翡翠色のアスタリスク   作:サバ缶みそ味

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遅くなって申し訳ありません!!




蜘蛛と海魔と時々反撃

「くそっ…傷ついてもすぐ治るか…」

 

 亨介は苦虫を潰すような顔で直家とルキアを見据える。直家は無表情でこちらをみている。あの野郎…ほんとうに人を馬鹿にしてるような眼をしているな…

 

「ねえ!私のぉ直家様をなにジロジロみているのよぉ!!」

 

 ルキアは直家を睨んでいた亨介にブチ切れる。怒り任せに青い魔法陣を亨介の周りに発動させそこから海水の塊が飛び出す。

 

「ったく、海開きはまだ望んでねえっての!!」

 

 亨介は飛び交う水塊をデッキブラシで叩き割りながらルキアに迫り、デッキブラシを横に薙ぎいてぶっ飛ばそうとした。彼女にはダメージが通っている、しかし再生能力なのかすぐに傷は癒えてしまう。そんな様子を見て亨介は疑問を感じた

 

「…やっぱおかしい、『魔女』でも複数の能力は得られるはずはない…」

 

 だとすれば直家の仕業か?いや…あいつの能力は光の壁から見て『光』の能力だろう…だとすれば一体なんだ?

 

「‥‥」

 

 直家は相変わらずただただ見ているだけだった。

 

「だから、私の直家様を見るじゃなぁいのぉ!!」

 

 ルキアは怒り狂ったように叫び、亨介の周り360°から水柱を噴出させた。亨介は隙間を縫うように躱して間合いを取る。海水の冷たい感覚が伝わる、気づけばステージに溜まり続けている海水は脹脛の半分の高さまでに至っていた

 

「…ルキアよ、次の手だ。」

 

 直家が合図をした途端、ルキアは大喜びで亨介めがけて駆け出す。接近戦に持ち込んだかと亨介は身構えた。しかし、大きな水塊が亨介とルキアを包み込んだ。

 

(なっ…何をしやがる!?)

 

 亨介は水塊から出ようともがくがルキアは亨介の腕をつかみ逃がそうとしなかった。すると、二人に周りに光の球体が現れ光を大きく発した

 

(!?…まさか!)

 

 二人を包んだ水塊は爆発を起こした。亨介は這う這うの体で水塊から脱出し爆発のダメージは少し抑えることができた。亨介は倒れているルキアを見た後、直家を睨む

 

「てめぇ…仲間ごと攻撃しやがって!」

 

「仲間?…くだらんな、『捨て駒』に情をかける必要なぞない」

 

 亨介の怒りの声に直家はバッサリと吐き捨てる。

 

「これも戦いの一手、それすらわからぬ貴様に破る我ではない」

 

 再生能力を持つルキアは傷が自然回復するとすぐに起き上がり直家に恍惚の表情を見せる。再生能力をもつルキアごと攻撃してもすぐに回復するので巻き込んでも構わないということである。

 

「…くそ、これはまずいな…」

 

 

 

~*~

 

「このっ!!ちょこまかちょこまかと!!」

 

「ほらほら、鬼さんこちら!」

 

 イレーネは『蜘蛛』と名乗った男を殴ろうとしているが『蜘蛛』はひらひらと躱して逃げている

 

「てめえ、なんのつもりだ!!」

 

「なんのつもり、といいましてもねえ。私はただただ躱して時間を稼ぐだけでいいのですよ」

 

 『蜘蛛』は手を広げてオーバーにリアクションをする

 

「今、彼女の再生能力を利用しているんですよ。彼女の能力は便利ですよねぇ。他にももっといい使い方があるからちょっとお借りしているだけ。まあこれからもなんですけどね!!」

 

 『蜘蛛』は狂ったようにイレーネをあざ笑う。

 

「もっといい形にして、もっといい駒を作る。嗚呼、『我が主』は素敵な考えをなさる!!」

 

「このっ…てめえをぶん殴って、黒幕を吐かせてやる!!」

 

 たとえ『覇潰の血鎌』がなくってもイレーネは徒手空拳には自信があった。こんなひょろっちいやつなんか一発仕留めればいい。『蜘蛛』がイレーネの拳を躱そうとしその隙を狙って強い蹴りを入れた。

 

「…っ」

 

 『蜘蛛』はガードをして下がった。前権撤回、相手もなかなかやる、油断はできない。『蜘蛛』は嬉しそうに拍手をした。

 

「いやはや、『覇潰の血鎌』がなければ勝てると思っていましたが、なかなかやりますねえ」

 

「はっ、こちとら喧嘩にはなれてんだよ!」

 

「‥‥そういえば私、彼女の再生能力には興味があります」

 

『蜘蛛』は不気味に低く笑いながら話す。だが、静かに指をさしてさらに声を低くだした

 

「…首を落としても治るんですかねぇ?」

 

 『蜘蛛』は眠っているプリシラにむけて何かを飛ばした。このままではプリシラに怪我を負ってしまう。イレーネは彼女の前に立ち、攻撃を防ごうとした。

 

「あぐっ…!?」

 

 防ぐどころか身体を貫通した。それはワイヤーのように固く、半透明の糸だった。糸を辿ると『蜘蛛』の腕から出ている

 

「面白いですよねぇ、糸というのはワイヤーのように固く、貫き、切り裂き、そして巻き付く」

 

 『蜘蛛』が指をぱちんと鳴らしたと同時に無数の糸が飛び出し、イレーネの身体に切り傷を負わせ、体中に巻き付いた。

 

「ぐうっ…このっ…」

 

 イレーネは身動きができなくなっていても『蜘蛛』を睨み付ける。『蜘蛛』は嬉しそうに拍手をした

 

「いいですね!その表情ですよ!何もできずに悔しそうに睨み付ける気の強い女性、私はそれを虐げるのがだぁいすきなんですよ!!」

 

 キリキリと体に糸が強く巻き締めてくる。

 

「プリシラ‥‥っ!」

 

 イレーネは悲痛の声を上げて妹の方を見る。結局私は力がなければ妹を守ることすらできないのか、また妹に辛い思いをさせるのか…

 

「安心してくださいな、貴女を始末し終わったら、妹さんの記憶をバッサリ消して『我が主』の最高の駒にしてあげますから…それでは、さようなら」

 

 

 

 『蜘蛛』が拳を強く握りしめ、糸をさらに強く巻締てトドメをさそうとした。

 

 

 

「『飛鷲獄屠拳』!!」

 

 突如、シンの最速の強烈な飛び蹴りが『蜘蛛』に炸裂して吹っ飛ばした。突然の襲撃で『蜘蛛』は防ぎきれず離れた。

 

「くっ…何者です!?」

 

「ふふふ、この『サザンクロス』の『king』と呼ばれたこの俺を知らないとはおめでたい奴だなぁ」

 

 シンはドヤ顔で『蜘蛛』を睨み、手刀でイレーネに巻き付いていた糸を全て切り取った

 

「お、お前はあの時の変態!」

「変態じゃない、シンだ!というよりあれはお前が見せたのだろう、ナイスサービス!」

「ばっ…だ、誰がお前なんかに見せパンするかよ!」

「はっはっは、もっと見せてもいいのだぞ?」

 

 茶化すシンに顔を真っ赤にして喚くイレーネ、ギャーギャーと喧しくなり先ほどまで緊縛していた雰囲気が崩壊した。しびれを切らした『蜘蛛』が大声を上げる

 

「貴様…なんのつもりだ!」

 

「ふん、今行われいる亨介の試合で()()()()()()()を持つ奴を見てな、プリシラが何処かへ行く姿を見かけたことを思い出し、まさかと思って調べてみたまでだ。プリシラの能力をその魔法陣を使って他の選手に再生能力をかけているようだな」

 

「…どうしてここだとわかった!」

 

「わかったもなにも、この周辺は『サザンクロス』のエリアだ。言わば俺の庭、残念だったなぁ」

 

 シンは闘気のオーラを出して構えた。その様子をみていた『蜘蛛』は鼻で笑う

 

「ふん、私の邪魔をしないでもらおうか!」

 

 シンに向けて無数の糸を飛ばして切り裂こうとしていた

 

「『猛鷲凄斬爪(もうしゅうせいざんそう)』!!」

 

 シンは両手を鷲の爪のような形にして振るい襲い掛かる糸を全て斬り落とした。振った後には4本の爪痕が通った跡が闘気のオーラでくっきり残っていた

 

「哀れな虫だな。この『殉星孤鷲拳』、猛る孤高の鷲の前には毒虫であろうとただの虫けらだ!」

 

 シンはドヤ顔で睨み、『蜘蛛』に向けて駆け出した

 

「ならば…ならばこれでどうです!」

 

 『蜘蛛』は無数の糸を出し、それを集束させて巨大な一本の糸に変えてシンに振り下ろした。シンはひらりと飛び躱した

 

「かかったな!」

 

 『蜘蛛』がにやりとすると飛び躱したシンの周りにさらに無数の糸が襲い掛かった。

 

「たとえ貴様でも空中では無防備!そのまま切り刻んでくれる!」

 

 『蜘蛛』は勝ち誇ったように笑うが、シンはそんなことはお構いなしに大きく笑う

 

「フハハ!鷲にはそんなものは無駄ぁ!殉星孤鷲拳奥義、『鷲虐双手(しゅうぎゃくそうしゅ)』!!」

 

 闘気を纏ったシンは空中かた一気に『蜘蛛』へと急降下し、合唱手の貫手で『蜘蛛』に強烈な一撃を与え吹っ飛ばした

 

「あだばばあばぁぁぁっ!!?」

 

 『蜘蛛』は悲鳴を上げて壁を壊されるほど飛ばされたのち、気を失って動かなくなった。

 

「…ふん、やはり外道は情けない断末魔を出すわ」

 

 シンはそのまま魔法陣まで歩み寄り、プリシラの体に突き刺さっている剣を引き抜く。魔法陣の光は消え、そしてプリシラの傷も治っていった

 

「プリシラっ!!」

 

 イレーネはプリシラの元へ駆けつけて抱きしめた

 

「…あれ、お姉ちゃん‥?私…いったい‥」

「ごめんな、ごめんな!」

 

 イレーネは涙は流さまいと強く抱きしめた

 

「お、お姉ちゃんっ、強く抱きしめすぎ…ってけがしてるじゃない!大丈夫?」

 

「ふっ…俺は亨介の試合を見に行かなくてはならん。帰るぞ」

 

 シンはこの場は野暮だと、そっと去ろうとした

 

「シ、シンまてよ!」

 

 イレーネに呼び止められてシンは歩みを止めて振り向く。

 

「あ…ありがとうな…妹を助けてくれて、ありがとう…よ」

 

 イレーネは顔を赤くして、視線をそらしつつも、照れながら答えた

 

「…そうだ、まだ他の奴らがいるかもしれん、よければお前たちを家まで送ろう」

「…お、おう…ありがと…」

 

 顔を赤くしているイレーネを見て、プリシラは暖かく微笑んでいた

 

 

~*~

 

 バチンっ!

 

 何かが切れる音がしてルキアの足下から赤い魔法陣が出たと思いきやパリンと割れた

 

「な…これはぁっ…!」

 

 突如ルキアが狼狽しだした。一体なんのことだろうか、よくみると先ほどルキアに与えたダメージが消えてなかった。

 

「どうやらその再生能力にはタネがあったようだな」

 

 亨介は直家達を睨む。つまるところルキアには再生能力はない。何かしらの方法で第三者の再生能力を利用していた。その第三者の能力が使えなくなり、所謂リジェネ効果がなくなったのだ

 

「『日輪知将』にしては汚ねぇ手を使いやがるな」

 

 亨介の挑発に直家は全く動じていなかった。まるでそんなことも予想通りだと思わせるような態度だ。

 

「…ルキアよ、全力で足掻け」

 

「はぁい、『我が主』の仰せのままにぃ!!」

 

 ルキアは足下に大きな魔法陣を発動した。すると、ステージ内に溜まっていた海水がルキアの元に集まりだす

 

「さあ、これをくらいなさぁい!『タイダルウェーブ』!!」

 

 

 大きな水塊が津波に変わり亨介に襲い掛かる。亨介は波にのまれたと思い、ルキアはにやりと笑ったがそれはつかの間だった

 

「こんなもん、へでもねえ!!」

 

 亨介は翡翠色のビート板に乗って、サーフィンのように波に乗り、ルキアの攻撃を躱した。そして一気にルキアに迫り、翡翠色のデッキブラシを展開する

 

「今度こそ、夢の中でSMプレイでもしとけやぁぁぁっ!!」

 

「あぎゃあああああっ!!?」

 

 デッキブラシのフルスイングが炸裂し、ルキアはホラー映画のお化けのような悲鳴を上げて吹っ飛ばされ気を失った

 

『宇喜多ルキア、意識消失』

 

 機械音が響き、ルキアはもう起き上がらないことを告げた。亨介はデッキブラシを直家に向ける

 

「さあ、策士策に溺れるタイムだ!観念しな!」

 

 無表情に見ている直家に迫り、デッキブラシを振るった。しかし、直家は冷静に冷徹に告げた

 

「…言った筈だ、貴様なぞ我の敵ではないと」

 

 突然、直家が一歩下がったと思いきや亨介の目の前に光でできた直家の幻影が現れた

 

「爆ぜよ」

 

 直家の合図とともに爆発を起こす。爆発に巻き込まれ吹っ飛ばされた亨介は受け身を取って起き上がる

 

「攻め手は止めぬぞ?」

 

 直家は輪刀を掲げると輪刀と亨介の足下と周りの床が光りだす。

 

「先の手、『発』」

 

 すると亨介の足下の光が爆発を起こす。

 

「あぶねえっ!?」

 

 なんとか躱して逃れるが、地雷を踏んだかのように足下が光だして爆発を起こした。亨介は必死に走り爆発から逃れる

 

「塞ぎ手、『壁』」

 

 駆ける亨介の目の前に光の円形の壁が現れ、亨介を弾き飛ばした。

 

「これで詰みだ。囲い手、『牢』」

 

 起き上がる亨介を囲うように白い光の壁が出現し白い光の立方体の形で亨介を閉じ込めた。亨介は壊そう叩くがびくともしない。

 

「くそっ、ほんと閉じ込めるのが好きな奴らだな!」

 

「ふん…だから貴様は無力なのだ」

 

 直家の一言に亨介はぴくりと反応した

 

「貴様はなにができたか?何も持たざる貴様なぞ、ただの『あのお方』の駒にすぎん。だからこそ我の敵ではないわ!」

 

「……」

 

 亨介は黙ったまま直家を睨む。輪刀に光が集束し終わり、太陽のように光り輝いていた

 

「さぁ終わりだ。終の手『照』!」

 

 輪刀を頭上に掲げると、集束していた光が解き放つように光線を放った。亨介を閉じ込めていた光の立方体に当たり大きな爆発を起こした。

 

「…駒になにができる…」

 

 直家は冷酷に吐き捨てた。しかし、爆煙の先を見据えるとピクリと静かに驚いていた。そこには翡翠色のお鍋のふたを持っていた無傷の亨介が立っていた

 

「まさか…そのふたで我の手を防いだだと…!?」

 

「…逆に聞くけど、てめえになにがわかる。人を駒としか見なしていないてめえには一生わかんねえさ!!」

 

 亨介は翡翠色のオーラを出して駆け出した

 

「‥‥なるほど、『アレ』がそうか…」

 

 動揺しつつも直家は冷静にその様子を見ていた。亨介がデッキブラシを振り下ろした時だった

 

「…ギブアップだ!我の負けである!!」

 

 直家の頭に当たる寸前、直家は大きな声でギブアップを宣言した

 

『毛利直家、試合放棄。試合終了!勝者、千利亨介&南星サザン!!』

 

『な、なんと、なんとぉ!?毛利選手、ギブアップを言いました!!これにより準々決勝、星導館の千利選手ペアの勝利です!!』

 

 実況の声がステージ内に響いた。ステージ内には拍手と喝采とブーイングの声が混じり合い不協和音を醸し出す。亨介は踵を返してさっさと去ろうとする直家を睨む

 

「てめぇ…一発殴らせろ!」

 

「負けも戦略の一つだ。貴様の勝ちだぞ?もっと喜ぶがいい」

 

「というか、なんでてめえが『あいつ』のことを知っている!!」

 

「我が貴様に教える筋合いはない」

 

 そういって直家は去っていった。やりきれない感じが亨介の体中に通り、亨介は静かに拳を握りしめた

 

 

~*~

 

「…また貴様か」

 

 直家は無関心に目の前に来たエルネスタを無視して通り過ぎようとした。エルネスタはニヤニヤして直家を挑発する

 

「やあやあ、無様だね~。まさか自分の手があっさりやられて殴らるのがいやだったから逃げたんだよね~」

 

「この雌豚ぁ!!直家様をあざ笑うなぁ!!」

 

 直家の後ろにいたルキアが睨み付ける。そんなことにエルネスタは痛くも痒くもない

 

「負けは負けだよ~、そんななら私がトドメをさしちゃおっかな~」

 

 やっと直家の歩みがピタリと止まった。くるりと振り向いた直家は寧ろ呆れているような顔をしていた

 

「だから何度も言わせるな我は『下見』をしただけだ。それすらわからぬのなら貴様は木偶だ」

 

 直家はそういって去っていった。

 

「はは~ん、言い訳ですか?言い訳だよね~。負け惜しみなんか言っちゃって、『下見』だなん…て…」

 

 『下見』という言葉を思い出してエルネスタはぴたりと止まった。直家の姿はもう遠くなっている。

 

「あいつ…手を抜いていたのね…」

 

 試合は本気ではなかった。それが答えだった。ただの下見をしてただけなのだ。私の下見?いや、あいつがそんな小さなことはするはずがない…じゃあ誰の下見を…

 

「まさか…千利亨介の…」

 

 確かに千利亨介の能力は珍しい。だが、彼の力を見て満足する奴はいるのか…

 

「‥‥気にするのはやめやめ!今は準決勝に集中しなきゃ!」

 

 エルネスタは気分を取り直した。準決勝の相手は天霧綾斗のペアだ。これを乗り越えたら後は優勝するだけ、彼らを倒せばそれで勝ちが確定したものも同然なのだ。エルネスタは鼻歌を歌いながら去っていった。




5月半ばになり、暑くなってきましたね
今年は猛暑の可能性も…水分補給はしっかりとノシ
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