とともに下がる。
「させぬぞ!暗黒を飛び交う夜叉よ、闇夜に怯える愚者を攫え!『
柚葉の展開した黒い沼から黒い赤ちゃん人形が出現し飛び交いだした。それらはユリスが放った飛び交う炎とぶつかり相殺していく。残りの人形はユリスに向かって飛んでくる。
「天霧辰明中伝、『矢汰烏』!」
綾斗はユリスの前に立ち、飛んできた人形を全て斬り落とした。
「ユリス、大丈夫かい?」
「すまない、少し油断した。…柚葉のあの能力、あれは気を付けろ」
二人はドヤ顔で胸を張る柚葉を見た。彼女の足下は黒い沼のようなものが広がっている。彼女の能力はいまだ不明。手の内は読めない
「…だが、綾斗の時間稼ぎのおかげで仕掛けることはできた」
ユリスは星辰力を高めた。すると柚葉の足下、黒い沼を取り囲むように大きな赤い円陣が展開された。斐人はこれが一体何なのか気づいた
「!?これはイレーネの時のか!?退け、柚葉!」
「もう遅い!_咲き誇れ、
ユリスの合図とともに柚葉の足下から大きな爆炎と爆発が巻き上がった。この技はユリスの設置型の魔法の中でも高威力の技である。ただ高威力な反面、設置までの時間がかかるのが難点である。そのため、今回は早めに設置を行い先に柚葉を倒そうという作戦であった。
「よし、これなら立っていられまい」
ユリスは自信満々にうなずいた時だった
ガオンッ!!
綾斗はあの爆炎の中、妙な音を聞いた。その音は今まで一度も聞いたことがない音だった。すると爆炎が掻き消え、そこには無傷の柚葉と彼女の前に斐人が立っていた。
「な!?今の技で無傷だと!?」
「…ユリス、違うと思う。もしかしたら柚葉は無傷じゃなくて爆炎が当たらなかったんだ」
「当たらなかった?彼女の能力はそのような物はなかったはず…!まさか、斐人の方か!」
ユリスは斐人の方を見る。斐人は柚葉に怪我はないかと確認すると綾斗達の方を強く睨み付けた。
「…戦略だからこそあまり咎めねぇ。だが、柚葉を危険な目に会わすのは気に食わねぇな!」
斐人が赤いオーラを出してドリルのように回転しているランスを振った。
ガオンッ!
また、奇妙な音がした時だった。気が付けば綾斗とユリスの目の前に斐人がいた。
「「な…っ!?」」
二人は一瞬の出来事に驚愕した。斐人は星辰力を高め、ユリスを蹴とばし、綾斗にランスを振り下ろす
「くぅっ…」
とっさに防ぐが弾き飛ばされる。すぐに体勢を立て直し構えた
「今のは…?」
「瞬間移動かと思っていたが、違ったようだ。あいつが私たちの目の前に一瞬で迫ったんじゃない。私たちがあいつの目の前に来たんだ」
さっきまで離れて距離を取っていたのに斐人が何かをして距離を一瞬で引き寄せられたということになる。そんなことができるのはまるでその距離を一瞬で消したような…
「…っ!」
「綾斗!?」
『おおっと!?天霧選手、一体どうしたのでしょうか!?まだ5分も経過していないのによろめきだした!』
よろめきそうになりながらも自分に喝を入れて持ち直した。
「大丈夫か、綾斗」
「うん、なんとか…けど斐人のあのランス、もしかしたら結構やばいかもしれないよ」
もし、推測通りだとしたら…苦戦どころか下手をしたら負ける可能性もある。
「…どうやら気づいたようだな。この純星煌式武装『
ヴァニラさんのクリームよりザ・ハンドの方が近いです
厨二病の台詞って難しいね
今回、柚葉の「イン・ディス・モーメント」と技名はアメリカのへヴィメタルロックバンドの名前と曲名がモデルとなっております。
見た目はセクシー(?)かつヴィジュアル系かもしれませんが曲は自分的には好きです