翡翠色のアスタリスク   作:サバ缶みそ味

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 大艦巨砲主義万歳\(^o^)/!!大艦巨砲主義万歳!!\(^o^)/

…それではスタートです


暴虐と切り札と時々誘拐

「今日の試合はレヴォルフの戦バカの試合だったな…」

 

 買い物をすましたイレーネは帰路の途中に思い出した。義弘という男は一度しか見たことがないが、あの戦闘狂は一目見ただけでも忘れはしない。あれほど恐ろしい奴はディクルの次ぐらいだろう

 

「…ったく、ディクルの野郎…奥の手まで使いやがって…」

 

 ため息をついたイレーネは妹のプリシラが待つ寮へと戻る。しかし、ドアに手を触れようとしたときピタリとその手を止めた。

 

 __何かが違う…__

 

 彼女の脳裏に違和感が通る。恐る恐るドアを握り開ける。プリシラはいつも私が出かけているときはカギを開けて帰りを待ってくれている。だからいつものようにカギは開いていたのだが…なにかが違う…そうだこの臭い…血?

 

 イレーネは急いでリビングへ駆ける。そして窓ガラスが割られ、誰かと争ったのか椅子とテーブルは壊され、床や壁に傷跡があり‥‥血痕があった

 

「‥‥プリシラっ!?」

 

 迂闊だった。ディクルからお咎めがなかったから斐人の警告をそこまで気にしていなかった…!

 

「ちくしょう…!プリシラ、今助けてやるからな!」

 

 窓から飛び出して、イレーネは駆ける。血の匂い…妹が唯一残してくれた手がかりをたどっていった。

 

 

「…ん?」

 

【シン、どうかしましたか?】

 

 シリウスドームから離れた場所でも屋台は立ち並んでおり、その中を歩いていた屋台の料理を満喫しているシンとアレックスはふと足を止めた。アレックスはプラカードを出してシンに話しかける

 

「…あれはイレーネの妹のプリシラちゃんだな…」

 

【誰かに背負われているようですが、どうしたんでしょうね?】

 

「しかも背負っている奴を囲むように大勢の人が周りにいるな。気配からして物騒な連中だが、まさかな‥‥」

 

 

~*~

 

「いくぞおおおっ!!」

 

 鬼迫とともに義弘は駆ける。それを迎え撃つように神通は小太刀を守りの構えに変えた。義弘の力一杯に振り下ろす刀を受け止めた

 

「…っ!?」

 

 振動がずしりと重く腕に響く。一撃一撃が重い。だが、そんなことで負けるつもりはない。神通は一瞬で義弘の後ろへ回り込み小太刀を振るう

 

「ほお、なかなかじゃのう!」

 

 義弘はぐるりとこちらに向きを変え、小太刀の突きを逸らす。小太刀の切っ先は校章にあたらず義弘の防具を掠める。神通はその攻撃を止めず攻め続けた。右へ左への袈裟切り、下段、上段からの切り上げ、切り下げ、横薙ぎ、正面突きと目にも止まらぬ剣閃の連撃が炸裂する。観客もギャラリーもその速さは見えなかったがただ一人、目の前にいる義弘だけは楽しみながらその攻撃をすべて防いでいた。

 

「…さすがは『鬼』ですね」

 

「はっはっは!さすがは準々決勝。ここまで進めばこげな面白か相手と一手できるとはのう!」

 

 押されている。これまでひとつも焦りをみせなかった神通が少し焦っているのが見えた

 

「神通先輩!…45口径46cm砲!ファイアッ!!」

 

 主砲の照準を義弘に合わせ砲撃を放った。義弘と鍔迫り合いをしていた神通は素早く下がる。それと同時に義弘の目の前に稲妻を帯びた光弾が迫る。義弘が気づいたが一足遅く、その光弾が直撃し爆発した。

 

「よしっ!」

 

 狙い通りあてることができた。そう喜んでいるのもつかの間であった。土煙が消えるとそこには義弘が傷一つなくぴんぴんしていた。多少服が焦げた煙を燻し出しているがそんなことは気にしていないようだ

 

「ほほう…おまんも思った以上やるのう…!」

 

「うそ!?傷一つないなんて…っ」

 

 義弘は狙いを神通から清霜に変えて駆け出した。

 

「…っ!『三式弾』、装填用意!」

 

 清霜はすぐさま三式弾を装填し打ち上げた。雨のように赤い光弾が落ちていく。しかし清霜は更に驚愕した

 

「ははははは!!これは滾るのう!!」

 

 義弘は怯むどころか大喜びしスピードを速める。避けているのか、直撃してもびくともしないのか…その様は戦闘本能がむき出しの獣、いや鬼のようだ。

 

「チェストオオオッ!!」

 

 義弘は怒号と共に刀を横へ振り下ろす。気迫に押され砲撃すらままならなずとっさに艤装で防いだ。義弘の一撃は重く、強烈な一撃だった。艤装を通して、横腹からミシミシと振動と痛みが伝わる。そして気付いた。体が艤装が横へどんどん動いている

 

「オオオオオッ!!」

 

 義弘の怒号はさらに強まり、そして清霜を艤装ごと吹っ飛ばす。

 

「ああああっ!?」

 

『七海選手、吹っ飛んだぁぁ!誰一人として傷もつけることができなかった要塞のような『戦闘戦艦』をふっ飛ばした!』

『剛毅選手のバカ力ッスね…』

 

 清霜はすぐ起き上がる。艤装の横がへこんでいた。義弘の刀は鞘で閉じられているが、もし刃むき出しの刀でくらっていたら間違いなくやられていたのかもしれない。義弘は更に迫り、刀を振り下ろす。

 

「させません…っ!」

 

 神通が清霜の前に立ち、義弘の一撃を防いだ。

 

「そうでなくてはな!」

 

 義弘は喜び、刀を振るう。神通がその攻撃を躱して反撃する時だった、義弘の視界から彼女の姿が消える。気が付いた時には義弘の目の前に小太刀の刃が迫っていた

 

「!?」

 

 義弘はとっさに躱す。今度は背後から神通が斬りかかってきているのが見えた。ぐるりと刀を薙ぐが空を切った。その時横から斬りかかられ義弘は驚く

 

「はっはっは!すんげえ速いのう!それが『明鏡止水』か?」

 

「周りがそう呼んでいるのですからそうなんでしょうね…私には『技名』なんてありませんがこれぐらいの『業』ならあります…」

 

 さらにスピードを速め義弘に斬りかかる。右へ、左後ろへ、前へ、後ろ右斜めへと駆け義弘に斬りかかる。もはや義弘も縦横無尽に駆ける神通の姿を捉えることができなかった。それでも目の前でやっと刃を捉えるので刺さる、斬られる寸前のところで躱す。義弘の服や体に切り傷が増える

 

「そこです!」

 

 狙いを定めたのか神通が義弘の目の前から小太刀の突きを放った。だが義弘は後ろへ大きく下がる

 

「その業では俺を倒せんぞ!」

 

 義弘はそんな彼女を笑って挑発する。しかし、彼女の顔はにっこりとしていた

 

「…油断しましたね。次発装填済みです」

 

 義弘ははっとして神通の後ろの向こうの先を見据えた。清霜が主砲をこちらに向けていた

 

「行きます!『91式徹甲弾』、ファイア!!」

 

 稲妻を帯びた主砲から円錐型の白い光弾が放たれた。その光弾が凄まじい回転をしながら義弘に直撃し吹っ飛ばした。

 

「まだまだ!主砲、副砲、全弾一斉掃射!!」

 

 主砲と副砲は吹っ飛ばされた義弘に照準を合わせ、一斉に砲撃を放つ。光弾やビームが義弘に全て直撃し爆発絵を巻き起こす。砲塔がオーバーヒートし、砲撃を終えた。二人は巻き上がる煙の先を見据える。その先には義弘が無言で俯いたまま立っていた。

 

「こんなにも打ち込んで立っていられるなんて…」

「まだ意識消失はしていないようですね…トドメを打ちます!」

 

 神通は一瞬に義弘に迫り、校章に狙いを定めて小太刀で斬ろうとした時だった。がしりと腕を掴まれた。義弘はにやりと不敵に笑う

 

「‥‥捕まえた」

 

「しまっ‥‥」

 

「チェストオオッ!!」

 

 義弘のボディブローが炸裂する。ミシミシと全身の骨に、体に激痛が走る。よろめく神通に追い打ちをかけるように鞘紐で締まった鞘付きの刀でフルスイングをし清霜の下まで吹っ飛ばす

 

「神通先輩!?」

 

「うぐっ…」

 

 清霜は急いで神通をさする。そして義弘の方へ睨む

 

「俺を倒しきれんから校章を狙う…よくある手じゃ。さて…お返しとして蹂躙しちゃろう!」

 

 義弘はゆっくりと歩み寄っていく。まだ神通は起き上がることができない。清霜は震える体を押さえる。この義弘という男は鬼のように怖い。でも…いま動けるのは自分しかいない。

 

「…私が…私が守るんだ」

 

「ん?弾がもうない艤装で接近戦か?その手はあるがそげな手では俺を倒せんぞ?」

 

「…あと1発だけ。あと1発、お前を倒せる手がある!『ムサシ』、形態変化!!」

 

 艤装が清霜から離れ、左右の艤装が合体し大きな砲台に変形した船首に砲塔があり、そこから光が集束していく

 

「…エネルギー充填、80%…」

 

「はっはっは!面白か!俺を倒せるなら待ってやろう!」

 

「…エネルギー充填、90%」

 

 義弘は声高く笑い仁王立ちして待っていた

 

「…エネルギー充填、100%…」

 

「おお!来たか!さあ、放ってみい!」

 

「‥‥エネルギー充填、110%」

 

「んん!?」

 

 ふつうは100%で砲撃が可能のハズ。なぜ100%を通り越して充填を続けるのか…まさかはったりで神通がその隙に寝首を掻くか…義弘は警戒して神通を見る。だが、神通は清霜の後ろにいて心配そうに清霜を見ていた

 

「七海!?今の状態でそれを放ったら…あなたの艤装は…!」

 

「いいんです!これで倒せるなら…先輩を守れるなら!!」

 

 清霜は義弘を睨んでいるが体が震えている。のしかかる恐怖に勇敢に立ち向かう姿に義弘は満足したようににやりとする。船首の砲塔に集束していた光が物凄い輝きを放つ

 

「…疑ってすまん!さあ俺を倒せる一撃を撃ってこいや!!」

 

「エネルギー充填、120%!!『波動砲』、ファイアアアッ!!」

 

 そして、光を集束した大きな閃光が放たれた。義弘を包むように閃光が通り過ぎ、会場は眩しい光に包まれた

 

『も、ものすごい光です!?こ、これは会場は大丈夫なんですか!?」

 

 光がやっと消えて状況が見えてきた。波動砲を放ち終わった艤装はあちこちショートを起こし、一部分が焦げていた。清霜の元へ戻るとがたりと落ちた。どうやら大破をしているようだ。そして、床は大きな焦げ跡を残し、黒い煙が巻き上がっている

 

「…すいません、大破しちゃいました」

 

 清霜はぺたりと座り込んむ。その様子に神通は苦笑いしながらも微笑む

 

「…ほんとうに武蔵先輩みたいに無茶をするんだから…」

 

「えへへ…ごめんなさい。これで私たちの…」

 

 清霜は波動砲を放った先を見た途端、彼女の顔から笑顔が消えた。煙が消えたその先には義弘が仁王立ちしたままだった。校章も破壊されておらず、身体はプスプスと焦げた煙をだしている

 

「…うそでしょ…倒しきれなかった…」

 

「…見事な一撃だった。…だが俺を倒しきれんかったのう…」

 

 嬉しそうにうなずく義弘は刀を持ってゆっくりと歩み寄る。

 

「‥‥」

「七海…」

 

 切り札である波動砲ですらびくともしなかった。清霜は静かに拳を握りしめていた。だが、大破した艤装を身に着けて立ち上がる

 

「…それでも私はあきらめない!」

「…そうね、それでは援護お願いします!」

 

 小太刀を再び構えなおして神通は駆ける。そのあとを追いかけるように艤装をアームに変形させて清霜も駆けていく。

 

「さあ、こいや!!」

 

___会場は更に盛り上がる。…そして、試合は終了した___

 

 

 

「…清霜もよく頑張った」

 

 体にあちこち包帯や絆創膏が付いている紗夜は同じく包帯や絆創膏がついた清霜を撫でる。紗夜と綺凛の二人も試合は優勢であったがリムシィとアルディの奥の手である合体で形勢が逆転され負けてしまったのだった。

 

「……」

 

「お前の『波動砲』を見た。とってもかっこよかったぞ。素敵な後輩を持って私はうれしい」

 

「紗…ざよ゛ぜんばぁぁぁぁい゛っ!!」

 

 ぷっつんと我慢の糸が切れて清霜は紗夜に抱き着いて大泣きしだした

 

「ごわ゛がっだ!ごわ゛がっだよおおおっ!!」

「よしよし…」

 

 抱き着いて大泣きしている後輩を紗夜は優しく撫でる。

 

「神通先輩、大丈夫ですか…?」

「私は大丈夫よ。…綺凛ちゃんの方も大丈夫?」

 

 神通は心配していた。一番大きいダメージを受けたのは綺凛である。一件ヘッチャラのように見えているが、体に大きな痛手を負っているのが見えていた

 

「…アルルカントの二組も強かったんですが…あの鬼義弘も強敵ですね」

 

 波動砲すら受けても大きなダメージを負っていなかった。リムシィとアルディだけじゃない、あの強敵に亨介先輩と綾斗先輩たちはどう戦うのか…

 

~*~

 

「ふははは!ついに敵は綾斗達だけのようだな!」

「いやいや、まだたくさんいるからな!?」

 

 亨介は外の屋台で食べ歩きしていたサザンを連れて控室に向かっていた。綾斗達は界龍の双子との試合は勝利し、すでに綾斗達が控室に行って紗夜達の見舞いをしている。

 

「まさかあいつらが負けるなんてな…」

 

 リムシィとアルディ、そして剛毅義弘。明日の準々決勝に勝利し、準決勝に進めばどちらかにあたる。はたして勝てるのだろうか…亨介に一抹の不安がよぎる

 

「ふっ、奴らはお前に任すぞ?」

「お前、ほんと呑気だな!!」

 

 こっちが真剣に考えてんのにこいつときたら‥‥ん?携帯端末から電話だ

 

『亨介!すぐに来てくれ!』

 

 電話は綾斗からだ。だが様子がおかしい、なにか焦っているようだ

 

「フハハハ!綾斗、どうした?トイレの紙がなくなったか?」

 

「お前は黙って。綾斗どうした?」

 

『ごめん、一大事なんだ!』

 

~*~

 

「はあ!?フローラが誘拐された!?」

 

 控室にはクローディアも来ていて事態は深刻な状況であるのが伝わる。綾斗が言うにはユリスの大事なメイドであるフローラを誘拐し、助けたくば『黒炉の魔剣』を緊急凍結処理をしろとのことであった。

 

「くそっ…!!」

 

 ユリスが悔しそうに机をたたく。

 

「ユリス、落ち着いてください。相手の狙いは綾斗です。貴女が狼狽えていては相手の思う壺です」

「クローディア…」

「まずは状況を分析し、どうすればいいか考えるのが先です」

 

 狙いは『黒炉の魔剣』。フローラを餌にして綾斗の手を封じ込めようという算段か…

 

「ん?待てよ…狙いは『黒炉の魔剣』ってことは…それを手に入れるチャンスを伺っている野郎がクロじゃね?」

 

「‥‥まさか、『悪辣の王(タイラント)』!」

 

「…合体怪獣?」

「うん。サザンは黙ってくださいな」

 

 クローディアに一蹴されサザンはしょんぼりする。

 

「ですが、『悪辣の王』なら自分が関わっている証拠は残さない。その線から追うのは無駄でしょう…。ここまでのことをするならば、動いているのはレヴォルフの諜報工作機関、『黒猫機関(グルマンキン)』ですね」

 

「…宅配便か」

「だからサザンはちょっと黙って」

 

 紗夜はサザンを一蹴する。今はふざけている場合ではないのだ

 

「レヴォルフってことは再開発エリアが怪しいな。一気に殴り込むのか?」

 

 亨介の質問にクローディアは首を横にふる

 

「綾斗達まで皆で乗り込んでしまってはフローラが助かる保証はないでしょう…」

「なら、どうすればいい!!」

 

 ユリスは荒々しく怒鳴る。クローディアは冷静に答えた

 

「一つ、手はあります。…まずこの場に私はいなかったことにしてください。私は何も聞かなかった。そして私はしばらく姿を隠します。言い訳は後で考えますが、誰からの受付も受けません」

 

「…は?」

 

 一同クローディアの話にきょとんとしていた

 

「その間に綾斗は『黒炉の魔剣』の緊急凍結処理の申請を出してください。この申請に生徒会長の私の許諾が必要となりますので私が戻ってくるまで時間を稼げるでしょう」

 

「なるほど、申請自体は行ったのだから要求は飲んだことになる」

 

 綾斗は納得したように頷く。これならその申請は知らなかったと生徒会の問題であり、犯人は文句を言えない

 

「その間に何とかして犯人の居場所を探し出し、フローラを救出する。ですが、私は閉会式には参加しなくてはなりません。それまでに見つけ出してください」

 

「フハハハハ!よかろう!それでは皆で乗り込むぞ!」

「お前、話しを聞かないタイプだろ!!」

 

 亨介はサザンを足蹴する

 

「…私も、すぐにでもフローラを助けたい…」

「だめですよ、ユリス。貴女には次の試合もあります。」

 

「…それでも、試合を放棄してでも助けたいのだ!」

 

 ユリスの眼差しは悲しく、強く訴えていた。亨介はユリスに肩を軽く叩く

 

「ユリス、お前は勝ち進まなきゃいけない。お前の願いはフローラも叶えたいと思っている願いなんだろ?」

 

「…っ!?し、しかし…」

 

「それにタッグパートナーもいんだからさ、巻き添えはよくねえな?」

 

 ユリスははっとして綾斗の方を見る

 

「ユリス、大丈夫だよ。俺も同じ考えさ」

 

 綾斗の願いは姉を見つけ出すことだ。…まだ次の『星武祭』があるその時に叶えればいい。そんな様子をみた亨介は苦笑いをする

 

「まったくお前らときたら…ひとつ、大事な事を忘れてんぜ?」

 

 大事な事?綾斗とユリスは首をかしげる。にんまりとした亨介は自分と後ろいるクローディア達を指さす

 

()()を忘れちゃ困るぜお二方。どんな窮地に落ちても支えてくれる大事な友達さ」

 

「そうだぞ、ユリス。私たちをもっと頼れ」

 

 紗夜も綺凛も清霜も神通もユリスに微笑む。

 

「綾斗先輩が試合で頑張っている間にフローラちゃんを助け出します」

「友達の窮地に手を貸すのは当然ですよ!」

 

 綺凛と清霜は元気いっぱいに答える。

 

「憂いは私たちが断ちます。ユリスさん達は存分に戦ってください」

 

 神通達を見てユリスは見開いていたが苦笑いしながら頷く

 

「そうか…そうだな。紗夜、綺凛、清霜、神通…よろしく頼む」

 

「ん、任された」

 

 彼女たちはぼろぼろになりなっていても尚、元気いっぱいに微笑んだ

 

「フハハハ!敵陣はどこだ!この帝王が乗り込んでやろう!」

「うん!気持ちは嬉しいけどお前は出る幕じゃねえからな!」

 

 今にでも飛び出していきそうなサザンを亨介は必死に食い止めていた。そんな様子にユリスは苦笑いしていた

 

 

「‥‥綾斗、信頼できる仲間がいるというのは良いものだな…」

「…ああ、そうだね」

 

 綾斗にはわかっていた。ユリスは今にでも泣きそうなのを必死に耐えているのに

 

~*~

 

「動いたようだな」

 

 アルルカントにある暗い一室にてアルルカントの生徒、毛利直家は静かにつぶやいていた。

 

「ねえねえ、直家様。次の準々決勝も勝ち進んでいくんですかぁ?」

 

 暗い一室の中で女性の声が響く。直家はそんな声にも関心を持たずに静かに黙っていた

 

「いつになったら帰るんですかぁ?私、この大会はぁもう飽きちゃいましたよぉ」

 

「…こちらの手筈も済んでいる‥‥あとはただの物見だ」

 

 直家は立ち上がり部屋を出る。『悪辣の王』、ディクルもすでに手を打っているようだが、今は気にするのは明日の試合…『あのお方』に関わっている千利亨介との試合だ…

 

「ふん、たとえ『あのお方』の懐刀であろうとも、我の敵ではない」

 

 『日輪知将』と恐れられている毛利直家の策謀はすでに進んでいた。




気付けば鳳凰星武祭の中盤も通り過ぎようとしている…
長いようで速い…


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